概要
東海道・山陽新幹線(イラスト左)と西九州新幹線(イラスト右)で活躍する新幹線電車。
2016年6月に東海道・山陽新幹線向けのN700系以来のフルモデルチェンジ車として発表された。(N700系・N700Aとは完全な別形式車両。)
なお、JR西日本(お出かけネットなど)では、「N700系」の一種として案内されている。
2020年7月より営業運転を開始している。
製造は日本車輌・日立製作所(※1)。JR東海とJR西日本との共同開発だったN700系とは異なり、300系以来のJR東海自社開発車両となった。
JR西日本とJR九州でも導入されている。詳細は後述。
2021年に鉄道友の会ローレル賞を受賞。また、車両とグリーン車用シートが、2021年度グッドデザイン賞(日本デザイン振興会主催)に選ばれた。
略歴
- 3月に確認試験車のJ0編成(9000番台)が落成。同月10日に報道公開を行い、20日より試運転を開始した。海外輸出を含む他路線への導入を視野を含めた360km/h試運転や8両編成(短編成化)試運転、停電時のバッテリーでの自走などデータ収集を行った。
2020年
- 2月に量産車第1号であるJ1編成(0番台)が落成。7月のデビューまでに5編成製造予定だったが、コロナ禍の影響で4編成(J1~3、5)の登場となった。
- 7月1日より運用開始。N700系と共通運用で、順次本数を増やしていった。初日以外は基本的に東海道新幹線内の列車を中心に運用された。
2021年
- 3月13日から、JR西日本所属のH編成(3000番台)の運用開始。2編成を導入。
- 4月20日より運行開始のJ13編成から、11号車の車椅子スペースを6席へ増やした。これにより座席数を1323席から1319席へと変更。窓側にも車椅子スペースを設置したのは、当形式が初。なお、J1~J12編成は2席のまま運用予定。
- 12月22日には、JR九州西九州新幹線向けのY編成(8000番台)が日立製作所にてお披露目。他のN700Sとは違い、6両編成。
2022年
- 3月12日に7号車にある喫煙ルームを廃止し、テーブルやコンセントなどを備えるビジネスブースへ改装。5月9日から一部編成にてサービスを開始。
- 9月23日、西九州新幹線開業。Y編成がかもめとして運用開始。
2023年
- 8月10日、JR西日本H3編成運用開始。秋にH4編成も導入予定。2024年導入車と同一仕様。
- 10月20日、7号車にSワークPシートを導入。3列席のB席にセパレートを設置し、A・C席を座席として利用、乗車券と指定席特急券に加え+1200円で利用可能となる予定。
- 10月下旬、JR九州(西九州新幹線)向けY5編成運用開始。
2024年
- 春頃、喫煙ルームを全廃。非常時用の飲料水等の倉庫に転用する。
今後の予定
- JR東海は2023年度~2026年度に掛けて19編成増備予定。多目的ルームの窓位置変更や、車椅子スペースのコンセント位置の変更等のマイナーチェンジが行われる予定。
- 2028年頃、N700S(N700AをS化改造した車両を含む)を使用して、東海道新幹線を自動運転化。
主な特徴(共通項目)
- ATCとブレーキシステムの改良により、地震発生時の緊急停車距離短縮。
- 台車振動検知システムのさらなる向上。
- 主変換装置のスイッチングモジュールに炭化ケイ素(SiC)製素子を採用し、許容温度を向上させ大幅な小型軽量化を実現。
- 徹底した小型軽量化による最適な床下機器配置の実現。具体的には従来主変圧器と主変換装置の同時搭載が不可能であったが、これを可能にした。車種削減により16両編成の基本設計のまま12両・8両などの様々な編成長に対応。
- 先頭形状はN700系の「エアロ・ダブルウィング」から更に環境性能を向上させた「デュアル・スプリーム・ウィング」へ変更。ライト周辺を盛り上がらせ整流作用を向上させている。
- 車体屋根上の高圧引通線を車端部を除いて車体内に内蔵。
- N700系より若干広い車体を採用。車体断面がN700系より角ばっている。
- N700系と青帯の先端部のデザインが異なる。
- 車両搭載の機器監視システムを強化。地上へのデータ送信量の増加。
- より制振性能の高い「フルアクティブ制振制御装置」をグリーン車に搭載。
- 普通車全座席へモバイル機器用コンセントを設置。
- 普通車座席のリクライニングがグリーン車と同じく背もたれと連動して座面が動く構造になっている。
- リチウムイオンバッテリー搭載により、停電時に時速30km/hでの自走が可能になり、最寄り駅への退避やトンネル内からの脱出が可能になった。
- 主電動機の磁極数を増やし、固定子鉄心を小型化することで軸方向スペースの捻出と軽量化。捻出したスペースはブレーキライニングと歯車装置の改良に充てられている。
