概要
漫画家和月伸宏によるSFアクション漫画『武装錬金』は、「週刊少年ジャンプ」に2003年30号から2005年21・22合併号まで連載。その後の「赤マルジャンプ」に、2005年8月16日「武装錬金ファイナル」、2006年1月16日「武装錬金ピリオド」が掲載された(また、単行本第10巻(最終巻)には、後日譚となる「武装錬金アフター」が収録されている)。ストーリー協力は黒崎薫。全10巻であるが最終10巻はファイナル以降のみ(『エンバーミング』読切版も併録された)の掲載となっている。
2017年には、集英社コミック文庫版(全5巻)が発売された。こちらには、毎巻描き下ろしの「武装錬金アフター アフター」が収録されている。なお、文庫版にはJC版に収録されていた「キャラクタープロフィール」「武装錬金(武器)解説」「ストーリーのライナーノーツ」は収録されていないので、そういった部分に於いての詳細なデータを知りたい場合にはJC版を読むことを推奨する。
テレビアニメは、原作完結後の2006年10月4日から2007年3月28日までテレビ東京系列で放送された。全26話。作者も予想していなかったらしく、このアニメ化を聞いた際には「今さらァ!?」と驚いている。
その他にも、キャラクターフィギュアの販売、ドラマCD化、ノベライズ(原作漫画の後日談)、ゲーム化、ファンイベント開催などの様々なメディア展開をしている。
2023年10月3日にはYouTube集英社マンガ公式アカウントにおいて『武装錬金』連載開始20周年を記念したアニバーサリーMVとして、
『【MV】『武装錬金』×『真赤な誓い』福山芳樹【連載開始20周年特別企画】』
(外部リンク参照)
が公開され、X(旧Twitter)においてもアニメ版『武装錬金』主要キャスト陣による記念ポストが投稿されるなど連載開始から20年以上経った今なお根強い人気を持つ作品である。
ちなみに第1話は和月氏が携帯電話を購入した直後に描いたらしく、それ以降も携帯電話が重要なファクターとして幾度となく登場する。第1話の筋書きはジャンプ漫画にしては珍しく「主人公がヒロインに助けられる」というストーリーだが、和月氏いわく『ウルトラマン』第1話「ウルトラ作戦第一号」がモデルらしい。
特徴
本作は和月伸宏氏の新境地を開拓した作品である。
るろうに剣心のような時代劇を手がけていた和月氏にとっては(読み切り作品を除けば)初めての現代活劇であり、外連味溢れるSFガジェットやメカニカルなクリーチャー達が跳梁跋扈するハイテンションな作風となっている。
登場人物達も殺伐としたヒロインや純度の高い変態のような一癖二癖のある個性派揃いである。一方で、どのキャラクターも大なり小なり辛い生い立ちや如何ともしがたい因業を抱えており、陰影の濃い人物造型となっているのも特徴である。
打ち切りの影響とは言え、コンパクトによくまとまった少年漫画の王道をいくストーリーも評価が高く、本作が未だに根強い人気を誇る一因となっている。
また本作は次回作『エンバーミング』と世界観を共有している(あるいは、非常に近いパラレル設定)ようである(作中では明確な繋がりは描写されていないが、単行本10巻のライナーノートにおいて読み切り版を「スピンオフ」とコメントしている。一応『エンバーミング』の原典と言うべき「フランケンシュタインの怪物」の創造には錬金術も用いられているとされる)。
ストーリー
私立銀成学園高校の2年生武藤カズキは、ある日の夜、廃工場で巨大な怪物に襲われていた少女を助けようとして命を落としてしまう。しかし、その少女津村斗貴子に錬金術研究の成果である「核鉄」を埋め込まれることによって命を救われる。同時に、唯一無二の「突撃槍の武装錬金」の力を手に入れた武藤カズキは、人を喰らう怪物ホムンクルスの存在を知り、戦いの世界に足を踏み込むことになる。
