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陽子

ようし

1. バリオンの1種。原子核を構成する核子の1つ。 2. 主に女性名に対して使われる人名。
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曖昧さ回避

  1. バリオンの1種。原子核を構成する核子の1つ。本項ではこちらを解説
  2. 主に女性名に対して使われる人名。人名としては主に「ようこ」と読む。


名前としての陽子


フルネームに陽子を含む物。


概要

陽子 (Proton) は、フェルミ粒子に分類される複合粒子の1つであり、原子及び原子核を構成する粒子の1つである。中性子とまとめて核子と呼ばれる。記号はpであり、日本語では時に英語をカタカナ転写したプロトンでも呼ばれる。

名称陽子
記号p (p+)
組成アップクォーク×2 + ダウンクォーク×1
粒子統計フェルミ粒子
グループバリオン
電磁相互作用作用する
弱い相互作用作用する
強い相互作用作用する
重力相互作用作用する
質量938.2720813(58) MeV/c^2
平均寿命安定 (2.1×10^29 年以上)
電荷半径0.8751(61) fm
磁荷半径0.776±0.034±0.017 fm
スピン1/2
フレーバー量子数アイソスピン: +1/2
バリオン数+1
電荷+1e
色荷持たない
超電荷+1
パリティ+1
B - L+1
反粒子反陽子
理論化 / 発見1815年 / 1917年

歴史

全ての原子が水素のような粒子の組み合わせによって構築されているという考えは古くよりあった。明白に示した最初の事例は、1815年にウィリアム・プラウトに提唱されたプラウトの仮説であり、原子量の解釈から、全ての原子は水素原子で構成されているという仮説を立てた。

1886年、オイゲン・ゴルトシュタインによって陽極線が研究され、それが正電荷を持つ事が示された。しかしながら、1897年に電子の発見につながったJ. J. トムソンの陰極線の研究と異なり、物質によって電荷と質量の比率が一定ではなかった。この謎は、陰極線の電子が素粒子であるのと異なり、陽極線が当時存在の知られていたなかった原子核である事が理由であった。原子核の存在と、原子番号が正電荷の大きさに関連している事は、1911年から1913年にかけてアーネスト・ラザフォード、アントニウス・ブロエク、ハンス・ガイガー、アーネスト・マースデン、ヘンリー・モーズリーらによって示された。

1917年にラザフォードは、全ての原子核には水素原子核が含まれている事が実験的に示された。ラザフォードは窒素α線を照射し、酸素と共に水素が生じる事が示された。ラザフォードはプラウトの仮説を受け入れ、水素原子核に特別な名称が必要な事を提案した。ラザフォードはギリシャ語で最初を意味する "πρῶτον" から "Proton" を考案したが、プラウトの仮説で使われた用語である "Protyle" も検討していた。また、プラウトの名前に因む "Prouton" も提案されたが、最終的にはラザフォードの提案である "Proton" の由来が、 "πρῶτον" だけでなく "Protyle" も含まれる事となり、正式名称となった。1920年には、陽子の名前が初めて論文に使われた。

性質

陽子は複数のクォークで構成されたハドロンであり、バリオンでは唯一安定の粒子である。中性子と共に原子核を構成し、核子と呼ばれる。陽子内部ではアップクォーク2個とダウンクォーク1個がグルーオンを介して強い相互作用で結合しており、また原子核においては核子同士も強い相互作用で結びついている為、同じ符号の電荷を持つ陽子同士が電磁相互作用で反発するのを防いでいる。なお、クォークの質量を足し合わせても、陽子の1%の質量にしかならない。残りの99%はクォーク同士の結合と、光速近くで運動する事による運動エネルギーが関与している。ただしこの陽子の質量に関する議論は現在でも細かい部分に謎が残っており、議論が続いている。

陽子は電子と電磁相互作用で結合し、全体としては中性な原子を構成する。陽子と電子の数は同じと見なされる為、実際に化学反応に絡むのが電子でも、原子の化学的性質は陽子の数で定義される。これが原子番号であり、原子番号で原子の性質を区別したのを元素と呼ぶ。電子と陽子は1836倍も質量が異なるが、陽子の電荷は+1eと、電子とは符号が反対なだけで同じ大きさの電荷を持っている。陽子と電子の電荷の違いは無いと考えられており、違いは10^-21以下である。

陽子は素粒子ではないので、物理的な大きさを持っている。その半径は普通電荷の範囲で表され、大きさは約0.88fmである。陽子の大きさを1mmに拡大すれば、1mmの砂粒は太陽から木星土星の間の軌道に収まる大きさとなる。

