概要
同年4月に「モスラ対ゴジラ」の公開もあった為、2018年にGODZILLA第二章・第三章が封切られるまでは、年に2本のゴジラ映画が公開された唯一の年だった。
前作で初共演を果たしたゴジラとモスラに加えて、もう一体のスター怪獣であるラドンが合流し、そこに東宝特撮史上最大の脅威ともいえる宇宙怪獣キングギドラが初登場して激突するという、タイトルに恥じない規模のオールスタームービー。隕石から飛び出した炎が形を変えてキングギドラとなる出現シーンは必見の名場面として有名である。
モンスターバースシリーズ第3作『KING OF THE MONSTERS』を手掛けたマイケル・ドハティは、東宝を「(MCUのような)シネマティック・ユニバースの先駆者となった会社の一つ」と評しているが、単独映画で活躍したキャラクター達が全員集合するお祭り映画という点では確かに現在の『アベンジャーズ』に近い。
また、本作以前のゴジラは「人類への脅威」「人類の敵」として描かれていたが、本作にて侵略者にして後にゴジラ最大のライバルとも呼ばれるキングギドラと戦ったことで、人類の味方として描かれる機会が増えるきっかけを作り、ひいては本作が怪獣対怪獣の格闘映画への路線を決定づけたとされる。
人間ドラマも『ローマの休日』へのオマージュや小美人を演じたザ・ピーナッツによる歌謡ショー、刑事ドラマのような銃撃戦等盛りだくさんであり、正月映画にふさわしい娯楽作品で突貫工事で作られたとは思えない出来である。
同時上映はクレージー映画『花のお江戸の無責任』。
ちなみに登場怪獣はゴジラ、ラドン、モスラ(幼虫)、キングギドラで4体となるため、タイトルと矛盾しているように思えるが、このタイトルで指し示しているのは地球側の怪獣(にしてそれぞれ主役映画がある)、つまりゴジラ、ラドン、モスラである。これにより、初めてゴジラがタイトルにならなかった作品となった。
……が、なぜかリバイバル上映された際にタイトルが『ゴジラ・モスラ・キングギドラ 地球最大の決戦』と改題された。なぜハブったし
なお、長らくオリジナル版の予告編が残っていないとされ、オリジナル予告映像が再発見されるまでDVD・BDなどでは本作の予告編はこの再編集版のものを収録していたため、ものの見事にラドンがハブられることに。
『ゴジラ-1.0』の山崎貴監督は小学3年生の時にこの再上映版のポスターを見て父親に「もう他に映画を観せてくれなくていいからこれだけは連れて行ってくれ」と頼んで連れて行ってもらったが、以来本当に映画館に連れて行ってもらえなくなったことから因縁の作品と語っている。
あらすじ
1月なのに猛暑が続き、流星群も飛来するなど、数々の異常気象が日本を襲う中、巨大な隕石が富山・黒部の近郊へ落下した。時を同じくして、金星人だと名乗る謎の女性が、日本各地に姿を現しては「地球に危機が訪れている」との予言を説くようになったが、誰もこれを信じようとはしなかった。
しかし刑事の進藤は、その女性が墜落事故に巻き込まれて行方不明になっていたセルジナ公国のサルノ王女だと気付く。やがて彼は、彼女が本当に金星人の末裔であり、予知能力を発揮していた事を知る。彼女の存在を察知したセルジナ内部の反対派はサルノを消すべく刺客を送り込み、進藤は彼らとの攻防を演じていく。
そして彼女の予言は的中し、ゴジラが、ラドンが暴れ始める。さらに、二匹の怪獣が争い合う中、隕石の中から宇宙怪獣キングギドラが出現、日本各地を襲い始める。唯一モスラだけはギドラに立ち向かおうとしたが、一匹ではまるで勝ち目がない。
モスラは必死にゴジラとラドンを説得する。当初は「地球や人類がどうなろうと知ったことではない」と否定的だった二頭だが、一匹だけでもギドラに挑もうとするモスラの姿を見てついに協力を決意する。
サルノを狙う暗殺者達と進藤達の攻防が行われる一方で地球の3大怪獣と、最強の宇宙怪獣キングギドラの決戦が、今始まった。
スタッフ
製作:田中友幸
脚本:関沢新一
音楽:伊福部昭
特技監督:円谷英二
監督:本多猪四郎
挿入歌「幸せを呼ぼう」
劇中のテレビ番組『あの方はどうしているのでしょう?』のファンファーレは『手錠をかけろ』の音楽(作曲:池野成)の流用である。
キャスト
進藤刑事:夏木陽介
進藤直子:星由里子
村井助教授:小泉博
塚本博士:志村喬
サルノ王女:若林映子
マルメス(黒眼鏡の男。一部資料ではマルネスと表記):伊藤久哉
暗殺団の手下1:黒部進
警視庁沖田課長:平田昭彦
東洋放送金巻班長:佐原健二
暗殺団の手下2:伊吹徹
村井班調査隊員1:野村浩三
寿山号船長:田島義文
サルノ王女の老臣:天本英世
インファント島長老:小杉義男
自治大臣:高田稔
進藤サト:英百合子
小牧記者:加藤春哉
漁師:沢村いき雄
