東海道・山陽新幹線 700系電車
0系と100系の置き換え用として製造され、1999年3月より営業運転を開始した。
300系、500系に次いでJR世代における東海道・山陽新幹線用電車としては3車種目。
JR東海に60編成、JR西日本に16両編成15本と8両編成16本が配備された。
最高速度は285km/hで、500系の300km/hにこそ及ばないが、車内の居住性や乗り心地の改善を図っている。
編成
16両編成(C編成・B編成)
0番台(C編成。JR東海所属)と3000番台(B編成。JR西日本所属)はいずれも16両編成。
外観上の違いとして0番台は幕式、3000番台はLED式の行先表示を有する。
またパンタグラフの遮音板の色が0番台はグレー、3000番台が白となっている。
そのほか、3000番台の先頭には500系同様「JR700」のロゴが入る。
当初東海道・山陽新幹線の「のぞみ」用として投入されたが、後継車両のN700系の増備が進み、2012年3月に「のぞみ」の定期運用から離脱。その後は東海道新幹線での引退までは臨時「のぞみ」と定期「ひかり」「こだま」での運用が基本であったが、後継のN700Aと呼ばれるグループの追加投入により、徐々に運用が縮小され2017年3月に東海道新幹線区間でのひかり運用が消滅し、2019年12月にはこだま運用も消滅、2020年2月末に東海道新幹線での全ての運用が終了した。
2003年から2005年にかけてC編成の先頭車両の帯部分に「AMBITIOUS JAPAN!」のステッカーが、一部中間車には丸いステッカーが掲出された。
2011年度より寿命を迎えた編成から順次廃車が始まっており、N700系1000番台・4000番台に置き換えられている。
JR東海所属編成については2019年度までに全廃となった。この廃車に伴う発生品のうち、座席・方向幕・銘板・運転席のセミバケットシートなどは、JR東海の公式販売サイトで販売されていた(勿論、数量限定。特にセミバケットシートは1編成につき2席しか出ない上、RECARO製というブランド力もあり、1席80,000円と高額)。
また、700系0番台の一部はJR西日本の300系を廃車させるために、編成記号CのままJR西日本に転属している(通称Cw編成)が、この際1編成が部品取りなどを理由に廃車・解体された。Cw編成は2017年までに全廃になったと同時にJR西日本の3000番台に初の廃車が発生した。
2020年3月をもって東海道新幹線での営業運転を終了する計画を発表。最後まで残ったC53編成とC54編成に、同年2月より退役を記念した車体装飾がなされ、臨時のぞみ号として走った。(※当初はラッピングだったが、走行中に剥がれてしまったため、塗装に変更した。)
当初、3月8日にラストラン列車「のぞみ315号」(全車指定席)の運行が予定されていたが、「COVID-19」感染症の世界的流行により中止となり、結果的に3月1日に新大阪駅→東京駅で運行された団体臨時列車が最終列車となった。(参照1、参照2)
なお、この2編成は3月11日~12日に浜松工場へ廃車回送された。
リニア・鉄道館にて開催予定だった700系関連イベントは臨時休館の影響もあり、2020年9月7日まで開催延長の措置が取られた。(参照)
なお、C54編成の8、14、16号車の3両は廃車後もしばらく解体されずに浜松工場内に残されていたが、2021年1月頃に解体された。(2020年秋と2021年1月に浜松工場の一般公開が予定されており、同車の公開が期待されていたが、こちらもCOVID-19の流行で中止された。)
山陽新幹線内においても2020年3月13日を以て定期運用を終了。
その後もJR西日本所属の1編成(B4編成)が残り、5月には全般検査が行われた。しかし、同年8月8~9日に新下関~博多間の500系こだまを代走した以外は運用にはつかず、2021年2月28日に除籍されたと各鉄道雑誌に掲載された。
検査上がりの綺麗な姿のまま博多総合車両所に留置されていたが、2022年1月~3月にかけて解体された。これにより、16両編成の700系は全廃された。
8両編成(E編成)
