あらすじ
幼い頃、あやかしに攫われ体に妖印を刻まれたことで、一族の人間たちから“傷モノ”と虐げられてきた菜々緒。
予定されていた白蓮寺家の若様との婚姻も従姉妹の暁美に奪われ、妖印を隠すため猿面をつけさせられて、惨めな生活を送っていた菜々緒はある日、紅椿家の若き当主・夜行と出会う。
とある事件により面が外れ夜行に素顔を見られてしまう菜々緒だが、夜行はその美しさと霊力の高さに興味を持ち――。
(公式HPより引用)
概要
原作者、友麻碧と作画担当、藤丸豆ノ介による漫画であり、副題に「虐げられた私が、皇國の鬼神に見初められた理由」が付いている。
舞台は大正時代に日本をモデルにした和風ローファンタジーの世界であり、不幸なヒロインが結婚を機に幸せになっていくシンデレラストーリーとして描かれている。
登場人物
主要人物
- 菜々緒
本作の主人公かつヒロイン。
生まれながら強大な〝陰の霊力〟の持ち主で、その霊力の高さを本家の人間に買われたことによって分家出身でありながら時期当主である白蓮寺麗人の許嫁に任命されていた。だが麗人から貰った簪を無くし結界外の外に出たため猩猩に襲われた。その後額に妖印(×印)を刻まれたことにより周囲から『傷モノ』と呼ばれ迫害を受けることになり、麗人との許嫁も解消されて猿のお面を着けながら劣悪な生活を送り、周囲からの暴力と暴言に堪えながら日々をやり過ごしてきた。
そんな中、紅椿夜行に強大な霊力とその霊力が込められた料理の腕を買われて紅椿家に嫁ぐことになり夜行から村から連れ出され、そこから徐々に人間性と勇気を取り戻していくようになる。
- 紅椿夜行
退魔の一族である紅椿家の若き当主。
代々紅椿家の血を引く者に現れる吸血体質の男性であり『椿鬼』と呼ばれている。
悪しきあやかしから国を守る退魔の国家機関『皇國陰陽寮』の壱番隊隊長を務めており、皇國の鬼神(皇都の英雄とも言われている)と評されるほどの実力者。高い霊力を持った女性を見つけて伴侶にするべく、白蓮寺家に訪れた際麗人や明美に虐げられていた菜々緒と出会い彼女と婚姻を結んだ。
前述のとおり吸血体質でもあるため霊力を持った伴侶から生き血を吸わなければ弱体化することから霊力が高かった菜々緒を娶り、彼女との結婚は打算だと言い切る一方で、打算だからこそ必ず菜々緒を幸せにすることを菜々緒に誓った器量の良い好漢。白蓮寺の村から連れ出した後、村で虐げられてきた孤独な菜々緒を憐みそれと同時に彼女の優しさに触れ、より一層幸せにしようと固く決意する。
白蓮寺家
- 白蓮寺麗人
白蓮寺家の次期当主。
菜々緒の元許嫁で現在は暁美と婚姻を結んでおり子供が一人いる。
当初許嫁同士から菜々緒を可愛がっていたが猩猩に攫われ傷モノになったことから態度を一変し、
「猿臭い」と罵り、縁談を破棄しその正妻となった明美共々菜々緒を虐げてきた。
見かけこそ好青年の色男だが白蓮寺家の因習に染まりきっている身勝手な人物であり、差別意識が高く、傷モノとなった菜々緒に嫌悪感を表していた。
虐げていたきたのにもかかわらず猿面が外れた菜々緒の美しい素顔に絆されて手の平を返して異常なほど菜々緒に執着をし、訳あって持っていた簪を持つ菜々緒が自分をまだ好いていると認識し、夜行に菜々緒は連れ去られたと妄執、徐々に周囲らも巻き込む行き過ぎた行動を起こすことになる。
- 白蓮寺暁美
菜々緒の従姉妹。菜々緒が麗人との婚約候補から外れたため新たな婚約者として正妻となった。
お淑やかに振舞うが本性は自己中心的で傷モノとして落ちぶれた菜々緒を嬉々として蔑む悪女、また本作の元凶。
村一番の美人と言われるほど美人であるが我が儘で影で菜々緒に手を上げていた。
他にも人一倍悪知恵が働くという一面を持ち、菜々緒に「食い扶持を与えてあげる」という名目で完璧な料理を作らせて自分の手柄していた。菜々緒が夜行に娶られたことから自身よりも幸せになることを気に食わず激しく憎悪し、菜々緒を蹴落とそうと企む。
- 白蓮寺清人
白蓮寺家現当主。
息子である麗人が将来美人になるであろう菜々緒に絆されないように麗人から嫌われる呪いが込められた猿のお面を菜々緒に着けることを強いた人物。だがこのきっかけにより麗人の暴走を起す発端となった。
- 白蓮寺富美子
白蓮寺家当主の正妻。
猩猩に妖印を付けられた菜々緒を猩猩と同一視しており、麗人の側室にすることすら嫌悪感を示して反対しているほど差別意識が高い。
- 白蓮寺間人
白蓮家の隠居。
麗人の祖父であり、椿鬼のことを知っていたので紅椿の嫁を生贄のようなものと言い放ち、
菜々緒の素顔を見て連れ戻そうと躍起を起す麗人を咎めた。
- 白蓮寺琴美