- 歯車装置を従来のはすば歯車からヤマバ歯車に変更することで軸方向の振動を低減、大幅な静粛性向上と軸受の耐久性・整備性向上を実現した。
- 普通車客室上部にある荷棚の部材には、廃車された700系・N700系から発生するアルミニウム合金をリサイクルして使用。2023年度からは、車体の一部にもリサイクルしたアルミニウム合金を使用する。
- また、J0・J15編成にはモニタリング用の架線検査装置装備が搭載されている。
各社の導入状況と仕様
JR東海
前述の通り2016年6月に開発を発表、2018年3月に試作車(9000番台・J0編成)が完成し、2020年7月1日より量産車(0番台)が営業運転を開始した。
16両編成で、基本的にN700系と設備を合わせている。塗装もN700系を引き継いだ白い車体に青い帯だが、前頭部のデザインが異なる(Sをイメージしたデザイン)編成番号は『J』で、0番台を名乗る。
2026年度までに量産車59編成導入予定であり、製造から約12年で寿命を迎えたN700系2000番台(X編成)を順次置き換えている(2020年7月2日よりN700系2000番台の廃車・解体が進んでいる)。
なお、試作車(9000番台・J0編成)は、量産車(0番台)と設備が異なる(後述)ため、営業運転には入らず、2020年7月以降も試験走行に徹している。(N700系9000番台・X0編成が2019年2月に廃車になり、後を継いでいる。)
JR西日本
JR東海と同一仕様の16両編成が2020年度に2編成導入され、2021年3月13日のひかり594号より運用開始。編成番号は『H』で、3000番台を名乗る。2023年7月にH3編成を追加投入。秋頃にH4編成も投入予定。
また、西日本管内限定運用の500系・700系7000番台(レールスター)の代替車両として本系列の8両編成仕様車の投入が報道されているが、2023年現在詳細の発表はない。
JR九州
2020年10月28日、当時建設中だった西九州新幹線に本系列を導入する計画を発表)、2021年12月22日に第1編成が公開され、2022年1月6日から11日にかけて、山口県から長崎県大村車両基地へ輸送された。5月10日より試運転を実施。
同年9月23日の新幹線開業にあわせ運用開始した。
東海道・山陽新幹線向け車両とは仕様が異なり、本番台の特徴は以下の通り。
- ベース車両はJR東海のN700Sだが、法手続き上は九州新幹線800系の構造装着変更の扱いで車両確認を受けた。
- 普通車のみの6両編成で、車番は8000番台とされた。なお、16両編成の車両とは形式の付け方が異なる(後述)。編成番号は「Y」。
- 九州区間における35‰急勾配の走行に対応するため、全車両電動車となる。下り勾配走行時にのみ起動する抑速ブレーキも装備。編成が短いため、一部機器は車内に機器室を儲け設置。ユニットも3両1ユニットとした。
- 16両編成に搭載されている車体傾斜装着や床下ヒーターなどは、最高速度・環境の違いから非搭載とした。
- 外観デザインは水戸岡鋭治氏が担当。車体色は純白をベースに、JR九州コーポレートカラーの赤を床下やアクセントに入れた。同氏が手掛けた他の車両と同様、英字ロゴやシンボルマークが描かれる。
- 高級車をイメージした黒一色や、白や赤の単色も検討されたが、最終的に紅白のデザインが選ばれた。800系と似た配色なったが、明るい赤色の面積を増やした。
- 列車名は在来線特急の「かもめ」を継承し、800系のデビュー当初のように毛筆字で「かもめ」の文字が車体にレタリングされている(当時のJR九州社長青柳俊彦氏が書いたもの)。
- 内装は「和」の要素を取り入れる。座席は1~3号車指定席(2+2列)、4~6号車自由席(2+3列)。3号車に車椅子スペースを設置。所要時間が短いため喫煙ルームは設置されない。編成定員は396名。
- 800系と同様に検査装置を搭載可能な編成があり、Y1、3に軌道検査装置、Y2編成に架線・信号設備検査装置を必要に応じて搭載できる。
- 開業時に用意された編成は4本。2023年8月には車両検査時の予備を確保するため、1編成を増備し10月より使用。
車両形式について
車両名称は東海道・山陽新幹線車両として定着した、「N700」の名称に、最高を意味する「Supreme」の「S」をつけ、「N700S」とした。車体寸法や搭載機器が全く異なるため、N700系(N700Aを含む)とは別の系列である。JR東海によると、「N700S」が正式名称で「系」を記載しない表記だが、一部の資料では「N700S系」の表記も使われている。(⇒一例その1・一例その2)
すでに新幹線の車両形式自体が枯渇している状況(※2)にあったため、車両1両ごとにつけられる形式名がややこしいことになっている。
