概要
2011年1月27日に開催された「PlayStation Meeting 2011」にてコードネーム「Next Generation Portable」(NGP)の名で発表されたプレイステーション・ポータブル(PSP)の後継機。
2011年6月6日のElectronic Entertainment Expo(E3)でその正式名称を「PlayStation Vita」、本体はWi-Fiモデルと3G/Wi-Fiモデルの2種類が用意されること、仕様、希望小売価格が発表された。
「Vita」はラテン語で、英語の「Life」に相当する単語である(ビタミン=vitaminの語源となった単語)。
性能
タッチパネルインタフェースを本体前後に搭載しており、直感的な操作が可能。
3G/Wi-Fiモデルに限るが、3G通信機能(日本ではdocomoの回線を使用)を有しており、インターネット通信のために別個固定回線を用意する必要がない。
2013年10月10日には、Wi-Fiモデル専用に絞ったPCH-2000型が発売開始された。
薄型・軽量化、専用コネクタの廃止、ディスプレイが有機ELから液晶ディスプレイに変更されるなど、PCH-1000シリーズとの違いは大きい。
同年11月14日には、据え置き型に改修されたPlaystation Vita TVが発売開始された。ただしタッチインタフェースが存在しない等の差異が大きく、遊べないソフトが少なからず存在する。
メモリーカードはPSNのアカウントと紐付けされる。そのため、インターネット接続環境およびPSNアカウントを持たない人は遊ぶ事そのものが不可能という仕組みになっている。(一回紐付けが行われれば、アカウントが停止しない限りはオフラインでもプレイ可能)
メディアプレイヤーとしての機能も健在で、YouTubeをブラウザから、ニコニコ動画を専用アプリから見ることが出来る(2019年12月17日にサービス終了)他、メモリーカードに取り込んだ動画や音楽を再生することも出来た。
主な仕様
CPU | ARM Cortex A9 4コア | 東芝・ソニー・IBMの共同カスタマイズ品 |
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GPU | PowerVR SGX543MP4+ | DirectX 9.x世代 プログラマブルシェーダー対応 |
メインメモリ | 512MB | LPDDR2-S4 6.4GB/s |
ビデオメモリ | 128MB | 恐らくメインメモリと同一 |
ディスプレイ | 960×544ピクセル 有機EL(PCH-1000シリーズ)/IPS液晶(PCH-2000シリーズ) | 静電気容量方式 |
メディア | 専用ゲームカード/専用メモリーカード | PCH-2000シリーズは本体に1GBのストレージを内蔵(ただしメモリーカードとの併用は不可) |
本体
EE+GSやCELL等SCE独自のカスタムプロセッサを搭載していた歴代のPlayStationから一転してCPUにARM Cortex A9、GPUにPowerVR 5XT系統と他の機器でも採用されている汎用的なプロセッサを採用している。
これは製造コストの低下(ひいては本体価格の削減)やゲーム開発を易しくする狙いがあると思われる。
クアッドコアのCPU/GPUに合計640MBものメモリと当時の携帯ゲーム機としては非常に高いスペックを持っており、(単純なマシンパワーこそ劣るものの)PS3/360とほぼ同世代のゲーミングAPIやシェーダ表現が使えるため、PS2〜PS3世代の名作をグレードアップした移植作品も多数発売されている。
これによって据え置き派と携帯派の双方に同じコンテンツを提供することができるようになった。
ディスプレイ
PCH-1000シリーズでは携帯型ゲーム機としては珍しい有機ELディスプレイを搭載。液晶と異なり自発光デバイスであるため色鮮やかで視認性が非常に高く、また液晶ではバックライトの影響で困難だった完全な「黒」の表現が可能。しかし、この自発光による熱が原因で画面に消えない跡(画面焼け)が発生する事がある。
PCH-2000(薄型)以降はコスト削減の為か液晶ディスプレイに変更されている。
ディスプレイはタッチパネルインタフェースとなっており、これによる直感的な操作が可能となっている。本体背面もタッチパッドインタフェースになっているという珍しい構成。
ソフトウェア・メモリーカード
ソフトウェア供給はPlayStation史上では初となるフラッシュメモリタイプのゲームカード(Playstation vitaカード)にて行われる。
ストレージ用のメモリーカードは専用形状のものを使用する(セキュリティ及び品質管理上の観点から汎用メディアにしなかったとの見解がある)が、このメモリカードはソニーのメモリースティック(M2)と互換性があるらしいという報告もある(あくまでそのように推測できる材料があるというだけであり、実際の互換性検証は行われていない)。
