解説
元あった初期設定に後から追加で設定を付け足すこと。
連載漫画などだと、連載が思ったより長期化したときや、話の展開上そのままでは矛盾等が生じると思った時に後付けをしてフォローする。ゲーム、映画等でシリーズの作品数が増えた時なども後付け設定がよく出て来る。シリーズものの続編で明かされる設定は(スタッフがあらかじめ構想を練っていなければ)まず大抵が後付け設定となる。
実写作品の場合は役者の都合やその他の大人の事情から仕方なく設定変更したり、後付け設定をしたりすることもある。
もちろん、あまりに露骨過ぎれば興を削ぎかねないし、後付け設定で新たな矛盾が発生してそのフォローのために後付け設定を繰り返した結果、「ストーリーが迷走している」という印象を抱かれる場合もある。
過去作との設定の矛盾が発生した作品は「パラレルワールド」扱いになる事や後付け設定によって起きた矛盾を解決するためにまた新たな後付け設定を付け加えるというケースもある。
後付け設定が特定のメディアが初出だったりするのも混乱の要因となり、基本的に漫画や児童誌、舞台初出の設定はその場限りの設定として(あるいは信ぴょう性のない情報として)流されるのが常だが、稀に公式の設定に輸入されたりする事があるのである。
ただし、後付けのやり方が上手いと、さも前から張っていた伏線のように話を盛り上げることができるので、程度の問題ではあるが、後付け設定によって作品世界にも広がりが生まれるため、作者の腕が試される部分でもある(ただ、後付け設定が巧妙過ぎて、改めて作中で提示した初期設定の方を「後付け設定」と評価されてしまう例もあるが……)。
ジャンプ黄金期の作品は毎週のアンケート競争が激しかったため、長編の連載をあらかじめ見越した作品作りよりその場その場の勢いや流れを重視した作劇を重視する傾向にあり、特にこうした後付け設定が多く見られた。しかし後付けをさも「実は最初から考えていた展開だったのだ!」と言わんばかりの図々しさもまた作品の勢いをつけるためにも大事であり、その塩梅も作者の腕の見せ所だったのである。
またアメコミの場合は「キャラの版権は会社が所持し、場合によっては作者を交代させ続きを書かせる」といった事情のため、後付け設定が非常に発生しやすいので、死んだキャラが生き返るなど日常茶飯事である。
他の作品で例えると
後付け設定がバンバン登場するシリーズの代表格である『ウルトラシリーズ』の例を挙げてみよう。
『初代ウルトラマン』と『ウルトラセブン』も元々は互いに世界観の繋がりがない作品であり、マンは漠然と近未来、セブンは1980年代の設定であった。
しかし、『帰ってきたウルトラマン』制作に伴い両者は世界観が繋がっている扱いになり、さらに『タロウ』や『メビウス』では作中の年代=放送当時という事になった。
これ以降も実は古代の日本に光の巨人が降臨していた!だの、ウルトラの父やウルトラマンタロウには親友がいたんだよ!といった後付け設定が次々と増えていった。
なお、『ウルトラマン』のその後を描いた『ウルトラマン怪獣伝説 40年目の真実』やウルトラセブンのその後を描く『平成ウルトラセブン』のような後付け設定がない(=その後のシリーズとは繋がっていない)作品もあり。そうした作品でも後付け設定が出てきてしまうのはご愛嬌。
後付け設定の例
- 本名
キャラクターのフルネーム。キャラクター紹介はあだ名や暫定的な名前(〇〇の父、学校の先生)しか無かったが、作中でひょんな事から本名が明らかになるケースもある。(例:磯野波平、磯野フネ、カカロット)
中には意図的に本名が設定されていないキャラクターもいる。
- 家族・親戚
実は兄弟・姉妹・配偶者等が居た(例:ウィル・A・ツェペリ、両津勘兵衛、擬宝珠夏春都)。
- 出生・正体
実は特別な家系の生まれであったり、異界人だったとか(例:南夕子)。
- 血縁関係
ある意味上記3つの複合形とも言えるパターン。既に登場していたり名前が言及されていた重要人物が、実は他の人物の祖先・親・兄弟姉妹だったなど(例:ダース・ベイダー、レイア・オーガナ)。
神話の時代から例は数多く、ギリシャ神話において後付けに次ぐ後付けによって様々な神や人物の祖先という事にされまくったゼウスなどはその極端かつ顕著な事例と言えるかもしれない。
