概要
『ゴジラ』と『空の大怪獣ラドン』に続く、1961年に公開された東宝製作の怪獣映画第3弾。世界同時公開を目的として米コロンビア・ピクチャーズと提携して配給した。
女性も見られる怪獣映画ということで企画され、モスラを象徴する小美人の設定も当初から企画されている。
また家族向け要素としてメインキャラクターに子供が加わっているのも特徴である。
安保闘争などの国際関係をシナリオに反映しており、日本国内でのロリシカ人の捜査にロリシカの警察が出動したり、モスラがわざわざ横田基地を通過する等の描写がある。
この「ロリシカ」とは「ロシア」と「アメリカ」を組み合わせた名前で、原作小説ではロシリカという名前だった。
同時上映は古澤憲吾監督・坂本九主演の喜劇映画『アワモリ君売出す』。
あらすじ
台風の影響で、日本の貨物船第二玄洋丸が座礁。乗組員はロリシカ国の核実験場となっていた孤島インファント島に漂着・救助された。
帰国した乗組員を調査したところ、乗組員に放射能の反応はなく、またインファント島には先住民がいるということが発覚する。
取材のために病院に潜入した日東新聞の記者福田善一郎とカメラマンの花村ミチは、病院で乗組員の検査を行った原田博士に注意されながらもインファント島の話を聞く。
さらにそこでふたりは言語学者の中條信一と知り合う。
ロリシカ国は住民の存在を否定するがやがて日本との合同調査隊を編成。
中條がロリシカ国と日本によるインファント島の調査団の一員だと知った福田は密航し、強引に調査団に同行する。
彼らはそこで、島の人々や30cmほどの二人の妖精・小美人と遭遇する。調査団は彼らをそっとしておこうと島を後にするが、ロリシカ国側の事務局長クラーク・ネルソンは不穏な態度を見せる。
中條はロリシカ側の調査団代表ラーフ博士からネルソンにまつわる手紙を受け取っていた。そもそもこの調査団の発起人はネルソンだった。ネルソンの正体は古美術ブローカーだったのではないかと疑念を抱く福田。
そのころインファント島にはネルソンが短機関銃を手に部下を連れて再上陸していた。なんとネルソンの正体は悪徳興行師で小美人を見世物にしようとしていた。抵抗しようにも武器がない先住民たちは短機関銃であっけなく全滅してしまい、小美人は連れ去られてしまった。
後に残された老人は祈るようにタマゴに向かって呟いた。
「モスラ・・・!」
それからしばらく後、東京では「妖精ショー」が話題になっていた。なんとそれはネルソンが主催したもので、妖精の正体は連れ去られた小美人だった。
ステージで歌を歌う小美人。その歌は島の守り神モスラを目覚めさせる歌だった。
小美人を取り返すべく、モスラは日本に上陸する。
スタッフ
キャスト
福田善一郎 | フランキー堺 |
---|---|
中條信一 | 小泉博 |
花村ミチ | 香川京子 |
小美人 | ザ・ピーナッツ(伊藤エミ、伊藤ユミ) |
クラーク・ネルソン | ジェリー・伊藤 |
原田博士 | 上原謙 |
国立核総合センター院長 | 平田昭彦 |
ヘリコプター操縦士 | 佐原健二 |
防衛長官 | 河津清三郎 |
天野貞勝(日東新聞社会部デスク) | 志村喬 |
第二玄洋丸船長 | 小杉義男 |
防衛軍指揮官 | 田島義文 |
第二玄洋丸航海士 並木 | 山本廉 |
第二玄洋丸船員 村田 | 加藤春哉 |
はやかぜ艦長 | 三島耕 |
ネルソン配下1 | 中村哲 |
ダム監視員 | 広瀬正一 |
救助対策本部員 | 桜井巨郎 |
ネルソン配下4 | 髙木弘 |
キコリ・日本隊員F(2役) | 堤康久 |
茶店のおかみさん | 三田照子 |
第二玄洋丸操舵手 | 岩本弘司 |
