概要
全身黒い毛に覆われ、突出した眉と大きな耳を持つ。雄は身長1.5m程度。霊長類の中では最も知能の高いものの一種。和名は黒猩々(くろしょうじょう)。種名はギリシャ神話の牧神パーンに由来
アフリカの森林地帯に家族単位の群れで生活する。昼行性で、夜は木の上や藪に木の葉でベッドを作って休む。雑食性で果実、木の芽、葉、昆虫、小動物(他種の猿の子供も含む)などを食べる。
なお、チンパンジーのメスは、繁殖期に入ると生殖器の周りが大きく膨らむが、その期間は一年の内わずか一週間しかない為、その間の交尾の権利をめぐってオス同士でし烈な争いを繰り広げる。
その交尾は10秒ちょっとですぐさま終わる(交尾の権利を奪おうというライバルや外敵が多いためと思われる)。
チンパンジーとボノボの2種でチンパンジー属をなす。
チンパンジー属はヒトと最も近縁と考えられ、500~900万年前に分かれたとされる。ヒトの主要な風邪ウイルスであるライノウイルスはヒトとチンパンジー属にしか感染しないという特徴がある。
性質
バラエティ番組などで目に付く機会が多いからか賢くて人懐っこそうな動物に思われるが、実際には人間を襲って殺したり、同じチンパンジーを襲って食う(共食い)など、同じくアフリカに棲息するゴリラに比べると性質は荒い。彼らが特定動物に指定されているのは彼らの性質を考えると言うまでもないだろう(ちなみに人間以外のヒト科の動物はすべて特定動物に指定されている。気性が穏やかなゴリラやボノボであろうとも人間よりはるかに強い力を持っており、万が一攻撃されれば一溜りもないので致し方なしであろう)。
映画「猿の惑星」シリーズでは人間に対しチンパンジーが自らを「平和主義」と称し、ゴリラを「暴力的」と語っているが、実際には餌場にたむろしていたゴリラがチンパンジーの接近を察し立ち去るなど、同作のイメージとは真逆の行動をとっている(猿の惑星が人間社会や人種差別問題の風刺的テーマがあるので一種の皮肉かもしれない)。
特に雄は10歳を越すとそれまで人懐っこかった個体でも突如として凶暴化する可能性が高く、現地では危険な猛獣として認識されている。体長は人間よりずっと小さいが、腕力は推定200~300kgとされている。つまり、道具を使わないで戦ったら最後、人間側の勝ち目はないと言ってよい。顎の力も非常に強く、動物の骨や亀の甲羅でも簡単にかみ砕いてしまう。更に人間ほどではないが投擲力もある。
また、相手の弱点や嫌がる事を見抜いて攻撃する性質があり、攻撃対象が痛がり、苦しむ様子を見て大喜びする残忍な一面も併せ持っている。
近年でも志村けんとともに長年テレビに出ていた「パンくん」が、2012年9月6日ショーの公演終了直後、舞台袖にいた女性研修員に飛び掛り、噛み付いて怪我を負わせている他、マイケルジャクソンの飼っていた「バブルス」もマイケルの死後は施設に預けられている。
オス、メスともに子殺しの文化を持ち、他の群れの子ザルを集団で襲ったり、同じ群れの子ザルを殺したりする。いずれの場合も殺した子ザルを食べてしまう場合がある。近年の観察例では徒党を組んだオスが他の群れの大人オスを襲って殺すなどの行動も学会報告されている。
特にタンザニアのマハレ山塊国立公園にて生活するチンパンジーの群れ「Mグループ」は日本の研究者も長らく携わることで20年以上研究が行われており、ボス(アルファオス、序列1位)争いの熾烈さ(1位のオスを下位のオスが集団で殺害し新政権を樹立するなど)や集団生活の様子、中には一種の養子として他のサルの子供を育てる例、アカコロブスなど多種のサルを食べるなど、衝撃的な現象も次々と目の当りに出来た。
特にこれらの様子をバラエティ番組「どうぶつ奇想天外!」などにおいて長年に亘り報道したことで、近年のチンパンジーイメージが一般層にも知れ渡る切っ掛けになったと言える。
