概要
こんごう型護衛艦に続いて建造された、海上自衛隊第5世代のミサイル護衛艦。こんごう型に続くイージス艦でもある。
耐用年数を迎える旧式のたちかぜ型護衛艦の後継艦として建造が計画され、あたごは1番艦「たちかぜ」と、あしがらは2番艦「あさかぜ」と交代した。イージス艦としては建造当時、世界最大級の排水量を有すると推測されており、海上自衛隊の保有する艦の中でもましゅう型補給艦、ひゅうが型護衛艦といずも型護衛艦の各ヘリコプター搭載護衛艦に次ぐ規模である。
設計・装備
こんごう型との外観上の大きな差異は
- 主砲をオート・メラーラ製54口径127mm速射砲から米海軍の最新機種であるMk.45 mod.4 62口径5インチ単装砲へ変更。
- 哨戒ヘリコプター格納庫付与による航空機運用能力の追加。
前者はイージスシステムでの統合制御ができるようになっており、こんごう型では主砲に専用のFCS(射撃管制装置)を搭載して対応していたものを、本級ではVLSと同じAN/SPY-1D(V)を火器管制レーダーとして使用できる。
後者は主にひゅうが型護衛艦の就役により発生した哨戒ヘリ運用の偏りを減らすためとも言われており(これ以前に就役していたヘリコプター搭載護衛艦のはるな型護衛艦としらね型護衛艦は最大搭載数が3機であり、ひゅうが型は最大11機と図抜けて多かった)、その関係でMk.41ミサイル発射機の前後配分がこんごう型とは逆転している。
ただし、発着艦支援装置の機体移送軌条を除けば、ベアトラップや航空動力室など「哨戒ヘリを搭載しての運用に必要な装備」は後日装備になっており、航空要員の配置もなされていないため、必要に応じて艦内の設備を微調整する必要がある。
また最初からステルス性を考慮した設計が行われており、艦体や上部構造物側面の傾斜がそのために最適化されている。主砲塔やマストも平面を多用したステルス形状になり、煙突の角の丸みが廃されている他、ヘリコプター格納庫も複雑な形態になっている。
血を分けた異母姉妹
準同級艦といえるあたご型とアーレイ・バーク級フライトIIAと韓国の世宗大王級駆逐艦であるが、それぞれの国における各艦の運用体制が異なる為、ほぼ同システムの艦艇にもかかわらず違いを見て取る事ができる。
あたご型はフライトIIAと比べると、群司令座乗の旗艦としての司令部機能を充実させた為、艦橋が2層高くなっており、船体長・大型の艦橋構造物・平甲板から立ち上がったヘリ格納庫など、むしろタイコンデロガ級ミサイル巡洋艦に匹敵するほどのサイズになっている。艦の全長はフライトIIA比で約10m、こんごう型比で4m延長している。その為、基準・満載排水量ともフライトIIA比で1,000t近く大型化している。
一方、フライトIIAは60隻を超える整備を行うアーレイバーク級というコスト重視の量産型防空艦であり、あたご型に比べて、戦闘群を構成するサブシステムとしての性格が強い。
また、世宗大王級駆逐艦は、国力上多数の大型艦艇の配備が行えない韓国海軍の事情もあり、司令部機能・多数のVLS・ゴールキーパー 30mm機関砲とRAM近接防空ミサイルを併用する充実した近接防空装備など、1隻に多数の要素を詰め込んだ重武装艦となっている。
あたご型は平甲板型で、上記の準同型艦と比べてヘリコプター甲板・格納庫が若干広いがヘリの運用は1機のみである(設備のみ搭載、固有機・機材・人員は未搭載)。一方、フライトIIA、世宗大王級駆逐艦は長船首楼型でヘリを2機運用する。
同型艦
いずれも旧日本海軍の重巡洋艦「愛宕」および「足柄」の名を受け継いだ。
あたご型は上記の2隻が三菱重工長崎造船所で建造されたが、たちかぜ型3番艦「さわかぜ」の代艦が策定されず、さわかぜの退役に伴う3・4番艦は取得されなかった。
その後情勢の変化に伴い2013年に入ってから更に2隻の建造・配備が追加で計画される事となったが、これらは次級のまや型護衛艦「まや」「はぐろ」として建造されため、結果的にあたご型護衛艦は2隻のみで終わっている。
関連タグ
前級:こんごう型護衛艦
次級:まや型護衛艦