概要
「ゴジラの復活」とは、84ゴジラの準備稿である。
正確には同作の検討用台本の一つで、完成された作品との共通点は極めて少ない。
1984年に久方にゴジラが映画として復活するにあたり、様々な内容が検討されたが、本稿は「初代ゴジラのリメイク」および「新怪獣バガンとの対決」を描くという、後の「ゴジラVSビオランテ」にも通じる内容になっている。
執筆は、村尾昭氏。
なお、84ゴジラ決定稿に準じた内容の準備稿も、永原秀一氏により執筆されている。
あらすじ
三種の怪獣
日本の御岳山が噴火。カメラマンの村木がその写真を撮影したところ、火柱の中に恐竜のような影が映っていた。
村木は、知り合った女性、阿季子の父親である原子物理学の権威・稲村博士を訪ねると、博士は拉致されそうになっていた。村木と、同じく稲村博士を訪ねていた原子物理学者・ラードナーを見て暴漢は去っていったが、彼らは新エネルギー・レイカニュームに関して何か関係があるものと思われた。その製造法は、稲村博士しか知らないのだ。
同じ頃、諏訪湖近辺で身長60mの猿に似た怪獣、猿神獣が目撃される。
そして諏訪湖には、身長50mの魚に似た怪獣、水神獣も出現した。
村木の撮影した三種類の怪獣を調べた阿季子は、御岳山の影は、竜神獣だと推理。神話に伝わる「三種の怪獣を従える、伝説の魔獣バガン」の出現を予測していた。
ゴジラ出現
一方。太平洋上では、放射能廃棄物の不法投棄をしていた船が、謎の大渦に巻き込まれ遭難。その船員たちは奇妙な洞窟に流れ着き、食肉植物や巨大なダニに襲われ、次々に死んでいったという事件が発生。
唯一の生存者・加賀美の話から、洞窟はゴジラの身体の一部ではないかと思われた。
その調査に、稲村博士たちを乗せた船が現場に向かうが、そこに原子力潜水艦が浮上。先日に博士を拉致せんとしていた男たちが現れる。
銃で脅し、拉致しようとしたその時。ゴジラが出現した。不法投棄していた放射能を餌に、棲息していたのだ。
バガン対自衛隊
北アルプスでは、猿神獣への攻撃が始まった。自衛隊によりトンネル内に追い込まれ、生き埋めになる猿神獣。しかし直後に山が崩れ、竜神獣が出現した。
そのまま飛行し、南へ向かう竜神獣。
自衛隊の猛攻に傷ついた竜神獣は海に飛び込み、海中で変身した。その姿は水神獣だった。ここから、バガンが変身怪獣である事が明らかになる。
成果が上がらないため、防衛庁は最新の「スーパー・ウェポン」のテスト使用を実行する。
戦闘艦隊クラブ・シイザズの攻撃で水神獣の腕を切り裂いたところ、ゴジラが出現した。
バガンは竜神獣に変身し、空からゴジラを攻撃。しかし熱線を受け再び水中に。
水中でゴジラと、火器を搭載したスーパー・ビートルと戦う水神獣。
陸に上陸した後、今度は猿神獣に変身し地形を利用しゴジラを翻弄する。バガンはゴジラを疲弊させて倒すと、勝ち誇り山へと消えていった。
ゴジラ対バガン
暫くして立ち上がったゴジラは、近くの原発に赴き、原子力エネルギーを吸い取り復活する。
やがて、富士山麓へと進むゴジラ。再び猿神獣と相対し、今度は丁々発止の戦いを。
猿神獣は消耗すると、再び海に逃げ込み、水神獣となる。
バガンは、変身するたびにエネルギーを取り戻し回復する事が明らかになる。そして竜神獣に変身し空から攻撃。
だが、ゴジラの猛攻はそれを跳ね返し、飛行能力を失う。
最後に竜神獣の胸部に水神獣の顔と手足が、そして猿神獣の顔と手足も露わにするバガン。
魔獣バガンは、実体を明らかにしてゴジラに向かい、断末魔の悲鳴とともに海中に沈んでいった。
最終決戦
バガンを斃した後、ゴジラは沼津のコンビナートを破壊し海に。その後、伊豆に出現する。
日本中がゴジラに蹂躙される前に、レイカニュームを用いてゴジラを屠る事を、政府は稲村博士に依頼する。しかし博士は、兵器として利用されたくないとそれを拒否。
が、ゴジラに襲われ、その被害を直接目の当たりにした阿季子は、レイカニュームの使用を懇願。博士はそれを了承する。
自衛隊の協力で、軍事衛星からのビーム照射でゴジラを斃さんとする。が、実行直前で故障。
直接現場に赴き修理する以外なく、ラードナーが決死の思いでそれを実行。修理は完了したが、彼はゴジラに踏みつぶされる。
断腸の思いでスイッチを押し、ゴジラへレイカニュームを浴びせる稲村博士。
ゴジラは全身を白熱化させ、そのまま海中に倒れ込み大爆発を起こすのだった。
そこに、ゴジラが出現し、咆哮するのだった。
魔獣バガン
本稿に登場する、ゴジラの対戦怪獣。中国の伝説の魔獣「バカン」をモチーフとした怪獣で、身長は50~60m。
神話において、「三種の怪獣を支配する魔獣」として伝わっているらしい。しかし実際は、三つの形態を有している一体の怪獣であった。
- 竜神獣:御岳山の噴火とともに出現した。ドラゴン、またはティラノサウルスのような姿らしく、飛行能力を有する。
- 猿神獣:諏訪湖にて目撃された、巨大な猿を思わせる姿。陸上で素早く動き、地形を利用して敵を翻弄する。ゴジラですら、その動きの前には消耗させられ、エネルギー切れで活動停止させられた。
- 水神獣:諏訪湖の水中に出現した、巨大な爬虫類・魚類を思わせる姿。水かき付きの手足を有し、水中では敏捷に活動できる。
- 三神獣(仮称):最終決戦時に見せた形態(上記画像)。竜神獣の頭部に、水神獣の手足と頭部、猿神獣の手足と顔を出現させた、キメラ的な姿。ゴジラとの最後の対決に赴いたが、敗れて海中へ没する。
登場メカニック他
本稿には、防衛庁が擁している最新のスーパー・ウェポンが登場する。通常兵器では歯が立たないバガンに対し出撃させ、追い詰めていた。
いわば、スーパーXの原型とも言える。
- ジャイアント・バス:巨大なアーム付きの潜水艦。アームを用い、他の潜水艦を挟み込んで捕獲する事を想定していたらしい。
- フライング・エンジェル:垂直離着陸可能なVTOL機。
- スーパー・ビートル:方向転換が自在に可能で、水中にも突進できる兵器。一分間で武装を百連射できるらしい。
- クラブ・シイザズ艦隊:ロケット発射器、魚雷発射管の争点が可能な艦船。
- レイカニューム:日本の科学者・稲村博士が発見した新エネルギー。詳細は不明だが、強力な兵器に転用が可能。その詳細は稲村博士の頭の中にしかないため、諸外国は博士を拉致せんとしていた。当初は日本政府は、ゴジラを倒すための兵器として転用するように依頼していたが、博士は断っていた。しかし、ゴジラによる被害を目の当たりにした娘の亜季子から、ゴジラを倒す事を懇願。それに心動かされ、依頼を受諾して衛星兵器に転用。ゴジラに止めを刺した(いわば、本稿におけるオキシジェンデストロイヤー)。