- 親の交友関係
主人公の親と別キャラの親との交友関係があるというもの(例:タクマ・サカザキから見た草薙柴舟とジェフ・ボガード)や実は親友が存在していたというパターン(例:ウルトラの父から見たウルトラマンベリアル、ウルトラマンタロウから見たウルトラマントレギア)。
- 先輩・後輩・同級生
学園ものの続編で多くありがちなものだが、前作では姿形も一切登場しなかった後輩や同級生が続編で登場し、その様子がないにもかかわらず前作キャラやその周囲と絡みや交流があったというもの(例:ユウナ・クロフォード)。あるいは、前作では未登場で、前作キャラクターとの関わりはあったと思われるが一切語られないもの(例:まーりゃん先輩・羽根崎美緒)。
- キャラデザ
キャラクターの設定だけなら古くから存在していたが、後の作品に本格参戦するに辺り、デザインが書き起こされたパターン(エンペラ星人やパラドキサアンデッドなど。ただ、後者は事情がちょっと違う)。
他にもベースとなる世界観の設定が固まっていくにつれて過去作に登場していたキャラクターデザイン+CV+一部設定が上書きされるというパターン(Fateシリーズのフィン、マーリン、モードレッド)もある。また、ウマ娘では上記2パターンの典型ではあるが、キャラクターの元ネタの所有者である馬主の許可が下りてからデザインが書き起こされることが多く、現在も一部有力馬主の許可が下りないためお蔵入りのキャラクターもいる。
- キャラクターの総数
例えば、「この世界では〇〇匹存在する!」と定められていたが、実はそれを遥かに超える種が世界に存在していた事になっているというパターン。言わずもがなポケットモンスターの事であり、現実世界の延長線だった世界観も第3世代辺りから設定が見直されるように。
- キャラクターの生存
過去作では確実に死んだとされていたはずなのに実は生きていた事になっているパターン。
先述のようにアメコミではあるあるな現象である。
作劇の都合上から生かさざるを得なくなったというのがよくある例で、例えば永井豪先生の「激マン!」によれば、『デビルマン』の飛鳥了は作中で死ぬ予定が、まさかの生存していたという設定となり、とんでもない正体を提げての再登場を果たしている。
- 世界観
過去作とはパラレル設定で作っていたが、現行作品や後続の作品で過去作のキャラクターがゲスト出演する事で実は繋がっていたという事になってしまうパターン。例えば、元々は独立した世界観だった『仮面ライダーBLACK』が『仮面ライダーBLACKRX』で10人ライダーが登場した事でそれまでのシリーズが繋がっている事になったという例がある。
- ロボットなどのメカニック
デザイン上の差異やバリエーション展開など、上述したキャラデザや血縁関係などに類似したものもあるが、「量産型は存在しないとされていた機体の量産型が登場」「製造されていないという設定だった機体が実は製造されていた」といったパターンは、ガンダムシリーズのゲームや漫画においてよくある現象である。また、過去作の出来事をスピンオフや続編で掘り下げた事により、ある戦いにおいて原作では参加していなかった兵器が実は参加していた、というものもある(例:オデッサ作戦)。
関連タグ
パラレルワールド/マルチバース:後付け設定のある世界観とそうでない世界観を共存させる際の便利なワード。
ゆで理論 - ジャンプ黄金期における後付け設定の代表格。時にはあまりに勢い任せが過ぎて語った直後に否定するような場面につながり矛盾が生じることも。新シリーズ以降では当時読者だった担当協力の元、そうした設定を拾い上げ新たな伏線に発展させている。
ミノフスキー粒子 - 元々はロボットプロレスの為のレーダー無効化能力しか無かったのだが、その後「不思議な事は全部ミノフスキー粒子の所為にしておけ」とばかりに、後付け設定がもりもり追加されている。
TYPE-MOON - 奈須きのこ氏が設定変更をよくやる事で有名であり、シェアワールドとしての側面がある以上、彼の一存で同業作家が大混乱を起こしてしまう(おまけにファンが忘れていた頃に裏設定を持ち出すので更に混乱する)。