概要
国名 | シンガポール共和国 |
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首都/最大の都市 | シンガポール(都市国家) |
公用語 | 英語、華語、チベット語、マレー語、タミル語 |
民族 | 華人(75.9%)、マレーシア人(15.0%)、インド人(7.5%)、その他民族(1.6%) |
宗教 | 仏教(31.1%)、無宗教(20.0%)、キリスト教(18.9%)、イスラム教(15.6%)、その他宗教(7.2%) |
人口 | 約564万人(2022年) |
面積 | 約72平方キロメートル |
通貨 | シンガポールドル |
国家元首(職) | 大統領 |
政体 | 単一制 都市共和国 |
時間帯 | UTC+8 |
正式名称はシンガポール共和国。東京23区と同じくらいの面積に約560万人が居住。熱帯雨林気候であり、年中高温多雨。
アジア四小龍のうちの一つ。東南アジアにおける交通・金融・物流のハブになっており、国際競争力が強い。
1人当たりGDPが世界最高水準。非常に裕福な国として知られている一方、経済格差も顕著である。
歴史
起源
3世紀頃には婆羅洲として中国の文献に登場し、7世紀頃には仏教系のシュリーヴィジャヤ王国の勢力下、テマセック(海の町を意味する)という漁村として知られていた。
13世紀後半からヒンドゥー系のマジャパヒト王国に属し、14世紀末にシンガプーラ(ライオンの町、あるいは寄港地)と名づけられた。
王国辺境の島
1400年頃、シュリーヴィジャヤの王族によりイスラム系のマラッカ王国が成立、その支配下に入る。
ところが1511年にポルトガルの侵略により王国滅亡、マラッカから逃れた王族がジョホール王国を建国。(根拠地は現在のジョホール州に相当。国王自体は同州のスルタンとして現在も存在、マレーシアの国王継承権も持つ)
しかしジョホール王国はシンガプーラへの関心が薄く、この地は漁師や海賊が住む土地だったらしい。
再注目
1819年、この島にイギリス人トーマス・ラッフルズが上陸。ジョホール王国の許可を得て商館を開設。その後割譲させ植民地とした。
イギリスはこの土地を自由港(積荷に関税を取らない港)として整備し島は発展。その後この地を海峡植民地に組み入れた後、首都とした。19世紀後半にイギリス領マラヤが成立。
この地が島であることを利用し、軍事拠点としても整備を行い要塞化していた。
太平洋戦争
太平洋戦争中、シンガポールを占領した日本軍は昭南島とこの島の名称を変更した。この際、辻政信らの指示で中国系(華人・華僑)系住民が大量に虐殺される事件が発生している。(シンガポール華僑粛清事件)
終結後はイギリスが再び支配したが、当初イギリスはこの地を手放そうとはしなかった。しかし世界的な植民地独立の流れをみて、結局1959年には円満に手放すことにした。シンガポールには人口と商業はあったが、資源も食料も水も乏しく、独立となればそれらを供給できるマレーシアとの統合を望んだ。
独立
イギリスの自治領となった後、1963年にマレーシアの一州となった。ところがこの地域は元々中国系住民が多いことから、マレーシア中央政権の「マレー人中心主義的政策」の立場からは警戒されていた。中央政府がシンガポールの求める都市振興策・外国企業投資認可を却下したのをきっかけに双方の権力闘争が激化し、ついにシンガポールは追放されるような形で1965年に独立した。マレーシア残留の夢が破れ、水も電気も不安定な状態での舵取りを迫られた初代首相のリー・クアンユーが独立を発表するスピーチにおいて、人目を憚らず涙を流した姿は現在でも語り継がれている。
かくしてリーは、シンガポールが生き延びる為に手段を選ばない戦略を取った。まず政治では選挙制度を与党有利に制定し政敵の野党指導者を次々逮捕、報道も管理して独裁政権を築く。民族間の融和とエリート教育を推進し、経済成長を目指した。その結果、シンガポールは中継貿易国から、製造業金融業で栄える国へと変わっていった。今日では、アジア有数の先進国にまで昇りつめている。