ネットワーク
上記の通り、3G通信モジュールを追加搭載し、インターネット接続のために別個回線を用意する必要のないモデルが存在する(PCH-1000のみ)。
日本ではdocomo、アメリカではAT&T回線を使用。契約なしでも使用できるよう、プリペイドプランが用意されている。なお、docomoでSIMロックが行われているためauやソフトバンク、イーモバイルのSIMカードについては使用不可能であるが、docomo系MVNOの3G対応SIMカードは使用可能との報告があり、実際に対応を謳っている業者も存在する。
また、プレイ中はモバイルネットワークを無効化するオンラインプレイ必須のソフトも登場しており、2000シリーズに合わせて3G回線でのオンラインプレイは不可能となっていくと思われる。
その後、docomoの3G回線は2026年に終了することが発表されたため、以降は3G通信ができなくなる。
後方互換
PSPの後方互換にも対応しているがUMDドライブは搭載しておらず、ダウンロード販売のものに買い換える必要がある。ただし救済措置として、UMDメディアで所有しているソフトの場合、PSP側から登録処理を行うことで大幅な割引措置を受けることが可能なタイトルが存在する(UMD Passport)。なお、しばしばPSP互換機能そのものであると誤解されがちであるが、UMD Passport自体は単なる割引サービスであり、理論上はPSPユーザーでも利用可能である。ちなみにセーブデータはPSP版のものがそのまま使用できる。引き継ぎは後述するコンテンツ管理アシスタントを使うことで可能。
2016年3月末日を持ってUMD PassportおよびPSP本体からのダウンロード購入は終了した。(PSP以外の機種から購入手続き可能、かつPSPからのダウンロード自体は継続)
PSP、PS3から引き続きゲームアーカイブスに対応。
ゲームアーカイブスのPSソフトはフロントタッチパネルかバックタッチパネルをL2、R2、L3、R3ボタンの代用とすることで操作の再現が可能。キーバインドはソフト単位である程度変更が可能。
連携機能
VitaとPC間のデータのやり取りは「コンテンツ管理アシスタント」というアプリを使用する。PC側は同名のアプリを別途インストールする必要がある。
同社製PlayStation 3との連携機能は健在、一部はさらに強化されている(DualShock3と同じハットスイッチ付き4軸12+1ボタン構成が再現可能になったため、操作性も向上している)。Playstation 4との連携も新たに対応した。
Bluetooth 2.1 HDRに対応。使用可能プロファイルはA2DP、AVRCP、HSPであり、Bluetooth対応スピーカーやヘッドセットなどを接続して使用することができる。意外な所ではiPhoneも接続可能(A2DP・AVRCP対応、スマートフォンとして認識)であり、接続することでiPhoneのサウンド出力先に設定することが可能になる(が、実際に接続しても送信された音声を聞く方法が無いため意味は無い)。
バリエーション
PCH-2000シリーズ
上記したようにディスプレイが有機ELから液晶に変更され、ボディも薄型・軽量化された。
USBコネクタがMicroUSB(TypeB)に変更となった。これによって、一般的なAndroidスマートフォンと同じ充電器・通信用USBケーブルが使用可能となった。
本体に1GBのストレージを内蔵しており、別途メモリーカードを購入しなくてもセーブデータの保存等が可能。ただしメモリーカードを差すと使用できなくなるので注意。(内蔵ストレージのデータはメモリーカードに移す事になる。)
本体上面のアクセサリ端子が廃止となった。なお、PCH-1000向けとしてもアクセサリ端子に接続する周辺機器はソニー・サードパーティー共に発表されておらず、用途は最後まで完全に不明なままであった。
また、このシリーズに限って購入してから長く使用していると左スティックに不具合が生じる現象が非常に多数寄せられている。
Playstation Vita TV
据え置き型として再設計されており、ディスプレイは通常のHDMI接続のもの、コントローラは基本的にはPS3と同様にSIXAXIS・Dualshock3を使用する。当然ながらタッチインタフェースは使用できないが、対応タイトルではR3の押下によりポインタを表示しタッチ操作を代替できるようになっていることが多い。
詳細はPSVitaTVを参照。
苦戦と最期
満を持してPSPの後継機として投入されたVITAだったが、人気を牽引したモンスターハンターがライバルの任天堂に移籍してニンテンドー3DSのソフトとして「モンスターハンター3G」/「モンスターハンター4」の開発が発表されてしまった(これに関しては、任天堂が買取保障をし、カプコンも任天堂の子供ユーザーを獲得したかったため、利害の一致で移籍となった)ことと、ソフト供給メディアをPSPのUMDではなく専用のゲームカードとしたために豊富なPSPソフトとの互換機能は搭載されなかったことが原因で、既存のPSPユーザーをVITAへ移行させることがなかなかできなかった。