なお、この取材・研究開始以来アルファオスやその付近の上位オスとして君臨し続けた同グループの長老オス「カルンデ」が2015年夏を最後に死亡したと考えられているが、長年ほぼ野生下におり群れの争いで生傷も耐えなかったこのオス個体の享年は推定51歳であり、殺害などの目に合わない限りは霊長類の中でも人類に次ぐ特に長寿の種であることが分かる。
このチンパンジーの生態の恐ろしさの最たる例がシエラレオネの保護区で育った「ブルーノ」と呼ばれる個体である。彼は内戦で疲弊した国内の市場で売り買いされていたチンパンジーで、保護区院に保護されて、通常の個体を大幅に超える身長にまで育つ。その中で人間の弱さや施錠の方法を学習、腕力などで勝る自分たちの強さをしっかりと理解し、同じ保護区内で育ったチンパンジーたちを従えるほどのカリスマ性を発揮していく。おまけにその知能は白人と黒人の区別ができていたほどだったとか。
ある時、彼は仲間たちを引き連れて脱走し、観光客の乗る車を襲撃、観光客はあまりのパニックに動転、車は運悪く保護区のゲートに激突してしまい、逃げ場を失った。ブルーノはしめたとばかりに自慢の腕力で車を破損させ、引き摺り出した観光客の頭部や指といった人間の強みであり弱点でもある部位を執拗に攻撃し、運転手の顔を食べて殺したのだった。逃げた人物も追い詰めて袋叩きにした。恐怖はこれだけに終わらず、現在もブルーノは脱走したままだとされている。
近縁であるボノボは対照的に大変穏やかな文化をもつ動物として知られる…どうしてこんなに差が付いたのかというと、ヒョウなどの大型の天敵やゴリラ及びヒヒといった手強い競争相手と生息域が重なったことで大型化・凶暴化する方向へ進化した結果である
このように、近年は粗暴な性格が知られるようになったチンパンジーであるが、知能が高いために繊細で臆病な動物でもある。脱走したはいいものの雨に怯え、動物園職員のレインコートを着せてもらったことで説得に応じ、おとなしく帰園した例もあれば、リハビリを受けて野生に戻される際に人間達に名残惜し気に感謝をすることもある。先述のブルーノの事件でも、大半の仲間は過酷な自然で暮らすことを諦めて施設に自主的に帰るなど、優れた記憶力ゆえに人間を襲う選択を捨てる例もあり、猛獣ではあるが粗暴な面だけではない。「Mグループ」など比較的人間に慣れた集団であれば、襲うことなく個体差がわかるほどの近距離での研究を長期間許していることもその好例といえる。良くも悪くも人間に最も近い動物なのである。
チンパンジーの性質を正確に把握したうえで適切な距離を以って接することは、人間に害をなす面ばかりが目立ち、大規模な駆除の対象となり、大きく数を減らし最悪絶滅した動物達の悲劇を繰り返さないためにも、極めて重要である。
他種動物との関係
主な天敵はヒョウや大型の猛禽類及び蛇類。ライオンやワニに捕食された例もある。
ただし、チンパンジー自身その知能の高さを活かし、天敵をよく観察して対策を講じているため、きちんと統制された群れならば襲われることは少なく、それどころか逆に獲物を奪ったり、こちらから襲い掛かって追い払ったり殺してしまうこともある。
また、ヒヒやゴリラと生息域が重なっている場所もあり、基本的には出会っても互いに干渉せず争うことはないが、ゴリラの群れを襲って赤ちゃんを殺害したケースが確認されている。
チンパンジーをモチーフとしたキャラクター
アニメ
ゲーム
漫画
関連タグ
外部リンク
チンパンジーを主役にした実写コメディー
- 『チンパン探偵ムッシュバラバラ』(オリジナル英語版)
Lancelot Link, Secret Chimp Opening and Closing Theme 1970 - 1971 (With Snippets)