7000番台(E編成。JR西日本所属)は山陽新幹線内のみの運行。2024年4月現在、全編成が健在である。
かつては「ひかりレールスター」専用車であったが、九州新幹線全線開業とそれに伴うN700系7000番台の増備により、「ひかりレールスター」での運用が縮小され、翌2012年には速達タイプと呼ばれる列車が消滅し、「みずほ」「さくら」にその役割をほぼ譲り、2024年現在は主に「こだま」で使用されている。その後若干ながら「ひかりレールスター」での運用が増発されたが、こだまへの統合が進み現在は朝の上り一本のみである。
ダイヤ乱れ時の突発的な運用ではあるが、「のぞみ」運用に入ることがある。
8両編成のため、博多南線の運用にも入る。
JR西日本の車両に見られるオリジナルカラーリングを基調としており、帯色は0系・100系更新車の緑、500系で青となる部分が黄色となっている。
なお、JR西日本は2024年7月24日までにN700S系3000番台(H編成)の追加投入(2024年度~2026年度に16両編成×4本(※参照1)、2026年度~2028年度に16両編成×10本(※参照2))に伴い、余剰となるN700系5000番台(K編成、N700a)(※参照3)の一部を16両編成から8両編成への短縮改造(2024年度〜2026年度に4本(※参照1)、2026年度〜2029年度に10本(※参照2)の合計14本)を博多総合車両所で施工後に山陽新幹線向けに転用し、2027年を目処に500系7000番台(V編成、発表時点で8両編成×6本が残存)の営業運転を終了させる(2026年度末までに4本が用途廃止(※注釈1)、2027年を目処に残りの2本が引退(※注釈2))と発表した。同時に、この短縮改造されたN700aのうち8本(※注釈3)(※注釈4)によって700系7000番台(E編成、発表時点で8両編成×16本が残存(※注釈4))のうち8本(※注釈3)を置き換える方針であることも言及されている。
(※参照1)2024年2月14日付のJR西日本のプレスリリース。
(※参照2)2024年7月24日付のJR西日本のプレスリリース)
(※参照3)2024年7月25日付の乗りものニュースによるJR西日本への取材記事。
(※注釈4)2024年7月24日付の鉄道コムによるJR西日本への取材記事。
内装
東海道・山陽新幹線16両編成のC編成・Cw編成・B編成は共に普通車が2-3の5列配置、グリーン車が2-2の4列配置である。
しかし細かい部分に違いがあり、B編成ではC編成と比べて普通車は濃い紺色の座席生地を採用。グリーン車に至っては妻面を木目調にしたり照明カバーのパネルを凝ったものにするなどより高級感溢れるものとしている。
このような違いは300系(座席生地の色が若干違う程度)やN700系(完全に同一)では見られず、500系を生み出したJR西日本の面目躍如といった仕様になっている。なお移籍組であるCw編成はC編成時代と全く変わりがない。
運転席の座席には、長時間の着席に伴う腰痛を軽減する為、スポーツカーで有名なRECARO製のセミバケットシートを採用。スポーツカー同様、高いホールド感とRECARO特有の座り心地により、正しいドライビングポジションを保つ事が出来る。
蛍光灯でも色温度の設定が蛍光管次第で変えられる時代とすでになっていたが、この700系の普通車はそれまでの新幹線同様、白っぽい(おそらく昼白色~昼光色)照明を用いていた(グリーン車は電球色蛍光灯+スポットライトの読書灯)。
しかし「夜に疲れる」という不評のせいか、次のN700系以降、普通車も電球色照明に移行していった。
E編成は0系「ウエストひかり」後継として普通席も2-2の4列配置(指定席のみ)である。このシートには「サルーンシート」という愛称がつけられている。なおグリーン車は連結されていない。
8号車に4人用普通個室を備えるが、100系や200系で見られた個室と違い、扉・パーティションの部分は簡易パネルを使用して覆っており、取り外しが可能な構造になっている。ひかりと新大阪発着のこだま運用以外では閉鎖されるため、現在では利用できる機会がかなり少ない。