豪華客船オリオン丸船長 | 津田光男 |
中條信二 | 田山雅充 |
ネルソン配下5 | 三浦敏男 |
はやかぜ医師 | 岡部正 |
ネルソン配下3 | 若松明 |
第二玄洋丸無線士 本間 | 中山豊 |
ネルソン配下2 | ジョニイ・ユセフ |
ラーフ隊長 | オーベル・ワイアット |
ロシリカ大使 | ハロルド・コンウェイ |
ニューカーク・シティの政府関係者 | ロバート・ダンハム |
幻のシーン
上述のキャストの項に「はやかぜ」なる劇中に一切登場しない船が書かれていることにお気づきだろうか。
実はこの映画は公開直前になってラストシーンが大幅に変更されている。
当初より終盤ではネルソンがロリシカに逃亡する展開が予定されていたが、予算や日数の都合で東宝がラストシーンの舞台を鹿児島に変更。本多猪四郎もこの変更には疑問を抱いたがコロンビア映画からの返答を待てない東宝は撮影を強行。2週間の鹿児島ロケを行った。
しかし、当然ながらコロンビア映画はこのラストに抗議し、当初の脚本通りネルソンがロリシカに逃亡する展開に差し替えられた。
ロリシカの都市の名前も当初の脚本ではニュー・ワゴンシティとされていたが変更することとなり、監督助手の針生宏が「ニューアークがいいんじゃないか」と提案したが、ジェリー伊藤が実在する街の名前であると指摘、完成作品のニューカークに至った。
撮影済みの鹿児島のシーンは本多は現像していないと証言しているが、実際には桜島が映り込んでいる場面が確認でき、田中友幸が撮影現場を収めた8ミリフィルムの現存も確認されている。
残されている鹿児島のシーンのスチルには完成作品ではフェードアウトしている中條信二が登場していることが確認されている。
このバージョンではネルソンは高千穂峰の火口に落下して死亡するという結末だったようだが、落下シーンに使われた人形が高千穂峰に放置されてしまい、後日登山者により発見され警察に通報される大騒ぎになったという。
また、ラストシーン以外も一部のシーンがカットされている。福田が中條とネルソンについて会話するシーンで、中條がインファント島で見つけた石碑の碑文の写しを持って来るという描写の中で、待っている福田の背後の階段を「謎の足」が通り抜けるという場面がある。
- 実は、中條家にはお手伝いの「婆や」が住んでいるという描写があったのだが、この場面がカットされた影響でこの足が不自然になってしまったものと思われる。
このほか脚本準備稿までは「過去に出現したゴジラよりも大きい」とゴジラシリーズと同一世界観であることを示唆する台詞があったがカットされている。
ドラマCD
1996年に『再現戯曲CDシリーズ1~「モスラ'61」』と題して本作のドラマCDが発売された。
音楽と効果音は当時のものを使用し、台詞は声優による新録。
ストーリーは日東新聞社の社会部デスクとなった福田善一郎が記者生活最後の日に自分の体験談を若手記者たちに聞かせるという後日談形式。
キャスト
福田善一郎:関智一
クラーク・ネルソン:山寺宏一
中条信一博士:野沢那智
花村ミチ:柳原みわ
天野貞勝:加藤精三
原田博士:岡部政明
ダニー:遠近孝一
ラーフ:河口宏
女記者:茂呂田かおる
第二玄洋丸船長:花田光
第二玄洋丸船員:肥後誠
関連タグ
発光妖精とモスラ:中村真一郎、福永武彦、堀田善衛の筆による本作の原作。それぞれで短編を手掛けて、一つにまとめたもの。映画本編とは細部が異なっている。
ゴジラ・ザ・シリーズ:フォルドーザというミュータント植物が、本作に登場した人食い植物へのオマージュだという指摘がある。
モスラ(1961年の映画)→モスラ(1996年の映画)