概要
『宇宙戦隊キュウレンジャー』に登場する、88の星座系を支配する悪の幕府。
ショーグン“ドン・アルマゲ”の名の下に服従し、支配するならどんな手を使う事も厭わず、圧倒的な武力と恐怖で宇宙を支配している。
野球場の電光掲示板によるとアルファベットでは「JARK MATTER」と表記する様である。
その悪行を食い止めるスーパー戦隊等のヒーローが存在しない世界であった結果、全宇宙の99%がすでに彼らの手中にあり、膨大な数を有する戦艦・モライマーズを使って惑星を構成するエネルギーである「プラネジューム」を奪っている。
プラネジュームを吸い尽くされてしまうとその惑星は爆発して滅んでしまう為、プラネジュームを収集する目的の程は終盤まで不明だったが、宇宙支配を目論む彼らにとっては一石二鳥とも言える。
現反乱軍リベリオンの一員であり、かつてアルマゲにとって唯一の脅威となったキュウレンジャーの存在を危険視。宇宙全土での賞金首としており、その張り紙から「ポンギ」という通貨を使用している模様。
戦闘員以上の位は、ジャークマターの権威の証である“キョダインロウ”という印籠を所有する事ができ、体の何処かに付けている。
また、命令を承った時は「ギョイサー!」という掛け声を用いる。
何故か宇宙の歴史を改竄するといった不可解な企みも行われているも、裏返せばこれは支配体制に不都合な物を隠す為の工作なのは明らかで、実際アルゴ船とそこに眠っていた鳳ツルギの存在を宇宙中の人々に隠蔽していた。
組織運営は大まかに、徹底的に支配対象の心を挫き続ける侵略法と一疑似生命体ですら実績を積めば昇格出来る完全実力主義を巧みに使い分けている。これによりアルマゲは自身に対する内外からの反抗心を潰し、強固な独裁体制を維持して来た。
その結果、組織は全容や実情が不明瞭になる規模にまで巨大化したのだが、一方でダイカーンやカロー同士が協力しない等、キョダインロウを持つ権力層は基本的に干渉し合う事が無い(※一応同格同士が連携し合う事もあるが、そのいずれも『上の命令だからそうしている』と言う感じで自主的な物では無い)。
この為、何処かの構成員が討伐されても他のダイカーンや上役のカローが報復をすると言う事態も起こらない。そこを唯一の反抗勢力だが戦力規模の小さいキュウレンジャーは逆用、追手や包囲網の無い状況下で仲間を増やし、力を少しずつ蓄えて行った。
その結果、十分な力を得たキュウレンジャーはSpace.35でジャークマターが秘密裏に操っていた全宇宙に影響力のある人物を解放。その人物の呼び掛けにより88星系の各所で反乱運動が活発化、その対処に各星系のカローとダイカーンは忙殺されキュウレンジャーどころでは無くなってしまう。
そしてこの隙を突かれ、ミナミジュウジ座系惑星・サザンクロス内にあるジャークマター本拠地へのキュウレンジャー突入を許す事になる。
国家内情と支配力の本質
歴代戦隊の敵組織とは桁違いの戦力規模を持って宇宙のほぼ全てを支配したジャークマターであるが、その一方で前述の様に組織ネットワークには割と穴が多い上、カローやフクショーグン等の上級権力層達の実力も強くはあるが桁外れと言う程では無い。
いわば、ジャークマターの主力は膨大な物量で敵対勢力を磨り潰す量産戦力で、権力層内のヒエラルキーは量産戦力を利用・行使する権限の規模で決められていると言える。
同時にこれは、構成員の能力や資質と言った個人の質を本質的に疎んじる組織スタンスで、劇中に出て来る権力層は殆どが出身星由来の能力を認められて出世したと同時に、その見返りで与えられた権力で目先の欲望を煽られて飼い殺しにされている事からも見て取れる。
一方、支配を受ける側から見れば膨大な武力に潰されるのを恐れて、大抵は前線で戦力を行使する権力層(ダイカーン)へ服従するのを選択する。しかし権力層も、より大規模の戦力を行使可能な上級権力層(カローやフクショーグン等)を恐れて服従すると言う上下関係が成立していて、その頂点にショーグンたるアルマゲが鎮座している。
身も蓋も無い言い方をするなら、アルマゲを除いたジャークマターの構成員は元から持っていた力や思考等をスポイルし、組織システムの一部として朽ちるまで働くのを望まれている。またこの為、どんな形でも力を付けて成長の兆しを見せた者はジャークマターより独立し得る可能性=反逆者のレッテルを貼られ徹底的な弾圧等を受けて潰されるか、その弾圧の実行役に堕とされて潰し合いを強要される身分になってしまう。
