概要
韓国海軍が運用しているイージス艦。ヒュンダイ(現代)重工業で建造された世宗大王級駆逐艦の1番艦であり、2007年5月25日に進水、2008年12月22日に竣工した。現在、プサン基地を定係港にしている。
設計は、米軍のアーレイ・バーク級駆逐艦フライトⅡAをタイプシップとしているため、よく似た外形をしながらも、国産VLSの追加搭載などによる設計変更が行われており、艦体長はアーレイ・バーク級より一回り長くなり、海上自衛隊のあたご型護衛艦とほぼ同サイズである(幅は全艦とも同じ)。
また武器システムは日米のイージス艦に比べて重武装化され、VLSのセル数が128もあり、発射筒の対艦ミサイルに至っては、日米イージス艦の2倍である16発を搭載する点が特徴。
本艦の稼働にともない、大韓民国は米国、日本、スペイン、ノルウェーに続き世界で5番目のイージス艦導入国となった。
同型艦は、
- DDG-991「世宗大王(セジョンデワン)」
- DDG-992「栗谷李珥(ユルゴク・イ・イ)」:2010年竣工
- DDG-993「西厓柳成龍(ソエ・リュ・ソンニョン)」:2012年竣工
の計3隻。
さらに改良型「バッチII」の建造も始まっており、
- DDG-995「正祖大王(チョンジョ・デワン)」
- ほか2隻
の建造が計画中。これにより韓国イージス艦は合計6隻となる。
スペック
- 排水量:10,290t(満載)
- 全長:165.9m
- 全幅:21.4m
- 喫水:6.25m
- 機関:COGAG方式、LM2500ガスタービンエンジン(26,250bhp)4基
- 推進器:2軸
- 電力:ロールス・ロイスAG9140RFガスタービン発電機(3,000 kW)3基
- 速力
- 最大:30ノット以上
- 巡航:16ノット
- 航続距離:5,500海里(20ノット)
- 乗員:300人以上
- 兵装
- Mk.45 mod.4 62口径5インチ単装砲:1基
- ゴールキーパー30mmCIWS:1基
- Mk.41 VLS(艦首側48セル+艦尾側32セル):2基
- 国産艦対艦ミサイル「ヘソン(海星)」を発射可能
- 国産VLS(48セル):1基
- 艦対地巡航ミサイル「チョンリョン(天龍)」: 32発、艦対潜ミサイル「ホンサンオ(紅鮫)」: 16発を発射可能
- Mk.49 21連装近SAM発射機:1基
- SSM-700K SSM4連装発射筒:4基
- Mk 32 3連装短魚雷発射管:(Mk 46 324mm対潜短魚雷) 2基
世宗大王級は合計128セルというVLSの多さから世界最強の水上戦闘艦とも呼ばれるが、1隻に多数の要素を詰め込んだ重武装艦となっている事から、アーレイ・バーク級やあたご型と比べ設計にゆとりがないきらいがある。加えて、予算不足のためミサイルは半分しか搭載できておらず、また韓国メディアでは運用維持及び補修などに必要な予算確保などの問題があるとの指摘もあるという。
韓国軍も流石にこの点は理解したのか、改良型「バッチII」では満載排水量を2,000トン程増やした12,000トン程度にしつつも、VLSは88セルまで削減、対艦ミサイルも日米のように8発まで減らされる。
日韓イージス艦の競演
本艦は2010年に、環太平洋合同演習リムパックに初参加した。このとき海自からはイージス艦の「あたご」が汎用護衛艦「あけぼの」をともない参加、同時期に竣工就役した日韓イージス艦が競演したことでも話題を呼んだ。
この帰国途上の8月12日、宮城県金華山沖東方約880キロで水兵1人が胃出血を起こし、韓国大使館経由で日本政府に救助を要請した。水兵は海自の救難飛行艇US-1により救助されている。
2012年には朝鮮民主主義人民共和国によるミサイル発射実験に対応して同型艦2隻とともに出動した。案の定ミサイルは放たれ、本艦はファンヘ(黄海)上空を飛翔するミサイルの軌跡を探知、ピョンサン(辺山)半島の西方約160kmの海上でミサイルの残骸を発見した。ミサイルの残骸は潜水艦救難艦により回収されている。
このミサイル発射実験は、海自でも「こんごう」「ちょうかい」といったイージス艦が出動、対応にあたっている。