映画については→『ゴジラ-1.0』
戦後、全てを失った日本に現れるゴジラ。無政府・無援助・無防備の我々はゼロからマイナスへ叩き落とされる。
(『ムービーモンスターシリーズ』より引用)
概要
『ゴジラ-1.0』に登場するゴジラ。通称「山崎ゴジラ」「負ゴジ」「マイゴジ」「マイワンゴジ」。
日本の実写映画作品としては令和初のゴジラにして、長く続くゴジラシリーズでも極めて珍しい「戦後すぐ (初代ゴジラの1954年よりも前の年) に出現したゴジラ」。
鳴き声はほぼ初代ゴジラのものと同じだが、激しく音割れさせたかのようなエフェクトがかかっており、非常に禍々しいものとなっている (どちらかというと劇中における初代ゴジラの鳴き声より、作品開始時のタイトルが出た辺りで最初に聴ける鳴き声の方に酷似している印象) 。
形態
以下、本作品のネタバレ。未見の方は注意!
平成VSシリーズと同様、前身となった生物が核実験によって被曝し、人智を超えた巨体に変異した個体である。
本作のゴジラは変異前・変異後の両方が描かれており、前後を問わず共通した生態としては下記が存在する。
- 銃撃を受けてもダメージを受けない強固な表皮と、傷ついても瞬く間に損傷箇所が復元する再生能力を持っている。
- 普段は深海を回遊しているが、別途特定の陸地を縄張りに定めており、時折上陸する。
- 深海から浮上する際、辺り一体の深海魚が棲家を追われて同時に浮上を余儀なくされ、結果減圧により死亡した深海魚が海面に多数打ち上げられる (小説版では、大戸島ではこの深海魚を鍋料理にして食べる風習があることが語られている) 。
- 気質は極めて獰猛で、縄張り意識がチンパンジー並みに強く、縄張りに侵入した生物を種類問わず手当たり次第に攻撃 (同種であってもむしろ過敏に反応する) 、強靭な牙、脚、尻尾によって鏖殺する (噛みつきによって殺害した際も捕食することなくそのまま放り投げており、あくまで殺害を目的に置いている) 。
- 上記の通り口から食糧を摂取する場面はなく、食性などは一切不明。ただ、その肉食恐竜染みた外観や、深海魚が住居を追われて逃げている事情等から、魚食を主体とした肉食性だったのではないかとする説がある。
呉爾羅
全高 | 15m |
---|---|
全長 | 不明 |
体重 | 不明 |
大戸島付近を縄張りに定めて回遊し、深海魚が打ちあげられた夜に現れると島の伝承にて語り継がれてきた謎の巨大生物。
全高は15m程で頭が大きく前傾姿勢をとっているなど、肉食恐竜にとても近い姿であったが、この時点で既に巨大すぎる体躯や貝殻のような形の大きな背ビレに恐竜ではありえない長さと強靭さを併せ持つ両腕、そして高い治癒再生能力という生物としては常軌を逸した特性を持っていた。ただし、この時点ではまだ放射能に冒されていない状態だったため、熱線を吐く能力までは備わっていなかった。
第二次世界大戦 (太平洋戦争) 末期の1945年夏、大戸島に上陸。戦時中同島に駐屯していた特攻機用整備場の帝国海軍守備隊を侵入者と見做して襲撃し、一夜にして敷島浩一と橘宗作を除く整備兵たちを皆殺しにした (戦意の低下を恐れた軍部の情報操作によって、守備隊全滅は表向きには米軍との戦いで玉砕したとして処理された) 。
しかしこの時の行動をよく見てみると、
・見張櫓から探照灯を照射されて怒りの咆哮を上げ、一直線に櫓へ向かって破壊。
・その後整備兵らが塹壕へ逃げても、遅い速度で前進するだけで追うそぶりを見せない。
・零戦の操縦席に乗り込んだ敷島と目が合うが、唸り声で威嚇して素通り。
・整備兵から銃撃を受けて激怒し、皆殺しにする。
