概要
『鋼鉄の咆哮』とは、コーエーから発売されたマイクロキャビン制作の海戦バトルアクションゲームのシリーズの総称である。
ゲーム内容は様々な艦船を設計して自分だけの軍艦を建造し、敵艦隊の殲滅や輸送部隊の護衛などの任務をこなしていくアクションシューティング。
サブタイトルの異なる2系統のシリーズがあり、『ウォーシップコマンダー』では自艦を中心とした俯瞰視点、『ウォーシップガンナー』シリーズでは後方視点となり、後者では3Dシューティング(TPS)的要素が強い。
本作の醍醐味の一つとして、艦船の武装や艦橋の配置を自由にレイアウト可能なHLG(後述)と言われるシステムを採用しており、プレイヤーはパズルを組み立てるかのように自由に艦船の設計を行える。
序盤は敵味方共に第二次世界大戦期の軍艦や航空機が主流だが、ボスに相当する超大型の艦船『超兵器』をはじめ、ゲームが進むにつれてミサイルやジェット戦闘機、イージス艦が出現するなどして装備も近代化していき、最終的には波動砲や電磁防壁等のSFじみた兵器までもが登場するようになる。
殆どの作品では、一定条件を満たすと『特殊任務』と題したおまけステージをプレイする事が可能で、基本的に本編をクリアするかクリアの後に階級を一定以上上昇させることでプレイできるようになる。
制作スタッフの遊び心豊富なステージとなっており、シリアス一辺倒だった登場キャラクターや世界観が崩壊し、時にはメタ発言まで飛び出す。
ただし、おふざけ気味とはいえ難易度は通常のステージよりも大幅に高く、例えEasyであろうが生半可な設計の艦船ならば即轟沈してしまう。しかし、入手兵器や補助兵装は高レベルなもの(一部はチートクラスなものまで)ばかりなので、それらを欲するプレイヤーは何回も周回するハメになるだろう。
HLG設計システム
マイクロキャビンが開発した艦船設計システム。大元は同社が過去に開発したシミュレーションゲーム『紺碧の艦隊2』で使われていたものだが、本作ではアップグレードされたものが実装されている。
艦船の武装や艦橋の配置を自由にレイアウト可能だが、無論甲板上に好きなだけ武装を積載できるというわけではなく、重量制限やバイタルパート(防御区画)、更にコンソール版ではパーツ数制限などがある為、それらを考えながら設計する必要がある。
ちなみにHLGの名称は、多くの傑作艦を設計した事で知られる平賀譲に由来する。
シリーズごとの設計可能艦種
駆逐艦 | 全シリーズで開発可能 |
---|---|
軽巡洋艦 | 鋼鉄の咆哮のみ。鋼鉄の咆哮2以降は巡洋艦カテゴリーに統一 |
重巡洋艦 | 鋼鉄の咆哮のみ。鋼鉄の咆哮2以降は巡洋艦カテゴリーに統一 |
巡洋艦 | 鋼鉄の咆哮2以降の全シリーズ。上記の軽巡と重巡が統合されたもの |
航空母艦 | 全シリーズで開発可能 |
戦艦 | 全シリーズで開発可能 |
航空戦艦 | 全シリーズで開発可能 |
潜水艦 | 鋼鉄の咆哮3、ウォーシップガンナー2 |
潜水空母 | 鋼鉄の咆哮3のみ |
超兵器 | 鋼鉄の咆哮3のみ、戦艦/航空戦艦/潜水艦の全5種 |
フリゲート | WSG2のみ。現代駆逐艦の船体がまとめられている。 |
国籍
プレイヤーは新規ゲーム開始にあたって、以下の4つの国籍別生産タイプを選ぶ。
(『ウォーシップガンナー2』のみ国籍の区別なく生産ができる)
日本
全体的にバランスが取れており、特に戦艦が強い。
作品によっては駆逐艦に7連装魚雷を装備可能、大型の魚雷・巡洋艦の高角砲・45cm噴進砲・大型射出機を生産可能と日本だけの特権が多数ある。
空母は性能こそそこそこだが、航空機は性能的に今一つでかなり弱い。初心者向け。
