概要
一年戦争中にジオン公国のニュータイプ研究機関「フラナガン機関」が開発した機体制御システム。「サイコミュ」とは「サイコ・コミュニケーター(Psyco Communicator)」の略称。
ざっくり言うと、パイロットの意思をモビルスーツの操作に反映させることができるシステムの総称。
解説
ニュータイプの脳が継続的緊張状態のもと意思伝達を行う際に発する特殊な脳波である「感応波(サイコウェーブ)」を検知し、それを電気信号やプログラム≒機械言語に変換するシステムであり、これによってパイロットの思考をモビルスーツの操縦や火器管制に反映する事が出来る。
この機械言語化された感応波は「ミノフスキー通信」(ミノフスキー粒子の振動現象を応用したもの)を介することで、あらゆる電磁力を吸収してゼロ化するミノフスキー粒子を伝播する特性を有するため、これによって一旦は無効化されていた無線誘導や長距離索敵が可能となり、ビットやファンネルに代表されるサイコミュ兵装の開発に繋がっている。
ちなみに宇宙世紀0100年以降は一部で『スウェッセム因子』という呼称が用いられていた。
一年戦争後期、サイコミュ試験型ザクによる試験運用の後、エルメスやジオングといったニュータイプ専用機に採用されていったが、この当時のシステムは大型であった為、実戦投入された機体はいずれもモビルアーマーか標準的なモビルスーツよりも一回り以上大きい機体として完成している。
加えて開発当初のシステムは発信する情報量が莫大なものだった上、増幅された感応波が戦闘区域に存在する複数のニュータイプによって共振現象を起こして「パイロットに逆流する」という現象も発生しており、パイロットの大脳や精神に無視することのできない悪影響を生じさせるなど、負担も大きかった。
この人体への悪影響については、宇宙世紀0123年においても、「サイコミュは生身の人間の脳細胞にニュートリノ的な直撃を与えて、記憶因子を破壊する傾向があった」と、モニカ・アノー博士が語っている。
一年戦争が終結した後は、連邦軍がジオン公国軍のニュータイプ研究のノウハウを吸収する形で各勢力にニュータイプ研究技術が拡散。様々な仕様や形態のサイコミュが生まれ、技術更新により標準サイズのモビルスーツに搭載できるほど小型化されたものや、さらに後の時代においては感応波の弱い一般人にもある程度使えるタイプも開発された。
一方でティターンズ、ネオ・ジオン等の一年戦争後に勃興した勢力らは「ニュータイプ向けに調整されたサイコミュ」の開発だけでなく、逆に「サイコミュ向けに調整されたニュータイプ」の研究を行うようになり、この研究の結果として後の「強化人間」の誕生に寄与する事になる。
また、サイコミュ並びにそれに準ずる機能を搭載した機体が、高いニュータイプ能力を持つパイロットの感情の昂ぶりや戦場を漂う「ヒトの意思」のようなものに呼応して想定外の超常的な現象を引き起こすことがあるのも特筆点の一つである。
これにより、サイコミュは未知の可能性を秘めた危険な技術であるとも認識されており、関連機体の開発の中断、若しくは開発データもろとも破棄ないし封印に追い込まれる事態もたびたび発生している。
しかし、それを差し引いてもサイコミュの有用性は余りあるのもまた事実であり、作品として描かれているほとんどの時代において、サイコミュを利用した兵器の開発が行われ続けている。
なお、規模こそ遥かに小さいものの、サイコミュ非搭載機でも似たような現象が発生している例も決して少なくないため、これらの超常的現象はヒトが元々持っている力によって引き起こされたものであり、サイコミュはあくまでもそれを増幅しカタチにする触媒のようなものでしかないという見方もある(キャラクターの感情発露表現が優先されるアニメ的な演出、都合と言ってしまえばそこまでだが)。
サイコミュのバリエーション
ビット
サイコミュによって遠隔操作される攻撃端末。