……と、人間側から刺激を受けるまで攻撃していない。
つまりはこの時はただ縄張りを見回りに出現しただけで、人間を殺す気など最初から無かった可能性が高い。
1946年にビキニ環礁近海を回遊していたが、そこで意図せず米軍による核実験・「クロスロード作戦」が行われている場面に遭遇し、7月25日のベーカー実験にて被曝。
核爆発の直撃を受けて全身を焼き尽くされる大ダメージを被ったことに加えて、被曝時に浴びた放射線により全身の表皮細胞がエラーに次ぐエラーを引き起こして再生能力が暴走、結果として元の姿を遥かに凌ぐ50m級の巨体へと変異した。
なお、作中では史実で1946年10月29日に自沈処理された重巡洋艦「高雄」が1947年時点でも沈んでおらず、ゴジラ駆除のために米軍による修理を受けて投入されたことから、米軍はかなり早めにゴジラの存在を把握していた可能性がある (作中、米軍艦が被害を受ける描写がなされるのが1947年3月付近、作中書類だと2月10日などの記述もあり) 。
これについて公式設定などはないが、山崎監督も「実は46年に沈められた船も出てきますが、ゴジラの存在が明らかになり、そのごたごたで自沈を免れたと考えれば47年でも大丈夫(笑)」「1946年には既に米軍でゴジラの問題が発生しており、日本に返すため修理していた」等、語っている。YouTubeでの対談でもクロスロード作戦直後からゴジラによる被害があったことが語られている。
ゴジラ
全高 | 50.1m(10月18日のプレミアムイベントにて判明) |
---|---|
全長 | 不明 |
体重 | 20000t(推定) |
上述の通り被曝した呉爾羅が再生能力のエラーと暴走によって全高50m級の巨大な身体に変異した姿。
サイズこそ初代を含めた昭和作品やミレニアムシリーズに登場した個体群と同程度だが、体型は筋肉質な上半身に太い足とかなり屈強でマッシブであり、同じく山崎貴監督が手掛けた『ゴジラ・ザ・ライド』のゴジラに酷似している (実際、山崎氏は『ゴジラ・ザ・ライド』のゴジラをベースにデザインしたことを明言している) 。
ただ鱗など細部のデザインは異なっており、岩石のような表皮のディテールはまるで水疱やケロイドのような痛々しいものとなっている他、顔や胸部など一部に火傷痕のような肌色の部分 (再生跡) が見受けられており、特に左目の下は深い溝が走っているのもあり切り傷の如く悪目立ちしている。
また、頭部はVSシリーズのもののように扇状に鱗が並ぶ。
上顎の歯は口の端から三本目が最も大きく、一様な大きさか犬歯状の部分が最も大きかった過去のゴジラとは大きく異なる。目つきについては半月型の歴代ゴジラと異なり、人間とよく似たアーモンド型の形状で、黒目の印象が強くないやや虚な金色の瞳となっている。
背鰭は『ザ・ライド』のものより大きく天を向くように枝が長く鋭く尖った、複雑で禍々しいデザインが特徴的であり、中心の背鰭は大きすぎて歪にずれて生えており、尻尾の先近くまで並んでいるほか一部は抜けかかっているように根元が露出している。また、変異による急成長で牡蠣殻のように幾重にも層を成しており発光時には模様のように浮かび上がる。
手足の指は4本、手の爪は白く足の爪は黒い。肘には棘のように尖った巨大な鱗が生えている。
脚は歴代ゴジラより獣脚類に近い形状となっており、巨大な鱗が幾重にも重なり鳥類を彷彿させる鋭い爪先をしており、実際の恐竜のような踵を地面に着けない立ち方 (趾行) になっている。
