喰いタンとは。
- 麻雀の役。タンヤオ(断幺九)の一種。
- 寺沢大介の推理コメディ漫画作品のタイトル。『イブニング』(講談社)にて2002年6月号 - 2009年15号まで連載。作品名は主人公が「食いしん坊の探偵」であることに由来し、これを略したもの。
- 上記漫画を原作に置いたテレビドラマ。ただし設定からして完全に別物の物語である。pixiv上では主にこのテレビドラマに関連する作品(ファンアート)が多い。
全て本記事で解説する。
麻雀の役
いわゆる副露(チーあるいはポン)を行ったタンヤオの事を指す。相手の牌を「喰った」(自分の手の中に取り込んだ)状態で成立させる事から、こう呼ばれる。早上がりの最大手として最も有効かつ有名な手のひとつであるが、ゆえに初心者向けかつ役としての点数としては弱く設定(最低子1,000、親1,500)されており、こればっかりをやられるとゲームが成立しなくなる可能性も大きいため、認めるか認めないかのローカルルールの差が激しい。
ただ、近年では認めるルールが大半を占める。これは簡単な役を導入する事でルールを解りやすくして初心者に広く門戸を開く目的や、麻雀を競技として運営(配信・放送)する場合にあたり競技展開をスピーディーにする(早上がりを推奨する)事で麻雀を知らない観客に対して鑑賞負担を軽減させる(長丁場の緊張感を持続させて競技鑑賞者を疲れさせる事を防止する)目的などがあるため。
詳細はタンヤオの項目を参照。
漫画『喰いタン』
「食」をテーマとした探偵(推理)もの。連載時は『ミスター味っ子II』と並行連載だった。
ちなみにその『ミスター味っ子II』(および『ミスター味っ子』)とは世界観が共有されている。(本作のキャラクターが『味っ子II』に登場したり『味っ子』の内容が本作に反映されていたりしている)
資産家の遺児にして小説家かつ無類の食いしん坊にして名探偵である高野聖也が、秘書の出泉京子と共に様々な事件に挑む物語。
食い物と見れば、事件現状に残った証拠品ですら食い尽くすとか毒入りの可能性のある食い物ですら食い尽くすとか、まさに大賢は大愚に似たりを地で行く主人公が活躍していく物語。
後述するテレビドラマ版が有名になったため、こちらを読むと面食らう人も出る事がある(喰いタンだけに)のだが、こちらもテレビドラマ版に負けず劣らず濃いキャラクターに彩られた作品である。
ちなみにテレビドラマ版に関連する「お遊び」として「野田涼介」という焼酎の銘柄が登場した。(残念なことにキャラクターとしては登場しない)
テレビドラマとの一番の違いは何かと問われれば、こちらは緒方警部が男性(警視庁捜査一課期待のホープとして名高い敏腕キャリア警部。高野にとっては大学時代の後輩で、先輩であり手助けしてくれる高野に対しては基本的に丁寧)である事。
番外編
その一方でテレビ版との企画の兼ね合いから番外編である『くいしんぼうたんていせいやくん』が「たのしい幼稚園」に連載された。なお、この番外編はいわゆる漫画版の公式年齢操作作品(いわゆるパラレルのセルフパロディ。この作品では聖也と京子の年齢設定が同級生となっており、このために本編及び後述する正規の番外編とは設定の矛盾が生じている)であるため、メディアミックスなのに本編ともドラマ版とも全く繋がりが無い「異色作」と化している。この作品は『喰いタン』本編単行本の8巻と10巻に収録されている。
また幼年誌「おともだち」の親向け小冊子である「OTOMODACHI PLAZA」では「喰いタンがあばく! これがプロのうまさのひみつ」が掲載された。こちらは「漫画本編の高野が『おともだち』編集部の依頼で、有名飲食店のルポ取材に行きレシピを貰う」という内容となっており『喰いタン』漫画本編の番外編(掌編話)ととれる構成になっている。
さらに番外編として『名探偵聖也くん ~ボクとバンチの物語~』が、単行本書き下ろしとして発表されている。これは高野聖也の小学生時代にフォーカスを当てた作品正史上の正規番外編にあたり、上述の『これがプロのうまさのひみつ』と共に単行本となった。
テレビドラマ『喰いタン』
上記した寺沢大介の漫画『喰いタン』を原作に置いた、と称して制作された日本テレビ土曜ドラマ枠(2006年1月クール、2007年4月クール)放映のオリジナルテレビドラマ。主演は東山紀之。漫画とは設定も物語も全く別物。(一部のトリックを申し訳程度に共有している程度)
漫画のテレビドラマ化と見てしまった場合には、甚だ原作クラッシャー(下手をすれば原作レイプ)な作品であるが、単作のオリジナルテレビドラマとして見た場合には、なかなかに凝った設定や物語やキャラクター性を持っており、SPや2期制作も得るなど、放送当時には大きく好評となった作品でもある。
ちなみに、このテレビドラマの展開中、原作者である寺沢が他ならぬ漫画『喰いタン』上で(漫画の)高野に「ドラマと原作は別物。表現(メディア)が異なれば(設定含め)見せ方も違うのは仕方ない事。(だから)アレは自分の作品じゃない 」と、とってもメタフィクションな投げやり発言をさせ(該当シーンもメタフィクションである事自体を全く隠さない表現だった)震えあがったテレビドラマスタッフが寺沢の元に詫び料代わりの菓子折りを持って土下座しに行ったという逸話がある。
寺沢的には(いわゆる「原作クラッシュ」を痛烈に皮肉った)シャレのつもりだったのだが、スタッフ側にとってはシャレがキツすぎたようで、スタッフの謝罪に対し逆に恐縮してしまった寺沢は、この後に(漫画の)高野に一件を匂わす発言をさせてドラマ側の謝罪を受け入れ許している事をきちんと明かし「漫画もドラマも両方面白い作品だから、どうか両方ともよろしく」と締めている。
そんなワケで、こちらは残念ながら原作に存在した『ミスター味っ子』との関連性は存在しない。
倒産寸前の探偵社であるホームズ・エージェンシーのオーナーによって招かれた謎の男にして無類の食いしん坊である高野聖也が、同事務所の未熟な若手である野田涼介や出泉京子、さらには高野に助けられたことで彼に憧れ事務所に出入りする、少々紛らわしい恰好をした紛らわしい名前の小学生である金田 一(“カネダ ハジメ”と読むのであって“キンダイチ”ではない。“ダニ”でも“フミ”でもない。無論キー局ゆえのネタである)とともに事件に挑む物語。
主人公の高野が、自身の持つ双子箸「カストルとポルックス」を持って行う「食の構え(ポーズ)」である「シャキーン!!」が、非常に特徴的。この「シャキーン!!」こそが本作を代表するものと言っても過言ではなく、別作のキャラに、このポーズを取らせた場合にも「喰いタン」タグが付く場合がある。
原作漫画との一番の違いは何かと問われれば、こちらは緒方警部が女性(所轄署である横浜みなと署の広報向けお飾りキャリア警部。高野に対しては捜査に割り込んで邪魔ばかりされる事から粗暴)である事。