概要
ガラス管内に水銀が封入してあり、放電により水銀蒸気を発光させる。
しかし、そのままでは、青白い光と紫外線のみを発するだけであり、照明にはとても使えないので、内部に紫外線を受けると発光する蛍光体を塗布してある。1種類の蛍光体だけでは白色光が出ないので三原色分混合して塗布してある。
歴史
原理の発見まで遡ると白熱電球と同等に古いが(ガイスラー管)、実用化されたのは1934年である。第二次大戦直前に日本でも製造・販売が開始されたが当時はまだ非常に高価な機器であった。
蛍光灯も水銀灯の一種なので、2020年の水俣条約の発効をめどに生産が中止となる。既に照明器具単体の新品は家電屋で売っておらず、替えパーツとしての蛍光管や電球型蛍光灯の販売にとどまる。2027年をもって完全に販売中止となる。
発光させるための仕組み
手動式
ONボタンを長押しすると蛍光管の電極に電流が流れて放電準備のための加熱が始まり、その後ONボタンを離すと安定器というコイルからキック電圧と呼ばれる高圧が電極に印加され放電が始まり点灯する。いったん放電が始まれば、後はコンセントからの電源のような低い電圧でも放電は続く。消灯する際はOFFボタンを押して回路を切り離すと電力供給が途絶えるため放電が止まり消灯する。
ちなみに、手動式はその構造上消灯/点灯に係わらず常に電極にコンセントからの電圧がかかっているため蛍光管の交換時は感電事故に注意。
グロー式
グロースターター式、スターター式とも。
放電準備のための加熱の時間調整をグロー管という小さな電球のような放電管で自動的に行う。グロー管は電極にバイメタル(熱膨張率の異なる金属同士を貼り付けたもの)を使用し、管内の放電の熱による温度で自動スイッチとして働き、手動式の長押しに該当する動作を自動的に行う。
通電するとグロー管の放電が始まると同時に電極の加熱が始まり、その後グロー管の電極がくっつくとグロー管の放電はとまり電極が離れる。すると、安定器からのキック電圧で放電が始まる。
※手動式・グロー式の安定器は一種の変圧器で鉄心を有し、電圧と電源周波数に対応した磁束密度→鉄心厚さが設定されている。通常、世界の大多数の国ではこの規格は国内に1通りしかないため問題になりにくいが、日本だけは東西で周波数が2通りになっているため、誤った器具を使うと過大電流が流れて焼損する恐れがある。安定器も大手の補修部品の供給は終了、代替メーカの販売にとどまっている。
ラピッドスタート式
40W以上の2灯式に多く、工場や事務室に採用された方式。 安定器にフィラメントを常時温めるコイルを持ち点灯時でも続く。グローランプ式のようにキック電圧を待つ必要がないため瞬時点灯ができた。電灯回路はグローでは100Vが主であるがラピッドスタートは200Vの採用が多い。
常時フィラメント電流を印加しているため専用のランプ(FLR-xx)が必要である。インバータの登場で故障の際などに挿げ替えられていった(インバータ、ラピット兼用のランプも登場した)。更にはLED化には安定器を外すか、スルー配線してLED化した(交換時、間違えないようLED化済のシールも張られる)。ラビットスタートは間違い。
インバータ式
インバータで始動電圧を印加する。その後点灯を維持するだけの電圧に落とす。単純なものでは発振回路を目的の蛍光灯に合わせた特性に製造してあるが、高度なものではマイコンによる制御で点灯時の始動電圧印加と点灯維持を行うほかに、明るさを変えられるものもある。インバータ式は電源周波数よりはるかに高い周波数(大体数十kHz位)で点灯させるため、点灯中のちらつきを感じにくい利点がある。現在市販されている電球型蛍光灯は全てインバータ式で、その構造上気温が低いとなかなか動作せず点き始めはかなり薄暗くなる(灯具本体にインバータがあるタイプだと室温の範囲内ではそこまでの不調を来さないが、更に下がれば同様に暗くなる)。