登場人物
なお、登場人物名のほとんどにはその人物の闘争心に見合った「武器」や「戦闘」を表す漢字・熟語が使用されている(非戦闘員のまひろや六桝らなどは除く)
主要人物
本作の主人公。怪物に襲われていた(と思っていた)少女・斗貴子を庇って命を落とすが、彼女が与えた核鉄の力で息を吹き返す。明るく正義感の強い少年で、核鉄に秘められたもう一つの力、『武装錬金』でホムンクルス達との戦いに身を投じていく。武装錬金は突撃槍(ランス)『サンライトハート』。
本作のヒロイン。ホムンクルス達を討伐する秘密結社「錬金戦団」の一員たる戦士の少女。自身を守って死に瀕したカズキに錬金術の集大成・核鉄を与え、その命を救った。敵には容赦無い苛烈な人物ながら、カズキらとの触れ合いでは優しい一面も覗かせる。武装錬金は処刑鎌(デスサイズ)『バルキリースカート』。
仲間・ライバル
カズキたちの通う銀成学園高校の3年生でIQ240を記録する天才児。蝶をこよなく愛する愛すべき変態でもある。銀成市のホムンクルス騒動の元凶だったが、その目的は不治の病に冒された体を捨て、超人たる人型ホムンクルスへ生まれ変わることにあった。孤独だった自分にただ一人向き合ったカズキに強い執着を見せる。武装錬金は黒色火薬(ブラックパウダー)『ニアデスハピネス』。
錬金戦団に所属する斗貴子の後輩戦士。修行時代に自身を導いてくれた彼女に一途な想いを寄せる。カズキとは同い年だが、ジェラシーもあったためか、仲良くするどころか一方的に敵視していた。しかしカズキの器量と覚悟に触れるうち、一人の戦友として信頼関係を築いていくようになる。武装錬金は戦輪(チャクラム)『モーターギア』。
銀成学園高校3年生で生徒会長。容姿端麗な上に成績優秀で、カズキを始め周囲からは厚い信頼を寄せられていた。実は人類の敵たるホムンクルスに従う“信奉者”の一人で、淑やかな笑顔の裏には想像を絶する過去を秘めていた。武装錬金は弓矢(アーチェリー)『エンゼル御前』。
桜花の双子の弟で生徒会副会長。剣道部の主将も務める文武両道の美男子のため、女子には超が付くほどモテる。実は桜花同様、ホムンクルスに忠誠を誓った“信奉者”の一人だが、姉を害する者には身内であっても決して容赦しない。武装錬金は日本刀『ソードサムライX』。
本作のマスコットキャラ。桜花の武装錬金を構成する自動人形で、ヤンチャな悪ガキそのものの性格ながら、桜花と意識を共有するため一応性別は女子。相手を勝手に付けたあだ名でよくいじり、何となく憎めないウザ可愛さを持つ。
錬金戦団
錬金戦団の“戦士長”(戦士のリーダー格)の地位にあるベテラン戦士。斗貴子の上司にあたり、カズキに興味を持って彼を戦士にスカウトする。常に目深な帽子と襟で顔を隠したコートを纏い、本名も素性も謎の人物とされていたが、カズキと知り合ってすぐフツーに素顔を晒し、銀成高校の用務員として事件の捜査にあたる。風変わりながら道義心に厚い熱血漢で、カズキや斗貴子には全幅の信頼を置かれている。武装錬金は防護服(フルメタルジャケット)『シルバースキン』。
ブラボーと同期の戦士達。火渡はブラボーと同じ戦士長の地位に就くベテランで、戦団最強の火力を有する実力者。ブラボーとは対照的にすこぶる粗暴で、部下にもキツくあたる難のある人物。ルーキー時代はブラボー、千歳と任務にあたることの多い仲間だった。武装錬金は焼夷弾(ナパーム)『ブレイズ オブ グローリー』。
千歳は火渡同様ルーキー時代からの旧知の仲で、落ち着いた雰囲気の美女。ブラボーとは互いに憎からず思っている節があるが、なかなか進展していない。武装錬金は探知機(レーダー)『ヘルメスドライブ』。