なおこの強靭な脚部で、銀座の道路を踏み抜き破砕するシーンが多くみられたが、推定時速40kmとかなり俊敏に歩行していることから、一歩歩くごとに重心移動と運動によって合計5億J相当、つまり爆薬120kg分=ダイナマイト600本分の爆発と同等のエネルギーが発生している計算となる。銀座での破壊シーンは、この足踏みだけでコンクリート1500tが破壊できるエネルギーを正確に描写したことによるものと思われる。
尻尾に関しては『シン・ゴジラ』が特徴的な尾を持っていたのもあり、差別化も兼ねて極々標準的なサイズとなっている。
遊泳方法はモンスターバースのゴジラのように手足を動かさず尻尾を左右にくねらせて泳ぐ「ワニ泳ぎ」となっており、海面付近での遊泳時は基本的に背鰭しか海上に出さず、よほど気が立った状態での索敵時にのみ顔を出す。
ゴジラの特徴ともいえる海上から上半身を出した立ち泳ぎに関しては、水鳥のように巨大な足を動かすことで体を浮かせているが、立ち泳ぎを維持したまま移動する様子は見られなかった。
歴代ゴジラの例に漏れず、戦車の砲撃をものともしない強固な皮膚を持ち、体表面で起爆した機雷も一切通用していない。終盤の海神作戦では大和型戦艦用の46cm砲弾が起爆剤としてゴジラの至近距離の海中で起爆されたが (砲から発射しないため運動エネルギーが皆無とは言え) 、それがダメージとなるような様子も見られず、相模トラフの水深1500mを利用した超加圧・超減圧を受けても行動を継続できるタフネスをも持っている。しかし歴代ゴジラの中では純粋な防御力はそれほど頑強ではなく、重巡洋艦「高雄」の20.3cm砲による攻撃で再生を要するダメージを受け、先述の超加圧・超減圧に対しても死亡こそしなかったものの、外皮がひしゃげるほどの大ダメージを受けている。特に口内などの身体の内側を狙った攻撃には全くと言っていい程に耐えられず、機雷の起爆で眼球を含む顔の左半分が、250kgと500kgの爆弾を各1発ずつ積んだ震電の特攻による自爆攻撃で脳を含む頭部の上半分が吹き飛ばされている。
だが、この防御面を補っているのが異常な再生能力であり、眼球を含む顔面が吹き飛ばされたにもかかわらず、たったの数秒で再生するほどに驚異的な再生速度を有している。しかし上述のような内側からの攻撃などによる大ダメージを負った場合だと再生こそすれど完全には治しきれないようで、左目の下、左肩部分などの再生した傷痕は肌色に変色して残った。
背鰭を青白く光らせて口から放つ熱線も健在。
尻尾から背鰭が青白く光り出すと同時に、背鰭が尾先から一列ずつ根本から押し出されるように飛び出していき、全ての背鰭が飛び出した所で大きく息を吸い込み、インプロージョン方式の原子爆弾のように背鰭を一気に引っ込めることがトリガーとなり極太の熱線を口から放つ。
一撃による威力は歴代でも上位クラスを誇り、劇中では銀座から国会議事堂前の戦車隊めがけて放った際、国会議事堂はその超高熱で完全に分解され、着弾地点にはゴジラよりも遥かに巨大なキノコ雲が上がり、隕石が落ちたかのような巨大な陥没痕が形成され、その周辺も消滅し更地と化していた。さらに着弾地点から離れた距離にも、遮蔽物が無ければ人などいとも簡単に吹き飛んでしまうほどの爆風が発生し、発射後には空に舞い上がった膨大な粉塵によって発生した「黒い雨」が降り注ぐ描写もあり、核爆弾級の威力に達しているとみていいだろう。
小説版によると、着弾地点たる国会議事堂から、半径6kmの範囲 (広島型原爆の約3倍) が爆風で壊滅したとされている。つまり銀座はおろか、東は江東区、西は渋谷、北は田端、南は品川区まで超えた、山手線のほぼ全てに加えてその周辺の地域という超広範囲に被害を及ぼしたことになる。上空600mで爆発した結果、半径2kmの範囲を壊滅させた広島原爆と比較すると、その爆発エネルギーは爆心地が地上であることを考慮に入れて計算してもなんと約23.73倍 (TNT換算で約356キロトン弱) に相当する。