アメリカ
艦船は全般的に平均的であまりクセが無いが、戦艦の性能が低い。
空母の性能はダントツでトップであり、航空機もドイツに次いでかなり強い。
イギリス
駆逐艦や巡洋艦などの小型艦が強めだが、かなりクセがあるタイプ。
これと言ったものがないのが特徴。上級者向け。
ドイツ
船体の種類が少ないが、性能は良く戦艦が強い。ドイツのみ駆逐艦に15.2cm砲が搭載可能。
空母は搭載数が少なく性能もイマイチだが、航空機の性能はダントツで最強。
シリーズ
PC版とPS2・PSP版が発売されており、前者はマイクロキャビン開発、後者はコーエー開発となっている。
鋼鉄の咆哮 ウォーシップコマンダー
PC版
1938年、世界の緊張は極限に達していた。
そこへ提唱された『超兵器』構想。
列強はこぞって超兵器の開発を開始したが、超兵器の完成は世界のパワーバランスを崩し、大きな災いをもたらすのは自明の理だった。
プレイヤーは憂国の士が集い結成された『第零遊撃部隊』の一員となり、超兵器の完成・配備を阻止する為に世界各地を転戦する。
後のシリーズほど敵は多くなく、ゲームバランスが一番良い。シリーズで唯一巡洋艦が軽巡洋艦と重巡洋艦に分かれている。CDはサウンドトラックも兼ねている為、BGMを聞くことが可能。
PS2版
19XX年・・・世界は、巨大軍事組織『テュランヌス』に支配されていた。
プレイヤーは、テュランヌスに対抗するレジスタンスの一員となり戦っていく。
PS2で発売したPC版の移植。若干の仕様変更があり、画面のスクロールが廃止されている為、射程が殆ど機能しないという大問題がある。そのため難易度が非常に高い。更にゲームスピードの上昇、敵の配置が若干違うなどの変更がある。
また本作からはボイスが実装され、被弾すると「○○に被弾!」とボイス付きで被弾箇所を知らせてくれる(PC版では字幕のみ)。またPS2版シリーズのみブリーフィングパートでもボイスが実装されており、ステージによっては敵将が果たし状を叩きつけてくることも。
鋼鉄の咆哮2 ウォーシップコマンダー
PC版とPS2版が発売されているが、初代と違いPS2版はPC版の移植ではない為、内容は全く違うので注意。基本的にPC版の方がやりこみ要素が多い。
PS2版は後に欧米諸国にて『Naval Ops: Commander』というタイトルにて発売されている。
PC版
第二次世界大戦が激化する中、プレイヤーは奇襲作戦のため軍艦に乗務し、目標海域へ向かう途中、突如出現した光に包まれ平行世界へ飛ばされてしまう。
そこで謎の軍艦の襲撃を受け危機に陥るが、『第零遊撃部隊』を名乗る者達に助けられる。
彼らによると、光の向こうの世界では『超兵器』と呼ばれる兵器が出現しており、プレイヤー達が平行世界へ飛ばされた原因もそれにあるという。
プレイヤー達は元の世界への帰還する為、また超兵器による元の世界への干渉を防ぐ為に超兵器から発生するノイズを追って世界を転戦する。
非常にボリュームが大きく、登場兵器は前作を上回る。ストーリー自体も中盤までは第二次世界大戦を基にしているため、作中には「南雲艦隊」、「山本艦隊」、「フレッチャー艦隊」などの史実に存在した人物の艦隊、「沖縄に特攻する大和」や「レイテ沖に向かう西村艦隊」などの艦隊とも遭遇できる。特殊研究機関や重力砲などPC版のみのシステムやアイテムも多い。
前作PS2版で実装されたシステムボイスが逆輸入され、被弾箇所の報告はボイスのみになっている。
このボイスは「副長」として親しまれている。
- 副長:松本保典
PS2版
舞台となる世界では、ウィルシアとナーウィシアという2大国が存在していた。
