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B-2

びーつー

アメリカのノースロップ社(現ノースロップ・グラマン社)とボーイング社が開発したステルス戦略爆撃機。尾翼などを持たない機体は「全翼機」と呼ばれており、構想そのものはナチスドイツ、ホルテン兄弟やジャック・ノースロップによるアイデアに始まっている。
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概要

公式愛称は『スピリット』。

日本語の場合と同様に魂・幽霊・精神の両方の意味がある。

各機にはパーソナルネームとして『Spirit of ○○(地名)』という名が与えられている。


B-2の特徴は尾翼などの安定翼を持たない事であり、このような機は全翼機と呼ばれている。

この機体形状は徹底したRCS(レーダー反射断面積)低減のためであり、他にも赤外線や目視に対しても対策が盛り込まれている。


計画の始まりは1978年で、当初の目的はICBM基地への先制核攻撃である。開発計画は空軍上層部にすら秘密に進められており、計画の存在も1988年4月に明らかにされるまでは極秘扱いだった。


試作機の予算は1982年に計上されており、最初の機体は1988年11月22日にパームデール工場でロールアウトしている。

初飛行は1989年7月17日、エドワーズ空軍基地にて行われた。


1997年には初期作戦能力を獲得したが、後述するようにギネスブックに載るほどの高価な機体であり、また撃墜などによる機密漏洩の危険性から軍が出撃を躊躇したこと、爆撃機に搭載できるような誘導爆弾がなかったことなどから、実戦投入は初飛行から約10年後となる1999年となった。


詳細

F-117と違ってB-2の設計にはスーパーコンピュータが導入されており、ステルス性と飛行性能を高度に両立するように設計されている。

尾翼の存在しない全翼機であることに加えて、機体外縁部の角度を徹底的に揃え、更に機体全面にレーダー波を吸収する塗料が塗られている。

これらの努力によりレーダーに対しては小鳥ほどの大きさにしか映らない。


また対レーダー以外にも、例えば廃棄熱の赤外線探知を避ける為、エンジンノズル周辺を囲って地面側に壁を作っており、エンジン排気は空気と混合されて低い温度で排出される。

飛行機雲が出来そうになると気象センサーが警報を鳴らして高度を変えさせる仕組みになっており、これにより目視への対策までされている。

さらに、塩化フッ化スルホン酸という化学物質を散布して飛行機雲の発生を防ぐシステムまで装備されていた(ただしこの物質は毒性と腐食性が極めて強いため、現在は使われていない様子)。


爆撃照準にはレーダーも使用するが、電波の照射はごく短時間に、範囲も狭められる。

これはレーダーの逆探知を避けるためであり、ここでもステルス性能には細心の注意が払われている。


空力的な不安定さは如何ともしがたく、人力での制御は不可能なのでコンピュータ制御によって姿勢が維持される。

高度な自動化により、大半の複座機では規則上禁止されている一時的なワンマン操縦が許されており、2名のパイロットは交代で仮眠を取ったり、後方のギャレーで食事の支度をしたり出来る。

コスト

開発期間は長期にわたり、冷戦中だったにもかかわらずかれこれ10年もの歳月を費やしている。

当然、開発資金も莫大なものとなった。


B-2の価格はにも例えられ、機体と同じ質量の金と同等、あるいはそれ以上と言われる。

機体単価そのものは900億程度だが、開発費用も加えて機体数で割ると実質2000億程度。これはイージス艦よりも高価であり、例えば海上自衛隊のイージス艦であるあたご型護衛艦の建造費は1隻当たり1500億円にも満たない。

もちろん機体の維持費用も非常なもので、整備の殆どは「表面の滑らかさ維持」のために費やされる。

その上7年に一度はステルス用の機体コーティングのし直しが必要だという。しかもこのコーティングは天候の影響も受けやすく、整備には湿度・気温などを完全にコントロールできる専用の格納庫が必要なため運用できる基地は限られてしまう。

空飛ぶ国家予算とは、言い得て妙である。


冷戦が終結し、国防予算が減額される中にあって調達は非常に困難であり、当初132機導入される予定は最終的に21機にまで減らされた。

もちろん、機数で「頭割り」になる筈だった開発費も高額になっている。

輸出もされておらず、高額には更なる拍車がかかった。


以上のようにすべての要因が価格の高騰へと結びつき、現在では世界一高価な航空機として、ギネスブックにも掲載されている。

2008年にはグアムで史上最も金額的損失の大きい墜落事故を起こしている(この事故は端的に言えば速度や姿勢を検知するセンサーすら天候に弱かった事が原因で起きたもので、すぐさまセンサーの改善が行われた)。