かつては乗換案内を検索・印刷できる「旅指南」が設置されていたが、携帯電話・スマートフォン等の普及により現在は廃止されている。
コンセントはB・E編成の全てと東海所属のC編成の2001年以降増備車両に装備しているが、N700系と異なり各車両両端に限られる(グリーン車も同様)。
またB・E編成ではN700系の端部座席のように両端座席のテーブルごとに備え付けられている(普通車で1両あたり10基・グリーン車で同8基)のに対し、C編成ではN700系の中間座席のように壁横に1基ずつ(1車両あたり計4基)のみ備え付けられているという違いもある。
車両設計
車両はアルミニウム合金製で、新幹線車両として本格的にダブルスキン構造を採用した最初の車両である。300系にあった縦方向の骨組みがなくなり、押出型材の中にウレタンを詰めたことで、構造の簡素化と防音・断熱性能の向上を実現した。冷房吹出口が荷棚の下に設けられ、ダクトが短くなったことで冷房の効きが良くなっている。
特徴的な先頭形状は、空気抵抗を受ける面積を一定の割合で変化させつつ、500系よりもノーズを短くするために考案されたもの。500系と同様、トンネル微気圧波を抑制するための形状である。また、下部が大きく膨らんだ形状となっているが、これは車体下部の気流を安定させるとともに、最後尾になった際、乱れた気流が車体下部に入り込んで車体を左右に揺らすのを抑制する効果がある。
この先頭形状は「エアロストリーム」と通称される。
走行機器には、新幹線車両で初めてIGBT素子を使用した主変換装置を採用し、磁励音を低減。
編成構成は500系と同様の4両1ユニットを採用したが、編成全体での電動車比率は3:1となる。
付随車の渦電流ディスクブレーキは、300系の1軸2機から、1軸1機に半減している。これは、編成構成の見直しにより回生ブレーキの性能が上がったことと、重量削減のためである。
500系で採用した車体間ダンパとセミアクティブサスペンションを搭載し、300系よりも揺れが少なくなった。
集電装置はシングルアームパンタグラフで、スロープ状の碍子カバー、左右に遮音板の組み合わせを初採用。
シングルアームパンタグラフは、後の多くの新幹線車両に採用されている。
C編成とB・E編成には走行機器に多くの相違点がある。
台車の構造はC編成が300系由来の円筒積層ゴム+コイルばね式軸箱支持方式だが、B・E編成は500系と同様の軸梁式となっている。
歯車比も異なり、高速域での走行音に違いが見られる。C編成は300系と同じ23:68(2.96)、B・E編成は500系と同じ28:78(2.79)である。
海外進出
台湾高速鉄道(台湾新幹線)向けとして開発された700T型のベース車両になった。
保存車両
JR東海リニア・鉄道館にて、C1編成の1号車(723-9001)が保存されている。
なお、同車と入れ替わる形で300系(323-22)の展示を終了した。(解体)
B編成(3000番台)は全車両が廃車・解体されている。
関連タグ
0系 100系 300系 500系 N700系 N700S 800系
その他の700系
叡山電鉄デオ700系
経営合理化とワンマン運転に備えて1987年から1988年にかけて両運転台車を8両製造した。
- デオ710形:デナ21形の機器を流用しツリカケ駆動で2両が登場。のち他社から譲り受けた部品を使ってカルダン駆動へグレードアップさせた。
- デオ720形:デオ200形の機器を流用しツリカケ駆動で4両が登場。のち他社から譲り受けた部品を使ってカルダン駆動へグレードアップさせた。
- デオ730形:カルダン駆動車・デオ300形の改造名義となっているが流用箇所は少ない。2両が登場。
このうちデオ732号車は2018年に観光列車「ひえい」へ大規模改造が行われた。
伊予鉄道700系
元京王電鉄5000系(5100系)の譲受車。台車交換を行って1987年以降に入線。ツリカケ駆動の5100系のうち21両が、カルダン駆動の5000・5100系のうち7両が移籍した。ツリカケ駆動だった車両はすべてカルダン駆動化され、移籍した車両のほとんどは京王在籍時非冷房だったために伊予鉄道入り後冷房化改造が行われている。