加えてそれに該当しなくとも、洗脳や心理的葛藤等といった精神面の隙=アルマゲのコントロールを受け付ける要素が無い者は奴の側近には成り得ないので、自由意思(≒エゴ)が強ければ強い程アルマゲから排斥の対象にされ易くなるとも言えるだろう。
そしてこうした反乱分子(未満含む)への仕打ちを喧伝する事で、構成員や被支配層を纏めて恐怖で縛り、組織へ服従を強いるのを繰り返して来たと推測される。
総じてジャークマターの支配力の本質は、敵味方ひっくるめた支配される側が抱く大きな力を奮う者=支配する側たるアルマゲへの恐怖と逆らえない諦観から来る、全宇宙規模の共同幻想である。
それ故に、全宇宙をジャークマターより解放するにはアルマゲを打ち倒して蔓延った共同幻想を打ち払うのが根本的な解決法だが、そのアルマゲを共同幻想に負けて奴の配下へ下った権力層と、それによって効率良く使役される膨大な量産戦力が守っている為に実行は不可能だった。
だが、組織ネットワークの穴を縫って包囲網を逃れ力を蓄えたキュウレンジャーは、ミナトを利用する形で穴を一気に広げる事でジャークマターの防衛網を弱体化。独自に掴んでいたアルマゲの潜伏先たるミナミジュウジ座へ一直線で突入、アルマゲを倒して共同幻想を払拭する起死回生の一手を打つのだった。
構成員
ショーグン
ドン・アルマゲ(声:谷昌樹) |
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ジャークマターを束ねる最高指導者。ジャークマターの構成員であっても、その正体を知る者はいない。 |
ドン・アルカゲ(声:谷昌樹) |
オリジナルビデオ版に登場。ドン・アルマゲが有事の際に用意していた自身の影武者。 |
フクショーグン
ドン・アルマゲ直属のジャークマター最高幹部。その戦闘力はカローをも優に超えるほど驚異的。
テッチュウ(声:土田大) |
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ジャークマターのフクショーグンの1人である宇宙の破戒僧。 |
アキャンバー(声:小宮有紗) |
ジャークマターのフクショーグンの紅一点。宇宙のできるキャリアウーマン。 |
ククルーガ(声:内田直哉) |
ジャークマターのフクショーグンの1人である宇宙の荒くれ者。リーダー格。 |
カロー
88の星座系に配置されている極悪領主で、高い戦闘力を持つ強者揃いのエリート。
本編で幹部格として登場したのは以下の2名だけで、その他の有象無象のカローについては、個別の記事を参照。
ドン・アルマゲの刺客
ドン・アルマゲがキュウレンジャー抹殺の為に送り込んだ、1000をも超える惑星を滅ぼした凶悪な二人組。階級はカローより低い模様。
侵略における「暗殺」を司る。
イカーゲン(声:塩屋翼) |
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ドン・アルマゲが送り込んだ刺客の1人。未来を予知しているかの様な動きで立ち回る、相応の実力者。 |
マーダッコ(声:喜多村英梨) |
ドン・アルマゲが送り込んだ刺客の1人。強力な再生能力を持つ。後にカローへと昇進する。 |
科学班
アントン博士(演:うじきつよし /声:田代哲哉) |
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チャンプを開発した科学者。ジャークマターを裏切り、スコルピオに始末された。実は二重人格者で、始末されたのは博士の善人格の方。記憶装置に悪の人格を移し、現在も生きながらえていた。 |
牛型汎用破壊兵器ゼロ号 |
アントン博士が開発した殺戮マシーン。チャンプのプロトタイプ。 |
最凶の戦士
ドン・アスラン(演/声:山崎銀之丞) |
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Space.41から登場した素性不明の謎の剣士。その正体はククルーガに殺されたと思われていたラッキーの父親・アスランであり、ドン・アルマゲに取り憑かれ、彼の手駒として操られていた。 |
独立部隊
惑星破壊用巨大彗星兵器ゲース・スターの開発者であるゲース・インダベーを中心として構成された部隊で、劇場版に登場。