ただし、コストパフォーマンスの面で考えるとむしろ格安の機体であると言うこともできる。

非ステルス機で爆撃を行おうとすると敵に発見されることは間違いなく、護衛の戦闘機が必要になる。

また敵の対空兵器が脅威となるため、別途SEADを行うための対地攻撃機を用意し無ければならない。

ここまでやっても対空砲や小型の対空ミサイルは殲滅しきれないため、回避機動を実行しながら爆撃を行う必要がある。激しく機動しながらの爆撃は成功率が低いので予備を複数用意する必要がある。

当然これらの機体に補給する空中給油機も必要となり、数えるほどの爆弾を投下するためだけに数十機の大編隊が必要になり、これを支える整備要員なども含めれば人的コストも莫大なものとなる。

しかも敵地で被撃墜機が出れば、特殊部隊を投じて救難まで行わなければならなくなる。


一方でB-2にはそのような潤沢な支援は必要ない。

あらゆる手段に対する高度なステルス性により、対空砲もミサイルもB-2をロックオンできないし、そもそも防空レーダーに探知されないのだから備えることすら不可能である。ただ粛々と目標上空を通過し、投下し、そして帰投すればいい。


…とメリットは大きいものの、やはり実戦配備できるほどの潤沢な資金が無ければ、運用はおろか機体の製造すらままならないし、仮に配備できても高い整備費用も計上しなければならない。当時の米軍がどれほど予算を湯水が如く使っていたかが分かるレベルを要求される。

ICBMの発達により戦略爆撃機の存在意義が薄れゆく中、B-52は100年現役を実現しようとしているものの、B-2はその金食い虫な面もあって機体を損失しても補充すらされなくなった。まさに冷戦が産んだ怪物の一つと言えよう。


ちなみにB-2が生産されなくなった理由としては、おそらくペイロードの問題や戦況変化にも起因すると思われる。戦略爆撃機の本来の目的とは敵地に行き大量の爆弾をばら撒いてくること。特にB-2は上記の通り敵地に潜り込み、気付かれないまま敵地の重要拠点に核を落とすことを目的としている。が、仮想敵国のソ連が無くなりICBMに御役目を奪われた現在、通常作戦に駆り出されることもある。それも比較的低強度な紛争に。


しかしそのような戦場は本来、F-35F/A-18E/Fといった様々なマルチロール機やA-10対地攻撃機が主役となる。技術の進歩で戦闘機が爆撃機の役割をわずかながら肩代わりできるようになっているのもあるが、危険な地域にはMQ-9のような無人機が出動する。本来ならば運用するほどでもない作戦に投入されていることになるのだが、これは低強度紛争が起こりやすくなり、主に国家vs国家ではなく国家vsテロの紛争に移り変わっていることが関係している。

また、B-2はB-52に比べてステルス性能ガン振りといっても過言ではない。故に旧式でありながらハードポイント増設といった積載量の為の改修ができるB-52に比べ、どうしてもペイロードは劣る。(内部にミサイルや新型爆弾を積載するための改修はできるので、その点は変わらない)


しかし何よりもその存在を否定するのは、小型無人機と進化したレーダーシステムである。いくら究極を目指して作られた爆撃機と言えど、開発から既に30年。見つける側も進化する。かつて第二次世界大戦においてドイツが開発し、大雑把にしか敵の位置が分からない役に立たない技術として日陰者になったUHFレーダーはAESAやデジタル解析技術の進歩も相まってステルス機ですら捕捉可能なレーダーとして改良され、恐るべきものとなった。特に中国やロシアはこれらの開発に注力しており、B-2を撃墜できるかどうかは別として、見つからないのは非常に難しい。

無人機も拍車をかけており、ドローンによるスウォーム攻撃はその最たるものだろう。爆撃機を飛ばすよりも安価な自爆ドローン。いわゆるカミカゼドローンを大量に飛ばせばミサイルに頼らずとも、高価な対空システムが処理不可能になるレベルの飽和攻撃状態を作り出せる。


だが忘れないで欲しい。B-2は冷戦があったからこそ産まれた爆撃機であり、その技術は様々な点で転用・流用され、基礎になり後々の技術に繋がっている。またそのステルス性を買われる任務もある。決して無駄な爆撃機ではないのだ。


実戦配備と現在

最初の実戦は戦力化から2年後の1999年、コソボ紛争においてNATO軍が実施した、セルビア空爆を主とする「アライド・フォース作戦」であると言われている(機体が機体なだけに本当かどうかは神のみぞ知るところだが)。

