概要
こんごう型護衛艦に続いて2004年から建造された、海上自衛隊第5世代のミサイル護衛艦。こんごう型に続くイージス艦でもある。2008年までに同型艦2隻が就役している。
全長165メートル、幅21メートル、基準排水量7,750トン、満載10,000トン。建造当時、イージス艦としては世界最大級の排水量と推測されており、当時の海自自衛艦の中でもとわだ型補給艦とましゅう型補給艦に次ぐ規模である。
国際戦略研究所では満載排水量9,750トン以上の水上戦闘艦を一律に「ミサイル巡洋艦」と見なしていることから、見方によってはミサイル巡洋艦に該当する。
同型艦
いずれも旧日本海軍の重巡洋艦「愛宕」「足柄」から艦名を受け継いでいる。
耐用年数を迎える旧式のたちかぜ型護衛艦「たちかぜ」「あさかぜ」の後継艦として建造が計画され、2隻が三菱重工長崎造船所で建造。たちかぜ型2隻と交代する形で就役した。しかし、たちかぜ型3番艦「さわかぜ」の代艦は策定されず、同艦退役に伴う3番艦以降は取得されなかった。
その後情勢の変化に伴い、2013年から更に2隻の建造・配備が追加で計画されたが、これらは次級のまや型護衛艦「まや」「はぐろ」として建造されため、結果的にあたご型護衛艦の建造は2隻のみで終わっている。
スペック
排水量 | 基準7,750トン、満載10,000トン |
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全長 | 165メートル |
最大幅 | 21メートル |
機関方式 | COGAG方式 |
主機 | ゼネラル・エレクトリック社製LM2500ガスタービンエンジン×4基 |
推進器 | 可変ピッチ・プロペラ×2軸 |
最大速力 | 30ノット |
乗員定数 | 約300名 |
兵装 |
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電子装置等 | |
搭載機 |
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設計・装備
前級こんごう型との大きな差異として、主砲を前級のオート・メラーラ製54口径127mm速射砲から米海軍の最新機種である62口径5インチ単装砲Mk.45mod.4へ変更している。こんごう型では主砲専用のFCS(射撃管制装置)を搭載して対応する必要があったが、本級のMk.45ではイージスシステムでの統合制御が可能となり、VLSと同じAN/SPY-1D(V)を火器管制レーダーとして使用できるようになった。
また、艦後部に哨戒ヘリコプター用格納庫が追加された。これは、ひゅうが型護衛艦の就役で発生した哨戒ヘリ運用の偏りを減らすためとも言われており(これ以前のヘリコプター搭載護衛艦は最大搭載数が3機であり、ひゅうが型は最大11機と図抜けて多かった)、その関係でMk.41垂直ミサイル発射機の配置が前級こんごう型と逆転し、格納庫設置に伴うレーダー射界確保のため、後部のアンテナ2面の装備位置が1段上へとズラされている。
ただし、発着艦支援装置の機体移送軌条を除けば、ベアトラップや航空動力室など「哨戒ヘリを搭載しての運用に必要な装備」は後日装備になっており、航空要員の配置もなされていないため、必要に応じて艦内の設備を微調整する必要がある。
他にステルス性を意識した塔型マストを採用するなど、最初からステルス性を考慮した設計が行われており、艦体や上部構造物側面の傾斜がそのために最適化されている。主砲塔も平面を多用したステルス形状になり、煙突の角も丸みが廃されている他、ヘリコプター格納庫も複雑な形態になっている。
イージスシステムも当時最新のベースライン7.1Jへとバージョンアップしている。当初BMD(弾道ミサイル防衛)の能力は持っていなかったが、BMD5.0CUの導入にあわせてBMD能力を獲得。さらにイージスシステムもベースライン9へと更新された。
血を分けた異母姉妹
実質的な原型は米海軍のアーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦フライトIであり、あたご型の準同級艦として原型を同じくするアーレイ・バーク級フライトIIAと韓国海軍の世宗大王級駆逐艦が存在するが、それぞれの国における各艦の運用体制が異なる為、ほぼ同システムの艦艇にもかかわらず違いを見て取る事ができる。
あたご型はフライトIIAと比べると、群司令座乗の旗艦としての司令部機能を充実させた為、艦橋が2層高くなっており、船体長・大型の艦橋構造物・平甲板から立ち上がったヘリ格納庫など、むしろタイコンデロガ級ミサイル巡洋艦に匹敵するほどのサイズになっている。艦の全長はフライトIIA比で約10m、こんごう型比で4m延長している。その為、基準・満載排水量ともフライトIIA比で1,000t近く大型化している。
一方、フライトIIAは60隻を超える整備を行うコスト重視の量産型防空艦であり、あたご型に比べて、戦闘群を構成するサブシステムとしての性格が強い。
また、世宗大王級駆逐艦は、国力上多数の大型艦艇の配備が行えない韓国海軍の事情もあり、司令部機能・多数のVLS・ゴールキーパー 30mm機関砲とRAM近接防空ミサイルを併用する充実した近接防空装備など、1隻に多数の要素を詰め込んだ重武装艦となっている。
あたご型は平甲板型で、上記の準同型艦と比べてヘリコプター甲板・格納庫が若干広いがヘリの運用は1機のみである(上記の通り設備のみ搭載、固有機・機材・人員は未搭載)。一方、フライトIIA、世宗大王級駆逐艦は長船首楼型でヘリを2機運用する。
関連タグ
前級:こんごう型護衛艦
次級:まや型護衛艦