特定の支配星系は持たず、ジャークマターに歯向かう勢力をゲース・スターで星ごと滅ぼす役割を与えられている。
ゲース・インダベー(演/声:田村亮(ロンドンブーツ1号2号)) |
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ジャークマターの独立部隊隊長。惑星破壊用巨大彗星兵器「ゲース・スター」の開発責任者でもある。 |
オーモ・インダベー(声:レイザーラモンHG) |
ジャークマターの独立部隊隊員で、宇宙の反則レスラー。ツヨインダベーを元にパワー特化DNAカスタマイズ手術を施された高級クラスの戦闘疑似生命体。 |
カール・インダベー(声:レイザーラモンRG) |
ジャークマターの独立部隊隊員で、宇宙の走り屋。インダベーを元にスピード特化のDNAカスタマイズ手術を施された高級クラスの戦闘疑似生命体。 |
怪人
ダイカーン |
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今週の怪人枠。侵略した各惑星を統治できる地位を与えられた宇宙人たち。担当している星の住人を虐げ、プラネジュームを採取するモライマーズを管理する役割を与えられている。侵略における「支配」を司る。 |
戦闘員
ツヨインダベー |
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強靭なボディと攻撃だけを追求し、強化改造を施した戦闘擬似生命体。 |
インダベー |
青・黄・白の3色のバトルスーツを着たジャークマターの兵士で、戦闘擬似生命体「インダ」がマスクを装着した姿。抜群なチームワーク力を持ち、カローやダイカーンの命令で作戦にあたる。 |
キュウレンジャーに所属する者
サソリオレンジに変身する素性不明の戦士。Space.3でエリードロンに部下になる事を勧誘され、雇われる。実はリベリオンのスパイで5話で素性を明かし離脱。上記のスコルピオの弟。
アキャンバーの魔術で邪な感情を解放されたナーガ・レイが変身する悪の戦士。
Space.31で自らの感情を取り戻し、キュウレンジャーに奪還された為離脱。
アントン博士が開発した正義の戦闘マシン。本来は悪の人格の博士がジャークマターの殺戮マシーンとして製造した物の、善の人格の博士が彼を連れ、正義のロボットとして改造を施した。
その他
多くの砂漠惑星に生息する危険生物。初めてチキュウで姿を現した際、インダべーを捕食しイカーゲン達も一時避難した為、その危険性は非常に高い。
ジャークマターでは無い普通の宇宙生物であるが、ジャークマターの戦力として利用されている。
チキュウ人とイッカクジュウ座人のハーフで、スティンガーを主人公としたVシネマに登場。
右腕が異形である事から人々に迫害され、その憎悪から自らの意思でジャークマターに魂を売ってしまうが、実は…
キュウレンジャーの宇宙とは違う平行宇宙に存在する、ギャングラーのギャングラー怪人。アルカゲの野望の為に共謀を企てる。
戦力・施設
ダイカーン1人に付き1隻与えられている攻撃宇宙戦艦。遺跡形態になって侵略した星へ突き刺さり、その星のプラネジュームを採取する。また、モライマーズロボに変形して戦闘が可能。
ジャークマターの侵略行為の中核を成しており、構成員の行動は全てモライマーズに関する物へと帰結する。
本来なら各惑星に1機ずつ設置されているが、辺境の惑星である筈のチキュウに関しては何故か幾重もの機体が各地に設置されている。
カローの旗艦として運用されるモライマーズの上位艦。モライマーズの中心部分が3つ、リング状のパーツで繋がり回転しているかの様な外観を持つ。
モライマーズ内に無数格納されている小型戦闘機。三機編隊を組み圧倒的な数で飛来する。
各機の詳細は個別記事を参照。
前述の様に、ダイカーン以上の階級が身に付けるアイテムで権力層の証。所持者が死亡するとそれに反応して壊れエネルギーを放出、所持者を復活・巨大化させる『ヒカエオロー』を行う。但し所持者が倒されるのと同時にキョダインロウが壊されるとヒカエオローは出来ない。
モライマーズロボの自動操縦や通信会話を行える端末の機能も持たされている他、一部のツヨインダベーやゼロ号はヒカエオローの機能を仕込まれており巨大化が可能。また派生装備として、フクショーグン達は龍に似たレリーフの肩当てにキョダインロウを嵌めており、そこからヒカエオローのエネルギーを自在に出し入れしての任意の巨大化が可能(元のサイズに戻る事も出来る)。
