概要
重要無形文化財、世界無形遺産でもある。
名称の由来は、「傾く」(かたむく)の古語にあたる「傾く」(かぶく)の連用形を名詞化した「かぶき」だといわれている。
戦国時代の終わり頃から江戸時代の初頭にかけて京や江戸で流行した、派手な衣装や一風変った異形を好んだり、常軌を逸脱した行動に走ることを指した語で、特にそうした者たちのことを「かぶき者」(「傾奇者」)とも言った。有名な人物でいえば織田信長、前田利家、水野勝成、そして何より太閤秀吉より「傾奇御免状」を賜った前田慶次などがこれに当たる。
そうした「かぶき者」独特の装いを取り入れた「かぶき踊り」が、今日に連なる伝統芸能「かぶき」の語源となっている。
この「かぶき」に「歌い舞う芸妓」の意から「歌舞妓」と当て、さらに後に芸妓に連なる「妓」の字に代わって伎楽に連なる「伎」の字を用いた「歌舞伎」が使われるようになった。
その過程で舞踊から演技に重点が移り、能・狂言・人形浄瑠璃の演目も一部受け継ぎながら、それまでの舞台演劇より多数の道具(大道具・小道具)を使うものになる。
しかし、江戸幕府としては、元は戦国時代の遺風を強く引き継いでいた歌舞伎の存在自体を全く歓迎しておらず、歌舞伎に対しては規制や処罰や圧迫ばかりを加えていた。また、歌舞伎以外でも、織田信長以降現在時点までの歴史・事件をモチーフにした作品の公開を禁止しており、比較的新しい時代の人物は、「武智光秀(=明智光秀)」「大星由良助(=大石内蔵助)」などの架空の名前を用いるか、「塩冶判官高貞(と称する浅野内匠頭)」「高師直(と称する吉良上野介)」などのようなもっと古い時代の人物に当てつけ……いや、当てはめるしかなかった。
現在のように「歌舞伎」の表記に落ち着いたのは、明治時代になってからのことである。
明治時代に入ってからは、江戸時代からの旧習が排除されるあおりを受けて、江戸幕府からの支援を失った能・狂言ほどではないが、先行きが不安視されていた。
しかし演劇改良運動があり、それ自体は(実写を重視し過ぎたりして観客から批判を浴びて)失敗したが、その過程で明治天皇に観賞してもらうことに成功したりして、社会上層からの支持を得ることができるようになった。また、もう江戸幕府も存在しないので、江戸時代の人物も実名で出すことが(新作では)できるようになった。
戦後に東京への一極集中が進むなか、上方歌舞伎は(興行方針の混乱などもあり)上方落語と同様に壊滅寸前に陥り、しかしなんとか復興の途に就いている。
現代に生きる伝統芸能
人間国宝や国立劇場と言った語句から主に税金で維持されていると勘違いされる人も居るが、歌舞伎の興行は現在では映画会社で知られる松竹では一貫して手がけており、民間企業が主体となって伝統を保持し、商業ベースの芸能として成立している珍しい伝統芸能である。
また、歌舞伎役者はテレビドラマや映画などにも盛んに出演しており歌舞伎を見たことが無いものでも役者の知名度は高い。
しかしながら一般的には高貴で格式高い文化と言うイメージも根強く、相撲のように国民的娯楽として残ることができなかった。その大元には血統や伝統(演技の「型」、演出)を重んじる日本古来の相続思想や、「歌舞伎界」とも括られる独自のルールを形成する業界の体質、それらさえ「伝統」として門戸を仕切ってきた歌舞伎界の思想に由来するところが大きい。
しかし、上述した通り、本来は大衆文化の一翼を担う演劇であり、その内容も当時の世相をふんだんに取り入れて観客の喜怒哀楽と感動を誘った、近世日本の娯楽文化の集大成としての側面を持つ。
近年はそうした大衆文化としての歌舞伎を復古すべく、新たな演目の開拓やスーパー歌舞伎などの古典歌舞伎の在り方にとらわれない演目の上演や、VOCALOIDの楽曲や、アニメや漫画を原作とした新作歌舞伎などが上演されるなどより親しみやすい歌舞伎の公演も盛んに行われている。
歌舞伎に由来する語
差金
蝶や鳥などを舞台上で表現する場合に、小道具で創り、長い棒にさして動かす。