しかし、突如としてウィルシアが他国を侵略し始め、ナーウィシアの作戦司令部が陥落。
プレイヤーはナーウィシア海軍の兵士として、独自の行動を開始する事になる。
コーエーが開発したPS2版の3作目。
タイトルこそ同じであるが、シナリオは完全オリジナルでシステムも大きく違う。
PS2版の前作であるウォーシップガンナー(後述)のシステムを一部流用している為に3Dになっており、「高度」の概念がある。また、従属艦への指示は全ての作品の中でもっとも充実している。
PC版と比べて兵器の数が少なく、特殊研究機関は無い。
ブリーフィングパートはウォーシップガンナーでは副長あるいはオペレーターがひとりで喋るだけだったが、本作からは副長と通信士、司令部からのオペレーターの3人の掛け合いで進行するステージも見られる。
鋼鉄の咆哮2 ウォーシップコマンダー エクストラキット
「超兵器」を全て破壊した事で元の世界に戻る為の光が発生した。プレイヤーの艦が光の中に入り込む直前、突如として全滅させたはずの「超兵器」のノイズが検出された。プレイヤー達は残った「超兵器」を完全に破壊する為、光への突入を中止し、再び世界を回る。
前作『鋼鉄の咆哮2 ウォーシップコマンダー』のパワーアップキット。新たなステージに加え、従属艦の設計や艦載攻撃艇などの新システムが追加されている。
制限が多いものの、エクストラキット単体でもプレイする事が出来る。
鋼鉄の咆哮3 ウォーシップコマンダー
1931年、南極大陸の新独立国家により「レアメタル」と呼ばれる新合金が発見され、それを利用した新エネルギー発生装置が開発された。列強諸国はこれを用い『超兵器』をこぞって建造、更には連合軍・枢軸軍に分かれて覇権を争うようになった。この状況を危惧した新独立国家はレアメタルを禁輸とするが、列強諸国は新独立国家に対し宣戦布告。プレイヤーは新独立国家の部隊を率いて祖国を守る為、列強諸国と戦う。
PC版としては初の3Dグラフィックを採用。
進行ルートの選択があり、ルートによって登場する敵が違い、進み方によっては敵国と同盟を組むことがある。更にシステム面では、「支援艦隊」と呼ばれるAI操作の味方艦隊の導入や「戦略爆撃機部隊」、「揚陸作戦」の指示などが可能になった。設計面でも「潜水艦」や「超兵器船体」の開発・設計、「航空機の設計」など新しい試みがなされている。
この作品はPC版のみでの発売となっており、2023年現在マイクロキャビン版の最終作。
鋼鉄の咆哮2 ウォーシップガンナー
プレイヤーの率いる艦隊は作戦行動中、突如として謎の光に包まれパラレルワールドへと飛ばされてしまう。
その直後、謎の艦隊から攻撃を受けたが、「解放軍」と名乗るもの達に助けられる。
彼らは現在世界を支配する独裁国家と戦っており、先の戦闘を潜り抜けたプレイヤー艦の手腕を高く評価し、解放軍への参加を要請してきた。2番艦を失ったプレイヤー達は、副長以下クルー全員の賛同により「解放軍」へ参加をし、帝国との戦いに身を投じることとなる。
移植版の初代を除けば初となるコーエー開発の『鋼鉄の咆哮』。
3Dで自分で設計した艦が戦闘画面で再現されるため、迫力がある。
ストーリーはPC版の『鋼鉄の咆哮2 ウォーシップコマンダー』と似ているが、細部に異なる点がある。
この作品はPS2でのみの発売となっている。欧米諸国では『Naval Ops: Warship Gunner』というタイトルで発売された。
ブリーフィングパートはPS2版WSCでは作戦内容の説明はナギひとりが担っていたが、本作からはステージごとに副長かオペレーターが担当するようになった。