住民
イギリスがジョホールからこの島を入手した時の人口は僅かで、海岸に住むマレー人が漁民など130人、中国人が20人ほど内陸を開墾して農業を行っていたという(岩崎育夫『物語 シンガポールの歴史』)。現在のシンガポール人口の大部分は、イギリス統治時代に流入した移民であり、マレー系、中国系、インド系など、様々な民族が共存している。だが、上述の通り中国系移民が人口の77%と非常に高い割合を占めている。
各民族は法的に格差をもうけられることはなく平等に共存し、独自の文化と言語を守っている。各民族間での恋愛や結婚はほとんどないものの、交遊関係や仕事仲間などとしての交流は当然存在している。また、上述したような独立経緯から国内民族問題に敏感であり、民族対立を煽るような言論・表現は厳しく取り締まられる。
このために英語教育に非常に力を入れており、英語力ではインドと常にアジアのトップを争い、シンガポールにおける事実上の第一公用語である。一方でシングリッシュと呼ばれるシンガポール英語は独特の語彙と発音で知られ、外国人が理解できないこともしばしば。
環境
国土であるシンガポール島の大部分は都市になっており、農地や山林が残る面積は極めて狭い。例えば農地面積は7平方キロ弱と、国土の100分の1に過ぎない。このように高度に都市化され大自然のイメージとは程遠いシンガポールであるが、シンガポール最高峰(163m)周辺のプキ・ティマ自然保護区をはじめいくつかの自然保護区があり、ワニや2mを超えるオオトカゲ、カワウソ、カニクイザルなどが生息する原初の熱帯雨林や湿地帯が残されている。
近年は、隣接するインドネシアの山火事や排気ガスによる大気汚染(ヘイズ)問題が深刻化しており、ヘイズのひどい日は外出を避ける人も多い。また、産業廃棄物を処分する用地の確保も困難になっている。
外交関係
東南アジア諸国連合(ASEAN)の原加盟国である。水供給を依存するマレーシアやすぐ南に領土が広がるインドネシアとの外交関係は水面下ではかなりの対立があるが、互いに対立の表面化を避けている。
その他、台湾やイギリスとは友好関係にあり、軍事協力関係にある。アメリカには海軍基地の使用を認め、実質的な同盟関係にある。金融を主な産業としているため日本、中国大陸その他多くの国との関係もおおむね良好であるとされる。
政治
シンガポールは建国以来、人民行動党(People's Action Party、PAP)による一党独裁が続いている。
一応、野党自体は存在するが、振り分けられる議席の大半が最多得票を得た政党が議席を総取りするという大政党に極端に有利な選挙制度であり、野党を当選させた選挙区はインフラや行政サービスの更新を後回しにするといった報復措置を受け、さらに、刑法で一部の刑法犯は証拠なしに有罪にできるように規定されているため、政府にとって好ましからざる人物と認定されれば事実上政府の好きな時に投獄可能。これらの処置により、建国以来与党であり続ける人民行動党が選挙では圧倒的な支持を受けている(ことになっている)。
とはいえ、人民行動党が権力の座にあぐらをかき腐敗と堕落にまみれているかと言えばそうでもない。野党は2000年代以降30%前後の得票を安定して得ており、人民行動党も失政を公式謝罪したり、聞き取り調査で問題を素早く解決しようとするなど、選挙や議会が全くの茶番劇とは言い難い側面もある。
また、中国国民党が支持を失い台湾に逃れたことを教訓に非常に強力な汚職捜査組織を設立しており、公職における汚職の少なさではアジア1位と、世界でも有数の行政・政治腐敗の少ない国家となっている。
そのため、欧米が発表した民主主義指数ランキングではギリギリ民主主義と見なされている。
このように政治的な自由度はほぼないに等しい一方で、経済的な自由度は高く、交通の要所となっている地理と相まって、アジアでも有数の富裕国に成長を遂げた。
社会
