概要
フリチョフ・ナンセン級フリゲートは、ノルウェー海軍で運用されているフリゲート。アメリカ製のイージスシステムを搭載したイージス艦である。設計はスペインのアルバロ・デ・バサン級フリゲートをベースとしている。
イージス艦としてはかなり小型で、満載排水量は約5,100トン、全長約132メートルしかなく、大きさは日本のあさぎり型護衛艦とほぼ同等である(それでもフリゲートとしては大きい)。
また艦隊防空能力を求めなかったことから、主武装となるVLSもわずか8セルのみで、自衛用のESSM艦対空ミサイルを搭載するのみ。レーダーも小型艦向けに素子数を大きく減らされたものとなっている。
とはいえど、イージス艦としての各種ハイテク技術や戦術ネットワーク機能は健在であり、むしろイージス艦の機能をここまで小型化しつつ詰め込めたとも言えよう。
同型艦は5隻。
- F310:フリチョフ・ナンセン(1番艦)
- F311:ロアール・アムンセン(2番艦)
- F312:オットー・スヴェルドルップ(3番艦)
- F313:ヘルゲ・イングスタッド(4番艦)
- F314:トール・ヘイエルダール(5番艦)
なお、4番艦ヘルゲ・イングスタッドは事故により喪失している(後述)。
スペックとして満載排水量約5,100トン、全長132メートル、速力26ノット。
武装は8セルのMk.41VLSにESSMを32発搭載し、ほかに76mmスーパーラピッド砲1基、12.7mmRWS(遠隔機銃)4基、NSM対艦ミサイル8発、短魚雷連装発射管2基を備える。ほか、後部に1機のヘリを搭載運用する。
4番艦の事故と喪失
2018年11月8日早朝、4番艦ヘルゲ・イングスタッドはNATO主導の軍事演習からの帰還中、民間のタンカーと衝突事故を起こした。
事故により8名が負傷したほか、船体に穴が開いたことで船内に浸水が発生。沈没を防ぐため、艦長の判断で意図的に浅瀬に乗り上げ、沈没までの時間を稼いだ。これにより乗員137名は1人の犠牲者も出すことなく全員脱出に成功している。
その後は座礁した艦をワイヤーで固定していたのだが、このワイヤーが切断する事故が発生。そのまま艦の大部分が海中に沈没してしまった。
その後サルベージされ、修復が検討されたものの、修理に高額の費用がかかる上にそれでもなお修復できるか怪しかったことから廃艦が決定。
ヘルゲ・イングスタッドは初の事故で喪われたイージス艦となった。