錬金戦団亜細亜方面大戦士長。日本含むアジアの全戦士を統括するトップで、牧師風の装いをした紳士。普段は穏やかで部下思いの人物だが怒らせるととても怖い。戦士長時代はブラボー、火渡らを部下に『照星部隊』なる小隊を結成していた。武装錬金は全身甲冑(フルプレートアーマー)『バスターバロン』。
再殺部隊
カズキのヴィクター化にあたり、彼の再殺任務にあたった手練れの戦士達。いずれも一癖も二癖もある人間ばかりで、カズキ達と激戦を繰り広げる。
二号戦士。火渡に好意を抱く恥ずかしがり屋の美少女。武装錬金はガスマスク『エアリアルオペレーター』。
三号戦士。ガタイの良い戦闘狂だが侠気のある好漢。武装錬金は十文字槍(クロススピアー)『激戦』。
四号戦士。Sっ気のあるオカマ。武装錬金は風船爆弾(フローティングマイン)『バブルケイジ』。
五号戦士。武士然とした口調の忍者マニアの男。武装錬金は忍者刀『シークレットトレイル』。
六号戦士。前大戦士長の祖父を持つ戦士の家系だが、本人は今一つ才が無い。武装錬金は軍用犬(ミリタリードッグ)『キラーレイビーズ』。
その他
ヴィクターとの最終決戦に登場。武装錬金は潜水艦(サブマリン)『ディープブレッシング』。
LXE
作中の中ボスでパピヨン(攻爵)の曽祖父。貿易業を営む傍ら錬金術の研究に明け暮れ、その過程で“裏切りの戦士”と知り合う。錬金術の知識を得る代わりに彼を治す契約を結び、裏切りの戦士復活の一助となる。武装錬金はチャフ(電波妨害のための軍事用金属片)『アリス イン ワンダーランド』。
LXEの幹部の一人であるホムンクルス。人間型だが頭部が月の形をした異形頭の男性で、蝶野一族が蝶にこだわるように、彼も月に異常なまでにこだわる。必ずしも組織に忠実でなく、いずれは自身が頂点に立つことを目論む野心家。武装錬金は月牙(中国の槍武器に使われる月型の穂先)『サテライト30』。
LXEの一員の人間型ホムンクルス。戦部と違い、ひたすら戦いたいだけの馬鹿。武装錬金は右籠手(ライトガントレット)『ピーキーガリバー』。
LXEの一員の人間型ホムンクルス。搦手で戦う狡猾さと残忍さを持つ。武装錬金は鉄鞭(スチールウィップ)『ノイズィハーメルン』。
LXEの一員の人間型ホムンクルス。文字通りのデブとガリ。核鉄すら与えられなかった雑魚キャラ。
LXEの信奉者の少年で銀成高校の生徒会書記。作中で目立った戦闘面の活躍は無かったものの、巧みな話術で群集心理を煽る恐るべき頭脳の持ち主。
「蝶々覆面の創造主」の部下
生前攻爵と縁があった人々で構成される。攻爵の実験による犠牲者だが、ほとんどが問題のある人間ばかりだった。
蛇(コブラ)型のホムンクルス。元銀成高校の教師。教師でありながら教職をただの仕事と割り切り生徒に関心が無く、病気になった攻爵に「面倒だからさっさと学校辞めろ」と人格否定の言葉をストレートにぶつけたために殺されてしまう。原作ではカズキに倒されたがアニメ版では斗貴子に瞬殺された。
猿(ゴリラ)型のホムンクルス。銀成市を縄張りにしていたヤクザで、攻爵に因縁をつけてカツアゲしたのが災いして殺されてしまう。アニメ版ではカズキが武装錬金を使った初戦の相手。
蛙(コモリガエル)型のホムンクルス。元は攻爵のネット友達だった引きこもりの男だが、攻爵を中傷したために殺されてしまった。ホムンクルス化した後も主の身の安全よりも自らの食欲を優先させるためにカズキに情報を渡そうとするなど忠誠心が薄い。
薔薇(バラ)型のホムンクルス。元は蝶野家で雇われていた家庭教師で、財産目当てに攻爵と愛人関係になった。しかし攻爵が病を患ったと聞いて掌を返したため殺されてしまう。ホムンクルス化した後は命令に忠実な性格に変化した。
鷲型のホムンクルス。元は蝶野家のボディーガードの一人だった自衛隊崩れ。攻爵を扱き過ぎて殺されるという、犠牲者の中では比較的理不尽な死を遂げている人物。
ヴィクターとその家族
19世紀の錬金戦団に居た戦士とその家族。錬金術の影響で家族全員が不幸になってしまった。
