人類よ、立ち向かうな。
この島で、人類は最弱。
概要
ジョーダン・ボート=ロバーツ監督、レジェンダリー・ピクチャーズ制作の怪獣映画。PG-12指定。
キングコングのリブート作品であると同時に、レジェンダリー・ワーナーのシェアワールド構想であるモンスターバースシリーズの第二弾。
第一弾にあたる2014年公開の映画『GODZILLA-ゴジラ-』と同じ世界を舞台としており、同作に出てきた研究組織MONARCHが引き続き登場するほか、劇中においても『GODZILLA-ゴジラ-』の作中で触れられた事柄が本作では別の視点から語られたりと、両作の繋がりを垣間見えるシーンも多く存在する。ただし、時系列はこちらの方が前であり、本作はベトナム戦争終結直後の1975年が舞台となっている。そのため、前作よりも前にこちらの方を先に見たとしても特に問題はない。
4年後の2021年にはこれの続編として先に登場したゴジラとコングの直接対決が描かれたMV第四弾作品『GODZILLA VS KONG』が公開された。
地上波ではモンスターバース第3弾『キング・オブ・モンスターズ』公開に合わせて2019年5月23日に金曜ロードショーにて放送。話題となった。
また、多数の過去の作品に対するオマージュがあるらしく、『レイダース』、『エイリアン』シリーズ、『AKIRA』、『エヴァンゲリオン』、『もののけ姫』などのジブリ作品、『グエムル:漢江の怪物』などの影響を監督が挙げている(参照)。
また、『地獄の黙示録』や近年の韓国映画 (『オールドボーイ』や『グッド・バッド・ウィアード』)等へのオマージュも見てとれる。
なお、本来は2005年の「キングコング」の続編として企画が上がっていたが、版権がワーナーブラザーズに移行していたため頓挫している。この時のプロデューサーはGODZILLA VS KONGにもプロデューサーとして参加している。
最終的に、世界興収は5億6千万ドルと、モンスターバースシリーズでは最高の売上げを記録した。
あらすじ
未知生命体の存在を確認しようと、学者やカメラマン、軍人からなる調査隊が太平洋の孤島“スカル・アイランド(髑髏島)”にやってくる。
そこに突如現れた島の巨大なる"守護神"キングコング。島を破壊したことで、"彼"を怒らせてしまった人間たちは究極のサバイバル(ドクロ島デスマッチ)を強いられる。
しかし脅威はこれだけではなかった。狂暴にしてデカすぎる怪獣たちが、そこに潜んでいた!
この島では、人類は虫けらに過ぎない……そう悟った時は遅かった。なすすべもなく逃げ惑う人間たち。彼らがやがて知ることになる、島の驚くべき秘密とは!?果たして調査隊は、島から脱出することができるのか!?
※この先、映画のネタバレを含む記述があります。未見の方はご注意ください。
主な登場人物
ジェームズ・コンラッド
主人公。元SAS(イギリス軍特殊部隊)大尉で、追跡のプロ。調査チームの護衛兼案内役として雇われ、一行を率いる。
良識的な人物で、物語が進むにつれて徐々にコングを理解してゆく。
プレストン・パッカード
部下をベトナムの戦場で失ったことで心に大きな傷を残す軍人。階級は大佐。
さらにコングによって部下を殺されたことから憎悪に囚われ、周りを顧みない復讐鬼となる。
(※ただし、島の調和を乱し爆撃で怪獣を目覚めさせるような愚挙をしでかしたのは人間たちであり、コングからすれば正当防衛とも言える。実際、髑髏島の生物や植物は爆撃で吹き飛ばされていた上に、爆撃の振動によってスカル・クローラーは地底から目覚めてしまった)
結果論ではあるが、この男がもう少し冷静さを保っていれば、生還者はもっと増えていた可能性が高い。
演じるのは長官でおなじみサミュエル・L・ジャクソンで、おなじみのあのセリフも…?。
メイソン・ウィーバー
女性カメラマン。偶然、コングの意外な一面を知り、彼と心を通わせてゆく。
シリーズお約束の、コングのお相手役となる美女。
演者は後にMCUのスーパーヒロインを演じている。
ウィリアム・"ビル"・ランダ
MONARCHに所属する研究者で、髑髏島への調査の立案者。
