「海の底に巨体を横たえる竜神様
半月に誘われて海霧が波を荒立てるとき
海原を割って躍りでる
目が風となり舌が波となって
船乗りたちのねぐらを呑み込む
竜神様よ、わが舟はお助けあれ
御名を石に刻んで讃えます
ああ、ゴジラ様」
『GODZILLA(1998)』ノベライズより
「呉爾羅様は海底深くに眠る神の尊
その眠りを妨げるものあれば
海は荒れ果て
全てを飲み込むであろう」
『シン・ゴジラ』未公開映像より
概要
ゴジラシリーズにおけるゴジラの漢字表記として定義されている単語。
シリーズを通して“作品内におけるゴジラの名前の語源”という設定としてよく使われている。
元はと言うと1954年公開の『ゴジラ』において、小笠原諸島にあるとされる架空の島“大戸島”に伝わる伝説の怪物、あるいは神獣や龍神の名を指す言葉である。たまに「ごじゅら」と読まれることもある。
その伝承によると「呉爾羅は普段は海底で眠っているが、一度目覚めると近海の生物を食い尽くし、やがては陸に上って人を襲うようになる」と伝えられており、そのためかつて大戸島では不漁になるとそれを呉爾羅復活の兆しと見なし、呉爾羅への生贄として嫁入り前の娘を筏に乗せて海に流していたと語られている。
現代では既にその存在は迷信扱いされ、生贄の風習もとうに廃れているが、この呉爾羅を奉るための神楽踊りだけはいまだに残っていた。
大戸島で起こった巨大生物災害の調査に向かった古代生物学者の山根恭平が島でその生物の存在を確認し、後の発表においてその生物を島の伝承にある“呉爾羅”をカナ読みした「ゴジラ」と呼称するとしたことがそのままゴジラという名前の由来になった。
その後の『シン・ゴジラ』、アニメ映画『GODZILLA三部作』、『ゴジラ-1.0』、果てはハリウッドのレジェンダリー版『GODZILLA』など、例え初代と直接世界観が繋がっていない作品であっても“大戸島の呉爾羅伝説”がゴジラの名前の元になったという設定は概ね共通しており、『-1.0』では歴代で初めて呉爾羅そのものが登場し、ゴジラに変異する前の生物として扱われている。
そのことから初代ゴジラが存在しない世界だったとしても「大戸島の呉爾羅伝説は存在する」という一種のパラレル設定にもなっている。
一部のファンの間では“後に水爆実験でゴジラと化した古代生物の生き残り”と言われる“海棲爬虫類と陸上獣類の中間種”および“白亜紀の獣脚類恐竜”が大戸島の島民にたまたま目撃され、それが島における呉爾羅伝説のルーツになったという解釈もなされている。しかし、どちらにおいても大戸島とゴジラの前身となる古代生物が生息していた南太平洋地域とでは地理的に大きな隔絶があるため、同一の存在とは考えにくいとしている書籍もある(小学館『決定版 ゴジラ入門』など)。
2021年配信(放送)の『ゴジラS.P』では、新たに南房総(千葉県逃尾市)の"ミサキオク"に伝わる伝承に出る終末の獣「古史羅」という表記になっている。
一見すると「こしら」と読みそうであり、劇中の登場人物も最初はそう読んでいたが、実際は従来通り「ごじら」。
ちなみに中国語では「呉爾羅」は「ゴジラ」とはかけ離れた発音になるためか、この表記を用いずに、まだ「ゴジラ」っぽく聞こえる「哥斯拉」を使用している。