また、PSPがソニー独自規格とはいえ汎用メモリーカードであるメモリースティックを採用していたのに対し、VITAはメモリースティックに対応せず高額な専用メモリーカードが必須としていたことも、PSPユーザーのVITA移行を躊躇させた原因と言われている。
このような状況からヒット作に恵まれず、マインクラフトのようなヒット作の移植が発売された後もVITA専用のキラータイトルが現れなかったこともあって、特に海外では売上不振となり日本よりも先に撤退してしまった(2016年12月末に出荷終了)。
一方、日本国内に限れば、数多くのタイトルがPS4/PS3/VITAで同時発売するマルチプラットフォーム戦略が行われてきたため、VITAは「手軽に購入できる廉価版のPS4/PS3」のような形でゲーマー勢に受け入れられてきた。また、DL配信されているPSP及び初代PSソフトもほぼそのままプレイすることが出来るという後継機としての利点もある。特にPSPソフトに至ってはPSP実機よりもロード時間が短くなったり、右スティックにカメラなどの操作を割り当てることで操作性が向上するソフトも存在する(諸事情で配信終了したものもいくつかあるが)。
リモートプレイを生かして一部のPS4のソフトを携帯機でプレイも可能なのも利点である。
しかし、「VITAでないとできない作品」の数を減らしてしまい、PS4が普及していくのに反比例する形でVITAの普及が滞っていくという、いわゆるカニバリズム現象を引き起こしてしまう。
それでもアンダーテール等の移植作品を発売し、国内市場で頑張り続けていたが、2017年に任天堂の次世代型据え置き兼携帯型ゲーム機であるニンテンドースイッチが発売されてしまう。
スイッチの性能はVITAを大きく上回っており、据え置き機としても使うことができる他、任天堂・サード問わず豊富なキラータイトルの充実っぷりで正にVITAの完全上位互換とも言えるゲーム機だったのだ。実質下位互換のVITAは致命的なレベルでダメージを受けてしまい、市場は急速に縮小していった。
スイッチの価格設定はノーマルで発売当初のVITAと同じくらい、携帯特化のNintendoSwitchLiteが値下げ後のVITAと同じくらい。有機ELはやや値が張るが据え置き機と兼ねていると考えれば破格だろう。
止めを刺されたVITAは2018年9月に2019年内に本体の生産を終了することが発表された。
そして2019年3月2日に完全に生産終了。後継機が発表されることはなかったため、約14年に及ぶ携帯型PlayStationの歴史に幕を下ろすことになった(ライバル機であるニンテンドー3DSは、2019年10月に実質的な後継機であるNintendoSwitchLiteが発売された)。
出荷終了後も新作ゲームは細々と出続けたが、2021年3月に部品枯渇のためアフターサービス受付終了、日本国内では同年7月発売のBrotherhood Unitedを最後に新作ソフトの供給も終了した。なお、全世界では2023年7月21日発売のJet Set Knightsが最後の新作ソフトとなった。
PSPの後継機として期待されたものの最初から環境に恵まれず、最期までシェアを伸ばせずにソニー最後の携帯ゲーム機となってしまったのである。
またswitchによって携帯ゲーム機と据え置きゲーム機が統合され、それによって市場も合併したため、同時に「(単体として)携帯ゲーム機市場」も終了したという見方もある。
余談だが、2021年8月27日にはVITA向けのPlayStation Storeから新規購入が終了となる予定だったが、2021年4月20日に撤回された(PS3®およびPS VitaのPS Storeサービス継続のお知らせ)。
また、生産終了に伴い新品は価格高騰しているため、どうしても欲しい人は高くても新品で購入するか、中古のほぼ新品、オークションサイトの状態が良いものを買おう。
注意点として上記の通りアフターサポートが終了しているため、修理してくれる店を探すか自力で修理するしかない。それでも今から買うメリットとしては他機種に販売されていないゲームを買うこと、デメリットは(修理以外なら)そのゲームがいずれ移植もしくはリメイクされることだろう。
関連タグ
SCEI プレイステーション ソニー PlayStation Vita PlayStationVita PSVita
ニンテンドースイッチ:HDMI出力を除き、特徴が似ている(特にlite)。また、Vitaとは逆にips液晶→有機ELモデルが登場。
PSPgo:PSPからUMDドライブをオミットした機種。言わばヴィータのプロトタイプ。