概要
錬金術(Alchemy)とは、卑金属から貴金属を錬成する術のこと。卑金属は要するに「貴金属の対義語」で、鉄や銅など貴重ではない金属を指す。広義には不完全な物質からより完全な物質を生み出すそうとすることも含む。現代ではオカルトもしくはファンタジーの一要素だが、18世紀までは正統な学問として位置づけられており、化学の発展に大きく貢献した。
関連する事物として、卑金属を貴金属に変える「賢者の石」と、無生物から作られた人間=ホムンクルスが代表的であり、これらの生成を求める神秘主義(オカルト)的な試みでもあった。
錬金術を行う者を錬金術師(れんきんじゅつし)という。
歴史と研究成果
発祥は古く、古代メソポタミアやエジプトにまで遡る。その後、10世紀前後の中東で発展する。
伝説的錬金術師のジャービル・ブン・ハイヤーンは蒸留器具の発明や、酸とアルカリの概念を生み出したことで知られる。様々な化学薬品や火薬、合金、ガラス、石鹸の生産もこの頃の錬金術のたまものである。
十字軍遠征によって西欧に伝播し、魔術や哲学の要素を大きく取り込みながら成長していく。この過程で陶磁器の「マイセン」が生まれるなど、実験器具の開発も進展した。今日、化学者とみなされるロバート・ボイルも錬金術師であり、アイザック・ニュートンも錬金術の研究をしていた。
正統的な学問として18世紀まで長きにわたって研究されてきたが、アントワーヌ・ラヴォアジエらが錬金術のフロギストン説を批判して近代化学を確立。
1828年にフリードリヒ・ヴェーラーによる有機物の合成(尿素)がなされるに至り、化学は錬金術の神秘主義と完全に決別、従来の錬金術は魔術(自然魔術)の一派として見られるようになった。
現実的な問題
現在地球上にある金は、超新星爆発や中性子星の超高温・超高圧環境で生成されたと考えられている。従って化学反応では原子核を破壊したり構成する陽子の数を変えたりするのは絶対に無理であり、仮にそれだけの設備を作る予算があったら、そのお金で金を購入した方がよっぽど早いというのが現実である。
現代の技術では加速器を用いて水銀とベリリウムを衝突させる事で、人工的な金の生成は可能であるが、大掛かりな設備と膨大なエネルギーが必要になる割に得られる金はごく微量。1グラムの金を得るのに10万年という時間と莫大なコストがかかることが試算から明らかとなっている。短期間で行うには1回錬成するごとに核兵器レベルのエネルギーを投入する必要があり、どう考えても経済的(エネルギー的)に著しく割に合わない。
その他、金に似た科学的性質を持つ超原子を作り出すという試みが実験的に行われている。
錬金術を主題にした作品
関連タグ
金策:ゲーム作品において『安価のアイテムから高値で売れるアイテムを作成する金策』がファンやプレイヤーに『錬金術』と呼ばれることもある。
怪我の功名:「本来の目的は果たせぬものの、化学技術の発展に貢献した」点で当てはまるといえる。