決して悪人ではないものの、自分の仮説を立証する為には手段を選ばない一面があり、コンラッドやパッカード達には当初調査の目的を『地質調査』と偽り、本当の目的を明かしていなかった。言うなれば、コングを怒らせ、パッカードのチームを壊滅させた大元の元凶といえる。
ハンク・マーロウ
第二次世界大戦中に髑髏島へ不時着した軍人。
なお、年齢はパッカードより上だが階級は彼より下。島の住民に救われ、28年もの歳月を島で生き延びてきた。
髑髏島の掟やコングの事情について詳しく知る人物。時に忘れられた島の住人となったため望郷の念が非常に強い。
ベトナム戦争や第二次世界大戦後の世界事情に対して興味津々で、戦争の勝敗をコンラッドたちに尋ねる場面も。
背中に『GOOD FOR YOUR HEALTH』と書かれた健康優良不良少年のようなジャケットを着ている。
ヒューストン・ブルックス
MONARCHに所属する黒人の見習い学者(劇中の時代のアメリカでは人種差別の関係で、黒人の学者は珍しかった)。ランダの助手を務める。ランダにはやや振り回されがちだが、かつて自分の書いた論文を唯一評価してくれた事から尊敬しており、少々奇天烈な性格であるランダと周囲の人間との板渡し役となる事も多い。
最終的に調査隊の数少ない生存者の1人となり、続編の『キング・オブ・モンスターズ』でもとあるシーンで登場する。なお、この頃には調査や研究が進んだこともあってか、地球空洞説は比較的メジャーな学説になっていた模様で、同作の登場人物の1人であるスタントン博士はその支持者の1人であった。
サン・リン
MONARCHに所属する中国人の女性生物学者。過去に未知の生物を発見した功績により抜擢される。
レグ・スリフコ
パッカードの部下。階級は曹長。
任務中にも自前のレコードで音楽を流すなど良くも悪くも少年っぽさが残る若輩。コンラッド達の乗ったヘリを操縦していた為、墜落後は彼らと行動を共にする。
実家が整備工なためかメカに強く、マーロウがスクラップから組み上げたボートの修理にも大いに貢献したほか、コンラッド達と行動することで次第に彼らに感化されていく。
グレン・ミルズ
パッカードの部下。階級は曹長。
コールをはじめ周囲の破天荒な人物や状況に対するツッコミキャラの側面が強い、所謂面白黒人枠である。
ジョー・レルス
パッカードの部下。階級は上等兵。
物静かだが仲間思いな好人物。吹き替えは暴走キングコングの異名をとるスイーツ大好きな強面プロレスラー。
アール・コール
パッカードの部下。階級は大尉。個性的な面子の揃ったパッカードの部下の中でも特にマイペースな人物で、独特ながらどこか卓越した価値観や感性を持っている。
ジャック・チャップマン
パッカードの側近。階級は少佐。
仲間たちからはぐれ、一人髑髏島を彷徨い、コングの意外な一面を目撃する。
ヴィクター・ニエベス
髑髏島への調査に同行するNASA職員。現地に乗り込んでの調査には当初から難色を示しており、その不安が的中する形でコングに襲撃されてからは事ある毎に愚痴を零す。
グンペイ・イカリ
冒頭でマーロウと共に島に不時着した日本軍人。本編時には既に故人(スカルクローラーに喰い殺されたらしい)。当初は殺し合う程の敵同士だったが、島で生活するうちに徐々に親友へとなっていった。劇中マーロウが手にしていた刀は元々彼の所持品で、唯一の形見である。
登場怪獣
斜文字のは本編には未登場、ないし他媒体でのみ登場
本作における怪獣サイドの主人公とも呼べる存在。詳しくは該当記事参照。
コングの天敵にして、髑髏島最悪の生物として恐れられる爬虫類(または両生類)。詳しくは該当記事参照。
スケル・バッファロー
体長13mに達する巨大な水牛。髑髏島の生物の中では比較的おとなしい性格。
半水棲で、基本的には湿地帯で暮らしており、倒木のように枝分かれした角と、水草が生えたサンゴ状の背中で擬態している。ある個体はスカルクローラーに喰い殺されたり、墜落したヘリコプターの下敷きにされたりと被害を受けていたが、後者はメイソン・ウィーバーが必死で助けようとしているところをコングに助けられた。
バンブー・スパイダー(原語版ではマザー・ロングレッグ)
長い脚を竹槍のように獲物に突き刺したり粘着性の触手で絡め取るなどして獲物を捕らえ、カニのハサミのような前足(鋏角?)で切り刻んで捕食する。雌しか存在せず単為生殖を行う。