ヴィクター・パワード(CV:小山力也)
物語のラスボスで戦団史上最強を謳われた戦士。戦いで瀕死の手傷を負った際、黒い核鉄を移植されて蘇生する。しかしあらゆる生命からエネルギーを奪う不老不死の怪物と化したために、妻子と仲間を犠牲にしてしまう。以後は錬金術の全てを憎悪するようになり、それらの殲滅に向けて邁進する。武装錬金は戦斧(バトルアックス)『フェイタルアトラクション』。
アレキサンドリア・パワード(CV:勝生真沙子)
ヴィクターの妻。戦団の優秀な科学者だったが、夫の施術に立ち会った際、黒い核鉄の力で脳以外の体を全て失う。武装錬金は兜(ヘルム)『ルリヲヘッド』。
ヴィクトリア・パワード(CV:釘宮理恵)
ヴィクターの一人娘。昔は無邪気な性格だったが、戦団の腐敗の煽りを受け、無理矢理ホムンクルスにされた挙句父の討伐に向かわされた事で歪んでしまった薄幸の少女。武装錬金は防空壕(シェルター)『アンダーグラウンドサーチライト』。
私立銀成学園高校の生徒
カズキの大切な仲間達。過酷な戦いへ向かうカズキと斗貴子を案じ、非力ながらも彼らの支えとなっている。
カズキの妹。天真爛漫で活発な性格。友人達からは“まっぴー”の愛称でも呼ばれる。カズキ達にとっては帰りたい日常の象徴であり、彼らの戦いに巻き込まれながらも温かく見守っている。
カズキの親友3バカの一人。メガネを掛けた知的な少年で博学多才な人物。銀成高校占拠時には活躍した。
カズキの親友3バカの一人。リーゼントが特徴の助平だが、友誼に厚い男前な少年。絶賛彼女募集中。
カズキの親友3バカの一人。大柄で温厚な少年だが、その体格を生かして銀成高校占拠時には活躍した。
まひろの友達で愛称は“ちーちん”。大人しく真面目なメガネ少女。事件の中でホムンクルスに食われかける災難に遭う。
まひろの友達で愛称は“さーちゃん”。無邪気なツインテ少女でまひろとは似た者同士。仲間たちと共にカズキ達の戦いを見守る。
その他
本編から7年前に起きた、小学校の子供たちを含む島民全員が虐殺された赤銅島事件の首謀者。小学生程度の姿をした人間型ホムンクルスの少年で、斗貴子の人生を狂わせ、防人、千歳、火渡の3人にトラウマを植え付けた存在だが本編においては斗貴子の回想に1コマ登場したのみであった。
火渡の執念で捕獲されたが、戦団に保護されていた斗貴子の核鉄を狙って彼女を襲う。しかし逆に彼女の闘争本能を覚醒させることになり、返り討ちにされたことが『アフター』にて語られた。
アニメ版では影も形も登場しない。
蝶野攻爵と次郎の父親。家督を継がせるために攻爵にスパルタ同然の英才教育を施したが、彼が病気になった途端にあっさり見捨て、それ以前は予備扱いして蔑ろにしていた次郎に家督を継がせようとするなど典型的な毒親。しかし息子のパンツ一丁スタイルを絶賛したり「目的を果たせないようならただの役立たずだ」と父と全く同じ台詞を攻爵が部下に言い放っていたりとやはり血は争えないようだ。
最後は次郎とSP達諸共ホムンクルス化した息子に喰われて死亡した。彼の中では攻爵の存在はとっくに居ないも同然の扱いだったらしく、死の間際ですら次郎の名前しか呼ばないという体たらくであった。
結果として息子達に蝶野家を継がせるどころか見放した長男の手で一夜にして蝶野家そのものが崩壊させられるという事態を招くことになり残された財産は後にパピヨンの手で離婚調停中であった彼の妻に分配された。
攻爵の弟(アニメでは双子の設定)。兄とそっくりの容姿を持つ。跡取りとして持て囃された攻爵と違って、平凡な教育と月並みの待遇しか得られなかったことを根に持ち、攻爵の発病を内心喜んでいた。幼生体を破壊して兄を妨害するが、結局犠牲者第一号となってしまった。