- 東海道・山陽新幹線で使用されている16両編成(0番台J編成、3000番台H編成)は、700系(71X形・72X形)とN700系(76X形・77X形・78X形)に使用されていない「73X形・74X形」の形式が割り当てられた。このため、N700系より新しいのに番号が若返っている。
- 西九州新幹線向け8000番台Y編成は上記とは異なり「72X形」を名乗っており、一見すると700系と同じ形式番号になっている(ただし700系に8000番台は存在しないため、番号の重複は起きていない)。このようになった経緯について公式発表はされていないが、書類上は前述の通り800系の構造変更とされている。
番台 | 詳細 | 編成数(2022年5月現在) |
---|---|---|
0番台 | J編成、JR東海所有の16両編成。量産車。 | 増備中 |
3000番台 | H編成、JR西日本所有の16両編成。 | 3編成 |
8000番台 | Y編成、JR九州保有の6両編成 | 5編成 |
9000番台 | J0編成、JR東海所有の16両編成。性能確認車(試作車)。量産車とは設備が違う(後述)ため営業運転には入らない。 | 1編成 |
(2023年8月現在)
0番台(J編成)は、2026年までに59編成を予定。製造時期により若干仕様の違いがあるが、全て0番台でJ1編成からの通番。
3000番台(H編成)は、2024年までに4編成を予定。
試作車(9000番台)と量産車(0番台)の違い
- 先頭部の台車カバー形状
- 床下機器の位置やカバーの分割を変更
- 試作車は16号車の検電アンテナが旧型のまま
- 試作車は2、15号車の屋根上にパンタ設置準備工事がある
- 試作車はパンタグラフに投光器とカメラがある
- 一部車両の屋根上の滑り止めの形状を変更
- ロゴマークの濃さ(量産車の方が濃い)
- 試作車には3号車山側の喫煙ルームの窓が無い
- 量産車は10号車海側の業務用室の窓が無い
- 量産車は11号車の車椅子対応席のシートピッチ(窓間隔)が広い
運用
東海道・山陽新幹線
2020年7月1日より運用開始。初日はのぞみ1号→26号(J1)、のぞみ3号→46号(J3)の2往復。
COVID-19の影響で日立製作所製分の製造が遅れ、J1~3、J5編成の4本での運用開始となった。
N700系(N700A)と共通運用で、デビューより2ヶ月間は公式Twitterにて運用を公開し、それ以降は東海道新幹線各駅やJR東海テレフォンセンターにて当日の運用を問い合わせができた。基本的に東海道新幹線内の列車に充当され、デビュー11日目からはひかり・こだまの運用にも使われている。
2021年3月13日のダイヤ改正より、かつてのN700系と同じく本系列の運用を一部固定化するダイヤが組まれた。当初は東海道新幹線完結列車のみだったが、2023年3月18日からは直通列車にも使用されることになった。
※2023年3月18日現在、以下の列車で運転。全列車車椅子スペース設置、(ビ)はビジネスブース設置
・下り
- のぞみ271号(名古屋6:20→博多9:39)
- のぞみ7号(東京6:51→博多11:45)
- のぞみ11号(東京7:30→博多12:30)
- のぞみ15号(東京8:12→博多13:09)(ビ)
- のぞみ19号(東京9:12→博多14:09)
- のぞみ23号(東京10:12→博多15:09)
- のぞみ27号(東京11:12→博多16:09)
- のぞみ69号(東京11:48→広島15:42)
- のぞみ35号(東京13:12→博多18:09)(ビ)
- のぞみ73号(東京13:48→広島17:42)
- のぞみ45号(東京15:30→博多20:30)
- のぞみ47号(東京16:12→博多21:09)
- のぞみ55号(東京17:30→博多22:30)
- のぞみ59号(東京18:51→博多23:51)(ビ)
- のぞみ257号(東京19:48→新大阪22:15)
- ひかり651号(東京16:33→新大阪22:18)
- ひかり661号(東京19:33→新大阪22:18)
- ひかり663号(東京20:12→新大阪23:12)
- ひかり667号(東京21:30→新大阪23:24)
- ひかり669号(東京22:03→新大阪23:46)
- こだま705号(東京7:27→名古屋10:06)
- こだま717号(東京10:27→名古屋`13:06)
- こだま725号(東京12:27→名古屋15:06)
- こだま729号(東京13:27→名古屋16:06)
- こだま807号(東京20:51→三島21:44)
- こだま761号(名古屋6:51→新大阪7:51)
・上り
- のぞみ74号(広島6:00→東京9:57)
- のぞみ4号(博多6:36→東京11:33)
- のぞみ10号(博多8:00→東京12:57)(ビ)
- のぞみ14号(博多8:36→東京)13:33
