概要
戦時には、平時の比較の段でない膨大な数の船舶や兵員が必要となる。これは海軍も例外ではないが、これを常に保有し続ける事は予算面でも人面でも到底不可能な話である。
そこで、戦時にはそういった艦艇の不足を補う為に民間船を徴用し、武装や必要な装備を施して軍艦の代用とした。
つまり徴用船の一種であり、海軍によって艦艇の代用として運用された船舶である。
特設艦船の種類
特設艦船は、徴用された船舶の大きさ、特徴、用途等により32種類に分類された。戦艦、駆逐艦、潜水艦を除く全ての軍艦の種別に特設艦船が存在し、徴用された船舶は必要な艤装を施して運用された。
大型貨客船、1万トン内外でなるべく高速。貨客船に砲・魚雷発射管を増設したもので、洋上での臨検・監視、船団護衛に用いた。
- 特設航空母艦(特設空母)
15ノット以上の高速、大型貨客船で1万5千トン以上。最終的に格納庫・飛行甲板を装備し、貨客船としての原形をとどめず、正規航空母艦に取り込まれた。
- 特設水上機母艦
高速大型貨物船で、6 - 8千トン。支那事変(日中戦争)中は特殊装備を用いず、太平洋戦争時にはカタパルトを装備して発艦能力を高めた。
- 特設航空機運搬艦
大型貨物船。カタパルトを持たず、航空機を格納庫に収容して運搬する。一部には工作機械を搭載し、航空機の修理が可能な船もあった。
- 特設敷設艦
前記船舶を除く次等の貨物船。特に改装をせず、格納庫を機雷庫として転用した。
- 特設水雷母艦
前記船舶を除く次等の貨物船。特に改装をせず、支那事変中は砲艇母艦、太平洋戦争中は魚雷運送船として使われた。
- 特設運送艦(乙)
特設水上機母艦に準ずる
同 上
平安丸 等
- 特設砲艦(大)
2 - 3千トンの貨客船または貨物船
- 特設砲艦(小)
2千トン未満の貨客船または貨物船
- 特設砲艦兼敷設艦
特設砲艦(大)と同等
- 特設急設網艦
3千トン内外の高速貨物船
- 特設捕獲網艇
特設砲艦(小)と同等
- 特設防潜網艇
3千トン内外と1千トン内外の貨客船または貨物船
- 特設掃海艇
3百トン内外のトロール船
- 特設掃海母艦
2 - 3千トンの貨客船
- 特設駆潜艇
1百トン内外の発動機漁船
- 特設監視艇(甲)(乙)
同 上
- 特設工作艦
6千トン内外の貨客船または貨物船
- 特設港務艦
6 - 8千トンの貨客船
- 特設測量艦
同 上
- 特設救難船
3千トン内外の貨物船
- 特設病院船
1千6百 - 1万2千トンの貨客船
氷川丸 等
- 特設電纜敷設船
2 - 3千トンの貨客船
- 特設雑役船
- 特設運送船
海軍将校の監督官が配置される(甲)と省略可能な(乙)があり、また用途により下記の区分がある。
- 特設運送船(給兵)
5 - 8千トンの貨物船。特設給兵船。給兵船とは武器弾薬用の補給艦のこと
- 特設運送船(給水)
同上。特設給水船
- 特設運送船(給油)
石油タンカー。特設給油船
- 特設運送船(給炭)、特設運送船(給炭油)
5千トン以上の貨物船。特設給炭船、特設給炭油船
- 特設運送船(給糧)
(大)は5千トン内外の貨物船、(小)は7百 - 2千トンの冷蔵船。特設給糧船
- 特設運送船(通信)
5千トン以上の高速貨物船。特設通信船
- 特設運送船(雑用)
2千トン以上の貨物船。基地間の物資・部隊輸送に用いる一般的な輸送船。特設雑用船