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バケットシート

ばけっとしーと

「バケツ形の座席」という意味で、一般的な座席に比べ、左右の「へり」を極端に高め、尻や肩を深く包むことで体の固定機能を高めた形状のものを指す。
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自動車の運転席用編集

運転席の腰掛としてのバケットシートの起源はF1用のレース車両に使用されたものが初めとされ、過大な横G等により運転姿勢を崩さない為に様々な試行が取り入れられる。

座席の拘束性は、一般にはホールド性と呼ばれ、変化しつづける横Gに対して、運転者が自分の体の位置を保持しやすいかどうかを表す。

これを高める為、バケットシートは肩、脇腹、腰、腿の体側を覆うようにすることで、運転者自身が踏ん張らなくても、運転操作を行えるように設計されている。

ホールド性を高めてゆくと、座ったまま伸びをするなど、運転操作以外のあらゆる行動が制限され、乗降性の悪化、前方以外の視界を遮るなど、乗用車としての機能性は低下してしまうため、公道用のバケットシートは、それらを如何にバランスさせるかという点でさまざまな種類のものが作られている。

また、運転姿勢の保持以外に、骨盤や背骨の角度を適正化し、神経痛を防ぐ役割や、適切なシートベルトとの組み合わせで、衝突時の安全性を確保する役割もある。

日本でも車検の規制緩和で、後部座席に乗り込める(2ドア4シーター車など)、後部座席の乗員保護がされているといった条件を満たしており、車検対応品であればバケットシートを使用していても車検が取れるようになった。

その為、自動車愛好家が、普段使用する車に取り付けている姿も見られる。

また、腰痛対策を主目的としたシートも売られている。

競技用車両や、一般車でも特にスポーツモデルの車両で採用されている。


種類編集

バケットシートは以下の2つに分類される。

フルバケットシート

背もたれが固定式のシート。

ホールド性が高いレース志向。

通常のシートに慣れた人が初めて座るとほとんどの人が「動けない」と言う程であり、スカートを履いての乗降は推奨されない。

多くの場合はクッションを追加する等で個々人の体形などに合わせて調整するため、持ち主以外が座れないということもあるが、素のままであっても腰骨の大きさや、尻周りの寸法如何では、全く着座できない場合もある。

車種によっては場合によってはハンドル周りが邪魔であったり、ロールケージが追加されていたりするとパイプ等が邪魔になって車内への入り方がわからない、という事もある。

構造が簡単なため、軽量に作ることができる。また、より軽量、頑丈に作るためにドライカーボンといった高価な素材が使用されたものもある。

フルバケ」と略される。


セミバケットシート

普通のシートのように背もたれが可動するリクライニングシート。

ホールド性はフルバケットシートより劣るが、汎用性は高い。

シートフレームのつくり自体は通常のシートと同じため、全体の重さも通常のシートとあまり変わらないものが多く、物によっては競技用途を考えていない為に競技用ハーネスに対応していない、汎用性を高めた結果ホールド性が一般的なシートと大して変わらない(特に純正品)ものもある。

セミバケ」と略される。


フルバケットシートの方が運転中のホールド性は高いが、利便性等からセミバケットシートも人気が高い。

特にスポーツカーで多い3ドアの車両では、乗車定員関係の車検や後部座席の乗り降り等にも関わってくる為に、助手席側のみセミバケットシートという乗せ方もあったりもする。


材質と構造編集

バケットシートの材質は炭素繊維もしくはガラス繊維を使用したFRPが主で(主流ではないが金属性パイプフレームもある)、特徴としては競技用のフルハーネスに対応したものが多く、ショルダーベルトやラップ(腰部)ベルト(4点式から8点式)を通す穴が開いているものや、物によっては座面に股部のクラッチストラップ(またはアンチサブストラップ)(5点式から8点式)を通す穴が開いているものがある。

構造は一体成型されたシートにスポンジやポリウレタンが接着される。

競技用車両用等には、ドライバーの身体を型取りし成型したものや重量軽減の為に一部クッション材の無いタイプも存在する。

通常のシートは、各車種専用のものが自動車メーカーによって設計されて設置されるが、多くのバケットシートはサードパーティによる供給であるため、取り付け穴の位置が異なる各車種ごとに専用のバケットシートを一つ一つ用意していると需要に対してコストがかかりすぎてしまう。

そのため、シート自体は汎用とし、前後にスライドさせる機構もついているシートレールという台座を車種ごとに用意する供給形態が普通である。

(運良く純正シートレールがそのまま使用できたり、変換用のアダプタが供給されている事もある。車検に対応しない競技専用のレールでは、スライド機構すらないものもある)

場合によっては大きく突き出したショルダーが邪魔になってしまいドアが閉まらない、シートが収まらないと言うことになってしまい、内装のカット、もしくは内装の除去(もちろん車検に通る程度の)が必要な事もある。


障害者スキー用編集

脊髄損傷などの下肢障害のある方がスキーを行う場合、バケットシートで下半身を固定して滑降する。

この場合、バケットシートと、ショック吸収機構、スキー板まで含めてチェアスキーと呼ぶ。

スキー板1枚を使用するモノスキーにおいて、上級者では時速100kmに達する。


旅客用途編集

鉄道車両や航空機、客船の特別席(日本の旧国鉄・JRではグリーン席)に使われる1人掛けの腰掛のうち、着座部を凹状にしたものをバケットシートと呼ぶことがある。

このタイプの座席は、平板状の通常のリクライニングシートと比べて、腰のすわりが安定する、リクライニング機能で背もたれを倒したときの前方ずり落ち(この場合、前後の腰掛の間隔である「シートピッチ」が体感上せまくなる)を防止できる、衝立として機能することで隣に着席する他者との接触が避けられる、といった利点をもち、特別席としての差別化を演出するのに役立つ。

また、通勤形車両などの鉄道車両の座席配分で車両の窓側にのみ平行に長い腰掛けを設ける「ロングシート」では、座席定員の遵守を目的として、背面・座面に個々人のスペースが明示するための区切りを設ける方式を指す場合がある。

これについては鉄道車両の座席を参照されたい。


事務椅子編集

着席時間が長いと腰痛の恐れがある。こういった環境にある事務職や消防・警察の指令センター、長時間ゲームをプレイする状況では、セミバケットタイプの事務椅子が作られ、重宝されている。

自動車用のシートを事務椅子として使える足も売られている。

JR西日本JR東海ではこれに着目し、同じく2時間以上も着席する500系700系など新幹線の運転席に、RECARO製の事務椅子をベースにしたセミバケットシートを作り、運転士の腰痛防止に貢献している。


関連動画編集

ビデオオプション ラーマン山田人体実験 バケットシート編


関連タグ編集

RECARO:ドイツのメーカー

BRIDE:日本のメーカー

SPARCO:イタリアのメーカー

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