概要
機動戦士ガンダムから三年後を描いたオリジナルビデオアニメーション作品。
『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』が好評だったため製作されたガンダムOVA第2弾。
機動戦士Ζガンダムにおける地球連邦の組織ティターンズの結成に至るまでの過程を描いており、「1st」と「Ζ」の空白の時間を埋める作品となっている。
他のOVAと同じく富野監督が関わらない外伝だが、ストーリー内容は上手く本編を補完したものになっており非常に好評。
物語は「Z」に繋がるという事もあり、「地球連邦軍=正義の味方」という描かれ方ではなく、事態を過度に楽観視した挙句大きな被害を出したりあろうことか敵と癒着するなど初代より更に連邦軍上層部の腐敗に関して徹底した描写がされている。
また一方で、敵側のジオンの残党であるデラーズ・フリートでは愛国心に基づいた大義に殉じる男らしい描写が目を引くが、自らの理想に自己陶酔して犠牲を顧みず目的こそ完遂したものの逆にスペースノイドを更なる苦境に立たせる結果になってしまう等、一見かっこよく見える「大義や理想に過度に拘泥する者」が持つ負の側面も同時に描かれている。前半OPテーマ『The Winner』の歌詞「勝利者などいない 戦いに疲れ果て」がこの作品のストーリーテーマを端的に表していると言える。
また、一部の機体は時代設定からすると過大な性能を擁するが、最終的には地球連邦軍の不祥事隠しのために、ガンダム開発計画そのものが抹消され、設定的には後年にあたる『機動戦士Ζガンダム』初期の機体より本作品の機体の方が高性能という矛盾を解消させている。
最終巻のリリース直前にはストーリーを1本の映画にまとめた劇場用再編集作品『機動戦士ガンダム0083 ジオンの残光』が公開された。このためただでさえ高水準にあった作画のクオリティは後半には劇場の大画面にも耐えうるよう更に向上し、最早劇画のような顔つきになった登場人物の描写は後年の作品のセルフパロディにも取り入れられるなどファン・公式問わずネタにされている。
また、コミカライズ作品にはOVA展開当時に『コミックボンボン』で連載されていた『機動戦士ガンダム0083 スターダストメモリー』と後年の描き下ろし漫画『機動戦士ガンダム0083 星屑の英雄 OPERATION STARDUST』、『ガンダムエース』で連載された『機動戦士ガンダム0083 REBELLION』が存在する。いずれも一部の登場人物の生死が異なっており、REBELLIONでは後年製作された作品である『機動戦士ガンダム 第08MS小隊』と『機動戦士ガンダム MS IGLOO』の登場人物や兵器がゲストとして登場している他、ティターンズ結成後の登場人物を描いたスピンオフが現在連載中。
物語
一年戦争が終結して3年、地球連邦軍再建計画に基づきガンダム開発計画が提唱され、その試作機であるガンダム試作1号機、ガンダム試作2号機が性能テストのためにオーストラリアのトリントン基地に搬入される。しかし、ジオン軍の残党がこの情報をつかんでおり、核兵器を搭載したガンダム試作2号機を強奪せんと基地を襲撃する。
かつて「ソロモンの悪夢」と呼ばれたジオン軍エースパイロット、アナベル・ガトーがガンダム試作2号機を強奪。だが、脱出を図る2号機の前に、連邦軍新米テストパイロット、コウ・ウラキが乗り込んだガンダム試作1号機が立ちはだかり……。
全体的な内容の矛盾やご都合展開について(※ネタバレ注意)
本作品は様々な面で矛盾点があるとされている。特にヒロインであるニナ・パープルトンの描写の矛盾点では誰が見ても気づくレベルとされている。
本編の内容として、ニナには元彼がいて別れてしまったが、その人物との再会を望んでいることが5・6話で描写される。
そして物語の終盤ではその元彼と再会し、波乱がもたらされるストーリーになっている。
しかしよく本編を見返すとこの元彼とニナは終盤以外でも既に作中で会っているシーンがあり、
