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グルーオン

ぐるーおん

グルーオンとは、素粒子の1つ。標準模型においては強い相互作用を媒介するゲージ粒子に分類されるボース粒子である。
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概要

グルーオン (Gluon) はボース粒子に分類される素粒子の1つであり、標準模型において基本相互作用の1つである強い相互作用を伝達するゲージ粒子である。記号はgである。名前の由来は糊の粒子である事から、膠着子又は糊粒子という和名もあるが、ほぼ使われる事はなく、専門的な文献も含め日本語ではグルーオンと呼ばれる事が殆どである。電荷はゼロであり、質量も理論的にはゼロである。色荷を有しており、グルーオンは8種類存在すると考える事が出来る。

名称グルーオン
記号g
組成素粒子
粒子統計ボース粒子
グループゲージ粒子
電磁相互作用作用しない
弱い相互作用作用しない
強い相互作用媒介する
重力相互作用作用しない
質量0 (1.3 meV/c^2以下)
平均寿命不明
スピン1
フレーバー量子数無し
電荷0
色荷8種類
弱アイソスピン0
弱超電荷0
X荷0
B - L0
パリティ-1
反粒子自分自身
超対称性粒子グルイーノ (g~)
理論化 / 発見1962年 / 1978年

歴史

グルーオンの存在は、グルーオンが結びつけるクォークの理論的提唱と同時に予言された。マレー・ゲルマンによって1962年にその存在が最初に予言されたが、理論として本格的に確立したのは1964年になってゲルマン及びジョージ・ツワイクによってそれぞれ独立にクォーク模型が構築されてからである。クォーク模型によって複合粒子が素粒子クォークで構成され、クォーク同士はグルーオンというゲージ粒子で結びついているという理論が確立した一方、クォークの振る舞い、特に束縛状態についてはそれまでの理論では説明する事の出来ない奇妙な性質が存在した。クォークがグルーオンによって束縛され、それは色荷と言う独自のチャージを持つ事については、韓武榮、南部陽一郎、オスカー・W・グリーンバーグ、宮本米二、堀尚一などが独立して理論を提唱した。今日では量子色力学と呼ばれるこの理論は、基礎的な物は1954年には楊振寧とロバート・ミルズによってヤン=ミルズ理論として提唱されていたものの、理論で現れるゲージ粒子は伝達距離が無限大であり、実態と合わない。量子色力学は、後述するカラーの閉じ込めを導入し、距離が短く高エネルギーである程強い相互作用が弱くなり自由度が高まるという漸近的自由性を導入し、この問題を解決した。

一方で、グルーオン自体もカラーの閉じ込めの制約を受ける事から、実験的な観測は困難を極めたが、1978年に電子陽電子の衝突実験により、グルーオンが存在しなければ観測される事がない3つの粒子ジェットを伴う崩壊が観測された事により、グルーオンの存在が実証された。この実験では3つのジェットそれぞれが1個ずつのグルーオンに対応する。翌年の1979年には、2つのジェットはクォーク、1つのジェットはグルーオンという、グルーオン単独のイベントも観測されている。

性質

グルーオンは、発見済みの素粒子である割に、その性質がよく知られていない素粒子である。これはグルーオン自身が媒介する要素である強い相互作用が、後述するカラーの閉じ込めが関与する為、単独で取り出して観測する事が出来ない事、相互作用する為に現れる距離と時間がそれぞれ1000兆分の1メートルと10^-24と非常に短い為である。この為、例えばグルーオンの理論的な質量はゼロであるが、実験的な観測ではわずかながら質量があるという可能性を排除しきれない状態となっている。これは限りなく質量はゼロであると測定されている光子とは全く異なる。なお、本来は質量ゼロのゲージ粒子が伝達する距離は無限大であるが、グルーオンのみはカラーの閉じ込めから伝達距離が制限されている。

電磁相互作用が電荷で記述されるように、強い相互作用は色荷というチャージによって記述される。色荷と言っても、本当に素粒子に色がついている訳ではなく (色と認識できる可視光の波長より素粒子ははるかに小さい) 、後述する色荷の制限を、光の三原色に例えた為である。電荷が1種類 (プラスとマイナスの2種類ではなく、互いが反転の組み合わせである事から1種類) なのに対し、色荷は3種類の組み合わせで表される。光の三原色に因み、それらは「」「」「」と表現され、更にそれぞれ反対として「反赤」「反青」「反緑」が存在する。標準模型の枠組みにおいて、色荷を持つ粒子はグルーオンとクォークのみである。そして色荷を持つ粒子は、必ず色荷の合計が (又は無色) になる組み合わせでしか取り出せないというカラーの閉じ込めという制約を受ける。例えばクォークは、それぞれ1個は白にならないので単独では取り出せず、「赤・青・緑」という組み合わせや「赤・反赤」という組み合わせは、合計が白になる事から複合粒子として取り出す事が出来る。陽子中性子などのバリオンは前者、π中間子などのメソンは後者に該当する。

