84ゴジラ
ごじら
これまでのゴジラシリーズをリブートし、新たに製作されたシリーズの1作目(そのため、この作品では過去のゴジラ出現は'54年だけということになっている)。
同時に昭和最後の実写ゴジラ映画である。
公開されたのは1984年(昭和59年)だが、5年後の1989年の「ゴジラVSビオランテ」から1995年の「ゴジラVSデストロイア」まで続く「平成ゴジラ」とは世界観がつながっているため、便宜上平成ゴジラの第1作目として扱われている。ただし、登場人物や一部の設定(ゴジラの帰巣本能)などこの作品だけで独立している要素も多い。製作スタッフも後のVSシリーズとはかなり異なっている。このため、より厳密に言えば「VSシリーズのプロローグ的作品」と言った方が適切であろう。
※ただし、「ゴジラvsデストロイア」では、バース島を失いアドノア島を目指すゴジラジュニアや、異常をきたし香港を襲撃するゴジラといった帰巣本能の設定が取り入れられている。
本作に登場するゴジラは原点回帰を目指して「怖いゴジラ」として登場。また、高層化の著しい新宿のビル群に合わせて体長も50メートルから80メートルへと巨大化(だがこの頃の東京には既に200メートル近くの高層ビルが数多く建っていたため、その中に立ったゴジラは初代の時よりもむしろ小さく見えてしまうこととなった)し、顔も咆哮も凶悪な初代をイメージしたものになり、更に猛獣のようなうなり声を追加している(クライマックスにおける火山に転落するシーンにて昭和シリーズで使われた甲高い鳴き声が一度だけ使用されている)。
怖くなったとされるゴジラの顔は、着ぐるみは正面から見ると白目がちで凶悪な三白眼だが、横から見ると「キングコング対ゴジラ」の時のような顔。
本作では更に「サイボットゴジラ」という、全高5m近い大型で各部が細かく可動できるゴジラが着ぐるみとは別に作られ、目や口元、鼻を動かすといった細かい仕草の芝居に用いられた。
このサイボットは着ぐるみとはまた異なる顔つきをしており、こちらは横顔は不機嫌そうな顔だが、正面から見るとどことなく対メガロ~対メカゴジラの時のような可愛らしい面影も残している。
シーンによってまるで別の顔(実際着ぐるみとサイボットは別の顔なのもある)に見えるのも本作のゴジラの特徴である。
上記の「怖いゴジラ」への回帰も手伝い、本作は初代ゴジラのような災害パニック映画的な側面が強い(東宝は、この作品より前に『日本沈没』や『地震列島』といった災害パニック映画を製作しており、それらの作品の影響もあったと考えられる)。このことから初代より後のゴジラシリーズで初めて、敵怪獣との戦いが描かれない作品となった。また、政府の政治動向や人々の混乱、冷戦、核攻撃の恐怖という当時の時代背景も反映されたリアルな描写が多いのも以降のVSシリーズには見られない本作ならではの特徴である。
余談ながら、平成ガメラ3部作や『シン・ゴジラ』を手掛けた名手・樋口真嗣氏は、今作で初めて特撮作品作りに参加している(特殊造形助手)。出来上がった作品自体にはいろいろ思うところがあったようだが、そのおかげで「俺ならこう撮るのに!」とアイディアや情熱が沸き上がり、後の作品作りへ繋がったという。また、現在ウルトラシリーズ(新世代シリーズ)をはじめとした特撮作品の監督として活躍する田口清隆氏も、幼少期にこの映画を観たことがきっかけで特撮作品に興味を持ったという。
このように、後年の日本の特撮スタッフにも大なり小なり影響を与えた作品であり、そうした意味でも非常に重要な作品であったと言えるだろう。
高度経済成長期の果て、潤沢な予算で再現された新宿の高層ビル群のセットはすさまじい規模で、当時の時点の特撮技術の集大成でもあり、一見の価値ありである。
ちなみに、当初のプロットにおいてはミニラが成長したゴジラが主役を務める予定もあったらしい。
