下記以外の用例については天龍を参照。
概要
「天龍」(チョニョン)とは韓国海軍が開発した艦対地巡航ミサイルの一種。1990年代初期からADD(Agency for Defense Development:国防科学研究所)を中心に三星テックウィン社などで開発がすすめられ、実戦配備された。現在、同じく韓国海軍が開発した対空巡航ミサイル「海星」(ヘソン)、対潜ミサイル「紅鮫」(ホンサンオ)とともにセジョン大王級駆逐艦(イージス艦)に装備されているほか、今後チュンムゴン・イ・スンシン級駆逐艦の後期型にも搭載されるという。
なお韓国は米国と射程300kmを超える弾道ミサイルの保有を制限する覚書を交わしているが、本ミサイルは弾頭も500kg以下であるため、この覚書の規制を受けないとしている。
天龍は水中発射型も開発され、現在建造中のソン・ウォンイル級潜水艦(※)の4番艦以降にも搭載される予定。また今後5年以内に射程を1,000kmまで延長した改良型も開発されるとの情報もある。
- 射程:約500km
敵レーダーの探知を避けるために50~100mの低高度をマッハ0.73の速度で飛び、命中誤差は3m程度とされた。誘導方式はINS(Inertial Navigation System:慣性航法装置)と地形映像照合装置の組み合わせで、地形照合はミサイルに装備された赤外線カメラの映像と事前に入力された地形情報とで行われる。
- 推進方式:ターボファン
ロシアからの技術援助を受けた。
- 発射方式:コールドランチ式
発射はVLS(Vertical Launching System:垂直発射システム)から行われるが、海上自衛隊のあたご型護衛艦などに装備されているMk41ではなく、韓国が新規開発した国産VLSが使用される。これは同じく韓国が独自に開発したK-ASROCと共用のVLSでもあるという。
※「世界の艦船」2016年11月号において次期主力潜水艦KSS-3に搭載されるとの情報が出ているが、これがソン・ウォンイル級4番艦以降にあたるかどうかは不明。
天龍と玄武Ⅲ
先の項目で「今後5年以内に射程を1,000kmまで延長した改良型も開発される」との情報もある、と前置きしたが、2006年10月25日のチョソン日報によると、この時期にすでに射程1,000kmの地対地巡航ミサイル「玄武(ヒョンム)Ⅲ」が配備されたとされている。
その後開発を完了した天龍には、この玄武Ⅲとの関連がいくつか指摘されており、
・天龍と玄武Ⅲは同じものだとする説
・地上発射型が玄武Ⅲ、艦載型が天龍だとする説
以上の2つの説があるが、その詳細は不明とされている。
また開発時には、射程500kmのミサイルにイーグル1、同1,000kmのミサイルにイーグル2のコードネームが与えられていた。