概要
『作りたい女と食べたい女』は、ゆざきさかおみによる漫画作品である。略称は「つくたべ」。
料理を通じて知り合った女性2人の日常を描きつつLGBTは勿論、女性特有の悩みや社会的立場における差別等と、シビアな部分を主テーマとする。
元々は作者が2020年3月にTwitterとpixivの個人アカウントで発表、2021年1月8日よりKADOKAWAのウェブコミック配信サイト『ComicWalker』内レーベル「COMIC it」にて連載を開始。
このマンガがすごい!2022、オンナ編第2位を受賞。
2022年11月よりNHK総合テレビにてテレビドラマ化し、2022年11月29日から12月14日まで放送された。
2023年6月15日発売の単行本第4巻の帯にてテレビドラマ第2段の制作が発表され、2024年から放送を開始。
あらすじ
料理が大好きだが、ひとり暮らしで少食のため「もっとたくさん作りたい!」と日頃から感じていた野本さん。ある日、職場でのストレスからついいつもの癖で、とても食べきれない量の料理を作ってしまう。思い浮かんだのは、ポスト前でたまたま見かけた同じマンションの1つ隣りに住んでいる大食漢でふくよかな女性・春日さん。思い切って声をかけてみたことから始まる2人の交流。
登場人物
野本 ユキ(のもと 〃)
演 - 比嘉愛未
タイトルの “作りたい” 女性。派遣社員として働いている。
料理好きで所謂『大盛り系』や『巨大〇〇』等のメニューが作りたいのだが、自身が少食ゆえに春日に出会うまでは欲求を満たせずにいた(尚、料理への興味の原点となったのは『ぐりとぐら』である)。
SNSアカウントで作った料理の写真をアップしており、即いいねやコメントをもらったりと料理垢としてファンも多い様子。
家庭環境は平凡な方だが、最近は何かある毎に母や周囲から「結婚して家庭を持て」とせっつかれている現状に、少なからず不満を抱えている。
料理を通じて春日と関係を築く内に、彼女を恋愛対象として意識している自分に気が付き、一時は戸惑い悩むものの、第32話にて遂に告白し、晴れて両思いになる。
春日 十々子(かすが ととこ)
演 - 西野恵未
タイトルの “食べたい” 女性。
とんでもない大食漢であり、野本と出会う以前は月に数回程ドカ食いをしていた。初登場した時にはチキンのパーティバレルを両脇に抱えており野本を驚かせた。ドカ食いの反動か健康診断で内臓(主に膵臓)の数値がよろしくない。
野本とは同じマンションの同じ階、部屋を1つ挟んだお隣さん。職業は親戚から譲ってもらったワゴンで、フリーのルートドライバーをしている。
まるで明治~昭和を思わせる程に強権的な父親を中心とした、男尊女卑によるパワハラが横行・常態化している家庭で生まれ育ったため、家から逃げるべく強引に独立した過去を持ち、上記のドカ食いは実家でのわびしい食生活(=男性は上質な料理を好きなように食べられるが、女性は男性陣が手を付けなかった残りものを食べる等の差別)の反動もある。
独立した後に実家での生活を「『家の一部』になってしまう(=個人の尊厳を喪ってしまう)」と断言する程に拒絶し、劇中でも野本に対し「実家に帰るのを拒むと、今までの養育費の請求があった(要約)」と答える等、家族関係はほぼ破綻している(厳密に評すれば、父親を中心とした男系親族のほぼ全員が「女は男に奉仕するもの」とする、今の時世なら明らかに時代錯誤過ぎる暴論が当然と思い込んでいる)。
第26話で遂に実家に所在がバレた為、家族(主に父親)から迅速に逃亡するべく引っ越しを検討する中、野本に自身との同居を打診。そして彼女からの告白も受け入れ「自分達2人の住む家」を探すようになる。
南雲 世奈(なぐも せな)
20話で登場した(ただし、存在そのものを匂わせるシーンは15話からある)“食べたくない” 女性。シーズン2からレギュラーキャラとなる。
2人の間の部屋に引っ越して来る。
幼い頃から食欲そのものがほぼ欠落しており、現在は後述のトラウマも影響して、飲み物しか口にできない極端な少食。