無人の機動砲台とも呼べる装備であり、ニュータイプパイロットの任意の角度、距離、タイミングでの攻撃が可能な「オールレンジ攻撃」の始祖。初期に開発されたビットは、それぞれにモノアイやジェネレータを積載する事で高い火力と継戦能力を発揮したが、ビットの大型化が問題になる。
有線式サイコミュ
機体から攻撃端末をワイヤー、ケーブル等で本体に直結した状態で射出するサイコミュシステムの一種。
ビットやファンネルと違い攻撃範囲や攻撃角度の性能では劣るが、パイロットはオールドタイプでもニュータイプでも運用に問題が無いという利点を持つ。
インコムと決定的に違う点は、インコムは射出するワイヤーを「展張している」事に対し、有線式サイコミュは直接操作が可能である事から三次元的な機動が可能となっている。
有線式サイコミュを実装した最初期の機体であるブラウ・ブロの有線式メガ粒子砲の操作はオールドタイプであるシムス中尉と一般兵が担当しているが、ビットと大差無いオールレンジ攻撃を実現している。
ファンネルに始まる無線サイコミュの開発が進められる中でも有線式サイコミュの研究は続けられた模様であり、後年に開発されたハンマ・ハンマ、ドーベン・ウルフはNT能力の有無は関係無く有線式サイコミュを運用可能である。
更にジオング、α・アジール、ネオ・ジオング等の機体にはニュータイプ専用ではあるものの有線式サイコミュが実装され大きな実績を挙げている。
サイコミュ・コントローラー
大型可変MAサイコガンダムに採用された、インターフェースおよび火器管制システム。
機体制御や、各所に配置されたメガ粒子砲の管制を全て思考でコントロールする方式をとっており、後年のインテンション・オートマチックの雛型とも言えるシステムである。強化人間としては一定の能力を示しつつも、機動兵器の操縦技術には難を抱えるフォウ・ムラサメであったが、本システムにより複雑なサイコガンダムの制御を十全に果たしている。
このサイコミュ・コントローラーはフォウ・ムラサメの脳波に対して専用にチューニングされており、彼女がサイコガンダムを“呼ぶ”と、オートマチックで最短経路をとってその下へと向かう。このため、本機をニュー・ホンコンに対する『脅し』として持ち出したベン・ウッダーの制御を途中から完全に離れ、都市部に多大な被害を与えてしまった。
ファンネル
ジェネレーター内蔵方式であったビットを、エネルギーCAP駆動方式へ変更することで小型化したもの。
ファンネルは機体本体に収納または懸架して移送され、攻撃時に射出、遠隔操作で敵機を攻撃する。迎撃されなければ、コンテナに戻して収納、エネルギーや推進剤を補充して再利用されていた。代表的な機体としてキュベレイやサザビーが存在する。
だが、やがて様々な対策を練られるようになると使用後はそのまま使い捨てにされるようなタイプも目立つようになる。
Ξガンダムのファンネル・ミサイルなど様々なバリエーションが存在するが、「ファンネル」と呼称される有名な物の内、νガンダムのフィン・ファンネルはジェネレーター内蔵式のため、厳密にはビットに区分される兵装である。
バイオセンサー
グリプス戦役に於いてΖガンダム、ZZガンダム等に搭載された簡易サイコミュ。
ファンネルの操作等の火器管制を行う為のものではなく、機体自体の操縦補助を目的に搭載された物である。
元々はZ系列機等のような操縦難度の高い機体の操縦性を緩和し、動作を多少スムーズにする程度の意図で搭載されたものだったのだが、高いニュータイプ能力を持ったパイロットの感応波を物理的な事象として顕現させるなど、想定外の不可思議な現象を引き起こした。
また、ここで培われたノウハウが、後のサイコミュ搭載型MSの開発にも大きく貢献することになった。
基本的にアナハイム・エレクトロニクスによって開発されたモビルスーツに搭載されているが、パプテマス・シロッコがこれと同様のデバイスを独自に開発し、ジ・Oなどに搭載している。
サイコ・ニュートライザー
Ζガンダム3号機「レッド・ゼータ」に搭載された思考操縦システム。操縦イメージを直接機体に反映させるシステムであり、コクピット内には操作スティックなどは設置されていない。