作中で度々登場するロッテリや(アニメ版ではウマカバーガー)の女性店員。パピヨンやブラボーと言った変人相手に怖がりながらも逃げずに接客してるうち、彼らとすっかり馴染んで店内での地位も上がったらしく、最終的にはパピヨンに宣伝の一環で一日店長を依頼するなど商売上手になっている。
斗貴子が銀成学園に転入した際に質問攻めを受ける彼女に対しどさくさ紛れに「罵ってください」と頼んでいた。
用語解説
ホムンクルス
本作におけるホムンクルスは小さな胎児のような姿をした人造生命体であり、他の生物の遺伝子を取り込ませた後人間の脳に寄生させれば、動植物のパワーと人間の知能を持った改造人間に身体構造を作り替える習性を持つ。
なお精神構造においては、動植物の遺伝子を使うと宿主の人間の記憶と人格は破壊され、その動植物が保持する自我を主体とするが、宿主本人の遺伝子を使えば記憶と人格の破壊は相殺され、自分自身をモデルとした人間型に変化する。いわばサイボーグであろうか。
詳細は該当項目を参照。
武装錬金
錬金術によって創り出した超合金『核鉄』を用いて作り出す武器。持ち主の闘争本能に呼応して姿を変化させる。通常の武器とは比べものにならない破壊力を有しており、ホムンクルスに対抗できる唯一の武器でもある。
武装錬金には必ず特性があり、それはベースとなる武器には本来ならば存在しない、超自然的能力であることが多い(錺布がエネルギーになる、生体電流で自在に機動させる、幻覚を見せる、持ち主の体を再生させるなど)。
赤銅島事件
本編より7年前、瀬戸内海に位置する赤銅島で発生した島民虐殺事件。表向きは豪雨による土砂災害とされているが、実際は人間型ホムンクルスによる食人および殺人の隠蔽工作であった。事前に情報を掴んでいた錬金の戦士が何名か潜入していたものの、ホムンクルス達が子供に化けていたのもあって後手に回った結果、島は壊滅。生存者は10歳の少女ただ一人という残酷な結末を迎えた。
この時救助された少女こそ本編のヒロイン・斗貴子であり、彼女の戦いの人生の幕開けとなった悲劇である。
テレビアニメ
内容
・1クール目は原作に忠実だが2クール目である再殺編以降の展開が多少異なる。
・本編は「ピリオド」に当たる部分までで「アフター」のエピソードは最終回のEDでサイレント形式で映像化された。
・原作でのシリアスな場面で唐突に入りがちなギャグシーンは軒並みカットされている。
・再殺編でカズキ達と直接敵対するのは火渡・戦部・根来の3名だけで残りのメンバーはカズキ達と交戦しないため因縁が薄くなっている。おそらくメンバー全員との戦闘を描いては2クールで収まらないと想定した苦肉の策であろう。
・原作ではピリオドまで出番がなかった秋水が戦団にスカウトされる経緯が補完され活躍が増加している。
・ニュートンアップル女学院に潜入する時間帯が放課後に変更されたため学院内でのギャグシーンは全て無くなっている。この関係でヴィクトリアが最初から素の態度で登場している。
・カズキがヴィクターと共に月に向かった後で斗貴子を始めとする残された仲間達が悲しみに暮れる描写が大幅に補完されている。
スタッフ
原作:和月伸宏
監督:加戸誉夫
シリーズ構成:大和屋暁
キャラクターデザイン:高見明男、加藤はつえ
音楽:田中公平
アニメーション制作:XEBEC
製作:武装錬金製作委員会
主題歌
オープニングテーマ
「真赤な誓い」
歌 - 福山芳樹 / 作詞 - 福山恭子 / 作曲・編曲 - 福山芳樹
最終回ではカズキとパピヨンの一騎打ちのシーンで挿入歌としても流された。
エンディングテーマ
「ホシアカリ」(1 - 14話、26話)
歌 - 樹海 / 作詞 - Manami Watanabe / 作曲 - Yoshiaki Dewa / 編曲 - Yoshiaki Dewa・Zentaro Watanabe
最終回では原作「アフター」のエピソードに乗せる形で流され、番組を締め括った。
