概要
性差別のひとつ。前近代の社会に広くみられ、古代ギリシャの社会がその典型例。日本の場合は古代は女性の地位が高かったが、貴族や皇族で高い地位につく女性は男性に比べ少数であった。男尊女卑的な思考は平安時代以降、仏教の普及とともに広まり、その後は当然視されるに至った。
「自由・平等・博愛」をスローガンとしたフランス革命後も、西欧では男尊女卑が当然視される状態が続いた。「男女同権」が法律などでうたわれ、女性差別的制度が撤廃されるのは20世紀に入ってからである。イランやサウジアラビアなどのイスラム教原理主義国家では、21世紀の現代も男尊女卑そのものといえる風習や制度が根強く残っている。中国やインドの農村部では男尊女卑のために女児を中絶してしまうため、出生児の男女比が極端にアンバランスになり、将来的な社会の不安定化が懸念されている。
日本では制度上男女差別は撤廃されているが、今も結婚や出産のため仕事や出世を諦めなければならない女性が多く、企業や政界で要職を務める女性は欧米より目立って少ないなどが問題視されている。一方、施設・サービスなどでの女性優遇(レディースデー・女性専用車など)を例に、「最近は男性の方が惨めになっている」「日本は女尊男卑だ」なる意見もあるが、これは日本では女性が家庭の財布の紐を握る習慣があり、バブル期以降、消費者として女性がもてはやされているからであり、これ自体が改めて問題視される傾向も出てきたからである。
余談
かつての日本を含む多くの国では、女性の参政権がないことが多かったが、これは「男性には兵役の義務がある」という理由づけがなされていた。もっとも、第一次世界大戦までは徴兵制が敷かれていない国でも男性しか選挙権がないことが普通だったが...。世界大戦を機に女性参政権を認める国が増えたのは、総力戦下で女性が工場労働者や従軍看護婦などを担い戦争に積極協力したことが一因である。
そもそも参政権がない、ということは政治に対する責任を取らなくても良い、ということでもある。そして夫、兄弟、息子あるいは友人、恋人など、家族や親しい人物を介して政治に口出しすること自体は充分可能であった。
これは上記の歴史にも言え、表向き低い立場にいたことで政治等に実質口出し可能な立場にありながら責任追及を免れているケースも多々ある。
近年の過激化したフェミニズムについて、「自分達が忌み嫌う男尊女卑と何ら変わりない差別主義者」などと揶揄されることがある。これは日本のツイフェミが「ミラーリング」(「女性が受けた差別を反転してやり返す」というもの)という韓国フェミニズムの手法の影響を大いに受けているためであり、多くの場合は意図的なものと考えられる。ミラーリングは韓国の強烈な男尊女卑の風潮への反発として生まれたものであるが、「男性に自らの行いを自省させる」という本来の狙いを果たしておらず、むしろ男女の不毛な対立を煽っているとして問題視されている。
関連タグ
女尊男卑(※対義語)