概要
漫画や小説、アニメやゲーム等の、作品内で明かされなかったが制作者の間で存在している設定のこと。
例えばキャラクターの身長、体重、誕生日など未公開のパーソナルデータや、作中の世界での過去(あるいは未来)の出来事、本編中で交流がなかったキャラクター同士の関係性などが挙げられ、物語の本筋に大きく関係しないちょっとしたトリビアから、世界観や続編のストーリーの根幹に関わる重要な要素となっているものまでさまざま。
裏に隠された設定ということで裏設定と呼ばれる。
基本的には正式に設定されつつも作中で明かす機会がなかった設定、もしくは演出上敢えて伏せられた設定のことであり、没設定とは異なる。
例えば、ある漫画に登場するキャラクターの体格について、作者は身長を「Aというキャラは180cm、Bというキャラは140cm」というように具体的に設定しているが、本編中では「Aの方がBより大きい」という大小の関係は明らかでも、それぞれのキャラの身長がどれくらいか描かれることはない、という場合「Aというキャラは180cm、Bというキャラは140cm」というのが裏設定となる。
裏設定でキャラクターを含めた作品のことをより深く知ることができるといえる一方、作中で描写されなかった以上はそれほど重要な設定ではないということも少なくない。上記の例では、具体的に「あのキャラクターの身長は○○cm」ということがわかっていなくても「Aの方が身長が高い(Bの方が身長が低い)」ということは読者に伝わっているので(作中で数値自体が特に意味を持つものではないのであれば)「無意味ではないが、物語を読み解く上で重要ではない設定」といえる。
これら裏設定は、作中で一切語られないが、後々に作者や製作スタッフから語られたり、設定資料集などで明らかになったりすることも多い。
その扱いについてはそれぞれの作品、作者によって異なり、公式設定として作中で明かされた設定と同等の扱いを受ける(その後のストーリーに取り入れられたり、続編やスピンオフなどで明確に「実はこうだった」と描かれたりする)場合もあれば、その時の作劇上の都合や単なる思いつき、或いは作者自身も裏設定の存在を忘れていた、という理由で途中で断り無しに変更される場合もある。
もちろんあくまで「裏」なので、公式にはその後も全く触れられないこともある。
普通に作品を楽しむうえで困らないような裏設定であれば歓迎されることも多いが、裏設定が極端に膨大化して本編以上の重要性・情報量になってしまったり、裏設定によって本編のストーリーの不整合が起こったりすると、受け手である読者や視聴者、プレイヤーからは問題視されることになる。また、公式設定が覆されるような裏設定が出てきてしまい、大きく作品の方向が変わったり、過去に伏線として匂わされていたような内容が回収されなくなったりする場合も同様である。
裏設定が正式に発表されない作品では、あくまで二次創作にすぎない設定が、ファンの間で一種の都市伝説としてまことしやかに伝播する(脳内設定=ヘッドキャノンが集団で共有されている)こともある。
裏設定が生まれる経緯
作者が作品を創作する上で、キャラクターや世界観、時代や価値観など様々な設定が決められることになるが、その設定の全てが作中で描写されないことも多い。この「本編で描かれなかった設定」が裏設定となるが、裏設定も全て明かされるとは限らない。
最初から本編に出さないつもりで設定していたものを除いて、裏設定が生まれるケースとしては、たとえば作品の方向性の変化や、打ち切りなどで時間的な制約が発生してしまい、当初構想していたストーリーが展開できなくなったことで設定も公開できなくなった、ということが挙げられる。ほかにも、「ひょっとしたら要る可能性がある」程度の軽い感覚で設定したものの結局使う機会がなかった、時事問題への配慮や他作品への影響など何らかの理由で表に出せなかった、というケースもある。
また、原作者やアニメ監督などが制作にあたって設定した事項について「自分の中ではこういうイメージがあるが、これが作品における公式設定とは限らない」と明言しているようなケースもある。
例としてゲーム『海腹川背』は、ディレクター・プログラムを手がけた酒井潔の個人サイトで、明るいイメージの本編とはかけ離れた暗く悲しいバックストーリーが公開されていたが、酒井本人は「あくまで自身の持つキャラクターや世界観のイメージを伝えるために執筆したもので、これがゲームにおける公式設定だと思われることは不本意である」という主旨のコメントをしている(のちのシリーズではこの裏設定からいくつかの要素が拾われている)。
非商用作品における裏設定
個人や非営利団体が創作した物語やキャラクター(俗に言ううちの子など)の場合は、時間的な都合や制作にあたっての規制などとは大きく関係しないため、そういった意味での「裏設定」(没設定に近い)は起こりにくいと言える。
しかし複数の作品で登場させるキャラクターや、交流を前提としたキャラクターの場合、以下のような理由で実際には確定している設定を非公開にする事があり、登場先の作品からすれば「裏設定」となる事がある。
具体例としては
- その作品の対象者にとって過激な設定
- その作品の世界観に矛盾する設定
- 作者が信頼している相手にしか見せられないと考えているような設定
などが挙げられる。