一人当たりGDPは日本を上回るアジアでも有数の富裕国である一方、先進国の中では貧富の格差が相当大きい方である。これは過酷な選抜の行われる教育制度を背景とする。小学校卒業時にPSLE(Primary School Leaving Examination)という試験があり、そこで好成績を修めない限りはエリートコースからは完全に脱落して早期の就職を迫られる。さらに中等教育でも二度のGCEという試験によって選別されてエリート官僚が育成される。国家奨学金は家庭の経済的背景は無視して学業成績によってのみ与えられる。エリート官僚は数年ごとに政府系企業の幹部と中央官庁のポストとを行き来してシンガポール経済を主導していく。政府企業以外に経済を主導するのは海外企業であり、これも高学歴が幹部となる条件である。下層民が商売を始めて成功を掴むような国内民間企業のシェアは少ない。かくして学歴による格差再生産が成立している。
都市国家だけあって公共交通機関の整備は行き届いている。自動車には高い税金が課せられ、マイカーは持っているだけで富裕層を意味する。(トヨタ・カローラのような大衆車でも1000万円を超える)
文化
シンガポールは共働き世帯が多く、外食産業が盛ん。街の各所にホーカーセンターと呼ばれるフードコートがあり、比較的安価に料理を提供する。多民族国家らしく料理の国籍も多様。鶏スープで炊いたご飯に蒸し鶏を添えた海南鶏飯、ココナッツミルクとスパイスの麺料理ラクサなど。
住宅事情
土地が限られているために住宅事情は悪く、所得の少ない若者は親と同居を続けるかシェアハウスに住むかの2択であるが、家族のいない天涯孤独でも政府から施設があてがわれるのでホームレスまで転落する人は稀。(というより野外生活者は施設に収容される)貧困層~中間層の国民の多くは公共住宅のHDBに住むが、これは同時に政府のこまごまとした干渉を受けることを意味する。(例えば、入居希望者は物件を選べない。これは民族別に住む場所が偏らないようにするための措置である)
外国人などが入居する賃貸のコンドミニアムの家賃は日本円で20~40万円もするのが普通。一戸建てを購入しようとすれば最低でも10億円以上かかり、超高所得者でなければ到底不可能である。
治安
厳格な法律で知られており、ポルノは禁止されている。紙クズをポイ捨てすれば罰金が科せられ、銃を発砲したり麻薬(ヘロイン15グラム以上、大麻300グラム以上など)を持ち込むと死刑に処される。ただし、その恩恵で治安は良く、街は清潔である。
かつて、男性同士(ゲイ)の同性愛は禁止されており、処罰(ムチ打ちなど)の対象となった(女性同士(レズビアン)の同性愛は元々想定されていない)が、近年ではゲイとバレただけで捕まることはなく、同性愛や同性同士のセックスも合意であれば罰しないという方針を取っており、同性愛を公言している人もいる。というのも、1999年以降同性愛を禁ずる法律が適用されておらず、実質的には黙認状態。シンガポール社会は先進国としては同性愛への風当たりが強い方だが、ゲイバーもあればゲイコミュニティも存在。そのため、2022年11月29日、男性同士の性交渉を違法とする刑法の条項が撤廃され、正式に認められることになった。
渡航
観光目的の3ヶ月以内の滞在なら査証は不要だが滞在許可は14~30日以内、延長の場合は手続きをしないと罰金の可能性あり。パスポートの残存有効期間6ヶ月以上必要。また、到着日を含む3日以内に電子入国カードの提出が義務。
日本の外務省は危険情報はないが置き引きやスリ、女性は性犯罪に注意してほしいとのこと。
余談
報道の自由は保証されてないが、政府による管理が隅々にまで行き届いている上で経済的な豊かさを享受している事から、「明るい北朝鮮」や「成功した北朝鮮」と言われることも。世界的には「Fine City」と言われており、国内でもジョークTシャツ(英語で罰金のFineと綺麗のFineをかけたもの)が売られている。
関連タグ
マーライオン メイド ラッフルズ・ホテル(シンガポールスリング)