防衛大臣:冨田仲次郎
国会議員(一部資料では警視長官):石田茂樹
安楽椅子の男:大友伸
新郎:中山豊
帽子拾い:大村千吉
円盤クラブ会長:松本染升
暗殺団の手下3:鈴木和夫
テレビの司会者:青空千夜・一夜
円盤クラブYシャツ:ヘンリー大川
村の警官:池田生二
火山研究所職員、村人2:澁谷英男
村人3:勝本圭一郎
村人1:広瀬正一
ホテルのフロント:宇野晃司
上野公園の野次馬、貴賓室関係者:井上大助
村井班調査隊員2:三浦敏男
新婦:浦山珠美
国務大臣:熊谷卓三
国会議員:津田光男
新聞記者(一部資料では東朝新聞記者):勝部義夫
寿山号船員:坪野鎌之
村井班調査隊員4:今井和雄
村井班調査隊員3:古谷敏
村井班調査隊員5:黒木順
電力会社社員:岡豊
ゴジラ(スーツアクター):中島春雄
宇宙円盤クラブ会員:宇畄木耕嗣
阿蘇山の観光客:加藤茂雄(ノンクレジット)
本作の怪獣のスーツアクターの配役には諸説ある。DVDでは宇畄木耕嗣がラドン、坂本晴哉がキングギドラとクレジットされている。
川北紘一は坂本がキングギドラに入ったと証言しており、実際に坂本がキングギドラを着用したメイキング映像が存在するが、坂本が途中で降板し別の俳優が入ったとする資料もある。
この別の俳優は広瀬正一が挙げられることが多いが、川北は広瀬が入ったのは『怪獣大戦争』であるとして否定している。書籍「ゴジラ大百科 新モスラ編」では広瀬のほか関田裕の名前が挙げられている。
中野昭慶は宇畄木耕嗣がキングギドラに入ったと証言しており、川北は同時に「広瀬は身長が小さいからキングギドラ役は無理だと思う」と発言している。
一方で有川貞昌は宇畄木がキングギドラの着ぐるみを試着したところ頭が重くてバランスが取れなかったと証言している。
2014年発行の「キャラクター大全ゴジラ」ではこれらの説から坂本晴哉がラドン、宇畄木耕嗣がキングギドラとDVDと逆のクレジットになっている。
余談
- ゾイドシリーズのゴジュラス・モルガ・サラマンダーのデザインは本作の影響を受けており、モルガはモスラ、サラマンダーはラドン、ゴジュラスはゴジラをモチーフにしているとされる。
- 後年のゾイドシリーズ『ゾイドワイルドZERO』では48話目にて当作品のサブタイトルがオマージュされた「三大破壊竜!地球最大の決戦!」なる回がある。ちなみにその回は当作品とは違い、スピノサウルス種とティラノサウルス種のゾイドが組んで超ド級のギガノトサウルス種ゾイドに立ち向かう回である。その二種類のゾイドもかつては人類側の脅威とされており、自発的ではなくコントロールされる形だが人類側の戦力となって立ち向かう点は共通である。
- シナリオには往年の海外映画『ローマの休日』のオマージュが組み込まれているとされており、某国の王女が身分を隠して一般人と絡んで行くという内容になっているのが大きな特徴である(実際はその王女が電波だったり命を狙われたりとかなり殺伐としているが)。
- 実際に若林映子は本多監督から「『ローマの休日』を意識してやってごらん」と言われたとか。
- サルノ王女の金星人としての衣装は若林がプライベートで着ていたボーイッシュなスタイルを気に入った本多監督が採用したとされている。そのため若林もやりやすかったと語っている。
- 暗殺団のリーダー・マルメス役は当初土屋嘉男が演じる予定で、自ら衣装のサングラスを探していたが、黒澤明監督の『赤ひげ』の撮影が長引いたことから伊藤久哉に交代した。
- 阿蘇山のシーンに登場する中山豊、大村千吉、加藤茂雄の3人は本多監督の過去作品『東京の人さようなら』で共演しており、加藤は同作を意識したのではと語っていた。
- ちなみに加藤がオープニングにクレジットされなかったのは元々端役としての出演予定だったものが撮影現場で急に本多監督から台詞を割り当てられたためとされている。
- 本作と同時期には『ウルトラQ』の撮影が始まっており、円谷プロダクションのスタッフが本作の撮影現場で円谷英二と打ち合わせをすることもあった。しかし当時の映画スタッフはテレビドラマを下に見ており、「円谷がテレビ屋になった」と陰口を叩かれたり、スタッフを引き抜かれたりしたために有川貞昌もテレビ業界にはあまりいい印象を持っていなかったと語っている。
- ヤン・デ・ボン版のゴジラも、企画段階では本作のリメイクとなるメンバーが考えられていた。
- 2019年公開のハリウッド映画『KING OF THE MONSTERS』においてはゴジラに加えてラドン、モスラ、キングギドラの3体がメインの怪獣として登場、本作と同じメンツがアメリカで一堂に会することとなった。
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