ゲージ粒子
げーじりゅうし
ゲージ粒子 (Gauge boson) とは、素粒子の区分の1つであり、基本相互作用の伝達を行う媒介粒子である。これまでに発見、又は予言されているゲージ粒子の全てはスピンが整数値のボース粒子であり、かつスピンが1以上のベクトル粒子である。素粒子の基本的な枠組みである標準模型において、ゲージ粒子は電磁相互作用を伝達する光子、弱い相互作用を伝達するWボソン及びZボソン、強い相互作用を伝達するグルーオンの存在が予言されており、1978年までにその全てが発見されている。
ゲージ粒子が基本相互作用の媒介粒子であるというのは、粒子同士が相互作用を感じるには、ゲージ粒子というボールをやり取りして初めて可能である事を示している。もしボールをやり取りする能力がない場合、その相互作用を感じる事が出来ない。相互作用が働くかどうかは、基本的にはチャージ (荷量) と呼ばれる物理量によって決定される。対応するチャージは、電磁相互作用が電荷、弱い相互作用が弱アイソスピン (弱荷) 、強い相互作用が色荷である。ただし厳密には、基本相互作用はボールのやり取りという表現は適切ではなく、相互作用が働くゲージ場が存在すると表現される。このゲージ場を量子として取り出したものがゲージ粒子である。ゲージ場の量子化で現れるゲージ粒子は、あくまで相互作用を伝達する仮想粒子であり、取り出して確認する事は出来ない。仮想粒子にエネルギーを与える事で実在粒子として初めて取り出して確認する事が出来る。
標準模型の枠組みにおいて、全てのゲージ粒子は質量がゼロ、伝達可能な距離は無限大である事が期待されている。しかしながら、その原則を満たすのは光子のみであり、WボソンとZボソンは質量があり、グルーオンは質量がゼロにもかかわらず伝達距離が有限である。WボソンとZボソンの質量はヒッグス機構によって説明され、グルーオンは自分自身も色荷を持ち、カラーの閉じ込めの制約を受けるという特殊性が絡んでいるが、これらは標準模型において説明されない。これは標準模型は基本理論としては適切なものの、全てを説明するには不完全な理論である事を示唆している。