これは現実世界において米軍が現在配備している大陸間弾道ミサイル用核弾頭「W78」とほぼ同じ出力であり、原子爆弾を遥かに超えるどころか現行の戦略核兵器にすら匹敵する莫大な破壊力を持っているということになる。
これらの描写は核の申し子であるゴジラのイメージから、原子爆弾を投影したものであり、同じくキノコ雲を発生させたGMKゴジラよりもさらに踏み込んだ描写がなされていると言える。
ただし、一撃必殺級の強大な破壊力こそ持っていると言えどそれにより発生するエネルギーはゴジラ自身の身体も焼いてしまう諸刃の剣であり、上述の再生速度を以てしても身体の再生に時間を要し、これまでのゴジラのように連発する事は出来ない。ただ海中では海水が身体を冷却する役目を果たしているため、地上に比べて再生が早い=発射間隔も短くなっていると思われる描写もされた。
劇中では歴代ゴジラのように長い時間吐き続けたり、出力を調整したりといったこともしておらず、今作の熱線は怒りが頂点に達した時や遠方に対する迎撃を行う時に切り札として使用する文字通りの必殺技と言えるものとなっている。そのため震電のような飛行目標に対しては、噛みつきや尻尾による攻撃で撃墜しようとしている (劇中では熱線で撃墜される事が懸念されていたが、実際には1発も撃たなかった) 。
高雄との戦い以降、戦車や軍艦など砲弾での攻撃を行ってくる遠距離兵器には熱線での攻撃も行うようになるが、終盤の駆除作戦ではその攻撃法を逆手に取った作戦により、陽動のために差し向けられた囮の駆逐艦に対して熱線を使用させられ、そこから再発射までの時間を使って反撃作戦が行われる事となった。
動向
ネタバレ注意!
出現
変異後の1947年、米海軍の駆逐艦や潜水艦をはじめ、次々と海上の艦船を襲撃しながら日本・東京に向かって泳ぎ始める。日本を占領統治しているGHQは情勢の悪化していた大陸のソ連を刺激したくないことから一切の介入を行わない事を決定し、日本に自前の安全保障諸機関の増強を要請。さらにシンガポールで自沈処理待ちだった旧帝国海軍重巡洋艦「高雄」を日本に呼び戻して返還し、日本自身にゴジラ駆除を任せる。
1947年5月。巡洋艦「高雄」到着までの間、秋津淸治艇長率いる機雷除去用の特設掃海船「新生丸」「海進丸」が向かわされてゴジラの足止めを試みる。ゴジラは遭遇した「海進丸」を一瞬で沈め、「新生丸」に追いすがる。武装のほとんどない「新生丸」は逃げながら回収していた2発の機雷でゴジラに攻撃を敢行。1発目は体表面で起爆するも効果なし。2発目は口腔内で起爆し、眼球ごと左顔面が吹き飛ぶという大ダメージを受けるも即座に再生。ようやく到着した「高雄」による砲撃にはひるんだ様子も見せたがゴジラの再生力の前では効果がなく、体勢を立て直したゴジラは「高雄」に張り付き艦橋を破壊。艦長ら艦橋要員一同を全滅させるも、20.3cm砲による超接射を受けてようやく仕留められた……かと思われた矢先、ゴジラは海中から放射熱線を発射して「高雄」を爆沈。ゴジラは反動で焼け爛れながらも健在であり、勝ち誇ったような雄叫びを上げ消息を絶った。
そして……
ゴジラ、銀座襲来。
哨戒行動中だった海防艦「生野」が東京湾に向かっているゴジラを浦賀水道で発見。事前に機雷を配備した防衛線が張られていたものの、ゴジラはそれを難なく突破して遂に東京に上陸、そのまま復興に向けて歩み始めていた銀座を蹂躙。
