ミノフスキー粒子
みのふすきーりゅうし
もしミノフスキー粒子が発見されていなければ、宇宙戦争などというものは遠距離からの誘導ミサイルの撃ち合いで終わっていただろう
ガンダムシリーズに存在する粒子。
基本的に宇宙世紀作品に用いられる用語ではあるが、∀ガンダム、機動新世紀ガンダムX等にも関連用語が用いられている。
ガンダムシリーズ初代作の『機動戦士ガンダム』で、「広範囲に電波障害を引き起こす粒子」として登場した。この粒子を大量に散布することで、現実世界でのチャフのようにレーダーや無線通信を妨害することができる。しかし我々が知るチャフなどよりも強力で、なおかつ効果が長期間持続する。
作中では、この粒子のせいで戦場での長距離の索敵が不可能となったという設定になっており、モビルスーツによる有視界戦闘(当初はむしろ白兵戦)の必要性に説得力を持たせている。
『機動戦士ガンダム』の放映時はこれ以上の特殊な性質を持つ粒子ではなかったのだが、のちにビームサーベルの形やホワイトベースが重力下で浮遊出来るのもミノフスキー粒子の性質を応用したものと後付け設定がされるようになる。
そして現在でも、ガンダムシリーズで「現代人の科学の常識ではありえない現象を起こすトンデモ兵器」が出てきた場合、それはミノフスキー粒子を応用しているからだとされることが定番となっている。
名前の由来は「トミノスキー(富野監督が好きな設定)」だとか。
ガンダムシリーズにおける類似の存在として機動戦士ガンダム00のGN粒子、ガンダムビルドファイターズのプラフスキー粒子などがある。
GN粒子に関してはミノフスキー粒子では後付であった「トンデモ兵器は粒子のおかげ」という部分をさらに昇華させ、当初からそう設定させているが、粒子の実用化とモビルスーツの登場の順番が逆となっており、誘導兵器が高度化した世界において有人兵器が闊歩する理由付けに関しては別途に用意されている。
スター・ウォーズのミディ=クロリアンを始め、銀河英雄伝説のゼッフル粒子やアーマード・コア4のコジマ粒子など、作中描写を成り立たせるための新物質等の発見はSF作品において珍しい事ではない。
ジオン公国の物理学者トレノフ・Y・ミノフスキーによって発見された粒子。
散布する事で電波障害を起こして無線機やレーダー等の電子機器を無力化するこの粒子は、非常に持続性のあるレーダー撹乱幕としての効果が認められている。
一年戦争開戦当初、ジオン公国軍はこの粒子を用いて情報能力を駆使した長距離からのビーム兵器による艦砲射撃や誘導兵器などを主な戦術とした地球連邦艦隊の攻撃手段をほぼ封殺。ここにAMBACによる高い運動性と対艦兵器による火力を両立させたモビルスーツを投入することでジオン軍は圧倒的な勝利を得た。
このミノフスキー粒子の実用により、戦争技術は情報面において第二次世界大戦レベルにまで後退するに至っており、また、この影響により宇宙世紀では長距離での通信には主にレーザー通信や発光通信が用いられ、これが発展することになる。
近距離の通信に於いては、人やモビルスーツ同士を接触させる接触回線(お肌のふれあい通信とも呼ばれる)による通信が基本となり、モビルスーツによっては備え付けられたワイヤーを使い接触回線通信を開く事もある。
また、宇宙世紀のメディア技術が磁気テープやフィルムカメラ程度で停滞しているのも、ハードディスクやデジタルカメラがミノフスキー粒子の影響を受けるためであり、ジャミング効果も含めて携帯電話の類も一部の地域を除けば実質使用不可能である。
ミノフスキー粒子は「Iフィールド」と呼ばれる特殊な力場の形成も可能で、この力場により放射線隔壁が薄く済み、核エネルギーから直接電力を発生させる事が出来る為に別途に発電機(蒸気タービンや蒸気の素である水)を用意する必要も無くなった「ミノフスキー・イヨネスコ型熱核反応炉」はMSに搭載できるほどの小型化が可能となった。(詳細はこちら)
またIフィールドによってミノフスキー粒子を縮退する事でメガ粒子を生成させ、それをバレル部で収束してメガ粒子砲として撃ち出す事も出来る。
Iフィールドを用いたIフィールド・バリア、ミノフスキー粒子を電子の格子状に整列させる事で斥力による不可視の足場を形成するミノフスキー・クラフト、ミノフスキー粒子をエネルギーフィールド内に封じ込めその反作用によって推進力を生み出すミノフスキー・ドライブ等、その技術の多くは軍事技術に転用されており、宇宙世紀が終焉を迎えた後に於いても、ミノフスキー粒子とそれを応用した技術の有用性は続くことになる。