「愛しき世界」(15話 - 25話)
歌 - 加々美亜矢 / 作詞 - 加々美亜矢 / 作曲・編曲 - 澤口和彦
余談
『鋼の錬金術師』関連
これより少し前に『鋼の錬金術師』のアニメが放送されていたが、和月氏は『ハガレン』を全然見ていなかったらしく、無知な読者から「“錬金術”がハガレンからの盗作だ」と指摘されてから改めて視聴し、「(荒川弘女史と)同じエサ食ってる感じがする」と感想を述べている(なお、この件に関しては『武装錬金』を読んだ荒川氏も「やっぱり和月先生は上手いと思った」と語っている)。
『武装錬金』打ち切り騒動
上述のように本作の完結(連載終了)にはジャンプ作品には珍しい紆余曲折があり、当時にはそれが盛大に物議を醸した。
ジャンプの“アンケート至上主義”の限界
週刊少年ジャンプでは、俗にいう“アンケート至上主義”とされる制度がある。
これは「アンケートはがきでの評価が高い作品をできるだけ本誌前面に出して販売数を伸ばす」と同時に、「評価の低い作品を打ち切って、代わりに新人を投入し、本誌のクオリティを維持する」と言うものである。
特に当時は「最下位・本誌最後尾10週で打ち切り」のルールがあったとされている(ただし、改変期や不慮の休載などで『こち亀』など安定作品が最後尾に来ることはあった。またジャンプ黄金期などにおいては開始1~2話目のアンケート結果の次第で10週を待つこともなく打ち切られる作品もちょくちょくあった)。
もちろん本来アンケートは作品評価の指針のひとつに過ぎず、アンケート上で打ち切り要件を満たしてしまった作品でも、作品が出された背景や、社会的意義、作品のメッセージ性、単行本の売上、作品そのものの質、などを考慮して連載が継続された作品もある。(例:はだしのゲン)
しかし本作の連載されていた当時は(黄金期の)様々なデータの分析から連載判断が“アンケート偏重”へとより偏り、「至上主義」どころかアンケート結果そのものが「絶対権威」、謂わば反論が許されない信仰の域まで高まりつつあった。
ところが本作はこれに盛大かつ壮大にケチをつけた。
「おかしい、アンケートは芳しくないのに、コミックスは新刊出るたびに業界全体でも上位にくる。なぜだ」
勘のいい方はお気づきだろう、大きいお友達の存在である。
武装錬金は斗貴子やパピヨンなどどちらかと言うと「大人のオタク」が嗜好するネタが満載の作品であり、その勢いたるやアニメ化以前からコミケ運営がサークルカット判定でサークルを固める程だった。
しかし、当時まだオタク文化と言うのは現在ほど受け入れられておらず、隠れた嗜好であった。
さらにWebのブロードバンド隆盛期にあたり、ファンがその想いを語るにあたって、わざわざ非相対の手段で編集部を通す動機が薄れていた。ましてPCやWeb回線の保有のハードルが低い若年層ではなおさら顕著になった。
さらにはITの発展やマーケティングの理論や手段の進化と変化により個人情報の持つ意味が、かつてのジャンプ黄金期よりも重要なものとなり、しかもそれが法整備が求められるほど周知されるようになる(いわゆる「個人情報保護法」が成立したのが本作の連載開始と同じ年である)と、読者側もアンケートを出す事に対して慎重な姿勢(あえて言えば及び腰)を取るようになる者が増加した。要はアンケートを出さない読者がより増えたのである。
それらの要因が重なった結果本作の熱心な読者層はアンケートはがきをほとんど出さなかった。
一方で「コミックス程度でもお小遣いを待たないとならない小中学生」とは異なる購買力でコミックス新刊は出た端から完売し重版を要求され、中には一部の熱狂的ファンが同じ巻のコミックスを何十冊も購入するという事例も見られた。
つまり、以前も少数ながら存在していたとされつつも制度を変えるほどではなかった“アンケートのねじれ現象”が、本作によってついに顕在化したのである。