こぼれ話
- OsakaMetroでは多数点灯の蛍光灯シャンデリアが万博開催(設置は1967頃)を機につけられ、駅ごとに意匠が異なるものであった。(現在はLED照明に改修されつつある)
- 東京メトロ清澄白河駅都営大江戸線飯田橋駅では、ランダム配置の蛍光灯照明が知られている (大阪、東京ともあの一件ののち、かなりのランプが外され以前の明るさはない)。
- 蛍光灯下で色褪せや樹脂の変色・変質が起こるのは、紫外線が洩れているため。
- 蛍光体を塗布していない蛍光灯は、殺菌効果の高い紫外線が出るため殺菌灯とよばれ主に殺菌に使われる。目に有害なので殺菌灯の光を見てはいけない。殺菌ランプとしてGL10,15,20Wが入手可能で主に水や医療器具の殺菌、水虫治療に用いられる(手動式蛍光灯スタンドとの相性が良い)。以前はEP-ROMの消去にも用いられた。
- ぼんやりしている人、反応が鈍い人のことを蛍光灯とからかう風潮があった。閃いたを示すシンボルには白熱球が光るイラストで、蛍光灯の点灯で閃きを表すことはない。
日本と蛍光灯
戦後もしばらくの間高価であったのは変わりがないが、浮世絵のように青白さを重視する日本人の美意識のためか、眼球のメラニン色素のためか、灯火管制の反動か、改築しやすい木造住宅のためか、とにかく日本で爆発的に普及した。LED照明が実用の域に入る前、日本の家庭用照明の98%が蛍光灯であったといわれる。
青色人気は蛍光灯だけにとどまらず、どうしても白が青っぽくなるLEDもむしろ青くて良いとされることが多いほか、液晶モニターも黄ばんでいないことが重要視される傾向が強い。
欧米、特にヨーロッパ諸国においてはオフィス・公共空間用としては普及していても、家庭用としてはほとんど普及していなかった。たいてい白熱灯である上、日本のような天井照明一本ではなく、床置・壁付けの照明を組み合わせた照明が普通であるため、白色の蛍光灯が天井からぶら下がって発光する日本人世帯の家は、一発で見破られ空き巣に入られることもあったという。
東芝での愛称
ネオライン 直管
サークライン 環形(円形) 商標 のため日立ではリングライトという別名を使うことに。ただし略号は各社とも互換性を持たせるためFCL。(FLの間にCircleのトップレターCが入る形に)
NL ノイズレス 特にAMラジオでの”ジー”という音を低減させる目的でNHKと研究されたランプ。(ただし器具内部のコンデンサの劣化のほうがノイズの発生に顕著であった(32W以上のP型点灯管は点灯管とともに管内接続のコンデンサも交換することになり劣化対策されていたがE型(捻じ込み)タイプはコンデンサ交換ができず劣化したものがそのままになるケースが多い。(ショートモードでコンデンサが故障すると両端か橙に光るだけで点灯しなくなる。)各社ランプへNL表記は許されていた。
ラピッドマスター ラピッド用蛍光管わかりやすくした。
ワットブライター 省エネが叫ばれた昭和のオイルショック後開発された蛍光管1本当たり2~3W低減する10W以下のものはなかった。
メロウX 昼白色型 3波長型とも言う蛍光物質を変更し明るくしたもの。これはルピカエース(三菱)が有名。(松下電器)はパルック。 それ以前は白色(白から薄黄色・色温度4000k)昼光色(薄い青色・6500k)の2色のみで、なぜか日本の東西で50Hz地区は白色、60Hz地区は昼光色を器具にあらかじめ入れていたようだ。
- 安定器 周波数がわかるよう黒の銘版シールは50Hz赤の銘板シールは60Hzである。シールがはがれても刻印により判別できる。