その時のニナが悲しむどころか何の反応も示していないという描写がかなり不自然だと指摘された。艦内でも話題になっているのにもかかわらず、これはキャストや他のスタッフも矛盾として指摘していた。そのくせ後半では急に悲しみ始めるので唐突感がある。
なお、ニナの矛盾が起こった理由には様々な解釈がなされていて、長らく有力だった説として本作の折り返し地点となる第七話を境に監督およびメインスタッフが途中交代しており、この交代が作品に少なからず影響を与えたとも言われていた。
しかし、後半の監督を務めた今西隆志は第2話から共同監督として制作に関わっており、また降板した加瀬充子が制作に関わっている時点で差異が生じ始めているため、監督交代が影響しているという説は近年では信憑性に欠けるものとなっている。
交代の影響が全く無いとは言い切れないものの、ガンダムシリーズの制作現場の混乱やスタッフの交代自体は初代を始めガンダムW、08MS小隊など、その後の作品でも枚挙に遑がない。
単純に本作は他のOVAと同様に長期間に渡って制作を行っているため、ニナの描写の矛盾は以前のストーリーを忘れていたからという可能性の方が高いかもしれない。
ニナとガトーの恋仲設定はガトーの質実剛健さに影を落とすことになっており、3年の間にやることはやっているという案外ちゃっかりとした人物に見える羽目に。
他にも、シナプスが指揮するアルビオン内に格納されていたガンダムを盗まれる展開になったおかげでアルビオンの警備問題が指摘されたり(劇中で強調されているのはトリントン基地の警備のガバガバさであるが)そもそも「連邦軍の警備はガバガバだからすんなりガンダム強奪出来る」という想定の元作戦を行うというそれ自体、リスクが大きすぎて無理筋である。オービルというスパイの存在がありきとしてもガンダム強奪に導くための人材や人数が足りない。これで成功するこのご都合主義に巻き込まれて無能呼ばわりされてしまうアルビオン関係者及びシナプスは流石に可哀想と言わざるを得ない。
シーマにしても本編中では終始自己保身を主に考えている女豹、というテンプレ悪女として描かれているのだが、外伝で同情的に描きすぎたせいで本編の部下すら平気で切り捨てる冷徹さとの矛盾が発生している。また、ワイアットとの密会前にはかなりデラーズ側に有利になる交渉等を持ちかけている。
なお、監督などの交代理由については、あらゆるメディアにおいて一切触れられないため詳細は不明だが、事実として本作完結(1992年9月)から一年半後の1994年4月に、サンライズは経営継続困難を理由として、バンダイ(現バンダイナムコ)に吸収合併されている。
キャラクター
地球連邦
アルビオン
アルファ・A・ベイト (CV : 戸谷公次)
ベルナルド・モンシア (CV : 茶風林)
ウィリアム・モーリス (CV : 巻島直樹)
ジャクリーヌ・シモン (CV : 荒木香恵)
トリントン基地
ホーキンズ・マーネリ (CV : 阪脩)
その他・上層部等
グリーン・ワイアット (CV : 田中秀幸)
ジャミトフ・ハイマン (CV : 西村知道)
デラーズ・フリート
ウォルフガング・ヴァール (CV : 岸野一彦)
デトローフ・コッセル (CV : 掛川裕彦)
ヴィリィ・グラードル (CV : 稲葉実)
民間人、アナハイム・エレクトロニクス
ピーター・パープルトン (CV : 岸野一彦)
メカニック
地球連邦
ガンダム試作3号機 ステイメン
艦船
デラーズ・フリート
プロトタイプ・リック・ドムⅡ
ゲルググ(アナベル・ガトー専用機)
ゲルググM(シーマ・ガラハウ専用機)
艦船
主題歌
OP1(第2~7話)「The Winner」
OP2(第8~12話)「MEN OF DESTINY」
ED1(第1~7話)「MAGIC」
ED2(第8~13話)「Evergreen」
関連イラスト
関連タグ
シリーズ
機動戦士ガンダムF91←機動戦士ガンダム0083→機動戦士Vガンダム