概要
現代に蘇った巨大生物「リドサウルス」と人間との攻防を描く作品。
1953年に公開され、製作はワーナー・ブラザーズである。
特撮部分をレイ・ハリーハウゼンが担当した事でも知られる。
原作は、ハリーハウゼンの学生時代からの親友だったレイ・ブラッドベリの短編小説『霧笛』である。
登場する巨大生物は小説では「灯台のサイレンに反応して現れた」とされているが、映画では「核実験によって復活した」「夜の灯台を破壊する」となっている。これは、似たような展開になったので、訴訟大国であることもあり、元から知り合いであった作家にトラブルを避ける為にあらかじめ連絡しておいたという意味もある。
これを機に、「核爆発の結果で甦った」や「放射能の影響で突然変異を起こした」などの設定を持つ「核の落とし子」の巨大生物を描いた作品が急激に増えていくこととなる。
キャスト
- ポール・クリスチャン(トム・ネスビット)
- ポーラ・レイモンド(リー・ハンター)
- セシル・ケラウェイ(サーグッド・エルソン教授)
- リー・ヴァン・クリーフ(ストーン伍長)
登場怪獣
後の怪獣映画との関係
ゴジラ
東宝側は公式には認めていないが、翌年に公開されたゴジラの第1作目と非常に似通っている部分が見られるため、「ゴジラの元ネタ」ということがなかば国際的に定説化している。また、近年では1942年の『氷河の古代怪獣』が、リドサウルスやゴジラに与えた影響が大きいのではないかと指摘する声が増えている(参照)。
以下、『ゴジラ』との類似点
- 企画段階での『ゴジラ』のプロットはより『原子怪獣現わる』に近いもので、その時の仮題は『海底2万哩から来た大怪獣』であり、『原子怪獣現わる』の原題の『Beast From 20,000 Fathoms』と非常に似ている
- 「fathom」も水深を表す単位である
- 放射能の影響を受けた古代の海洋生物が復活し都市を蹂躙する
- 怪物による人間への最初の襲撃は漁船などがクローズアップされる
- 最終的には新兵器で倒される
- 予算の都合でオミットされたが、『原子怪獣現わる』には放射能を含んだ火炎を吐く予定があったり、灯台を襲うアイディアがどちらにもあった
以上の様に、現代であれば訴えられていたかもしれないほど設定や内容が似通っており、ゴジラの元のアイディアであった大ダコのパニック映画もそのまま作られていれば問題になったかもしれない。
- ハリーハウゼンはキングコングの生みの親であるウィリス・オブライエンを尊敬しており、そのオブライエンが東宝とゴジラに恨みを持って亡くなってしまった(参照)こともあってか、ハリーハウゼンは生前ゴジラを非常に嫌っていたという話が残っている。
- 実際に、レイ・ハリーハウゼンは2005年の『キングコング』に関するインタビューで「こんなことは言いたくないが、あれ(『ゴジラ』)は盗作である」だと苦々しく答えている(参照)だけでなく、自分のイベントに来た人間がゴジラがプリントされたシャツを着ていたのを見て気分を害したという話もある。
- ただし、ハリーハウゼンも初代ゴジラの内容自体は評価していたらしく、「一番最初の作品はとてもすごいと思う。時々、ハッとするようなテクニックがあったりしてね。Mr.円谷はとても賢い特撮をやっていたと感じるよ。でも、基本的に縫いぐるみというテクニックそのものが私にとってはそれほどエキサイティングじゃないんだ」との発言も残している。
『ゴジラ』が訴えられもせず問題視されなかったのは、おおらかな、というか法整備がされていないその時代であったればこそである。
映画の内容は『ゴジラ』のほうが深みがあり完成度も高いが、「無」から「有」を生み出したオリジナルと「有」に手を加えた方の出来を比較すること自体がナンセンスなのかもしれない。
ガメラ
- 北極の核爆発で目覚めた古代生物が、初期の段階で灯台を襲うというプロットは『大怪獣ガメラ』との類似性が見られる。
- 『原子怪獣現わる』を日本で配給したのは大映である。
ゴジラ1998
- 1998年ハリウッド版『GODZILLA』が「怪獣」映画というよりもモンスターパニック映画的な作風になった事にガッカリした国内外のゴジラファン曰く「あれは『原子怪獣現わる』のリメイクだけど、ネームバリューの問題から『GODZILLA』ってタイトルにしてんだろ!?」と、これまで多くの怪獣ファンから言われているが、そのこと示唆するソースに信憑性がなく、ただの偏見から来る都市伝説の可能性が濃厚となっている。詳しいことは該当項目を参照。
余談
- 『クローバーフィールド』の最初の予告編が発表された際に舞台がニューヨークである事から「『原子怪獣現わる』のリメイクではないか」との憶測も飛び交った。
外部リンク