伊豆諸島の大黒島が大噴火を起こし、その3か月後、近海を航行していた漁船:第五八幡丸が遭難した。数日後に休暇をヨットで楽しんでいた新聞記者・牧吾朗は行方不明となっていた第五八幡丸を見つけるが、そこには乗組員の無残な遺体と、乗組員を全滅させた巨大フナムシが潜んでいた。自身もフナムシに襲われるもなんとかこれを撃退した牧は生存者・奥村宏を助け出すが、彼はフナムシよりももっと恐ろしい巨大生物を見たという。
病院に担ぎ込まれた奥村に恩師・林田信博士の確認したことによって、巨大生物が30年前に倒されたゴジラの同類であることが判明。これを受けた三田村清輝総理をはじめ日本政府は、この事実を公表すれば世間に混乱が広がると考え報道管制を決断した。スクープをものにできなかった牧は林田博士への取材で奥村の妹・尚子と出会った。
同じ頃、太平洋上でソ連原潜が謎の爆沈を遂げ、ソ連はこれを米軍の攻撃と断じ、ワルシャワ条約機構軍に第一級の戦闘態勢を発令、NATO諸国もこれに応じて警戒レベルを上げ、米ソ関係は極度の緊張状態に突入した。ところが自衛隊の調査でこれがゴジラによるものと判明、米ソ衝突回避のために政府はやむなくゴジラ情報を解禁、米ソの全面戦争の危機は去ったものの、日本にはゴジラ再来の緊張が走った。
ほどなくしてゴジラは濃霧に紛れて静岡に上陸し、井浜原子力発電所を襲撃する。日本政府はゴジラ対策の準備を進め、自衛隊は捜索を強化、林田博士も帰巣本能を利用してゴジラを伊豆大島の三原山火口へ超音波誘導する策を考案、井浜襲撃時のデータを解析していた。
ゴジラが東京湾付近で発見され、各地で疎開騒ぎのパニックが発生。自衛隊が迎撃の準備に入る中、米ソ両国はゴジラに対する核攻撃を主張し、日本に容認を迫っていたが、三田村総理は頑なに要求を拒み、米ソにこれを断念させる。
ついにゴジラが東京湾に出現。水際で自衛隊が迎撃戦闘を行うもののことごとく蹴散らされ、ゴジラを阻止する事ができず東京に上陸を許してしまう。この戦闘のさなか、東京湾に停泊する貨物船を装っていたソ連スパイ船に積み込まれた攻撃衛星との通信装置が破壊され、東京のゴジラを照準した軌道上からの核ミサイル攻撃のカウントダウンが始まってしまう。解除しようとしたソ連情報将校も事故死してしまい、誰も知ることなくカウントダウンは進んでいた。
港区から新宿に達したゴジラにスーパーXが出撃。ゴジラをカドミウム弾で眠らせることに成功する。ところが、ここでソ連攻撃衛星のカウントダウンがゼロになり、核ミサイルが東京に向け発射されてしまう。ソ連側ではミサイルの迎撃、自爆ができず、ゴジラから一転して核攻撃の危機に陥る東京。ギリギリのタイミングでアメリカが迎撃ミサイルを発射し、成層圏で核ミサイルの撃墜に成功、しかしそれによって電磁パルス現象が起こり、各所の電子機器がダウン、そしてゴジラが覚醒した。カドミウム弾を撃ち尽くしたスーパーXはやむを得ず通常兵器でゴジラに応戦するものの太刀打ちできず、遂には撃墜されてしまう。
万事休すかと思われたが、ここで遂に林田博士の超音波誘導装置が作動。作戦は功を奏し、ゴジラは伊豆大島へ移動、爆薬による火山の誘爆で火口内へ落とされていった(死亡したわけではなく、次作にて三原山噴火に伴い復活する)。
初代ゴジラのアメリカ再編集版『怪獣王ゴジラ』同様、今作も『ゴジラ1985』のタイトルでアメリカで再編集版が制作された。日本では『新ゴジラ』のタイトルでビデオが発売された。
『怪獣王ゴジラ』の続編となっており、レイモンド・バー演じるアメリカ人新聞記者のスティーブが引き続き主人公として登場。
30年前にゴジラと遭遇したいきさつからアメリカ国防総省に招かれ、ゴジラの東京襲来を再び目撃する場面が追加。また誤作動した核ミサイル制御装置を止めようとして殉職したソ連軍人が、傷つきながらも発射ボタンを押すという原典とは逆の違う行動をとっているのが特徴。