概要
タイトルの通り、本作の主人公は石川五ェ門である。一方でキーワードとしてタイタニック号と絡めるなど、舞台は必ずしも日本が中心というわけではない。
初期の副題は、『ドラゴン・オブ・タイタニック』と呼ばれていた。(アフレコ台本でも記載されている)
ルパン三世TVスペシャル第6弾作品である本作だが、ルパン役の山田康雄の体調がこの作品の収録時かなり悪化していたため、声の勢いが衰えたと言われた前作「ルパン暗殺指令」にも増して勢いがなくファン達を心配させた(作中で呂律が回っていない箇所や、タイタニックの煙突に閉じ込められて抜け出そうと苦戦するシーンで掛け声に勢いがないなど)。
アフレコの時も、椅子に座っておりスタジオ入りでもドアの段差を乗り越えられないのをみてスタッフからも肉体的にしんどいのではないかと心配されていた。
結果的に彼はこの作品を最後(CM等を除けば)に翌年3月に亡くなってしまった為、24年に渡ってルパン三世を演じた山田康雄の遺作となった。
そのため、海外版ではIn Memory of Yasuo Yamada , the "Eternal Lupin."という追悼文が追加されている。
ルパン役を引き継いだ栗田貫一の採用は、この翌年4月に公開された劇場版「くたばれ!ノストラダムス」から(ただし同作の収録時に山田が存命であったため、代役扱い)である。
尚、演出についてはキャラクターデザインを『ルパン三世 (TV第1シリーズ)』(以下、『TV第1シリーズ』)を思わせるものにしてみたり、タイトルの背景をホワイトにしてみたり、敵のボスの声優にミスターX(コミッショナー)を演じていた滝口順平を起用するなど、初期の作品のイメージに近づけている。特に、武器製造庫で爆弾を投げるようにして仕掛けるシーンは、コミッショナーの登場した、『TV第1シリーズ』第1話「ルパンは燃えているか…?!」での演出に近いものである。
また、不二子のシャワーシーンは完全に露出させる(後述のネット配信は除く)など、この作品までのTVスペシャルに比べて大人向けの作品に仕上がっている。直近の流行に対しても取り入れており、かなり人間離れした剣技を見せる描写は、対戦格闘ゲームの影響が見られる。前作と比較すると雰囲気は明るめで、ギャグ描写も多いので、その点はPART2の作風に近いのかもしれない。
そして、本作の視聴率24.9%は歴代TVスペシャルシリーズ中最高であり、20年以上経った2019年現在でも未だに破られていない。後述のネット配信の全編公開を決める投票でも「EPISODE:0 ファーストコンタクト」「ワルサーP38」の間に挟まれる形で結果は2位を獲得し、見事全編公開となった(山田ルパンでは唯一)。
2019年8月16日にはYouTubeの「TMSアニメ55周年公式チャンネル」にて本編の無料配信(21時からのプレミア配信→アーカイブ配信)が行われた。なお、この配信に際し不二子のシャワーシーンに修正が入った(明度を極限まで下げていたため、不二子の裸体を拝めず落胆した視聴者も多かった。なお、この様な措置は他のTVシリーズでも同様に準拠して行われた)ほか、左下に「制作 トムス・エンタテインメント」(本放送時点での名義は「東京ムービー新社」だったが、エンドロール含め先述のシーン以外には修正が入っていなかった)、右下に「fin」と付されたエンドカード(五エ門がステルス戦闘機を斬ろうとするシーンを切り貼りした物)が追加されている。
あらすじ
初代石川五右衛門没後四百年の歌舞伎を観賞していた五ェ門は、突如歌舞伎に乱入してきた忍者軍団の襲撃を受ける。歌舞伎に興味のないルパンと次元はゲームセンターで遊んでいたのだが、五エ門たちの乱闘に巻き込まれ、応戦し忍者軍団を退ける。狙われた原因を五エ門に尋ねるルパンだったが、五エ門は斬鉄剣に関係があるという事、ルパン達が関わることは許さない事を告げ、どこかへ立ち去ってしまう。
そして、そんな3人の様子を監視している人物がいることに気付いたルパンはその正体が香港マフィアのボス陳珍忠である事を突き止め、真相を探るべく陳が主催するパーティーに潜り込む。するとそこで陳が狙っているお宝の横取りを狙って潜り込んだ不二子に出くわす。
そんなルパン達の前に陳が姿を現し、お宝について語りだす。そのお宝は沈没したタイタニック号の中に眠る龍の置物であり、ルパン1世が予告状を出していながら盗めなかった唯一の宝であることをルパンは陳の口から知る。協力を求める陳だったが、ルパンはそこから逃走し、自力で宝を盗み出しルパン一族のモットー「狙った獲物は絶対に逃がさねぇ」を達成しようとする。
忍者軍団と斬鉄剣、そして龍の置物に隠された謎とは…?
ゲストキャラ
CV:松井菜桜子
本作のゲストヒロインであるくノ一。
かつて五ェ門と一緒に忍術修行に励んでいた。
五ェ門と共に龍の置物を手に入れようと共に行動するが……
CV:滝口順平
香港マフィアのボス。
普段は紳士的且つ丁寧な口調で相手に接するが、性格は残忍かつ狡猾。
CV:銀河万丈
陳珍忠の側近である伊賀流の忍者。
百地党の流れを組んでいる為、五ェ門とは兄弟分との事。
多数の影武者を使い、何度もルパン達に襲いかかってくる。
余談
- 劇中でタイタニック号に日本人が乗っていたというシーンがあるが、史実でもタイタニック号にはたった一人だけ日本人が乗っていた(内閣鉄道院(当時)の官員であった細野正文氏。YMOの細野晴臣は彼の孫)。なお、細野氏は無事に生還している。
- あらすじの通り、放送年の1994年は史実の石川五右衛門の死没年(文禄3年を太陽暦に直すと1594年になる)から丁度400年後に当たる。
- 次元のやっていたクロスワードは、スタッフの遊び心でキャラデザインの須藤氏の趣味などについてローマ字で書かれている。
- 忍者軍団を束ねる柘植の幻斎は劇中で死亡しているが、ボツ案として「天使の策略」で実は生きていて黒幕になっていたとして再登場するというものがあり、その名残として物語のキーパーソンとしてルパン一世の旧友である珍幻斎(名前の由来は陳珍忠と幻斎)というルパン一味側の老人が登場した。
- 本作のゲストヒロイン兼黒幕である桔梗を演じた松井菜桜子は11年後の「天使の策略」で同作黒幕のエミリー・オブライエンことスパイダー・エミリーを演じている。女性キャストでラスボスを複数回演じたのはTVSPシリーズ通して松井のみである(他には現在の銭形役である山寺宏一も「炎の記憶」「お宝返却大作戦!」などで黒幕を演じている)。また、ルパン長編作品のメインゲストキャラを2年連続で演じたのは、前作でブラッドを演じ、今作で柘植の幻斎を演じた、銀河万丈が最初である。
- サントラで唯一、オープニングのルパン三世のテーマがオープニングで使われた効果音をダビングした仕様となっている作品でもある。(ミュージックファイルボックスでは未収録。他の作品は、ファーストコンタクト除いてフルサイズバージョンとなっている。ただし、ハリマオの財宝を追え!!のサントラではフルサイズバージョンに作中で使われた口笛を合わせている)
関連タグ
ルパン暗殺指令→燃えよ斬鉄剣→くたばれ!ノストラダムス、ハリマオの財宝を追え!!