呉爾羅時代からの縄張り意識の強さに加えて、先の戦闘による大ダメージからかなり気が立っていたのか、車や電車を蹴散らし噛みつくのみならず、日本劇場、朝日新聞本社ビル、マツダビルといった周囲の建造物を尻尾による薙ぎ払いやボディプレスにより、体が傷つき周囲に肉片を散乱させることも構わず徹底的に破壊。更には逃げ惑う人々を見るや建物ごと尻尾で吹き飛ばすなど、まさに「戦争の象徴」かのごとく徹底した人間への虐殺を行った (一方で近くのビルの屋上にいるアナウンサー達に気付き尻尾を振るうも、その後は特に気にせず通り去る場面もあった。もっとも、通り過ぎる際に足がそのビルの下部を破壊したことでビルは倒壊し、アナウンサー達も運命を共にしたが) 。
そして国会議事堂から出撃した四式中戦車団による砲撃を受けるも、重巡艦の砲撃に耐えるゴジラに戦車砲が通用するはずもなく、戦車隊めがけて切り札となる放射熱線を放ち迎撃。
着弾地点となった国会議事堂近辺のみならず、その周辺半径6kmの範囲をも爆風で巻き込み壊滅させ、死傷者3万人、破壊家屋2万戸以上という多くの犠牲を生み出す。
先の大戦を乗り越え、復興に向かっていたはずの銀座を瓦礫に帰したゴジラは、自身の熱線により立ち上がった遥か上空に届きかねない程の巨大なキノコ雲を見上げながら、威嚇するかの如く咆哮を上げるのだった……。
その後は再び姿を消すも、まるで「整地」したかのように破壊の限りを尽くした銀座跡地を新たな縄張りと定めたとみられたことから、最短で1週間以内の再来が予見された。
ゴジラvs日本 1947
その後、ゴジラは「海神作戦」により、水中拡声器から発せられる自身の咆哮を、縄張りを荒らしに来た同族と見做し、これに引き寄せられる形で相模湾に出現。しかし当初想定されていた作戦予定よりも早く陽動に当たった船隊を全滅させた後、駆潜艇を海から特設災害対策本部の港湾ビルまで放り投げて軍港を破壊し上陸、鎌倉の山間部まで侵入し村落を蹂躙していたが、敷島浩一が搭乗する戦闘機「震電」を追う形で江ノ島の脇から相模湾に戻り「海神作戦」決行場所へと誘導される。
ゴジラは自身にまっすぐ接近してきた駆逐艦「夕風」「欅」を放射熱線で爆沈させるも、2隻は囮であり、反動で受けた傷の再生を待つ間に「海神作戦」が決行された。
作戦の過程でフロンガスの充満したボンベが大量に括り付けられたワイヤーを駆逐艦「雪風」「響」が曳航する事でゴジラの体に巻きつけられる。熱線の反動による傷が完治したゴジラは駆逐艦に向かって熱線を放とうとするが、発生したフロンガスの泡で浮力を失い相模トラフ深海1550mの地点まで一気に沈められ、全身に156気圧もの高圧を受けて熱線発射が阻止され、そのまま圧壊されそうになるものの致命傷には至らず、抵抗を始める。
そこで予備作戦であるワイヤーでボンベと共に巻きつけられた膨張式浮上装置を深海で膨らませられたことで急速浮上、超加圧により潰された細胞の再生が間に合わないまま超減圧を加えられたことで、皮膚に亀裂が走り細胞再生エラーにより全身が白く濁った腫瘍のように盛り上がる大ダメージを受けながらも沈黙することはなく、水深800m付近でバルーンを破壊しなおも抵抗を続けた。
一時は人間を作戦失敗にまで追い詰めたものの、「雪風」、「響」、水島四郎の手配によって駆け付けた多数のタグボートの曳航により海面へ引っ張り出される。
遂に浮上したゴジラは出現の前兆たる深海魚達のように減圧の影響で外皮がひしゃげ、全身に膨張により発生した水脹れで覆われ、半ば飛び出した眼も白濁したおぞましい姿になっていた。
