概要
1951年10月から1955年10月にかけて産業経済新聞(産経新聞)にて連載された、山川惣治作の絵物語。
それを原作とした映画化(1954年制作、大映系の映画館で上映)、テレビドラマ化(1961年5月から1962年2月にかけてNET、毎日放送、九州朝日放送他で放送、東映東京撮影所制作)、漫画化(テレビドラマ化とほぼ同時期に小学館の「週刊少年サンデー」に掲載)などが行われた。
1984年には『幻魔大戦』に続く角川映画製作のアニメ第2作として大林宣彦監督によりアニメ映画化された。
ストーリー
真珠湾攻撃が行われた1941年12月、英国植民地のケニヤに駐在していた日本の商社マンの村上大介は、敵国人としての拘束から逃れるため、10歳になる息子のワタルを連れて自動車で奥地へと逃れた。
大自然の驚異に翻弄され、父と生き別れてケニヤの奥地に取り残されたワタルは、マサイ族の酋長のゼガや白人の野生児ケートと出会い、彼らの助けを借りながらたくましく成長し、父を探す冒険の旅を続けていく。
1961年のテレビドラマ版では設定が放送当時の現代劇に改められ、村上大介は国際アフリカ資源調査団の一員となっている。
登場人物
- 村上ワタル
主人公。ケニヤの奥地で遭難し、父を探して冒険の旅を続ける日本人の少年。初期は弱々しい性格だったが、サイに襲われた父を助けようとするなど、心根は勇敢。父親と生き別れてしまうが、ゼガを助けたことで、ゼガから戦う術や現地で生き抜く知恵を身に着けて逞しく成長していく。服装は遭難時のものをボロ布同然になりながらも着続けている。テレビドラマ版で主演を務めた沓名信夫は、原作者の苗字と役名を合わせた芸名「山川ワタル」名義で芸能界に入り、後に映画版「黄金バット」に出演している。
- 村上大介
ワタルの父親。商社マンだったが戦争を知り、奥地に逃げる、混乱の最中でワタルと生き別れてしまい、息子を探して、戦争の終結も知らぬまま密林を彷徨い続ける。その最中、何度も窮地に陥るが、持ち前の知恵と機転で切り抜けている。テレビドラマ版で彼を演じていた中山昭二は、後に「ウルトラセブン」のキリヤマ隊長を演じている。
- ゼガ
マサイ族の酋長。旅の途中、病気で倒れたところを部下に見捨てられて、岩山に放置されていたところをワタルに助けられた。ワタルの師として野生で生き抜く術を教え込んだ。厳格で頑固だが優しい性格で、村人からは「怖いけど立派な酋長」と尊敬されていて人望は厚い。アニメ映画での声優は大塚周夫。
原作では、刃が長いマサイ族の槍を武器として愛用。この槍の扱いに長けており、接近戦及び投擲に用いていた。ワタルにもその技を教授している。
白い素肌に金髪の美少女で、現地の部族から「白い神」と崇められている。実は赤子の時にさらわれてきたイギリス人。ワタルとゼガの助けでポラ族から逃げた後は、彼らと共に両親を探して旅をする。アニメ版の設定では1944年時点で12歳。ファンからは「ケイト」と呼ばれることも多い。アニメ映画で声を演じたのは「角川三人娘」の一人である原田知世。
- ダーナ
大蛇。体長25m以上、推定体重が1000kg以上あり、ライオンをひと飲みにすることもできる。底なし沼であるジュージューの沼を渡る道を知っているなど謎の多い存在。知能も高く、ゼガとは友情に近い関係を築いており、ゼガの頼みでワタルを保護して守っていた。
地上にやって来たティラノサウルスを絞め殺したり、ワタルを頭に乗せて敵部族の村を全滅させるなど、本作最強のチートキャラ。しかしどこか気紛れかつ、我関せずといった一面も有しており、肝心な時に居ない事もしばしばだが、ワタルやゼガの心強い味方として活躍する。
- ナンター
アフリカ象たちのリーダー。仲間たちと底なし沼と知らずにジュージューの沼を渡ろうとしていたところを、ワタルの機転により助けられた。ワタルが自分たちを助けたことを理解するなど、知能は高い。ワタルとゼガから底なし沼を渡る方法(沈まない道)を教えてもらい、このことでワタルたちに友情を抱くようになり、その後はたびたびワタルの危機を救うようになる。「ナンター」という名前はワタルがつけたもので、名前の由来はダーナにちなんで、その名前をさかさまにしたもの。
余談
- 産経新聞での掲載はもともとは週1回だったが、あまりもの人気に、連日掲載に切り替えている。その人気ゆえに産経新聞は一時期「ケニヤ新聞」と言われた事もあった。
- アニメ映画版は監督の意向で前衛的かつ実験的な演出に溢れた怪作となった。アマチュアの感性を取り入れるためアニメーターを一般公募した結果、当時まだ高校生だった細田守とうるし原智志が採用された(細田守は学校の試験のため参加を断念)。山川ワタル氏曰く、興行成績は翌日に公開された「風の谷のナウシカ」に惨敗であったという。なお、本作の配給収入は6億5000万円、「ナウシカ」の配給収入は7億4200万円。確かに約1億円も差がつけば惨敗と言えば惨敗ではある。ちなみに両作品とも配給は東映である。
- 「監督のささやかなイタズラ」と称して一般作品で見えてはいけないものが描かれている問題シーンは一部で有名。事も有ろうに当時の角川特番で堂々と紹介している上にDVDでも無修正で収録されていたりする。後にAmazonプライムビデオにてHD画質で配信されるが、やはり無修正であった。
関連タグ
石川球太 - コミカライズ版を手がけた