ウォーシップガンナー2 鋼鉄の咆哮
PS2版
1939年3月、シベリア東部の小国『ウィルキア王国』で行われていた国防軍と近衛軍による演習中に突如クーデターが勃発、反乱軍は『ウィルキア帝国』を名乗って世界侵略を宣言する。
国王と共に辛くも脱出したウィルキア海軍士官シュルツらは、帝国の野望の阻止と祖国奪還の為に世界各地を転戦する。
コーエー開発の3作目。他の『鋼鉄の咆哮』シリーズと比べるとゲームバランスが異色。特にコーエー独特の無双シリーズの色が強い。
過去作とは違い日米英独4カ国全てのパーツが混合で使える為、設計の自由度は高い。
また、これまで字幕と音声のみの登場だった副長・オペレーターに名前やプロフィールが設定され、3人の副官と関連する3つのシナリオが用意されるなど、ストーリーにもかなり力が入っている。キャラクターデザインは米村孝一郎が担当した。
シリーズで初めて主人公に相当する「艦長」のキャラクターが設定されているのも特徴であり、発売当時は賛否が分かれた。主人公シュルツには「保守派から嫌われている」という設定があるのは皮肉か。
- ライナルト・シュルツ:竹本英史
- ナギ:佐藤朱
- クラウス・ヴェルナー:私市淳
- 筑波貴繁:郷里大輔
- エルネスティーネ・ブラウン:鈴木麻里子
- 天城仁志:藤本たかひろ
- アルベルト・ガルトナー:小林通孝
- フリードリヒ・ヴァイセンベルガー:藤本たかひろ
PSP版
『ウォーシップガンナー2 鋼鉄の咆哮』のPSP移植版。
タイトルが『ウォーシップガンナー2 ポータブル』となっており、いくつかの新要素が追加されている。特に難易度が著しく上昇しており、PS2版をやりこんだプレイヤーでも苦戦するほど。
PSVitaでもダウンロードしてプレイする事が可能。
これらは一つのシリーズではあるものの、PC版の2とEK以外は作品同士の繋がりは無い。
亡国のイージス2035~ウォーシップガンナー~
公式には『鋼鉄の咆哮』シリーズとは認められていないものの、姉妹作品として『亡国のイージス2035~ウォーシップガンナー~』が、映画『亡国のイージス』のメディアミックス商品として発売された。
外伝ではあるが米村孝一郎デザインによるキャラクター、キャラクター設定が行われた主人公、一部BGMやキャスティング、そしてUIなど「ウォーシップガンナー2」と過去作品の橋渡し的要素の強い作品である。
超兵器に類するものとして「ブイ・ウェッブ艦」が登場。HLGシステムを『亡国のイージス』の世界観に落とし込んでリアル調にしたものであり、間接的にプレイヤー艦もまた超兵器という形になっている。
ちなみにシリーズでは副長が担当しているシステムボイスは副長の浅生浩司が昼行灯という設定のためか、通信長の菊政聡美が担当している。
超兵器
『鋼鉄の咆哮』シリーズに登場するボスキャラクター。
巨大戦艦や巨大航空機など、何らかの性能に特化しており、火力や装甲、速力など通常兵器を凌駕する性能を持つ。
詳しくは鋼鉄の咆哮シリーズに登場する超兵器を参照。
イラストや小説の傾向
あまり数は多くないが、オリジナル艦や超兵器のイラスト、シリーズを元にした小説などがpixivには投稿されている。
最終作が発売されてから時間が経っており、勢いが落ちつつあったが2013年4月23日にサービスを開始したブラウザゲーム『艦隊これくしょん』の影響で、現在では超兵器が艦娘化したイラストが多数を占めている。超兵器を味方につけたり、超兵器に対し艦娘と深海棲艦が共闘して挑むイラストや小説が見られる。
関連イラスト
超兵器ヴォルケンクラッツァーの艦娘化、『艦隊これくしょん』とのコラボ絵。