概要
『質量は他の質量を引き付ける力を発している』という理論。万有引力を、一般相対性理論で説明するための考え方である。
総体質量が大きいほど強く発され、総体質量から離れるほど弱まっていく。
・地球(総体質量A)とリンゴ(総体質量B)はお互いに引き合っている。地球が一方的にリンゴを引き寄せているわけではない。
・地球の総体質量(以下、質量)は、リンゴの質量に対して極めて大きいため、結果としてリンゴは地球に向かって落ちていく。
・もしもリンゴの質量が地球よりも大きければ、地球はリンゴに向かって落ちていく事になる。
・月は地球よりも質量が小さいので重力(球体の中心に引き付けられると感じる力)が弱い。逆に木星は質量が大きいので重力が強い。
現実的に存在することが明らかな相互作用だが、ミクロのスケールにまで適用できるような定式化はなされていない。
概要(正式)
重力相互作用(Gravity interaction)とは、自然界に存在する4つの基本相互作用の内の1つであり、重力とも呼ばれる最も身近な基本相互作用である。
アイザック・ニュートンがリンゴの落下をみて重力を発見した事はよく知られており、著書『自然哲学の数学的諸原理』において万有引力として近代科学の観点から初めて理論的にまとめられた。しかしながら人類はそれよりはるか以前に重力の概念を理解しており、理論的説明の試みは紀元前4世紀から存在する。その中には、アリストテレスの「物体は重い程速く落下する」という説をガリレオ・ガリレイが否定したように、長い事信じられていた説が否定されるなど紆余曲折があった。現在でも重力相互作用に関する理論は未完成であると言え、ニュートンの万有引力はアルベルト・アインシュタインの一般相対性理論でマクロスケールでの一応の完成を見るものの、ミクロスケールでは全く未完成の状態である。
重力相互作用のステータス
名称 | 重力相互作用 |
---|---|
ゲージ粒子 | 不明 (重力子? 時空?) |
理論 | 一般相対性理論 |
標準模型 | 記述されない |
チャージ | 質量及びエネルギー |
斥力 | 無し |
結合定数 | 重力結合定数 |
到達範囲 | 無限大 |
距離当たりの強さ | 2乗に反比例 |
働く素粒子 | 全て |
束縛状態 | 天体及びその集合体 |
相対強さ (10^-15m) | 10^-41 (電磁相互作用=1) |
相対強さ (10^-12m) | 10^-36 (電磁相互作用=1) |
最初の理論化 | 紀元前4世紀頃 / 自然学 |
現在の理論 | 1915年 / 一般相対性理論 |
性質
重力相互作用は、地球に存在する我々が (もし立っているならば) 足の方向に感じる力である。地球上で物を落とすと、地球の中心方向へ落下する。しかしながら重力相互作用は、基本的に質量のある物体に対しては、その質量に比例する力の分だけ生じる。つまり外に出て地面に立っている人を見ると、地球が人を引っ張るだけでなく、人が地球を引っ張る力も働いている。地球と人だけでなく、足元の石ころ、近くの木や建物、遠くの山、頭上の太陽や星々もまた同様に人を引っ張り、また人もそれらを引っ張っている。
しかしながら、我々が意識する力は、この中では地球が引っ張る力のみである。これは、重力相互作用が質量に比例し、距離の2乗に反比例する力しか及ぼさず、また全方向に働いている事が関係している。人や石ころと比べると、地球はそれよりずっと質量が大きい為、及ぼす重力相互作用の大きさが桁違いである。頭上の太陽は、地球よりずっと質量が大きいものの、距離がはるかに離れている為に、地球が及ぼす重力相互作用よりずっと小さいので、ほとんど感じないのである。また、地球そのものが及ぼす重力相互作用も、地球の中心方向だけでなく、本来は全方向に働いている。しかしながら多くの方向は、それと大きさが等しいが方向が反対の力が存在し互いに打ち消しあう為、その中で残ったものが重力として感じるのである。なお、これらは強い重力の下では感じる事が出来ないだけで、地表においてこれらの微小な重力相互作用を測定する事は可能である。
