概要
『ゴジラ-1.0』に登場する主人公たちの乗る船。
艇長は秋津淸治。乗員は野田健治、見習いの水島四郎、そして主人公の敷島浩一の計4人。
復員省のもとで戦後処理の特務についている特設船だが、その特務とは戦時中に日本軍と米軍が近海にばら撒いた機雷を処理すること。つまるところこの船は掃海艇なのである。
船体は磁気機雷に反応しない木造となっており、僚船1隻とともにカッターを曳航して海中の係維機雷の鎖を切断し、海面に浮かんできた機雷を1門だけ搭載している13ミリ機銃(九三式十三粍機銃)で射撃して爆破処分する。それ以外には機雷を回収する為の小型クレーンと、信管に電線を繋いで手動で処理する起爆装置も装備している。
そのあまりにもお粗末な外見ゆえ、敷島が初めてこの船を見たときは「特別あつらえの船」という肩書とのギャップに唖然としていた。小説版では「漁船を改造したものであることは明らか」とも評している。
姉妹船として同型の「海進丸」が存在する。海神作戦直前のゴジラ監視にも、無線符牒を「黒潮12号」とする外見の似た特設掃海艇が使用されているが、こちらも同型船なのかは不明。
以下、本作品のネタバレ注意
1947年、海上の艦船を次々と襲撃しながら日本に向かって進行するゴジラを駆除すべく、旧帝国海軍重巡洋艦「高雄」が台湾から日本へ急行。
「新生丸」は「高雄」が到着するまでの時間稼ぎとして同型船「海進丸」とともに向かわされる。
米軍艦でさえ沈めた怪物相手に、戦闘用ですらない小さな船で、武器は機銃1丁と現地調達した機雷のみで足止めをしろというあまりに無謀な命令だった。
「海進丸」は出現したゴジラに呆気なく沈められてしまい、怪獣の姿を目の当たりにした秋津艇長はさすがに無理だと退却を決意するも、ゴジラは追いすがってくる。「新生丸」は事前に回収していた2発の機雷と13ミリ機銃で応戦するが、13ミリ機銃は全く効果がなく、機雷も1発目は体表面で起爆するが効果なし。2発目は野田の機転でゴジラの口の中に放り込み、起爆用の電線が外れてしまうというアクシデントもあったが敷島の銃撃で口腔内での起爆に成功、眼球ごと左顔面を吹き飛ばす。
しかしゴジラは即座に傷を再生し、しかも2発目が爆発した際の衝撃で「新生丸」の機関まで停止してしまった。
絶体絶命のピンチ……かに思われた矢先、巡洋艦「高雄」が到着してゴジラを砲撃。ゴジラは「高雄」へと引き寄せられ、「新生丸」は何とか危機を脱した。時間稼ぎこそ達成したものの、「高雄」でさえゴジラに撃沈されてしまい、日本襲来を止めることはできなかった。
しかしゴジラ砲撃と自身の放射熱線によるダメージを再生するため、「新生丸」にトドメを刺さず水中へ消えたことで、乗組員は生還することができた。
これ以降「新生丸」は作中に登場することなくフェードアウトする。爆発により新生丸自体も艦尾を中心に損傷してしまったことで、修復若しくは廃船にせざるを得なくなったと考えられる(小説版ではほぼ残骸となってしまった様子)。本来はあくまでも非戦闘用なので、無事だったとしても今後戦力にはなり得なかっただろう。
それでも、ただの木造の小型船でゴジラと戦い、再生されたとはいえ手傷を負わせ、乗員が生還できただけでも大健闘である。
なお、この時の爆発で敷島も頭部を負傷して昏倒し、秋津らによって横須賀の旧海軍病院へ運ばれた。
水島もまた左腕を骨折しており、終盤ではそれを理由に秋津と野田から海神作戦への参加を拒否されてしまうのだが……(もっとも、これはあくまでも建前であり、本当は戦場の狂気を知らないまま、国の未来のために生きて欲しいという思いからだった。だが水島がそれを理解して諦めていた場合、海神作戦がどのような結果を迎えたかは、映画を視聴した方には分かるかもしれない……)。
余談
- 新生丸の撮影は、実際に十数日の期間を設けて海で行われた。また、秋津淸治役の佐々木蔵之介氏は小型船舶の免許を持っており、実際に操舵を行なった。
- なお、上記の船酔い騒動から、山崎監督は撮影当初、「海なんか選ぶんじゃなかった」という旨の後悔をしたとのことで、当時撮影中のモニター上に写し出された海の映像を見ただけでも酔うほどだったため、堪えきれず撮影もせずに帰ろうとする度に出演者やスタッフなどから、「頼むから、帰るならワンカットだけでもいいから撮影してから帰って下さい」などと頼まれるなどの珍事が起きた。
関連イラスト
新生丸の内部想像図
Pixivでは新生丸がゴジラに追いかけられる場面をパロディ化したイラストが散見される。