概要
即応性の向上などを目的として開発されたミサイル発射システム。簡単に言えばミサイル弾薬庫を発射機と兼用させたもので、それら「セル」を複数組み合わせて構成される。基本的にミサイルは垂直に発射され、空中で方向転換して目標に向かっていく。発射方式はセル内でミサイルを点火して発射するホットローンチ方式と、ミサイルをガスでセルから射出した後に点火するコールドローンチ方式の2種類からなり、構造の単純さではホットローンチ方式が、安全性ではコールドローンチ方式がそれぞれ勝る。
従来のミサイル発射機に比べて船体に埋め込むためにステルス性に優れ、個別のセルにミサイルが装填されるために一基が故障しようとも他のセルへの影響もない、連続発射能力に優れているなど、利点が多いが「装備するセルの数を減らしてもあまりお値段が下がらない」「発射したミサイルは目標に向けて方向転換する必要がある(=近距離目標への対処にはあまり向かない)」などの欠点があるのがタマにキズ。
潜水艦上部のミサイル発射筒もVLSに含まれる。
主要なVLS
- Mk41:最も普及しているVLSの一つで、海上自衛隊の主な護衛艦にも搭載されている。搭載可能な兵器はVLSのモジュールにもよるが、ESSM、シースパロー、アスロックVLA、スタンダードミサイル、トマホークミサイルなどが搭載できる。
- Mk48:シースパローやESSMなどの短距離対空ミサイルのみ搭載可能なVLS。海上自衛隊でもむらさめ型護衛艦にMk41との混載で搭載されている。
- Mk45:潜水艦に搭載されているVLSで、トマホーク等を運用する。
- SILVER:フランスのVLSで、対空ミサイルを搭載している。
- S-300F:ロシア(旧ソ連)のVLSで回転式ドラムを備え、複数のミサイルセルで一つの発射口を共有する。発射口を共有する構造上、ミサイルは射出後にセル外でロケットモーターに点火するコールドランチ式となっている。なお、「S-300F」はVLSや射撃指揮装置などシステム全体の名称で、VLS自体の名称は「B-204」である(PU-203というVLSも対応)。
この他にも韓国、中国等がVLSを開発し、配備している。
なお、英国BAEシステムズは2010年に大型航空機用VLSの特許出願をしている。
関連タグ
対戦車ミサイル:AGM-114Lロングボウ・ヘルファイア対戦車ミサイルを艦上で運用するにあたり、VLS方式が採用されている。