- のぞみ28号(博多12:15→東京17:15)
- のぞみ34号(博多13:36→東京18:33)(ビ)
- のぞみ38号(博多14:36→東京19:33)
- のぞみ44号(博多15:36→東京20:33)
- のぞみ50号(博多16:36→東京21:33)
- のぞみ54号(博多17:15→東京22:15)
- のぞみ62号(博多18:36→東京23:32)(ビ)
- ひかり638号(新大阪7:18→東京10:12)
- ひかり644号(新大阪9:18→東京12:12)
- ひかり646号(新大阪10:18→東京13:12)
- ひかり666号(新大阪20:21→東京23:06)
- こだま804号(静岡6:22→東京7:36)
- こだま802号(三島6:31→東京7:21)
- こだま806号(三島6:56→東京7:48)
- こだま818号(三島8:00→東京8:54)
- こだま726号(名古屋13:38→東京16:18)
- こだま738号(名古屋16:38→東京19:18)
- こだま746号(名古屋18:38→東京21:12)
- こだま750号(名古屋19:38→東京22:12)
- こだま764号(新大阪21:03→静岡23:23)
車椅子設備の違いやビジネスブースの有無など設備が違う編成が増えたため、一時期は中断されていた運用公表が行われている。「毎日運用固定」「本日限り充当」2種類の時刻表を掲載。(⇒運行ダイヤはこちら)
西九州新幹線
2022年9月23日の同線開業と同時に運用開始。
列車名は各駅停車タイプ・速達タイプ共に全てかもめで、47本全列車に使用される。
海外展開
- アメリカ合衆国のテキサスに建設が計画されている高速鉄道にN700Sを導入する計画がある。当初は旧N700系の投入が明言されていたが、後に当形式ベースに変更された。
脚注
- (※1):これまでは川崎重工業も長らく東海道・山陽新幹線系統の車両開発・生産に関わってきた。が、中国高速鉄道の車両製造に際し、現在の「中国中車」へ車両製造技術の提供を行った点、2017年に発生したN700系の台車破損重大インシデントにおいて、発生原因が同社内の台車製造工程における構造的ミスであった点などによりJR東海との関係が悪化、安全や技術特許防護の観点から同社は本系列をもって東海道・山陽新幹線系統の車両開発から外される事となった。参照記事
- (※2):東海道・山陽・九州新幹線の車両形式は、百の位を系列としての名称に割り当てていた(例:300系の東京方先頭車は322形、700系の東京方先頭車は724形。なお0系の場合は2ケタ形式)が、900番台は事業用車に割り当てられるため使用できず、N700系登場の時点ですでに番号が頭打ちになっていた。600番台は未使用だが、本来はE1系に割り当てられる予定だった。
その他
新幹線変形ロボ_シンカリオン
タカラトミーより、新幹線がロボットに変形するシンカリオンのおもちゃが発売。
シンカリオンN700Sのぞみ
1号車・5号車・16号車の3両で変形し、ノーマルモードとドラゴンと合体し武装強化したスプリームモードがある仕様で、玩具オリジナルの機体(アニメ1期終了後かつ、営業運転開始前だったのでアニメや映画には登場しなかった)。
シンカリオンZ_N700Sのぞみ
同アニメ2期の放送に合わせて発売された。先頭車両2両変形の他、HC85系とZ合体(手の装換)する機能がある。パイロットは安城ナガラ。
シンカリオンZ_N700Sかもめ
上記アニメ終了後の2022年10月14日に発売。アニメの後日談となるWeb小説に登場。先頭車両2両変形の他、883系(AO-7編成旧塗装)とZ合体(脚を883と装換し、N700Sの6号車がバックパックになる)する機能がある。パイロットは中洲ヤマカサ。
関連動画
2020年7月1日営業1番列車「N700S 出発式」
N700SデビューCM
「その先の、笑顔へ。」「Don't stop JAPAN!」
西九州新幹線開業記念「かもめ楽団」
CM
ずらし旅
JR東海のCM『ずらし旅』の最後にN700Sの走行シーンが流れる。
イメージキャラクターに本木雅弘を起用。地方各地を旅するシーンが描かれる。
キャッチコピーは「ひさびさ旅は新幹線!」「旅は、ずらすと、面白い」
会いにいこう
2023年2月に公開されたAMBITIOUS_JAPAN!に代わる東海道新幹線の新テーマソング。歌はfeat.賀来賢人 and feat.UA。MV及びCMにN700Sが多く登場する。車内のシーンも同車のもの。
また、7月21日からJR東海所属車両(J編成)の車内チャイムを当曲のアレンジに変更。(※N700系も同様だが、音源がスピーカー位置の違いにより異なる。)
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