概要
基本相互作用 (Fundamental interaction) とは、自然界に存在する素粒子間に働く相互作用の内、それ以上基本的な要素に還元できない力である。自然界に存在する力は、その元を正せば4種類の基本相互作用のいずれかの合算である為、物質の根源が素粒子であるように、力の最も基本的な要素として存在する。4つの基本相互作用とはそれぞれ重力相互作用、弱い相互作用、電磁相互作用、強い相互作用の4つである。
基本相互作用は、素粒子同士を結び付ける存在として重要である。素粒子の直径は古典的にはゼロ、量子力学的にはプランクスケールで存在するといわれているが、いずれにしても素粒子同士は大きさと言う概念がない点では一致している。大きさが無い以上、適当な粒子同士が接近し衝突する可能性と言うのは、相互作用なしにはゼロである。相互作用があって初めて素粒子同士は結合する事が出来る為、相互作用が無ければ宇宙には天体も原子も存在しない事になり、それどころかエネルギーという概念も存在せず、中身があっても何も変化のない宇宙と言う事になる。
基本相互作用はそれぞれゲージ場を持ち、この場を粒子として扱うように量子化するとゲージ粒子として現れる。素粒子同士の相互作用というのはゲージ粒子のやり取りで初めて働く。基本相互作用とゲージ粒子の組み合わせは、それぞれ弱い相互作用がWボソンとZボソン、電磁相互作用が光子、強い相互作用がグルーオンである事が判明している。重力相互作用については重力子の存在が提唱されている物の、現時点では未発見であり、ゲージ粒子自体が存在するかどうかも未確定である。
一覧
名称 | 重力相互作用 | 弱い相互作用 | 電磁相互作用 | 強い相互作用 |
---|---|---|---|---|
ゲージ粒子 | 重力子? 時空? | Wボソン及びZボソン | 光子 | グルーオン |
理論 | 一般相対性理論 | GWS理論 | 量子電磁力学 | 量子色力学 |
チャージ | 質量及びエネルギー | 弱アイソスピン (弱荷) | 電荷 | 色荷 |
結合定数 | 重力結合定数 | フェルミ結合定数 | 微細構造定数 | 強い結合定数 |
到達範囲 | 無限大 | 約10^-18m | 無限大 | 約10^-15m |
距離当たりの強さ | 2乗に反比例 | 1乗に反比例 | 2乗に反比例 | 1乗に比例 |
働くフェルミ粒子 | 全て | 左巻きフェルミ粒子 | 荷電粒子 | クォーク |
働くボース粒子 | 全て | W、Z、H | Wボソン | グルーオン |
束縛状態 | 天体及びその集合体 | (無し) | 原子及びその集合体 | 複合粒子 |
相対強さ (10^-15m) | 10^-41 (予測) | 10^-4 | 1 | 60 |
相対強さ (10^-12m) | 10^-36 (予測) | 10^-7 | 1 | 20 |
その他
基本相互作用が4つに分かれるのは、現在の宇宙のエネルギースケールに依存している。初期状態に近い高エネルギー状態では、基本相互作用はたった1つの相互作用へ統一される事が予測されている。基本相互作用の試みは電磁相互作用と弱い相互作用を統一した電弱相互作用について記述するグラショウ=ワインバーグ=サラム理論においてのみ成功している。より1つ上の段階である強い相互作用との統一理論である大統一理論については、成功の道筋はおろか、その足掛かりさえ未完成の状態であり、そもそも統一できるかについても未知である。
重力相互作用と他の基本相互作用の統合は、そもそも低エネルギーの状態でさえ、重力相互作用の量子力学が完成しておらず、手つかずのままと言っていい状態である。ゲージ粒子は重力子であるという予測でさえ正しいかどうかは不明であり、ゲージ粒子が複数生じる理論や、ゲージ粒子ではなく時空そのものが量子的性質を示すとする理論も存在する。
基本相互作用は4つ以外にも存在する可能性があり、5番目の相互作用を予測する理論も存在する。これらは現在標準模型において未解決の問題を解決する為に導入された物や、暗黒物質同士の相互作用として導入されたものがあり、更に5番目の相互作用を現在の観測体制にかからない程打ち消す6番目の相互作用を予測する理論もある。