暗き天に マ女は怒り狂う この日○終わり 悲しきかな
概要
漫画「ドラえもん」に登場するエピソードのひとつで、小学五年生1984年7月号に初めて収録された。てんとう虫コミックスでは36巻に収録。
ノストラダムスの大予言を題材にしたエピソードで、ドラえもんのいつもの整理の悪さから始まる話だが、ひみつ道具は殆ど登場せず、TC27巻収録の「〇□恐怖症」でスネ夫がノストラダムスの大予言が苦手である設定を上手く活用している。
出番こそ短いが出木杉の知識と賢さが光る回でもある。
内容
のび太と分厚い本
ある日、ドラえもんは空が暗いのにメス猫のミーちゃんとピクニックに行った。のび太は部屋の中で、ドラえもんが寝ている押入れの傍に落ちていた分厚い本を見つける。
中を読んでみると
「ジョーガンネ玉落とし 僅かなり 学刈 ターと老婆を抜く」
「ゴリラ、キツネより機械の鳥を奪う」
「ター扉を開く 無音バス潜る」
などの意味不明な文ばかりが書かれている。
「暗き天に マ女は怒り狂う この日○終わり 悲しきかな」
この文を最後に、残りのページには何も書かれていなかった。
疑問に思ったのび太はいつもの3人に見せる。ジャイアンは「世界寝言全集」、しずかちゃんは「暗号の教科書」なのではないかと推測するが、スネ夫だけ深刻そうな顔をしていた。
スネ夫が慌てる理由
のび太が部屋に戻ると、新聞の記事をまとめたスクラップブックを持ったスネ夫が慌てふためいた拍子で家に入っていき、「思い出した！ノストラダムスの大予言！！」と言う。のび太は疑った様子で苦笑いするが、二人でページや日にちを照らし合わせていくと、
- ゴリラ、キツネより～：飛行機内でハイジャックが発生、犯人と機長がそれぞれの動物に似ている
- ター扉を～：バスの運転手が居眠り運転（「無音」の部分）をし、そのせいでバスは湖に水没
と言った事件が発生しており、順当にいけば
- 暗き天に〜：空が真っ暗な今日、地球（「○」の部分）は滅ぶ
そして、「その後が書かれていないのは地球が滅びたからではないか」と二人は推測するのであった…。
（わさドラ版では「マ女」の部分を、マ女→魔女→魔女のほうき→ほうき星→彗星の衝突で地球は滅ぶと解釈された）
避難の準備と真相
タイムマシンを使って避難しようと考えた二人は、皆を集めて友達の家を駆け巡る。ただし出木杉は空が暗い理由を黄砂のせいだと言っており、予言のことを偶然やこじつけだと否定している。
（わさドラ版ではドラえもんがピクニックのためにタイムマシンを使っており、また事情を知らされた人たちは最初は二人の事を信じていなかった。そのため2人だけで裏山にシェルターを掘ったり食料を確保したりしている）
出来杉の考えにのび太は「かってにしろ！」と腹を立てて家に戻るが、帰ってきてたドラえもんから「人の日記、かってに見るな‼︎」といきなり怒鳴られた。
そしてドラえもんは、本は予言書では無く去年の暗号日記だと言ってきた。
のび太は訳が分からず、ドラえもんに上記の気になっていた文章の解説を求める。
- ジョーガンネ玉落とし 僅かなり 学刈 ターと老婆を抜く
↓
- 年賀状とお年玉が少なくてガッカリだ。のび太とババ抜きをした。
- 「ジョー・ガンネ」と「玉落とし」は年賀状とお年玉のアナグラム、「学刈」はガッカリの当て字。
- 「ター」は「た」が「伸び」ているので、のび太。
- 「老婆」はババのこと。
- ゴリラ、キツネより機械の鳥を奪う
↓
- ジャイアンがスネ夫からラジコン飛行機を奪った。
- ゴリラとキツネは言うまでもなく、ジャイアンとスネ夫。
- 「機械の鳥」は飛行機は飛行機でも、ラジコン。
- ター扉を開く 無音バス潜る
↓
- のび太がどこでもドア を使ってしずかちゃんの家に行こうとしたら入浴中だったので、しずかちゃんは慌てて風呂に潜った。 （わさドラ版ではのび太が風呂に落ちており、しずかちゃんは入浴していない）
- 「扉」はどこでもドアで、「無音」は「静か」でしずかちゃん。
- 「バス」は車の「BUS」ではなく、風呂を意味する方の「BATH」。
- 暗き天に マ女は怒り狂う この日○終わり 悲しきかな
↓
- (のび太の) テストが0点 だったのでママは怒った。この日はどら焼きが無くなってて悲しかった。
- 「暗き天」は「暗い“点”」で0点、「マ女」は「マが付く女」でママ。
- 「○」はどら焼きの丸い形で、どら焼きが無くなるのは確かにドラえもんにとっては悲しいことである。
-----つまり、書かれていた内容は未来の恐ろしい予言でもなんでもなく、去年のごく普通の日常、もっと言えば、すでに起こってから暗号にして記していただけに過ぎなかったのだ。
そして、残りのページが書かれて無かったのは、単にドラえもんが書くのを怠けていただけだった（ドラえもん曰く「のび太の三日坊主よりはマシ」。実際に最後の「暗き天に〜」は200ページ目に書かれていたので確かにマシである）。
あまりのしょうもないことに大騒ぎしたと項垂れるのび太だったが、時すでに遅し。忠告を信じた皆はドラえもんに解決してもらおうと野比家に押し寄せ、ドラえもん達はパニックになるのであった。
のぶドラ版では玄関前ではち切れそうになる扉を前にのび太が「こうなったら本当に地球を滅ぼすしかないよ、なんか道具出して!」とドラえもんに無茶な要求をした直後に野比家に助けを求める人々が扉をぶち破って一斉に突入(中には車ごと突入してる人もいた)、2階にいたママも押し寄せる人混みに巻き込まれてのび太やドラえもんと共に窓から飛び出してしまうと言う原作以上にドタバタ極まりないオチになっている。
わさドラ版では騒動を発展させた張本人であるスネ夫も一緒に真相を聞かされており、皆が野比家に押し寄せてきたときは冷や汗をダラダラかくというオチになっている。
余談
- 日記をわざわざ暗号で記していた理由は恐らく、勝手に読まれるのを想定してのことと思われるが、ドラえもんは勝手に読んだことを怒っていたので矛盾が生じる。
- 作中ではあわてていた事もあって触れられていなかったが、よくよく考えてみると、本当に地球が滅びるとしたら、それよりも未来から来たドラえもんは存在していないはずである。
- いわゆる言葉狩りにより「暗き天に マ女は怒る この日○終わり 悲しきかな」に修正されている場合がある。
- 何気に出木杉と同じくらいに賢いはずの静香ものび太とスネ夫の拡大解釈した結論をしっかり鵜呑みにしてしまっているという結構珍しいケースだったりする、
関連タグ
ドラえもん：ある意味この騒動の元凶。当人も日記を暗号化したせいでこんな騒ぎになるとは思わなかっただろう。
野比のび太：純粋な興味本位から日記を持ち出したばかりに騒動が起きることに。
骨川スネ夫：最大の戦犯。中途半端な知識とこじつけによって日記の内容を拡大解釈してしまい、結果的に収束不可能なレベルまで騒動を悪化させてしまった。