陽子がクォークで構成されている事から、陽子内部の圧力を定義する事が可能である。計算上の陽子の中心部の圧力は10^35Paであり、中性子星内部の圧力よりも大きい。

宇宙空間より飛来する宇宙線は、その90%が陽子で構成されている。大抵の場合そのエネルギーは高い。測定された最も高エネルギーの宇宙線は、陽子であると仮定した場合に、光速の99.99999999999999999999951%で飛来してきたと測定された。野球ボールが94km/hで飛んできたのと等しい運動エネルギーに相当するという極端な値を持つ。陽子と野球ボールの質量比は、1円玉と地球の質量比と大体同じである。

陽子の反粒子は反陽子である。反陽子は反アップクォーク2個と反ダウンクォーク1個で構成され、電荷は-1eと陽子と反対の符号を持つ。それ以外の性質は、全て陽子と等しい事が予測されている。CPT対称性において、粒子と反粒子は等しいという制約があり、その実証の為に陽子と反陽子のペアは観測しやすい為、実験が行われている。質量と電荷の大きさの差はいずれも7×10^-10以下であると測定されている。また、反陽子の電荷は電子と等しい為、置き換えが可能である。反陽子は電子より非常に重い上に、電子と異なり陽子と強い相互作用をする為、強い相互作用の研究にも使われる。陽子と反陽子のペアの異種原子プロトニウムヘリウム原子の電子1個を反陽子に置き換えた異種原子は反陽子ヘリウムと呼ばれる。また、反陽子と陽電子の組み合わせは、陽子と電子の組み合わせである (軽) 水素の反物質であり、反水素と呼ばれる。これは唯一合成されている反原子である。

陽子の謎

陽子崩壊

これまでの観測では、陽子は安定な粒子であり、かなりの高エネルギーな場でも安定して存在する事が示されている。標準模型では、バリオン数保存則により、最も軽いバリオンである陽子は崩壊しない事が予測される。一方で、強い相互作用を他の基本相互作用と統一する大統一理論では、仮説上のゲージ粒子であるXボソンYボソンが相互作用し、バリオン数保存則を破り、陽子崩壊を可能にするとみられている。

バリオン数保存則を破る理論が求められる背景には、宇宙には物質が満ちているという大きな謎と関連している。CPT対称性の下では、宇宙では物質と反物質が同数生成されなければならない。そしてもし物質と反物質が同数生成されるならば、対消滅によってどちらもなくなってしまい、宇宙には銀河も恒星も惑星も無くなってしまう。しかしながら実際の宇宙には物質が満ちており、反物質は滅多な事では見かける事はない。これは、物質が反物質よりも10億分の1だけ多く生成されるという、対称性の破れが必要となる。物質は大抵がバリオンな為、バリオン数保存則が破れない限り、この差を説明できない。

陽子崩壊は今の所観測されておらず、仮にあったとしてもその時間は非常に長いとみられる。理論上の陽子の平均寿命は10^31年から10^36年と非常に長い。最近の理論では10^34年から10^35年以上の平均寿命であり、どんなに長くても6×10^39年以下であると考えられている。陽子の崩壊にはいくつかのモードが考えられるが、実験的観測では、全てを総合しても2.1×10^29年より短い事はないと考えられている。また、最も可能性が高いと考えられる陽電子と中性パイ中間子への崩壊は1.67×10^34年以上である。

陽子半径パズル

先述の通り、陽子には電荷半径を有する。これは複数の方法で測定される。まずは分光法であり、陽子の周りを回る電子のエネルギー準位は、陽子の電荷半径に非常に敏感な事を利用している。分光法による陽子半径は0.8768fmである。次は核散乱法であり、陽子に電子などをぶつけ、電磁相互作用による散乱の度合いから陽子の電荷半径を測定する。核散乱法による陽子半径は0.8775fmである。この2つの測定法による陽子半径の差は1%以下であり、問題にはならなかった。

しかしながら、2010年に分光法と似た手法として、電子と同じ電荷を有するが207倍重い素粒子であるミュー粒子を用いた実験が行われた時、問題が発生した。その測定値は0.842fmと、4%も差が生じてしまった。これはあまりに大きな差である。2016年には陽子と中性子が1個ずつ結合した重陽子とミュー粒子の組み合わせで測定した結果、やはり陽子半径は従来の測定結果より5%程小さいという結果が出された。

この大きな陽子半径の食い違いは「陽子半径パズル」と呼ばれ、物理学上の大きな謎となっている。今の所古いデータが誤りであるとする合理的な理由が無い為、他の仮説が提唱されている。その中には、強い相互作用が絡む三体問題を理由としたり、高次元重力や量子重力を仮定する物、新しい相互作用や新しい粒子を仮定するものまである。しかしながら、このような新しい発見に繋がる成果を期待するのと同様に、陽子半径の計算で絡む物理定数であるリュードベリ定数が過去の測定では誤って適用されていた等の、ごく普通の計算間違いを指摘する意見もある。

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