劇中では竹林に差し掛かった一行に襲い掛かるが、逆に足をすべてナイフで切られて身動きが取れなくなり、最後は頭部を撃ち抜かれて倒される。
1995年にとある事件でイーウィス族の防壁が破壊されたのを機に巨大な個体を含めた集団で襲ってきたが、コングにより全滅された。
おそらく33年版の削除シーンに登場した谷底に潜むクモガニおよび、05年版に登場したアラクノ・クラウが元ネタだと思われる。
リバー・デビル(原語版ではマイア・スクイッド)
島の河川に巣食う超巨大な頭足類で凶暴な性質。体長27mに達する。
汽水域に潜み、10本以上の長い足を使って獲物を襲う。劇中ではコングに襲い掛かるがパワー負けして逆に捕食されてしまうという憂き目に遭った(ちなみに襲いかかったと書かれてるが、あきらかに先に手を出したのはコングである)。
ムック本では、スカルクローラーとの戦闘を行うことも示唆されていたりするとかしないとか。コンセプトアートではコングが小さく見えるほどに巨大だった(参照)。
元ネタは、古典的なアメリカのタコ怪獣または東宝版の大ダコなどか。
スポア・マンティス
島の西部に生息する、全長15メートルに達するナナフシに似たカレハカマキリ。
天敵であるスカルクローラーから身を隠すためか、高い擬態能力を誇り、レッドウッドの幹のような外見をしており手足や頭部を格納すれば倒木にしか見えない。擬態時には微動だにしないが、敵に遭遇した時は強靭な筋肉で逃げる。
また、設定では皮下に強力な歯と顎をもつナメクジに似た寄生虫を宿しているらしい。
サイコ・バルチャー
白亜紀の大絶滅を生き延びた翼竜の生き残り。なお、映画本編に出たサイコ・バルチャーは厳密には「リーフウィング(イカルス・フォリウム)」という近縁種。
名前の由来となった木の葉のような翼や体色は光合成も可能でカモフラージュに秀でている。雑食性でそこまで攻撃的ではないが、群れで獲物に襲い掛かってノコギリザメのような吻部で痛みなく一気に切り裂いてしまう。血液の色は鮮やかな青。
続編の『キング・オブ・モンスターズ』でもゴジラがギドラを打倒し、王座を奪還した際に、ゴジラに恭順の意思を示すかのように地下世界を通じて(小説版では髑髏島から逃げ出して)大量の個体が出現した。
続く『GODZILLAvsKONG』『新たなる帝国』でも、群れで飛行している様子が度々描写されており、地下空洞世界ではごくありふれた生物であるようだ。
本来のサイコ・バルチャー(バルチュラ・インサヌス)は耳介や鼻のない巨大なコウモリに近い姿をしている。視力が低くエコーロケーションや熱探知で獲物を探す。髑髏島固有種のフグを常食とするため、そのフグ毒の影響により精神異常を引き起こし、出会う生物を(時には同種すらも)無差別に殺戮するほど非常に攻撃的な性格となっている。1995年の時点では口から電撃を吐いている。
コングの両親
本編ではすでに死亡しており、骨のみの姿で登場。
マーロウの話によれば生前は島の調和を保ち、住民に崇められる「守護神」だったようである。
頭蓋骨のみ登場。
化石ではなく死後何年か経過したと思われる骨であることから、本作の髑髏島にはかつてトリケラトプスなどの恐竜たちも生息していた、あるいは現在もどこかに生息しているらしいことが窺える。
また、本来のトリケラトプスよりもサイズが大きいのも特徴。
巨大な亀
MONARCHの資料にあった巨大な亀で、MUTOに区分されていた。
蟻
赤アリのように狂暴な蟻。木のウロに住み、さらにカモフラージュのために鳥の鳴き声のような音を発するという。ハンク・マーロウの話で存在が語られた。
巨大毒蛇
全長18m以上、全高1.5m以上になる大蛇。コブラ型ではない。小説版に登場。70年代版の大蛇へのオマージュか。
サイレン・ジョー
ワニのような20m弱の巨大水棲生物。背中には成長とともに自生した植物で覆われており、カモフラージュが得意(参照)。
新たに来た調査隊に襲いかかるが、コングに顎を引き裂かれて倒され、その死骸はデス・ジャッカルやサイコ・バルチャーに捕食された。
スワンプ・ロカスト
湖に生息する8.5m以上の水生肉食昆虫(参照)。水面に倒木のような脚をだして擬態し、獲物を待つ。その擬態の巧さはバンブー・スパイダーと上位を争うほど。