しかし、予備作戦をもってしてもダメージが足りておらず、このまま果てることなく咆哮を上げ、背鰭が発光、隆起し始める。
自身をここまで追い詰め、殺そうとした人間にゴジラは激昂。満身創痍なのも構わず彼らに向かって放射熱線を放たんとする。
最早人類側に打つ手はなく、万事休すと思われたが、間一髪のところで「震電」が特攻。放射熱線を放つ直前にゴジラの口腔内に突入し爆散したことで上顎から上が吹き飛び脳まで破壊されついに沈黙。行き場をなくした放射熱線のエネルギーが脆くなった部分から光の柱のように漏れ出しながら内側から焼かれ、体がバラバラに崩壊しながらゴジラは相模トラフへと沈んでいく。
それはまるで「神殺し」のようで、艦上の人々が思わず敬礼をしてしまうような光景であった……。
かに思えたが、深海に沈みゆくゴジラの死骸は脳を失い肉片と成り果てながらも、なお再生し続けており、再び人類の脅威となることを暗示する形で物語の幕は閉じた……。
さらに、銀座襲撃の際に黒い雨として降り注いだゴジラの肉片がとある人物を含め様々な人間に影響を及ぼしていたかのような匂わせもあったが果たして……。
余談
- ザ・ライドのゴジラに似たデザインとなったのは山崎監督のインタビューによると、当初は本作用に水爆のダメージがより露骨に残っているグロテスクなデザインなどを検討していたが、最終的に「理想のゴジラ」を目指してデザインしたライドゴジラを気に入っていた事もあり、その方向性のデザインにしたという。その上で背鰭を狂暴にしたりディテールを上げる、上から見る画の多さから頭部を小さくしたライドゴジラとは逆に人目線から見上げる画の多さから頭部を少し大きくするといった修正をしているとのこと。
- 初期段階のデザインでは「被曝した右半身を完璧に再生できなかったためケロイド状の部分が右半身にまで及んだ」姿や、「機雷で受けた損傷が大きすぎて再生エラーでえぐれた頬が牙だらけの"スカーフェイス"になる」、「海神作戦の減圧による大ダメージでへんな所から手が生えてる」等の被曝による変異や再生能力の暴走を強調したような過激なデザイン設定が考えられたが、監督自身も王道のゴジラを作りたいという思いからボツになり、そこから紆余曲折を経て最終的にディス・イズ・ゴジラを大事にした現在のような形で抑え目になった。
- 外皮や鱗のディテールはワニやハリウッド版のゴジラを参考にしつつ、変異前の鱗や被曝により焼け爛れた様子と異常再生を共存させ、ゴジラ特有の"縦筋の皮膚"を再現したものとなっている。また、背鰭のディテールは海洋生物らしさを出すために貝をイメージし、成長段階で層を成す牡蠣殻を参考にしている。
- なお身長が50.1mなのは、「怖いゴジラ」を目指して初代ゴジラを意識した大きさ (50m) にデザインしたCGモデルを正確に計測したところ10cm大きかったというものであり、他意はないのだとか。
- アーモンド型の目については、シン・ゴジラの眼球と同じく人間の目がモチーフになっている。元々山崎貴は半月型の「ゴジラ目」を想定し人間の目にするつもりはなかったが、モデリングアーティストの田口工亮が何度オーダーされても人間の目にしてきたため、やりとりを繰り返するうちに不気味で何を考えているのかわからない表情を山崎貴も気に入り、人間の目に変更となった。
- 脚が獣脚類のようになっているのは、山崎貴による「着ぐるみのゴジラにできないデザイン」「日本のゴジラは半分神様だから、基本的に首を立てて直立しているもの」→「人間のようには見えないように、脚は獣脚にする」というこだわりによるもので、S.H.MonsterArtsでもシリーズとして初めて足の指が独立稼働する設計になっている。
