紅椿鷹夜
べにつばきたかや
「いけないなぁ 猫、式の分際で我が家の人間の悪口を言っちゃぁ」
「君が夜行の花嫁・・・か。ふぅん、かわいいね。
だけど─────花嫁としては下の下だ」
髪はウェーブがかかった癖毛で着物の下にハイネックのインナーを着ているのが特徴的な男性。
夜行の元婚約者・斎園寺しのぶを自身の婚約者にしている。
一般的に家督を継ぐのは長男だが紅椿家では"椿鬼"の者が当主になるのが慣例であり、弟の夜行が"椿鬼"の能力を受け継ぎ誕生したため、当主になることが絶望的な立場となっている。
朱鷺子の過保護によって退魔一族にもかかわらず、刀を持たせてもらえなかったことで戦闘力は無いが、勉学に長け数多くの霊具(霊力で稼働する道具)の開発している。
極度な母親想いの性格で迷うことなく母親の紅椿朱鷺子の意見に賛同し肩入れしており、吸血体質である夜行を毛嫌いしている様子を見せている。
弟妹たちよりも朱鷺子に溺愛されて育ち、また彼女の自尊心の高さが濃く遺伝していると思われる。
自身と朱鷺子の悪口を菜々緒に吹き込んだ罰として夜行の式神である化猫に対して数日間寝込ませるほどの乱暴をするなど傍若無人に振る舞っている。
菜々緒の美貌は認める発言はするものの、上述してあるように「傷モノ」だから花嫁としては下の下だと容赦なく彼女に対し、非道な言葉を突きつける。
だが、屋敷の乗り込んで菜々緒に触れながら侮辱しているところを帰宅した夜行に見つかり、一触即発の空気となる。
夜行に対して、菜々緒が「傷モノ」ということから血が穢れるからちゃんとした本妻を迎え、菜々緒を側室にするべきと提案を持ちかけるなど朱鷺子や白蓮寺家の人間と同様に菜々緒を軽視する発言を繰り返す。
だが、菜々緒に触れていた際には霊力を直に感じ取っており、平然を装いながら霊力の高さに驚愕している。
逃げるように立ち去るまで、菜々緒を花嫁として、自分を差し置いて当主となった夜行を認めないという姿勢を見せていたが帰宅後に発狂する朱鷺子をよそに・・・
(なんだ・・・あれは)
(なんなんだ あの娘の霊力の高さは・・・!?)
その後、夜会で妖が出たことで婚約者であるしのぶをよそに朱鷺子と先に避難してしまったことで彼女から失望されてしまう。
さらに彼女が夜行に執着し始め、人目を憚らずに菜々緒に対して「正妻」の地位を譲るように迫っていたところに朱鷺子と現れると自分との婚約を解消するという彼女の独断の意向を非難した。
(夜行から彼女の一連の言動についての連絡を受けてすぐに駆けつけた形である。)
秘かに後鬼に対して、この場から離れるように命じて、しのぶに反発をする朱鷺子とともに彼女を対処するが強引に婚約破棄をされてしまった。
だが、この婚約は朱鷺子の思惑で夜行への当てつけのようなもので鷹夜はしのぶのことを「話が全然合わない」と夜行同様に彼女を酷評しており、しのぶ自身も鷹夜に対して関心が無かった。
また、事の発端となった妖の騒動の直前にはしのぶが婚約を祝福してくれた令嬢たちに「鷹夜の側にはいつも朱鷺子がいる」と婚約者らしいことすら出来ていないと不満を暴露したことでそれまで自身のことを高評価していた令嬢たちからドン引きされてしまっている。
婚約破棄されたことで肩の荷が下りたのか、しのぶと夜行が婚約するという捏造された記事が皇都にばらまかれると秘密裏に紅椿本邸を訪れ、菜々緒への今までの態度を謝罪する。
そして菜々緒に「母親に肩入れしていたのは紅椿家で孤立させずに暴走を抑えるためだ」と自ら悪役として徹していることを告白。
実際は夜行を嫌っておらず、椿鬼の能力による疲労や多忙などを案じて面倒な当主の務めを自分に任せて欲しかったという思いを明かした。
(菜々緒への態度を改めても後鬼からは初対面で菜々緒に対して無礼な態度をとっていたのを根に持たれており、彼女の冷たい視線に冷や汗をかきながら止めるように懇願し、紅椿家の妖の中でも夜行直属の妖の忠誠心の高さに恐れをなしていた。)
無邪気な笑顔を見せると「義兄」として菜々緒を気遣いながら自身が開発した籠目玉という防御の霊具を与える。
多くの人が救われると喜ぶ菜々緒の清らかな人間性に驚き、開発した霊具が称賛されたことに動揺しながら菜々緒が妻として認められていることに納得し、朱鷺子をなんとしてでも説得させてみせることを約束した。
そして夜行を手に入れるために暴走をし始めたしのぶに注意するように忠告する。
母親が絡まなければ話の分かる勤勉な人物であり、菜々緒は白蓮寺家から支配されていたかつての自分と重ねている。
夜行の過去では朱鷺子に花を渡そうと近づいて来た幼い彼に厳しい言葉を投げつけて牽制はしていたが朱鷺子が夜行を見て怯え始めた姿を目の当たりにしてでの行動であり、母親を思う子供心から庇っていただけである。