両親との関係そのものは良好なのだが、自身の食への興味のなさを無理解なままで心配する両親や、学校では無理にでも給食を食べさせようとする教師と接し続けた末に、「食事をしない自分は悪人(要約)」とする罪悪感や、それに伴う居心地の悪さに苛まれてしまい、距離を取るべく1人暮らしを始めた。
精神年齢がやや幼いのか、気心知れた人に対しては『個人名+ちゃん』で呼びたがる(もちろん、事前に本人から許可を取っている)。
野本達と交流する内に、改めて『自らの食事の興味の無さ』をネットで検索し『会食恐怖症』にたどり着いた。
矢子 可菜芽(やこ かなめ)
南雲と同じく第20話で登場した “食べるのは好きだが作れない” 女性。
野本とは同性愛者を対象とした、インターネット・コミュニティの掲示板を通して知り合う。
料理以外にもLGBTや性差別など、女性に関わる社会情勢への関心・造詣が深い。
現時点では家庭環境が不明だが、第30話にて「今尚未練が残る失恋をした」過去が明かされ、それが上記のLGBTへの感心・造詣の根幹となっている。
また、第38話で南雲に自らの過去を告白した。
ドラマ版
原作が完結していない上に、まだ物語に社会派要素が絡んで来る前の序盤だった都合上、単行本1巻から2巻の内容を一部改編している。
また、野本の会社パートではドラマオリジナルのキャラクターが何人か居る(中野 周平氏が演じる男性社員の森岡 慶太が顕著)。
原作ファンからは「ユニセックスな容姿の春日さんを演じられる女優が居るのか?」と心配されていたが、同役を演じた西野 恵未女史は身長以外春日さんそのものレベルに酷似していた為、心配していたファンは一様に胸を撫で下ろした(尚、西野女史は春日さんを演じるに当たり、体重を約10kg増量させたらしい)。
外部リンク
- 作りたい女と食べたい女-ComicWalker
- 作りたい女と食べたい女-pixivコミック
- 『作りたい女と食べたい女』公式-Twitter
- 作りたい女と食べたい女-NHK
議論
概要にもある通り、日本のLGBT環境の現状や事実に深く斬り込んでいるが、そのせいで一部の読者からは「教科書臭い」「(野本と春日の遣り取りを見たいのに)主題が変わって読むのが辛い」などの苦言も残念ながら散見している。
また、一部読者からは「2021年に新潮社で連載・終了したマンガ『今夜すきやきだよ』のパクり」と酷評する声もある(※1)。
更に単行本第4巻収録の28話で、野本と春日が一人暮らしである矢子宅の冷蔵庫や食料棚にある食材・備蓄を大方消費し朝食をたいらげる降りがあるのだが、その時に野本と春日の2人はちゃんと矢子から許可を得たにもかかわらず、矢子が低血圧で朝が弱い上に前話での酒が残り意識が朦朧としていたため「家主を飲ませた状態で冷蔵庫を漁っているようで嫌」などの冤罪を掛けられた挙げ句、同28話1ページで見せた野本のボサボサ髪や隈のある表情も合わさってか、一部から『山賊回』の侮蔑まで付けられる事態も……(※2)。
また、ドラマ版にまで視線を向けると、ローストビーフを作るエピソードにて、劇中で野本が行ったレシピが「素人による低温調理であり、危険なので放送すべきではない」として、一部の料理関係者から苦言を呈されてしまった(※3)。
注釈
※1=ただし『今夜すきやきだよ』のヒロイン2人は “結婚したいけど家事ができない女性” と “家事が得意だけど世間一般の『結婚』や『男女の幸せ』に懐疑的な女性” であり、作品やキャラクター像の根幹としては異なっている。
※2=「酒を飲ませた状態」とあるが、むしろ矢子が野本達に酒を勧めたサイドである。また台所の食材を「全て好きに使っていい」との言質も矢子から取っており、はっきり山賊行為とは異なっている。
※3=料理関係者の指摘は至極もっともであるが、それは作品ではなくドラマ制作サイドに向けるべきである。
表記揺れ
関連タグ
きのう何食べた?:本作はこの漫画の女性版と評価できる。
ワタシってサバサバしてるから:NHKでドラマ化された時の後番組