- そのあまりにボリューミーな太もものデザインから、近年アニメ等で話題を集めたムチムチ太ももキャラクター達と併せ『四天王』と称する風潮も。
- 四天王とされているのは宝多六花 (SSSS.GRIDMAN) 、セセリア・ドート (機動戦士ガンダム水星の魔女) 、ライザリン・シュタウト (ライザのアトリエ) 。脅威のムチムチ率。
- ちなみに監督の山崎貴もそのことは知っているらしく、ライザとゴジラを並べた画像の呟きをリポストしていた。監督何やってんですか。
- 上述の大戸島の場面等で人間を捕食しなかったのは東宝によるゴジラのレギュレーションと同時に人間を捕食してしまうと獣に寄り過ぎてしまう点もあるとのこと。
- なお激しく音割れさせたかのようなエフェクトがかかった咆哮に関しては、わざわざ野球+場 (千葉ロッテマリーンズの本拠地であるZOZOマリンスタジアム) を借りて大音響で音声を流し、それを録音したものを使うことで実現している。
- 映画「ゴジラ-1.0」とコラボしたジャパンモビリティショー2023の主催者企画にも本作のゴジラが登場する。未来の東京の街を表現したエリアで、未来の防災技術を紹介するための背景ストーリー的な役回りで大暴れした。本編のラストでゴジラの復活を示唆していたことから、奇しくも1947年に撃退されたはずのゴジラが復活し未来の東京を襲撃するというストーリーが成立している。
- 本作のゴジラは脳が吹き飛んだ状態でも再生を繰り返すという恐るべき再生能力を見せているが、現実でもイモリが一生を通じて複数回、手足はおろか脳や心臓さえも一部残っていれば、それらすら傷痕すら残さず再生し、機能まで回復することが知られている。それでもイモリは足なら5ヶ月、心臓なら1ヶ月を要するのに対し、ゴジラは50mサイズながら眼球まで含めて数十秒で機能まで取り戻す (速過ぎるためか痕は残ってしまうが) とさらに常軌を逸しており、ゴジラ化に伴い脳が完全に消失した状態から再生を果たしても不思議はないかもしれない……もしもあの状態から再生するのならば、細胞を一片残らず吹き飛ばす事でしか撃破は不可能な可能性もあり、ゴジラ打倒をより困難にすると思われる。
- 上記の熱線の射程は国会議事堂を中心としてこの範囲であるため、皇居もGHQ本部 (第一生命館) も当然被害範囲に含まれる。政府・GHQ・皇室関係者が事前に脱出していない限りゴジラ上陸後の日本は中央の統治機構が一切存在しない本物の無政府状態に陥った可能性がある。
- 本作のゴジラの放射火炎発射のシークエンスが『ゾイド』シリーズに登場するジェノザウラーやバーサークフューラーなどの一部のティラノサウルス型ゾイドが持つ「荷電粒子砲」の発射準備ギミック (主に尻尾の装甲展開) を彷彿とさせると指摘する声がSNSなどで散見されている。
- 劇場用オーディオコメンタリーによると、呉爾羅の白組内での呼び名は「モジラ」だそう。由来は、CGの製作者が文字君と呼ばれているかららしい。また、インタビューなどで変異後のゴジラを成体、変異前の呉爾羅を幼体と表現されることがあるが、監督曰く呉爾羅の時点でちゃんとした成体であるためこの表現は正しくないとのこと。
- 変異の原因が水爆ではなく原爆だと設定されている極めて珍しいゴジラであり、山崎監督からも「水爆大怪獣」ならぬ「原爆大怪獣」と称されている。初代をはじめ殆どのゴジラはビキニ環礁で行われたキャッスル作戦の影響を受けている者が大多数を占める。劇中の防御力からすると水爆なんて食らおうものなら再生の余地なく消滅すると思われるのと (キャッスル作戦で使用された水爆の威力はクロスロード作戦の原爆の1000倍以上とされる) 、本作の設定からして水爆に耐えられるほど強くしてしまうと倒す方法が無くなってしまうためそのあたりの兼ね合いもあると思われる。
