DDG-177「あたご」は、海上自衛隊が運用するイージスシステム搭載ミサイル護衛艦の1隻。あたご型護衛艦1番艦のイージス艦である。
イージス艦として現代によみがえる愛宕
三菱重工長崎造船所で建造され、2005年に進水、2007年に就役した。艦名は京都府の愛宕山に由来し、日本海軍の摩耶型砲艦3番艦の初代「愛宕」、および高雄型重巡洋艦2番艦の2代目「愛宕」に次いで本艦で3代目。
第3護衛隊群第3護衛隊に所属しており、定係港は舞鶴である。
【船体・機関】
船体設計はステルス性が重視されており、艦上構造物の傾斜は最適化されている。特に前級のこんごう型護衛艦では丸みを帯びていた煙突は、すべて角形になった。また、こんごう型護衛艦とは違い、ヘリコプター用の格納庫も備えている。
機関はゼネラル・エレクトリックLM2500が4基のシフト配置で2軸推進である。
【イージスシステム】
イージスシステムは最新のベースライン7で、こんごう型よりもバージョンアップしている。当初ミサイル防衛の能力は持っていなかったが、BMD5.0CUの導入にあわせてミサイル防衛能力を保持。さらにイージスシステムもベースライン9へ更新された。
【SPY-1レーダー】
イージス艦の特徴ともいえる優秀なレーダーで艦上構造物に配置されている。
【VLS】
VLSはMk41を前方に64セル、後方に32セルとこんごう型とは逆転しているが、これはヘリコプター格納庫の配置を考慮した結果である。
【対潜戦闘システム】
対潜戦闘システムは原型のアーレイ・バーク級フライトⅡAと同じSQS-89を搭載している。
【艦載砲システム】
あたご型では主砲をMk45mod4に換装しているが、CIWSは従来どおりファランクスを搭載している。
【電子戦システム】
電子戦システムとしてNOLQ-2Bを採用し、また、パッシブECMのためにMk36を採用している。
【艦載機】
艦載ヘリコプターとしてSH-60J/Kを搭載可能なヘリコプター格納庫を設けている。
痛ましき衝突事故を乗り越えて
「あたご」の艦名は部内応募により決定したものだが、この際、旧海軍を代表する艦名として「長門」→「ながと」あるいは、太平洋戦争を生き延び戦後は中華民国(台湾)海軍で余生を過ごした「雪風」にちなんだ「ゆきかぜ」も候補に挙がっていた。しかし「ながと」「ゆきかぜ」はともに、時期尚早と判断され見送られ(「ゆきかぜ」は海自でも、1954~85年にかけて存在した、はるかぜ型護衛艦の2番艦として使用実績がある)、かつ「こんごう」型からのミサイル護衛艦は命名法則として山岳の名を用いることになったため、結果的に「あたご」となったといわれている。
ただし、砲艦の初代愛宕は座礁のためほかの同型艦3隻より早く除籍され、重巡洋艦の2代目愛宕もレイテ沖海戦の緒戦で米海軍の潜水艦に撃破され、悲劇的な最期を遂げたことから、「あたご」という艦名には反対意見も多く、当初から懸念する声もあった。
その懸念は異なる形で的中してしまう。
就役直後の2008年2月19日、本艦は千葉県南房総市沖で漁船と衝突、漁船側の乗組員2人を死に至らしめてしまう事故を引き起こしてしまう。「あたご」は事故後しばらく横須賀基地に留め置かれ、翌月下旬まで乗組員の外出が禁じられたという。
その後、本艦は戦列に復帰するが、この衝突事故では衝突前の漁船との位置関係から、漁船側に回避義務があったことが明らかになった。
その痛ましき衝突事故を乗り越え、2010年には「あけぼの」とともに環太平洋合同演習リムパックに参加。2013年には米軍との合同訓練ドーンブリッツ13に「ひゅうが」とともに参加という実績を積み重ね、現在にいたる。
また最近では、第2回護衛隊群米国派遣訓練に参加したが、このときは某ぽいぽいを従えていた。
関連イラスト
2015年8月の本艦の一般公開では、この艦隊これくしょんの愛宕のPOPを堂々と艦内に飾ったり、バルーンで掲げていた模様。
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「あたご」と同じく第3護衛隊群所属の護衛艦
みょうこう:「あたご」と同じく舞鶴を定係港とする、前級・こんごう型護衛艦の3番艦。2012年公開の米映画バトルシップの劇中で「みょうこう」とされているイージス艦は、実は「あたご」が演じている。
ひゅうが:舞鶴を定係港とするヘリ母艦。竣工当時は横須賀配属だった。
せんだい:第14護衛隊配属で舞鶴を定係港とする、あぶくま型護衛艦の4番艦。竣工当時は佐世保配属、その後呉を経て舞鶴にやってきた。
同時期に建造された海外艦
世宗大王(イージス艦):本艦同様に2010年のリムパックに参加した、韓国海軍初のイージス艦。やはり米軍のアーレイ・バーク級フライトⅡAをもとに建造された。同級は3隻が在籍する。
日本海軍
愛宕(重巡洋艦):重巡の2代目愛宕は呉海軍工廠(現・JMU呉事業所)で建造された。