GODZILLA-ゴジラ-
ごじら
The world ends, Godzilla begins. (世界が終わる、ゴジラが目覚める。)
It can't be stopped. (あきらめろ こいつには勝てない)
レジェンダリー・ピクチャーズ制作、ワーナーブラザーズ配給の怪獣映画。レジェンダリー・ワーナーのシェアワールド構想であるモンスターバース第一作目。
監督は本作が長編映画の監督2作目で、ゴジラの大ファンでもあるギャレス・エドワーズ。本作公開当時は39歳という若手ながら、2010年公開の低予算の怪獣映画『モンスターズ/地球外生命体』にて一気に高い評価と注目を浴びた気鋭である。
脚本には『魔法使いの弟子』を担当したマックス・ボレンスタインや、『ショーシャンクの空に』『ミスト』を担当したフランク・ダラボンなどが参加している。
また、日本人2名が製作総指揮として参加しているが、その面子の1人はゴジラシリーズ屈指の怪作といわれる『ゴジラ対ヘドラ』の監督を務めた坂野義光(IMAX版『ゴジラ3D』の企画などゴジラ作品の復活のために活動していた)。もう1人は奥平謙二(今作以外には『Pups』という映画を10年以上前に製作しているくらいで、その活動経歴が全く不明。少なくとも簡単に言える事はほとんど情報がない謎の人物であるという事)といささか馴染みの薄いものとなっており、公開前の日本では不安と戸惑いの声もあった。
主演は『キック・アス』のアーロン・テイラー=ジョンソン。日本を代表する俳優の1人である渡辺謙も重要人物の一人、芹沢猪四郎博士役で出演している。なお、『54年版ゴジラ』で主演を務めた宝田明も入国管理官役で撮影に参加したものの出演シーンは全てカットされている(宣伝されていたにもかかわらずカットされた理由は現在のところ不明)。
なお、以前のハリウッド版ゴジラ(1998年、ローランド・エメリッヒ監督版)が日本の本家ゴジラのイメージから乖離しすぎてファンから酷評された反省からか、東宝は「これまでの『ゴジラ』映画のレガシーを受け継ぐ作品にして欲しい」と製作陣に釘を刺したらしい。
それに答えてギャレス監督は「日本のファンに受け入れられなきゃゴジラじゃない」として東宝が要請する前に自ら出向いて作品のチェックをしてもらうなどの徹底振りを見せたという。
当初は2012年に完成予定だったが、諸事情により2014年(ゴジラ生誕60周年)に公開となった。
アメリカでの公開日は5月16日、日本では遅れて7月25日に公開された。
撮影は2013年3月18日から同年6月にかけて行われたが、出演者の1人である渡辺によるとクランクアップ後も再撮影が続けられたという。
なお、渡辺が公開後に明かした所によると撮影を終えて映像を全て確認した結果、なんと4時間を超えるほどの膨大な内容になってしまったため、登場人物の背景や原爆について語られるシーンなどが大幅にカットされてしまった模様。上記の宝田明氏の出演シーンカットもこれが原因ではないかとする見方もある。
2012年7月、アメリカ国内のイベント「コミコン」にて1分強のトレーラー映像が公開された。ちなみにこの映像は事前の告知なしに突然流されたため、会場を訪れていた人たちは誰もこの映像を録画することができなかった。そのため、今のところ(トレーラー映像の一部を撮影した画像は存在するものの)この映像そのものを視聴することは不可能となっている。その当時はこうした事もあり、新生ゴジラのビジュアルは「日本版と極めて近いデザインであった」ということ以外殆どが不明であった。
2013年1月9日、ゴジラの他に2体の新怪獣が登場するということが報じられた。
同年のコミコンにて2つ目のトレーラー映像や本作のポスター、そして新生ゴジラのデザインがようやく公開された。首と尾が太くなり、全体的にどっしりとした感じになったものの、デザインは兼ねてからの情報通り、日本版のゴジラのそれを踏襲したものになっており、「また今回も違ったデザインだったらどうしよう」という一抹の不安を抱いていた世界中のファンたちをとりあえず安堵させることになった。また、鳴き声も(アレンジは加えられているが)日本のゴジラに近いものになっている。
なお、コミコンの後も映画に関する情報の詳細は徹底的に秘匿されており、新しい予告編が公開される毎にゴジラの姿やストーリーが少しずつ明らかになっていく……という方法が取られていた。実際、出演者の1人が「今作の描き方はスティーブン・スピルバーグの『ジョーズ』に似ていてゴジラの姿を大っぴらにさらけ出すのではなく、その存在感を暗示してほのめかすことで観客が恐怖を覚えるような演出がされている」と答えている。