外部情報の受信能力が非常に高く、これにより相手のサイコミュ兵器の制御を奪うことが可能だが、同時に敵サイコミュ搭載機からの干渉を受ける危険性も孕んでいる。
サイコフレーム
分子レベルの微小サイズのサイコミュ素子を金属フレームに鋳込む事で形成したMS用構造材。
高出力のメインプロセッサーと併用する事で、高密度かつ高性能なサイコミュシステムとして機能し、駆動部に使用するだけでも大きく機体レスポンスを向上させることが出来る。
これ自体はあくまでも「ただの効率の良いサイコミュ部品」に過ぎないが、一方で高い能力を持ったニュータイプがこの性能をフルに引き出した際の影響はバイオセンサーの比ではなく、これを搭載したνガンダムは、コックピット周辺のみに採用していたにもかかわらず単機で地球に落下する小惑星「アクシズ」を押し戻す「アクシズ・ショック」を引き起こした。
サイコシャード
擬似サイコフレームであり、その機能もサイコフレームに準ずる。
展開中はサイコフレームの積載量が爆発的に増加するため、パイロットの任意に擬似サイコ・フィールドの展開が可能となる。
元々はMSのムーバブルフレーム全てをサイコフレームで構成する「フルサイコフレーム」の研究中に偶発的に得られた物だったが、後に「袖付き」がサイコ・フィールドを人為的な兵器として利用するべく、サイコシャード発生器を搭載するネオ・ジオングを開発している。
n_i_t_r_o(ナイトロ)
ニュータイプの素質が無い人間であってもそれと同様の空間認識・反応速度を得るができ、更にファンネルの使用も可能とするシステム。
詳細は個別記事を参照。
インテンション・オートマチック
UC計画に於いて開発された、フル・サイコフレームを前提としたインターフェース。
サイコガンダムで用いられていたサイコミュ・コントローラー同様、操縦に際してパイロットが思い描く操縦イメージを直接反映させる事が可能となっている。開発年代に従い、非常に小型となっており、かつ、遥かに高度な追従性反応速度を実現しているが、パイロットに相応の肉体的・精神的負荷を強いる危険性は未だ克服されていない。
これを搭載したシナンジュ・スタインは、袖付きによって強奪された後の試験運用で事故を起こしており、使い手を選ぶシステムである事を窺わせる。
NT-Dシステム
ユニコーンガンダムとその系列機に搭載された対ニュータイプ戦を想定したニュータイプ殲滅システム。「NT-D」とは「ニュータイプデストロイヤー」の略称である。
敵ニュータイプの存在が確認された場合に機体のリミッターが解除され操縦系統が完全にサイコミュへと移行する。
この際パイロットと機体の交感がインテンション・オートマチック・システムを介して極限にまで高められ、瞬間移動とも形容される機動力を発揮するが、20メートル級の機体が人間と同様の動作をした場合の加速Gは殺人的で、また機体のダメージがパイロットの精神にフィードバックされるなどの弊害も大きいため、本モードの稼働時間には5分間という制限が掛けられている。さらにパイロットがシステムを律しきることが出来なければ、マシンに取り込まれて自他の敵意に過剰反応を起こして暴走する危険性もある。
しかしパイロットの能力や運用の仕方次第では「NT-D」は「対ニュータイプ戦へ特化させる戦闘システム」では無く、「ニュータイプの力、可能性を無限大に拡大させるシステム」という全く別の仕様へと変貌する事も可能である。
この様な形態の「NT-D」は「ニュータイプ・ドライブ」と呼ばれ、ユニコーンに搭乗したNTパイロットの力を何倍にも増幅させ、かつての「アクシズ・ショック」に匹敵するかそれ以上のサイコ・フィールドを発生させる事すら可能となると言われている。
ネオ・サイコミュ
宇宙世紀0123年から始まったコスモ・バビロニア建国戦争で投入された、ラフレシアやネオガンダムに採用されたシステム。
詳細は個別記事を参照。
サイコミュ・センサー