マグマ・タートル
12m以上の巨大な亀で、岩石のような見た目で甲羅に木が生えている。超高温への耐性が高く、高温の血液を防御手段に活用する姿はまさに動く火山であり、捕食者たちも近づくことを避けている。
デス・ジャッカル
1.8m以上から3.6m以上になる四足の捕食者。学名はスピナエ・モーテム(参照)。デイノニコサウルス類の恐竜に似た哺乳類の一種でタテガミを生やしている。獰猛で食欲旺盛であり、人間や怪獣の死骸に共食いばかりか自分自身の体も捕食しており、群れには片手片足が欠損してる個体も多い。
スピリット・タイガー
頭部に光輝く鹿の角を生やした巨大なホワイトタイガー。「ホーリー・タイガー」や「イカルス・ティグリス」などとも呼ばれる。基本的に体長4.27mだが、さらに巨大な個体も存在する。髑髏島の生物で最も神秘的で優雅な姿をしており、調査隊が発見した当初は幻覚とも捉えられていたとされ、イーウィス族も「風の陛下」と畏敬の念を抱いている。
元々没案の怪獣の一つだったが後に『KINGDOM KONG』にて登場。髑髏島から地下空洞の調査を行おうとしたモナーク職員たちの前に突如現れ襲いかかったが、コングにねじ伏せられ沈黙。しかし、その後に恐ろしい脅威が髑髏島に襲来し……。
(検討されていたデザインには顔が血塗れの姿や牛の角を生やした姿、皮膜を持った姿、更にはとあるゲームの獣の神様のような姿まであった)。
その他
特徴的な角を持つ鹿は映画に登場した。他媒体を含めれば前述のラプトルのような肉食獣からダンクルオステウスのような怪魚、木のような緑色のフラミンゴ、巨大な肉食性の植物、水牛、シラサギ、トンボなどがいる。
また、角のあるホワイトタイガーのような虎、島のように背中に植物が生えた巨大亀、巨大な虫、巨大なワニなども検討されていたことがあり(参照)、ラスボスは龍や大蛇(70年代版の敵)の姿であり、ヘリコプリオンのような顎をしたデザインもあった(参照)。
また、そのうちのいくつかはアメコミ版などの他媒体で登場を果たしている。
さらに、エンドクレジット後のラストシーンではMONARCHが写真に記録していた世界各地の壁画に描かれていたという、ゴジラ、ラドン、モスラ、キングギドラのシルエットが映し出され、これが3作目の『キング・オブ・モンスターズ』への重要な伏線となっている。
「Kong is not the only king.(“王”はコングだけではなかったということだ。)」
キャスト
キャラクター | 演者 | 吹き替え |
---|---|---|
ジェームズ・コンラッド | トム・ヒドルストン | GACKT |
プリストン・パッカード | サミュエル・L・ジャクソン | 手塚秀彰 |
メイソン・ウィーバー | ブリー・ラーソン | 佐々木希 |
グレン・ミルズ | ジェイソン・ミッチェル | 河本邦弘 |
ヒューストン・ブルックス | コーリー・ホーキンズ | 杉村憲司 |
ジャック・チャップマン | トビー・ケベル | 小松史法 |
レグ・スリフコ | トーマス・マン | 山崎健太郎 |
ウィリアム・"ビル"・ランダ | ジョン・グッドマン | 石住昭彦 |
ハンク・マーロウ | ジョン・C・ライリー | 石田圭祐 |
アール・コール | シェー・ウィガム | 綱島郷太郎 |
ヴィクター・ニエヴス | ジョン・オーティス | 後藤敦 |
サン・リン | 景甜 | 伊藤静 |
スティーブ・ウッドワード | マーク・エヴァン・ジャクソン | 伊藤和晃 |
ウィリス上院議員 | リチャード・ジェンキンス | 仲野裕 |
ジョー・レルス | ユージン・コルデロ | 真壁刀義 |
グンペイ・イカリ | MIYAVI |
余談
2024年パリオリンピック男子200m個人メドレーの予選の際に、アメリカ代表のシェーン・カサスの右脇腹に彫られたこの作品のセリフである「不名誉より死」という日本語の刺青が中継に映り込み、話題となった。(この話題は讀賣新聞のWeb版の記事にまでなっている)。
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