この重力相互作用の見かけの打ち消しは、天体の自転による遠心力などの影響も加味される。今働いている地球の重力である重力加速度は、地球の自転による遠心力で少しだけ打ち消されている為、遠心力が最も強い赤道と、最も弱い (ゼロ) 北極点や南極点とを比較すると、重力加速度の値が異なる事が計測できる。市販の秤は、緯度によって異なる重力加速度を考慮し、補正する機能があるか、もしくは使用できる緯度の範囲が指定されている。南北に長い日本では、北海道と沖縄でそれぞれ販売されている体重計が、互いの地で信頼できない値を返す事が測定可能である。
最も顕著なのは、宇宙飛行士が無重力を感じる場面であろう。しかしながら、国際宇宙ステーションが存在する高度400kmでは、地球の重力相互作用は地表と比べて減少しているとは言え、とてもプカプカ遊泳できない程十分強く働いている。これはその重力相互作用を打ち消すだけの遠心力が働いている為で、この為無重力と言うのは不正確な表現であり、無重量状態と表現されるべきである。また、この重力相互作用の打ち消しは、人工衛星や月が地球に落下しない理由でもある。
上記の遠心力などの説明は、質量に比例する万有引力と慣性力の合算に関する1つの説明であり、古典力学的にはこれで重力相互作用を説明できる。しかしながら、古典力学では重力相互作用の伝達速度やエネルギー保存則などに矛盾なく説明をする事が出来ず、破綻が生じる。ニュートンの万有引力をより発展させたものとして、1915年にアインシュタインの一般相対性理論が登場した。一般相対性理論では、重力相互作用とは時空の歪みであると説明され、重力の強さは時空の歪みの強さに等しい。一般相対性理論では、光が曲がる事や時間の遅れ、ブラックホールなど、それまで考えられた事の無い新しい概念が生じ、しかしながらこれらは検証され正しさが証明されている。また、それより以前の特殊相対性理論により、質量とエネルギーの等価性が示されている事も加わる為、質量がゼロの光子に対しても重力相互作用は働く。一般にマクロスケールでは、一般相対性理論で説明できない現象や矛盾する現象は発見されておらず、ほぼ完成を見ている。
一方で、量子力学の範疇では、重力相互作用は全くの未解決状態である。重力相互作用は、電磁相互作用と比較して10^-40倍程度という極めて小さな力しか働かず、事実上無視できる為である。重力相互作用が電磁相互作用と比べて極めて弱いのは、数gの磁石や下敷きで起こした静電気が簡単に地球の重力に逆らう事で実感可能である。それでも重力相互作用が現れるのは、重力には引力があっても斥力が存在せず、塵も積もれば山となる論で積み重なった結果現れる為である。電磁相互作用では斥力も存在する為、普段は重力相互作用に逆らって現れる事はない。引力と言えば電磁相互作用でも言えるにもかかわらず、重力相互作用の別称となっているのはその一例でもある。重力相互作用はただ弱いだけでなく、時空の歪みで表されるという特殊性から、量子力学において量子化の試みを撥ね付けている。他の基本相互作用と同じく、重力相互作用にもゲージ粒子として重力子の存在を仮定する理論があるものの、量子化がされていない段階では冗長的な存在である。重力相互作用のゲージ粒子は複数存在するという理論や、時空そのものが量子的振る舞いをする為ゲージ粒子は不要とする理論、果ては重力相互作用自体が "見かけ" の相互作用であり、実際には存在しないという理論すら存在する。
重力相互作用に斥力は存在しない事は上述したが、方程式の上では反重力を書く事は可能であり、また反物質では重力が斥力ではないかとする理論も存在する。しかしながら反重力は負の質量という現実には存在しないものを仮定する必要があり、現時点では机上の空論である。反物質に働く重力についての実験的測定は、今のところ反重力の存在を否定している。