概要
高速の荷電粒子を打ち出して目標を破壊する兵器。
現代においては技術上の制約が大きく兵器としての実用化は困難であるため、事実上SF上にしか登場しない存在である。
ただし、同様の原理自体は既に医療目的で応用が始まっている(後述)。
大まかな原理・性能
「荷電(物体に電気を帯びさせる)した粒子を加速器内で電圧をかけて亜光速まで加速させて放つ」兵器であり、光を増幅・集束させて放つレーザー(光線)とは似て非なるものである。
電荷を掛ける物質は水分子だろうが、金属分子だろうが何でもいい。ただ、粒子の質量が軽いと簡単に威力や射程の減衰を起こすため、出来るかぎり重い金属の粒子である方が適しているとされる。
威力については、兵器として成立するものが完成した場合凄まじいものになると想定されている。
実現できていないため、実際どうであるかは分からないものの、予測として“凄まじい熱を放ちながら照射した物体を原子崩壊によって消滅・溶解する”と言われている。
また強烈な電磁波や、少量ながらγ線などの放射線を放出するとも推察されている。
ただし地球上で使用した場合、磁場や自転の影響で一直線に飛ばないという問題が存在する。
地球上で荷電粒子を直進させるには途轍もないエネルギーが必要であり、やったらやったでその弊害として大量に放出される電磁波と放射線により大気が熱膨張して爆発、味方まで大損害…となる可能性が高く、現代の科学での実現は困難とみられる。
宇宙時代の兵器としての期待は高いが、現時点の技術で兵器として通用する威力のものを製作した場合加速器が巨大なものとなることが予想され、やはり扱いが難しいものになると考えられる。
医療面での応用
前述のとおり兵器としての威力・射程・経済性を備えた荷電粒子砲は実現困難であるが、実は同様の原理で「荷電粒子を飛ばし、目標を破壊する」という目的を持った装置は既に実用化されている。
重粒子線ガン治療と呼ばれる先端医療で用いられるものがそれであり、端的に言うとガン治療に効果があるものの垂れ流しでは人体の健全な部分にも悪影響を大きく及ぼす放射性粒子を亜光速にまで加速し、病巣だけを狙い撃ちすることでガン細胞のみにダメージを与えようというものである。
未だ加速器は数十mにもなる巨大なものであり、費用も莫大なものではあるものの、我々は既にSFの世界に足先を踏み入れつつあるといえるのかもしれない。
主要なSF作品中での登場例
- 古典SF多数:そのまま荷電粒子砲として登場するか、もしくは投射する粒子名を冠して登場する場合が多い。反物質を目標に当てることで対消滅を起こさせる反物質砲も、投射原理に荷電粒子砲同様のものが用いられていると考えられる。
- 機動戦士ガンダム:
原作である小説版の設定では、ビームライフルをはじめとしたビーム兵器は「重金属の粒子を発射する荷電粒子砲」とされている。
しかし、一般に広く知られているアニメ版の設定では、ビームライフルやメガ粒子砲といったビーム兵器はミノフスキー粒子と呼ばれる架空の粒子の持つ「圧縮し縮退させると、質量の殆どを運動エネルギーに変換したメガ粒子になる」という性質を利用して超高温のメガ粒子を亜光速で発射する兵器であり、荷電粒子砲とは原理や特性が全く異なる。
作中に存在するビーム兵器は概ね荷電粒子砲。作中では艦艇や施設用に陽電子破城砲といった陽電子(反物質)を使用したビーム兵器も存在するが、これも通常のビームに集束して発射される。
ポジトロンスナイパーライフルが登場する。ポジトロンとは英語で陽電子の意味(電子はエレクトロン)。
- ZOIDSシリーズ:
デスザウラーや後発の獣脚類型ゾイドの必殺技として有名。
発射されるまでの一連のプロセスは上記と同じ。ただし、ゾイドシリーズで舞台となる惑星Ziには大気中に荷電粒子が普遍的に存在する事から、これを吸入して投射物を得る。
破壊力の高さから作中では最強クラス兵器の一種として扱われるが、カノントータス、ブレードライガーAB、ゴドスなど、機種によってはさほど威力の高くない荷電粒子砲や類似武装を装備したものも存在する。
類似武装として、ノコギリ状の切断波に変換したバージョンである「ビームスマッシャー」や、「プラズマ粒子砲」や「バイオ粒子砲」や「フォトン粒子砲」やエナジーライガーの武装やグラビティザウラーの武装や「マザーバイオの熱線」や「ゲヘナフレアー」などが見られる。
なお、エレクトロンドライバーなどの電撃砲は異なる武装である。
オリジナルではガミラス艦の武装はフューザー砲と曖昧な設定だったが、リメイクでは陽電子を用いた陽電子ビーム砲であることが定義づけられた。威力も強力で第一話では一斉射で村雨型宇宙巡洋艦を撃沈してる他、(なんとか耐え抜いていたとはいえ)旗艦の霧島にも大ダメージを与えている。
地球側も村雨型宇宙巡洋艦と金剛型宇宙戦艦に陽電子衝撃砲(通称ショックカノン)として艦首に設置する形で搭載しており、ヤマトという時代では回想シーンの第二次火星沖海戦において霧島がケルカピア級航宙高速巡洋艦を、村雨型2隻がデストリア級航宙重巡洋艦をそれぞれ一隻撃沈している。ただし地球艦の主機関である核融合機関で生み出す電力では完全に補ず、無理して連射すると機関部が暴走する危険があり(第二次火星沖海戦において霧島は核融合機関を全てショックカノンのエネルギー充填に回し、慣性航法の元スラスターで微調整を行いながら発射した)、莫大なエネルギーを生み出すことができるイスカンダル製の波動エンジンが完成するまでは波動砲のような決戦兵器扱いだった。ヤマトには主砲として搭載され、こちらでもガミラスの標準艦艇をほぼ一撃で撃沈している(ランベアやガトランティスのメガルーダなど損傷を受けながら耐えた艦もいる。ドメル将軍の座乗艦であるドメラーズⅢ世はヤマトのショックカノンを真正面から受けて唯一無傷で耐えた艦である)。2202以降は地球艦隊の標準装備となっている。
2205で登場したボラー連邦の艦艇も格納式の陽電子砲を備えている。
色はガミラスは赤、地球は青白い色、ボラーは黄緑になっている。
- ARMS:キースシリーズの1人として荷電粒子砲「ブリューナグの槍」を使用するキース・シルバーが登場する。
- 鉄腕アトム:反陽子砲として登場。反陽子とは反物質の一種(陽電子に倣うなら陰陽子)。危険すぎるため国際法で製造・使用が禁止されているが、ミドロが沼のトカゲ軍団が勝手に制作。他にも宇宙世紀ブルーノア、スターオーシャン2などにも同名の兵器が登場。
- 勇者王ガオガイガー:廃家電を収束したゾンダーが電子レンジを利用して放った(通称「家電粒子砲」)。このときの様子から荷電粒子は電子レンジのマイクロ波と推測される。
- 仮面ライダーゼロワン:仮面ライダーアークゼロが指から放たれる荷電粒子砲を武器として使用する。
- ポケットモンスター:メルメタル(キョダイマックスのすがた)は腹部のナットから荷電粒子砲を発射できると言う設定。ゲームではでんきタイプのダイマックス技の「ダイサンダー」で再現可能。