ミノフスキー粒子の振動伝達を応用した「ミノフスキー通信」を介することで、通信が妨害されるミノフスキー粒子散布下でもサイコミュを使えばニュータイプの精神波(緊張状態にあるニュータイプが意思伝達する際に発する特殊な脳波で感応波とも)による遠隔操作が可能になる。これによって無人ビーム砲台(ビット、ファンネルなどと呼ばれる)などの多数の攻撃端末による攻撃等が可能になる。
また、Ζガンダムのビームサーベルがパイロットの感情に反応して巨大化した現象も、パイロットの強力な感応波がZガンダムのバイオセンサー(簡易的なサイコミュ)によりメガ粒子を構成するミノフスキー粒子に干渉したためとされる。
その他にも、(ミノフスキークラフトの小型化に成功する以前に)重力圏でビットを飛ばしていたのも、サイコミュを介したミノフスキー通信により、周辺のミノフスキー粒子を振動させ、偶発的にミノフスキー・クラフトと似た現象(ミノフスキー共鳴力場仮説)が発生したためとされる。
(とはいえ、身も蓋もないことを言えばこういったパイロットの感情発露によるシーンは娯楽である以上、アニメ的な演出が優先されているため、矛盾や後付けも多いのだが…)
宇宙世紀の次の時代であるリギルド・センチュリーに於いても、ミノフスキー粒子は用いられている。
科学技術の発展が禁じられているこの時代に於いてミノフスキー粒子による通信妨害効果は、実戦での接触回線以外の通信方法を封じており、戦闘では接触回線やジェスチャー等で行動を指示する事も少なくはく、また長らくモビルスーツの軍事利用が禁じられていた事もあり、レーザー通信関連技術や通信用ワイヤーといったミノフスキー粒子散布下に於けるモビルスーツ運用ノウハウはリセットされているに等しい。
また、キャピタル・タワーの構造を支えるミノフスキー・マグネットレイ・フィールドもまたミノフスキー粒子を応用したシステムであり、大気圏上層部に発生する電力をケーブルで吸収し、力場を発生させるエネルギーとしている。
正暦(コレクト・センチュリー)に於いては、ミノフスキー粒子を用いたIフィールドの発展形技術が発掘もしくは開発されている。
∀ガンダムやスモーのIフィールドビーム駆動、IFジェネレーターなどがそれにあたる。
また、ミノフスキー粒子を無力化する「7th-GMPT」と呼ばれる技術もあったが、∀建造時に開発は難航しオミットされたと言われているが、一説にはウォドムにも用いられていたとされる資料が存在する。
ある意味で宇宙世紀ガンダムの根幹を成す設定とも言えるミノフスキー粒子だが、劇中では存在が意識されて物語に影響が出ることもあれば、たまに思い出したように言及されるとき以外はほぼ完全に忘れ去られているようなこともある。
作品によってその扱われ方には随分と差があり、ミリタリー描写として無線通信が途切れる、自軍で散布する、無線が使えないので接触して通信する、有線のミサイルを使用する、といった描写がある一方、特に何の障害もなく無線通信が行えたり、無線誘導ミサイルを使用したりすることも多い。
どちらにしても無線通信や無線誘導が問題なく使えても艦船や戦車や航空機はモビルスーツには手も足も出ない描写は不変であり、これは人型兵器アニメ無言のお約束となっている。
ただし、ミリタリー・戦争を扱う作風上、それらの知識を全く無視するわけにもいかないようで、ミサイルの誘導等に多く使用されることを考慮してかミノフスキー粒子は電磁波だけでなく赤外線もシャットアウトするという設定も後年付け加えられている。
つまらない話をしてしまうと、現在の時点で既にカメラを用いた画像誘導方式のミサイル、レーザーの反射光を捉えるレーザー誘導のミサイルが存在するため、赤外線まで封じたとしても誘導ミサイルを完全に無効化することは難しい。一方でこのような方式はレーダーと比べて視野が非常に狭く、近距離か終末誘導でしか使えない。
また空気の無い宇宙空間では数万~数億kmの彼方までくっきり見えてしまうため、宇宙戦艦が存在するのならむしろそちらが猛威を振るってしまいそうなモビルスーツにはつらい現実が待っているが、前述の通りそこはお約束なので突っ込んではいけない。
宇宙世紀 モビルスーツ Iフィールド ミノフスキー・イヨネスコ型熱核反応炉
機動新世紀ガンダムX:大戦中に軍がばらまいた粒子のせいでいまだに通信障害が起きているといった台詞があり、劇中においてミノフスキー粒子のようなものが存在する描写がある。