監督曰く「オリジナルを参考にシリアスな作品を作る」「SF要素を排し、徹底して現実的な路線で制作している」とのこと。また、その後の発表によると今作におけるゴジラは「核の申し子」ではなく、「自然が生み出した驚異」「“別の現代的な問題”を踏まえた存在」として描かれているという。
1999年、芹沢猪四郎博士はフィリピンで恐竜に似た巨大生物の化石を発見。化石には別種の生物の繭が寄生しており、その内の一つは既に生物が外に出た後だった。
同じ頃、核物理研究者のジョー・ブロディは日本の雀路羅(ジャンジラ)市の原発に勤めていたが、謎の地震が起こり原発は崩壊。共に働いていた最愛の妻サンドラを失ってしまう。
十数年後、ジョーの息子でアメリカ海軍大尉のフォード・ブロディは日本の警察に捕まったジョーに会いに日本を訪れるが、「雀路羅市を襲った地震は何らかの生物の仕業、封鎖はその生物を隠すためだ」と考察する父ジョーに連れられ、調査のため雀路羅市に侵入する。
封鎖された原発跡で2人は、地震の原因となった謎の巨大生物と、それを隔離、監視する特務研究機関『MONARCH』の存在を知る。生物は間もなく覚醒し、原発跡を破壊。巻き込まれたジョーは命を落とす。
芹沢博士たちMONARCH機関は、東へ移動し、ハワイに襲来した巨大生物を追うが、“別の巨大生物”までもが引き寄せられるかのように出現。
ついに2体の生物はホノルルで激突する…。
キャラクター名 | 演者 | 吹き替え |
---|---|---|
フォード・ブロディ大尉 | アーロン・テイラー=ジョンソン/CJ アダムス(幼少期) | 小松史法/青木柚(幼少期) |
エル・ブロディ | エリザベス・オルセン | 波瑠 |
芹沢猪四郎 | 渡辺謙 | 渡辺謙 |
ジョー・ブロディ | ブライアン・クランストン | 原康義 |
サンドラ・ブロディ | ジュリエット・ビノシュ | 山像かおり |
ウィリアム・ステンズ提督 | デヴィッド・ストラザーン | 佐々木勝彦 |
ヴィヴィアン・グラハム博士 | サリー・ホーキンス | 高橋理恵子 |
サム・ブロディ | カーソン・ボルド | 櫻井優輝 |
トレ・モラレス軍曹 | ヴィクター・ラサック | 櫻井トオル |
ラッセル・ハンプトン大佐 | リチャード・T・ジョーンズ | 乃村健次 |
スタン・ウォルシュ | ゲイリー・チョーク | 楠見尚己 |
ヘイロー降下監督官 | ジャレッド・ケッソ | 阪口周平 |
入国審査官 | 宝田明 | |
ゴジラ | アンディ・サーキス(モーションアクター)(※:ノンクレジット) | ― |
※ ゴジラ役の「アンディ・サーキス」(モーションアクター)がノンクレジットなのは当初ゴジラは全て3DCGだけで描くつもりだったらしいが、監督が途中で「ゴジラは動物として描いてはいけない」と思い、モーションアクターとして急遽サーキスが選ばれた(この時は彼の方もちょうどスケジュールが空いていたので約20ショットを撮影する形で参加する事が出来た)が、それにもかかわらず、クレジットがサーキスが参加する前の状態のまま使用されたためである。
アメリカでは2014年5月16日より公開され、初日だけで3850万ドル(約39億円)の興行収入を記録し、世界オープニング興行収入も1億9621万ドル(約196億円)で第1位と快調な滑り出しを見せた。
日本では東宝の配給により7月25日より公開。日本だけ公開が遅れたのは公開初日を夏休みに合わせたためであるが、日本のファンからは「ゴジラの本家本元である日本での公開を2か月以上も遅らせるのはいかがなものか」といった批判の声も多かった。日本では公開初日の7月25日~27日の3日間だけで46万人近くの観客動員数と6億8000万円以上の興行収入を記録し、全国映画動員ランキングで初登場1位を飾った。なお、観客の男女比は84:16と男性が圧倒的に多く、年代別にみると幼少期にゴジラに親しんだ40代以上の往年のゴジラファンが多かった模様である。
最終的な興行収入は日本国内だけでも32億円、全世界合計で570億円となり、興行的に大成功を収めた。そして観客動員数は日本国内で218万人を記録。残念ながら、初期の昭和ゴジラや平成ゴジラシリーズ、『大怪獣総攻撃』や『ゴジラ2000ミレニアム』には及ばなかったが、こちらもゴジラの新作としては十分及第点と言える成績を残しただけでなく、全世界的に98年版を上回る大ヒットを記録する事となった。この大ヒットにより、同年の第38回日本アカデミー賞にて優秀外国映画賞を受賞している。