- 歴代ゴジラと比べると相当弱い部類に入るゴジラである。第二次大戦当時の機雷で頭が半分吹きとんでしまう、同じく旧式戦艦の砲撃で傷を負う等、ゴジラとしては異例と言えるレベルで防御力が低い。再生能力の高さで補ってはいるものの、そもそもゴジラはその程度の攻撃ではかすり傷一つ負わないのが普通である。肝心の再生能力にしても完全ではなく傷跡が残ってしまう等歴代ゴジラと比べるとお世辞にも強力とは言えない。
- いくら威力があるとはいえ自分の熱線の反動に耐えられないのも異例。確かに熱線の威力は歴代でも上位に入りはするものの、公開当時すでにアニゴジやレジェゴジ等マイゴジ以上の熱線を吐けるゴジラが存在しており、マイゴジの熱線が最強というわけでもない。
- 上記の弱さから一部ではエメゴジと最弱争いができるとも囁かれている。異常なまでのスピードを誇り世界最強とされるアメリカ軍を相手にしてもそこそこ粘ったエメゴジ、非常に高い再生能力ととんでもない威力の熱線を持つマイゴジ、どちらが劣るかは判然としないがどちらにしろ通常兵器で退治できる時点で底辺争いである。GODZILLA1998と並んでゴジラが弱すぎるという点でゴジラ-1.0を否定する声も散見される。
- シンゴジ、アニゴジ、SPと近年の国産ゴジラが設定面で異常なまでに誇張され、モンスターバースのゴジラも作品を追うごとにどんどん強くなっているのは対照的と言える。作品としての都合だけでなく、それらへのアンチテーゼも込められているのかもしれない。
関連商品
- 『ムービーモンスターシリーズ ゴジラ(2023)』
- 『S.H.モンスターアーツ ゴジラ(2023)』
- 『怪獣王シリーズ ゴジラ(2023)』
関連タグ
ゴジラ ゴジラ-1.0 放射線 怪獣 怪物 どうあがいても絶望 勝てる気がしない ︎︎最強の敵 ︎︎人類の敵 祟り神
ギドゴジ:同じく当初は10メートル級の恐竜のような姿で登場し戦時中に人間と遭遇、後に1954年のビキニ環礁以外の核を吸収して誕生するゴジラ。その出自の共通性から、ある意味マイナスワンゴジラの先輩のような存在。
ゴジラ(ゴジラ・ザ・シリーズ):同じく序盤で10メートル級で出現し、後に50メートル級 (こちらは55メートル) へと成長したエメリッヒ版ゴジラの子供。ただマイナスワンゴジラの巨大化は成長というより「変異」といったほうが正しい。山崎貴は1998年版の作品に比較的に好感を持っていると明かしており、本作にも1998年版を意識した様な描写が散見されると国内外で多くから指摘されている。
GMKゴジラ:人類を徹底的に殺戮する凶暴性、強固な皮膚、放射熱線の描写、復活を示唆する末路など多くの共通点がある。監督の山崎貴氏は「山崎貴セレクション ゴジラ上映会」や他の対談にて「『ゴジラ-1.0』は『ゴジラ・モスラ・キングギドラ大怪獣総攻撃』(GMK)や『ガメラ3』の影響下にある」と明言しているのに加えて作中では太平洋戦争がテーマとなっているので意図されたオマージュと考えられる。だが、-1.0のゴジラが「核の被害者」ならこちらは「核を肯定、崇拝しそれを持って日本を破壊する」悪意の化身と言えるだろう。
オルガ:頭部を粉砕されて崩壊する敗北が共通する怪獣。驚異的な再生能力がほぼ共通するが、同作のゴジラに頭部を粉砕された際は本作のゴジラと違って再生の余地がなく完全死滅する。