この小道具一式を差金と呼ぶ。
陰で舞台を操る意味から転じて、陰で人をそそのかし操ることを意味するようになった。
黒子(くろこ)
表には出ないものの、なくてはならない存在。
ただし「黒子」「くろこ」は共に誤用が定着した慣用で、正しい表記は「黒衣」読みは「くろご」らしい。
歌舞伎の黒幕は通常夜を表すために用いるが、人形浄瑠璃の黒幕は舞台を操る者をその陰に隠すために用いる。
そこから歌舞伎でも、舞台裏から影響力を行使して舞台を操る興行主・投資者などのことを「黒幕」と呼ぶようになった。
また、武家政権の「幕府」や相撲の「幕内」のように、「幕」には立ち入りがたい場や地位の者を表す語が多いため、裏で操る人の中でも、特に権力者の意味が強くなり、「政界の黒幕」などと用いられるようになったと考えられる。
現在の意味は、表面に出ず、裏で計画をしたり指図をする人のこと。
一座を構成する配役の番付の上で、思慮分別をわきまえた貫禄のある役を務める立役の看板役者を「一枚目」、美男で人気が高い若衆役を務める役者を「二枚目」、面白おかしい役を務める道外方を「三枚目」に掲げていたことが語源。
幕切れ・大詰
それぞれの場(幕)の終わりに引き幕が閉まることを幕切れ、江戸歌舞伎の一番目の最後の幕を大詰と言った。ちなみに二番目は大切り(大喜利)と称する。
このことから芝居が始まることを「幕開け」、長々と事態が続くことを「のべつ幕無し」と言うようになった。
名優と呼ばれる歌舞伎役者の収入は1000両(4000万円!!)を超えたことから、転じて素晴らしく活躍した人の意味がある。
梨園
歌舞伎界全体を指す。
これらのほか、「花道」「捨て台詞」「大向こうを唸らせる」なども、歌舞伎と関わりの深い単語である。
演目
歌舞伎役者
スーパー歌舞伎
三代目・市川猿之助(現・猿翁)が中心となって伝統的な歌舞伎に大掛かりな舞台演出を加味、『ONEPIECE』に代表されるように人気漫画を題材とすることもある。
歌舞伎を題材にした作品
歌舞伎をモチーフにしたキャラクター
特撮
- カブキノイド(『機動刑事ジバン』)
- 歌舞伎小僧(『五星戦隊ダイレンジャー』)
- 仮面ライダー歌舞鬼(『劇場版 仮面ライダー響鬼と7人の戦鬼』)
- ゴエモン魂(『仮面ライダーゴースト』)
- オヤクシャボーマ(『高速戦隊ターボレンジャー』)
- 砲烈道(『星獣戦隊ギンガマン』)
- カグラギ・ディボウスキ/ハチオージャー(『王様戦隊キングオージャー』)
漫画・アニメ
- カンクロウ(『NARUTO』)
- ピーサード(『ふたりはプリキュア』)
- 国立玉一郎(『野球狂の詩』)※歌舞伎役者の跡取り息子
- クマドリ、カン十郎(『ONEPIECE』)
- 早乙女アルト(『マクロスF』)※歌舞伎役者の跡取り息子→アルト姫
映画
ゲーム
- カブキロイド(『妖怪ウォッチ』)
- 千両狂死郎(『サムライスピリッツ』)
- 禅(『マーシャルチャンピオン』)
- カブキ団十郎(『天外魔境』)
- ギルガメッシュ(『ファイナルファンタジー5』)
企業・ご当地・イベント等のキャラクター
- カブッキー 石川県小松市のゆるキャラ。『勧進帳』に登場する弁慶がモデル。
- でんちゅうくん 岡山県井原市の歌舞伎ゆるキャラ。『鏡獅子』がモチーフ。
- レンジー 『ラグビーワールドカップ』2019年日本大会のマスコットキャラクター。連獅子がモチーフ。
- くろごちゃん 独立行政法人日本芸術文化振興会「国立劇場」のマスコット。黒衣がモチーフ。外部リンク
- かぶきにゃんたろう松竹株式会社の「歌舞伎にゃんバサダー」に就任した猫のキャラクター。初お目見えは2017年4月。幸運を呼ぶとも言われる三毛のオス。歌舞伎衣裳のたすきのような首輪を付けており、背中の模様はハートマーク。キャラクター制作はサンリオ。
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その他、Wikipedia「Category:歌舞伎」も参照。