麗人と明美の娘。まだ私生児で物語序盤で妖蟲に齧られていたところ菜々緒に救われる。
紅椿家
- 紅椿夜一郎
夜行の父親であり皇國陰陽寮の局長を務めている隻眼の偉丈夫。
息子想いの良き父親であり、夜行を心から想ってくれている菜々緒のことも甚く気に入っている。
- 紅椿朱鷺子
夜行の母親。
皇家出身の女性であり、一子である鷹夜を溺愛する一方で筋金入りの箱入り娘であるが故に吸血体質の椿鬼である夜行を受け入れることができず毛嫌いしており、傷モノである菜々緒の事も白蓮寺家の人々の様に蔑んでいる。
- 紅椿鷹夜
夜行の兄であり紅椿の嫡男。
母親に溺愛されて育ったため母親想いの性格をしているが母の悪影響を強く受けているので、臆面もなくに夜行を毛嫌いしている。
菜々緒の事も見下しているが菜々緒の霊力を直に感じ取った際、その霊力の高さに驚愕している。
用語
- 大和皇國
大正時代の日本をモデルにした架空国家。
あやかし(妖怪)と陰陽術が存在している。
開国から約50年の月日が経ち人々は西洋文化を取り入れながら文明開化を謳歌している。
- 皇都
物語の舞台となる架空の都。
五行結界の内側に位置している対あやかし防衛の要の地。
開国を境に取り入れた西洋文化で発展している都会であり、夜な夜な華族(貴族)が夜会を開いている。
- 五行結界
悪しきあやかしから人々を守る結界。
中心に陰陽大神宮が存在している。
強力ではあるが万能ではなく、弱いあやかしが結界を通り抜けて侵入してくる時がある。
五行結界の外は当然あやかしのテリトリーなので、故意に五行結界の外に人を追い出す行為は重罪とされる。
- 陰陽五家
五行結界を編み出した陰陽師の名門五家で五行の属性と序列が設けられている。
皇都を中心にした五芒星の位置(北、北東、南東、南西、北西)に居を構えている。
五家の他にも下に藤堂家を筆頭にした陰陽後八家が存在していて、さらにその下に陰陽後々二十八家が存在しており、下位の家門は虎視眈々と序列を上げるべく下剋上を狙っている。
- 白蓮寺家
陰陽五家の一角。
序列は四位で五行属性は木。
皇都から北側の位置に点在していて、呪術を得意としている。
霊脈に恵まれた山間で暮らしており、開国の影響で高い霊力を持った女性が産まれにくい時代でありながら、霊脈の影響で霊力の高い女性が産まれやすいので、他の陰陽家に嫁がせて得た結納金で潤っていることが夜行から語られる。
恵ある村でもあるがその一方で閉鎖的な田舎社会であるが故にあやかしに対する嫌悪感と差別意識が高すぎるという悪しき因習が根を張っていて、人に友好的なあやかしと妖印を刻まれた人間すら穢れとして蛇蝎の如く嫌う差別問題が幅を利かせており、その風習から菜々緒は迫害されてきた。
また、田舎らしく都会に憧れている娘が多いのも特徴。
- 紅椿家
陰陽五家の一角。
序列は一位で五行属性は火。
皇都から北東の位置に点在していて、退魔を生業とする武家。
当主は後述の戦闘力に秀でた椿鬼が務めるしきたりがある。
白蓮寺家とは対照的に皇都の一角で暮らしているのでハイカラな設備が整っていて、人間に友好的なあやかしを式神にして使用人にしている。
皇家と盟約を結んでおり、紅椿の血を絶やさないように霊力の高い皇家の女性は紅椿家に嫁いでいる。
- 椿鬼
紅椿家の吸血体質を引き継いだ男性への呼称。
開国以前、大椿鬼という大妖怪がいて、その大椿鬼から人々を守るべく当時の紅椿家の当主が我が身に大椿鬼を封印したが、その結果、代々紅椿家の一部の男性は霊力の高い女性の血を定期的に摂取しなければ生きていけない体として生を受ける羽目になる。いわゆる半妖。
一応メリットとして高い戦闘力を得るという恩恵があるが、吸血行為に耐えれる精神を持った女性は極わずかであり、妖印を刻まれた人間と同様に心無い者から化け物扱いされてしまう。
- あやかし
魑魅魍魎の化け物。妖怪。
基本的には人間の敵なのだが、人間に友好的なあやかしも存在している。
開国以前は人間と持ちつ持たれつの関係を結んでいて共存できていたのだが、開国の折、大半のあやかしが開国に反対した。
それがきっかけで人間と敵対する道を選び、開国後も争いを続けている。
霊力の高い人間を好み積極的に襲う。
- 妖印
あやかしが自身の所有物に付ける目印。
妖気が生じる傷跡が消えずに残る以外に不都合は無いのだが「妖印を刻まれると血が穢れる」「その血に触れると穢れが伝染る」といった迷信が存在していて、理解の無い者や差別的な白蓮寺家では信じられている。
そのせいで、妖印が刻まれた菜々緒は迫害の憂き目に遭ってしまう。
医療でも陰陽術でも治すことはできないが、妖印を刻んだあやかしを倒せば治すことができる。