クォークだけでなく、グルーオンも色荷を持つ為、グルーオンも単独で取り出す事は出来ない。クォークは複合粒子としてしか取り出せなくとも、組み合わせにはある程度制約がある為、何種類もの複合粒子を調べれば性質を絞る事が出来る。しかしながらグルーオンは自分自身が強い相互作用のゲージ粒子である事から、グルーオン同士でも相互作用し、これらの組み合わせには制約がないという困った状態に陥る。なお、グルーオン同士の相互作用にはグルーオンが媒介粒子として使われる為、このままでは無限にグルーオンが現れてしまうが、繰り込み理論という理論的な回避法が提供されている。

グルーオンは強い相互作用によって色荷を持つクォークを結びつけるが、他の基本相互作用とは異なり、距離が離れる程力の強さが増すという性質がある。これは丁度、クォーク同士がバネやゴム紐で結びつけられているのに例えられる。強い相互作用が働く距離は原子核程度の距離である1000兆分の1メートル程度でしかなく、それ以上引き離そうとすると断絶し、断絶したところからクォークと反クォークの対が生成される。これは強い相互作用の増大に逆らって距離を離すエネルギーより、真空からクォークと反クォークが対生成されるエネルギーが上回る為である。先程のバネやゴム紐の例で見れば、バネやゴム紐がちぎれる程伸ばしても、ちぎれた部分にはバネやゴム紐の端が生じるに過ぎないのと似ている。カラーの閉じ込めは、バネやゴム紐の "端っこのみ" を取り出す事が不可能なのと似ている。またグルーオンによる強い相互作用は膨大なエネルギーを持つ為、一般相対性理論で予言されるエネルギーと質量の等価性により、複合粒子の質量にも関与している。陽子や中性子の質量のうち、クォーク自体の質量は1%しか関与せず、残りの99%はグルーオンによる強い相互作用のエネルギーが質量として現れてた結果である。

クォークの色荷が3種類なのに対し、グルーオンの色荷は8種類である。数学的には線形独立なゲルマン行列であるSU(3)随伴表現 (あるいは口語的にカラーオクテット) で表されるが、これでは大多数の読者には意味不明になるので、多少正確性を欠くが、以下の説明に落とし込める。グルーオンはクォークと違い、例えば「赤+反青」と言った組み合わせの色荷を有する。赤のクォークから赤+反青グルーオンが飛び出すと、クォークは青になる、といった性質で色荷は働く事になる。この2色を持つというグルーオンの性質により、グルーオンは計算上「赤・青・緑」×「反赤・反青・反緑」の3×3=9種類と計算上はなる。ただし、この単純計算では、白になるグルーオンも存在する。白のグルーオンは色荷を持たないのと同等であり、従って強い相互作用を媒介せず、存在しないとみなす事が出来る。従って正確なグルーオンの種類数は3×3-1=8種類となる。
(なお、この単純な説明では、「赤+反赤」「青+反青」「緑+反緑」はいずれも同じ白なのだから6種類ではないか?という疑問を持たれる読者もいるであろう。これは行列式を無理矢理普通の組み合わせ数の掛け算で示そうとする弊害であり、この疑問に答える為にはゲルマン行列が避けて通れなくなる。)

ただし、これらのカラーの閉じ込めの制約は、比較的低エネルギーである環境にのみ限定される。宇宙誕生時や粒子加速器で実現可能な超高エネルギー状態では、カラーの閉じ込めの制約を受けず、グルーオンとクォークが自由な状態で混合された「クォーク・グルーオンプラズマ」が観測される。これは非常に高エネルギーな物質の相の1つとも例えられ、その性質は幾分か液体寄りの性質である事から「濃密なスープ」という比喩表現がある。

なお、カラーの閉じ込めの制約は白になれば回避される事、グルーオン同士でも相互作用する事から、グルーオンのみが組み合わさって白になった複合粒子である「グルーボール」の存在が予言されている。ゲージ粒子のみが組み合わさった複合粒子はグルーボールが唯一であり、少なくとも15種類が存在すると予想されている。グルーオンは質量がゼロであるが、強い相互作用によりグルーボールは1.5~5GeVの重い粒子となっている。グルーボールの観測候補はいくつかあるものの、普通の中間子と非常に性質が似る事から、実験的な観測が困難を極め、現在でも未発見である。

関連項目

素粒子 素粒子擬人化
光子 Wボソン Zボソン グルーオン ヒッグス粒子
強い相互作用 色荷

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