宇宙世紀0153年にザンスカール帝国のスーパーサイコ研究所が開発した、ザンネックに搭載された特殊センサー。専用に調整された強化人間の脳波を、増幅補助具(作中のパイロットは小型の鈴を用いた)によって増幅し、機体のサイコミュを通してサイコ・ウェーブとして外界へ放射する。
サイコ・ウェーブは、あらゆるセンサーが無効化されるミノフスキー粒子下においてなお、高感度のアクティブ・センサーとして機能し、パイロット(強化人間)の脳裏に『敵意』を直接投影する。これにより、戦闘機動を行いながらの高精度超長距離狙撃を実現。センサー有効半径は300kmを越えており、これはMSの移動可能範囲を上回る。
このセンサーと、専用に開発された極大出力のビーム砲を組み合わせる事で、ザンネックは自陣後方から敵陣後方の艦艇を正確に撃沈し、MS戦を開始する以前に戦闘の決着をつける。
なお『敵意』を感じ取るという仕様から、そのような意識を全く持たない相手――赤子のような存在は感知できないという特徴を持つ。
エンジェル・ハイロゥ
宇宙戦国時代に於いてザンスカール帝国が建造した、直径20km(小説版では120km)の巨大サイコミュ要塞。
内部に2万人にも及ぶサイキッカー達を冷凍睡眠状態で格納しており、強力な感応波を持つ人間が中央の「キールーム」で祈りを捧げると、それを基点にサイキッカーのサイコ・ウェーブを集約、増幅して放出することができる。
ザンスカール帝国はこのサイコ・ウェーブを人類を退化(幼児化)、衰弱死させる目的で使用し、小説版では月のフォン・ブラウン市を壊滅させるに至るなど、数千万人単位の被害をもたらした。
但し、その大きさに比して迎撃システムといった物理的な攻撃手段を有しておらず装甲も脆弱なうえ、あまりの巨大さゆえに防衛網を敷くのも困難という弱点を持つ。
このため、ザンスカール帝国の事実上の首魁であるカガチは、地球連邦軍からの関与を封殺する一計を案じている。
最終的には一人の少女の祈りによって、2万人のサイキッカーが己の命を顧みず『答え』を示し、多くの兵器と人間を取り込んであるいは彼らの故郷へ、あるいは異なる銀河の地球型惑星へと昇天していった。
詳細は個別記事を参照。
準サイコミュ
感応波によるサイコミュ制御を行う事が出来ない一般的なパイロットであっても機体操作やオールレンジ攻撃を可能とするサイコミュの派生技術もしくは代替技術。
詳細は該当記事を参照。
その他宇宙世紀パラレル作品など
リユース・サイコ・デバイス
パイロットの四肢を義肢化し、それをモビルスーツに接続する事で機体をパイロットの身体の延長のように扱う事が出来るようになるマンマシンインターフェース。リユース・P・デバイスとも。
サイコミュに頼らない思考操縦が可能であり、傷痍軍人を一気にエースパイロット級の戦力に引き上げるが、その性質上、性能を完全に引き出すにはパイロットの四肢を全て切断する必要がある。
一年戦争後期、これを搭載したサイコ・ザクが単機で敵艦隊を壊滅させた事からも、戦闘で有効なシステムであった事に違いは無いが、運用には倫理的な葛藤を孕む。
シャーマン・フレーム
感応波の弱い一般パイロットや強化人間であっても擬似的な思考操縦を可能とするべく開発されたインターフェース。
パイロットの感応波をサンプリングし、戦闘中にシステム側がこれを感知する事で危機回避や攻撃動作など擬似的にパイロットの思考を機体に反映させる。
オークランド研究所で開発されたグリンブルスティ等に搭載された。
強化人間人格OS(BUNNyS)
ティターンズの「OVER THE MIND計画」(3号計画)によって開発された特殊OS。
被験体となる強化人間のデータを収集・蓄積したシステムであり、データの「被験体の死」を以って完成した。
高度な自己判断機能を有しており、これを搭載したガンダムTR-6は機体換装に伴う機体制御の複雑さを簡便化し、また複数の標的に対するマルチロックオンや、ニュータイプ並みの正確な射撃補正も行い、機体性能の底上げに一役買っている。
同時に準サイコミュとしての機能も兼ね備えており、サイコミュ処理装置の増設を行い対応する事で、一般パイロットであってもサイコミュ兵器の自動操作が可能となる。