出撃ソーティ数ではNATO全体の0.15%でしかないが、投下した爆弾の数は11%にも及び、米軍が担当した爆撃目標の内33%はB-2に任されていた。

現代の爆撃作戦には必携となったJDAMを最初に搭載した機体でもある。


恐るべき攻撃効率を示した一方、維持の難しさも問題とされた。先述したようにB-2は駐機する基地に潤沢な設備が必要であった。そのため出撃は本国ないしは英国からとなり、2001年からのアフガニスタン戦争や2003年のイラク戦争ではかなりの長躯出撃をして任務を敢行している。一回の任務の最長記録は44.3時間である。


2017年にはISISへの攻撃に対しても使用された。


後継計画

将来の老朽化の懸念はもとより、生産数が当初の予定を全く満たせなかったこともあり、2009年から実質的な後継機である「Long Range Strike Bomber」計画が主張され始めた。

第二次世界大戦でドーリットル空襲に参加した爆撃機部隊「ドーリットル・レイダーズ」から名を頂戴しB-21レイダーと呼称されるこの機体は、B-2やB-52を置き換えるべく2020年代就役を目処に開発が始まった。


外見的にはB-2を踏襲していると見えるこの機体は、B-2の生産未了を反省してコストの低減を目指している。

2022年現在で分かる情報としては、様々な書類認可をスキップすることでタイムスケジュールの短縮と開発期間の余裕を持たせることができているらしい。


登場作品

Ace Combat Series

自機として使用が可能。B-1に比べてステルス性が高いが、機動性と速度に劣る。プレイヤーが任意で攻撃を行う事は出来ず、対地攻撃モードであるエアストライクモードに入った時にのみ攻撃可能。機体名は"Spirit of America"。

自機として使用可能だが、対空攻撃能力を持たないため、キャンペーンミッションでは使用不可能。前述の『アサルトホライゾン』とは異なり任意での攻撃が可能となっており、二種類の対地攻撃兵装を用いて空爆を行なえる。パイロットの技量次第では空中の目標に当てるという芸当も可能。

ジャック・ノースロップの逸話に関係してか、強化によって「悲願成就」の通り名を獲得することが出来る。

現実同様に非常に高価だが、イベントドロップでは痛機仕様も登場し、こちらは安価で入手できる。

金より高価な航空機になんて事をするんだって突っ込みはあるだろうが。


ゴジラが港区まで侵攻してきたため、米軍が米大使館防衛の目的で3機のB-2をグアムから出撃させる(日本側には離陸後に通告された)。

B-2が投下したMOP2(Massive Ordnance Penetrator:大型貫通爆弾)は初めてゴジラに有効なダメージを与えることに成功するが、この攻撃が今作最大の惨劇を引き起こす切っ掛けを作り全機撃墜されてしまうばかりか、これ以降のゴジラが対空能力を大幅に強化する原因にもなってしまった。

また、米国が切り札とも言えるB-2を一挙に三機も失ったことがその後の核兵器使用の強硬論にも繋がったと思われる。

ネタバレになるので詳細は伏せるが、墜落し、朽ちかけた姿で背景に描かれた。


モデルは特に言及されていないが、B-2とよく似た姿をしている爆撃機。

特殊な合金で作られており、頑丈。

爆撃機なのに何故かミサイルやガトリングガンが装備されている。

体当たりで敵の戦闘機を真っ二つにするなどハチャメチャ。


余談

B-2には、ノースロップ製全翼爆撃機としての先祖ともいえる機体が存在する。

それが、YB-35とYB-49、通称「フライング・ウィング」である。前者はプロペラ機で、後者はそれをジェット化したものであった。第二次世界大戦終戦直後に完成したが、当時の技術では全翼機故のさまざまな問題を克服できず、実用化はされなかった。

B-2は、それらの開発中止から30年以上の時を経て、先祖の悲願を成し遂げたのだ。


そもそも、全翼機の実用化は元々ノースロップの創業者ジャック・ノースロップの悲願であり、同社自体も彼の夢を実現するために設立されたものであった。

この点についての詳細は全翼機の記事に詳しいので、そちらを参照されたし。


関連タグ

爆撃機 ステルス機 全翼機 ノースロップ ノースロップ・グラマン


B2マンタレイ:B-2がモデルとなった『メタルサーガ』の賞金首


ドレッドウィング:B-2に変形するトランスフォーマー。『トランスフォーマーG2』にてサイバトロンデストロンのいずれにも属さない第3勢力として登場。


ガオガイガー:『勇者王ガオガイガー』の主役ロボット。機体を構成する合体パーツの一つ「ステルスガオー」がB-2を模しており、合体後はちょうどB-2を逆さまに背負うような姿となる。


Ho229:ドイツの全翼型戦闘攻撃機。


ドロンチ ドラパルト トゲキッス

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