前回のハリウッド版が色々とアレだった反動などもあり、作品に対する批評は概ね良好。
ゴジラとMUTOの戦いはもちろんの事、「あきらめろ こいつには勝てない」というキャッチコピーの通り、98年版ではミサイルでゴジラを撃破した米軍も今回はゴジラにまったく歯が立たないと言う描かれ方をしている。ハリウッドのSFフィクションものでここまで米軍が役立たずに描かれる事が稀である事から、地球の守護神的立場で描かれるゴジラの無敵っぷりが良く解るようになっている。また、前情報ではMUTOの存在は余り宣伝されていなかったため、ゴジラ単体の話と思って観に行ったら予想外の怪獣バトルが見れて良かったという声もあった。
日本版ゴジラに携わった面々からも好評で、平成VSシリーズの特技監督を務めた川北紘一氏は「ゴジラとムートーの戦いは、ちゃんとやっていたと思います。ゴジラも恐竜の延長じゃなくて、怪獣として描いているので、そのあたりは良かったんじゃないかな」と語っており、昭和後期と84年版の特技監督を務めた中野昭慶氏は「全体のバランス、ドラマの作り方も徹底して3Dを研究している」とビジュアル面を評価している。
他にもグレムリンの監督を務めたジョー・ダンテ氏は本作を「1954年版以来最高のゴジラ映画だ」と称賛している。
一方で、公開直後から『ガーディアン』や『IGN』などを始めとする様々な媒体で、「ゴジラの出番が少ないし、ストーリーの中心がMUTOに寄っているためゴジラが脇役のような扱いになっている」「日本のゴジラに込められていた反核のメッセージが弱められ、むしろ核兵器を肯定をしている」「MUTOの生態とゴジラの関係も合わせてどこかで見たような展開となっている(当事者も類似点を指摘している)」「全体的に暗くて展開がよくわからない」などといった指摘も少なくなかった。また、「ゴジラによる脅威」を謳った宣伝文句 (国内外の両方で) と実際の内容の乖離をよく思わない声もある。
- なお、この「ゴジラの出番が殆どない」という批判に対してギャレス監督は「誰もが認め絶賛する『ジョーズ』にはサメが6分しか出てこない。もっと観たい、と思わせた方がいいと思うんですよ。料理と一緒で美味しいものでも食べ過ぎたら具合が悪くなりますよね。どうせならおいしい上にまた食べたいと思わせたいじゃないですか」というコメントを残している。この事からギャレス監督は最初からこの評価を狙っていたという可能性がある。
また、出演したブライアン・クランストン自身も作品の出来映えに満足していないことも複数の媒体で紹介されている (参照)。
本作の世界的な大ヒットを受け、公開3日目にして続編の制作が決定。
2作目にはゴジラだけでなくラドン、モスラ、キングギドラが登場すると報じられ、監督交代や公開延期を経て、2019年に続編作である『GODZILLA King of the Monsters』が公開された。
また、これとは別にレジェンダリーはキングコングの映画化権も獲得、2017年にそのコングを主題とした映画『キングコング 髑髏島の巨神』を公開している。
さらに同作の公開に先駆け2015年に同社はゴジラとコング両作の世界観を“モンスターバース”として繋げる構想があるという事とその世界観の中でのゴジラとコングの対決を描くクロスオーバー作品の制作決定も公表しており、2021年にはそれを実現させた『GODZILLAvsKONG』も公開されている。
2023年にApple TV+で限定配信された「モナーク:レガシー・オブ・モンスターズ」は本作の直後の時間軸を舞台とした作品となっている。
東宝はこのレジェンダリー版の製作の始まった2013年頃よりゴジラシリーズ復活のための企画を検討していたとし、その後同作の世界的な大ヒットを受けて東宝は本格的な国産シリーズの再開を決定、2016年には約12年ぶりの新作ゴジラ映画『シン・ゴジラ』が制作および公開、7年後の2023年には令和初の新作ゴジラ映画『ゴジラ-1.0』が制作および公開されたり、以降も2017年〜18年にかけてアニメ映画シリーズ『GODZILLA』や2021年にはTVアニメ『ゴジラS.P』といった特撮以外のメディアでの展開が進められている。
怪獣映画 ゴジラ ゴジラシリーズ モンスターバースシリーズ ハリウッド ハリウッド版 レジェンダリー・ピクチャーズ ワーナーブラザーズ
GODZILLA-ゴジラ-→髑髏島の巨神
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