どうやらねじれ現象が発生していることは編集部でも認識していたようなのだが、当時は確立された制度であったため、様子見にズルズル延長したもののこれ以上は他の作家の手前もあり延長不可能(コミックス9巻分)というところまで来てしまった。
こうして、本作の終了に関するすったもんだに繋がるわけである。
これを契機として「10週の上限を制度から目安に緩和(以前の指標に戻す)」した上で「コミックス売り上げが優秀な作品は姉妹誌(あるいは公式アプリ配信)に移して連載継続」というジャンプ内部の変革につながったとされる。
また、本作はジャンプ作品としては前代未聞の「(自社調べによる)不人気を理由とした連載終了後にアニメ化された作品」となった。
なお、もし打ち切られなかった場合には、メインキャラが多数死亡する鬱展開が用意されていたという。
それを考えれば、無理やりにでも大団円に持って行けたことは塞翁が馬と言うべきかもしれない。
起こった事をより正確に言うなら
この「ねじれ問題」をより細かく見ていくと、実は“アンケート至上主義”制度に限界を来したと言うよりも「少年誌のマンガが少年の娯楽から成人以降、中年などオタク層の娯楽になってしまっていた事にどう対応するか?」という問題に行きつく。
ジャンプおよび集英社にとって、この問題は創刊当初より度々浮上してきた問題であり、そもそもジャンプそのものの創刊も、この問題に起因するものであった(ジャンプ創刊の一因には先行雑誌であるマガジン・サンデー両雑誌の購読対象年齢の上昇問題がある)。
ジャンプおよび集英社は兄弟雑誌の創刊や所属漫画家の兄弟雑誌への連載枠移行による読者層の移動を目論む事で、この問題に対処してきた。上述の“アンケート至上主義”も本来は、この問題に対応する(「少年雑誌」としての編集方針を維持する)ための苦肉の策であった。
しかし、この手段はいわば問題の棚上げと先送りにはなっても根本的な解決には遠く、この問題は結局は本作による「ねじれ問題」の露呈まで燻り続けていたのである。
また、これは日本の少子化に伴う「ジャンプの本来の読者層が、その絶対数においてジャンプを支えきれなくなってしまった」と言う問題の露呈でもあり、同時に「少年ジャンプの寿命を伸ばすためには『少年』にこだわらず幅広い層の読者(少女・女性・青年・中年・老年の各年齢および性別層)を獲得する必要がある 」という現実を「少年ジャンプは『少年』のためのものだ」としてきた編集部に突き付けた形となったのである。
この騒動は、アンケートを出す本来の読者である少年層を重視するアンケート主義を維持するか、少年誌の皮を被ったまま中年にあわせて売上げ主義に向かうかの対立でもあったのである。
これはジャンプに限らず学生を第一ターゲットとして財布を握る親も考慮すると言う、他の少年誌やアニメやビデオゲーム産業でも大小なり差はあれど有ったことである。
関連イラスト
関連タグ
銀魂:本作と同じくWJ本紙で終了するも尺が足りない⇒別雑誌移籍⇒それですら尺が足りず最終巻が全ページWJ未掲載という顛末を辿った作品。
松井優征:和月氏とは逆に、現代劇中心の作品から一転、時代劇で新境地を開拓した作家。
仮面ライダーガッチャード:錬金術・錬金術師がテーマの令和の仮面ライダーシリーズで、同名のワードが劇中で登場した。そのため、該当の放送日には一時期トレンド入りを果たしこちらの視聴者を困惑させた。
評価タグ
武装錬金50users入り→武装錬金100users入り→武装錬金500users入り
外部リンク
公式
【MV】『武装錬金』×『真赤な誓い』福山芳樹【連載開始20周年特別企画】
YouTube集英社マンガ公式アカウントにおいて2023年の『武装錬金』連載開始20周年を記念し公開されたアニバーサリーMV。