元々、ドン・アルマゲ固有の能力だったヒカエオローをアントン博士が技術的に再現し、汎用能力としてジャークマター全体へ普及させた模様。
- ジャークマターラボ
アントン博士が責任者を務める、ジャークマターの戦力開発を一手に担う施設。
ジャークマターの雑兵であるインダベー・ツヨインダベーら疑似生命体達の出身地であり、彼等が昇格時に強化改造手術を受ける為利用する施設でもある。
本部と呼べる物は無く、アントン博士の意識が入った電子頭脳の置かれる施設がそれに相当するらしい。
戦隊史上初の…
宇宙戦隊キュウレンジャーという番組は、スーパー戦隊シリーズにおける初となる要素や久々となる要素を盛り込んだ分、物語の構図は「巨大な悪に立ち向かうレジスタンス」という単純な物である。
地球征服を成し遂げた組織は他にもあるが、1話の時点で支配されていると言うのは初。
その巨大な悪であるジャークマターという組織は、水戸黄門みたいな痛快娯楽時代劇の悪役の様な存在として設定されており、番組の製作スタッフ間に必要最小限の描写に留めるというルールが存在している事が各種インタビューによって明かされている。
結果として、スーパー戦隊シリーズ屈指の内情がよく分からない敵となっている。
これはスーパー戦隊シリーズでは、かなり異例な物である。
同じように勧善懲悪の敵として設定されたガイアークは、一部の例外を除けば分かり合えるかもしれない存在として描く事で逆説的に勧善懲悪を描いていた(因みにOPの二番の歌詞に“生まれた世界は違っても 見た目や言葉が違っても 願いは繋ぎ合える”とあるが、ある意味ではそういう意味であると考えられる)。
同じ様に全宇宙単位の敵として設定されたザンギャックは、ギャグ要員と思われていた人物が密かに抱えていた屈折が組織を崩壊させる遠因となった。
他にも前年の敵を始め、スーパー戦隊シリーズは敵方のドラマというのが非常に重要視されており、敵方のドラマが戦隊サイドを食ってしまった例も少なくない。
逆に、描写が少ない敵組織は黒十字軍、秘密結社エゴス、オルグ等が挙げられるが、それらと比べてもジャークマターの描写は少ない。
既に地球を征服している事等が注目されがちであるが、ある意味においてはジャークマターが他の戦隊の敵組織と最も違う点であると言える・・・かもしれない。
なお、ジャークマターの組織内情を推測するのに重要なポイントは、既に全宇宙を征服している=同等の敵対勢力が存在しない事にある。
そしてここより、支配した領域の住民の恫喝や組織内の不穏分子の鎮圧に、全宇宙を支配した武力が向けられるのが想像出来る。
要するに、宇宙のほぼ全てを手に入れたアルマゲにして見れば、どんな形でも力を身に付けた者は自身の地位を脅かす者へと変わる可能性を持っている。特に自らの庇護下で力を付けた、ダイカーンやカロー等の数多くいる権力層は内乱の火種に成り兼ねないのである。
そしてそれ故に、己の実力を示して出世したジャークマター構成員はいずれ、目先の欲望を叶えられて堕落させられるか反抗勢力へと差し向けられて潰し合わされるという、アルマゲに都合良く使い倒される扱われ方をされる、前述した様に本質的に人材を冷遇していた組織内情を導き出せるのだ。
余談
構成員の全体のメインモチーフはUMAや宇宙人といった未確認生命体や怪奇現象、不思議な建造物等、ミステリーに関連がある物が取り入れられている。また構成員各々の姿を見ると様々な役職も取り入られていると思われ、誰もが惑星を支配出来る存在になれるのを表しているのかもしれない。
スーパー戦隊シリーズの悪の組織初のすでに地球を手中に収めている組織である(ちなみに海外版のパワーレンジャー・RPMの敵組織を入れると2つ目である)。
関連タグ
スーパー戦隊の敵陣営 |
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トジテンド:4年後の独裁国家戦隊悪役。『全並行世界の封印による征服』というジャークマターを凌ぐ成果を叩き出したが、一方で国内に選民思想を蔓延させ過ぎた結果、有能な人材を組織浄化等で潰し尽くし構成員の質が急速に低下、頂点である大王を含めた最少人数しかいない上層部に組織の権力が集中した歪な実情になってしまっている。これと比べ、ジャークマターは飼い殺しにする手法で構成員の質を保ちながら独裁体制を維持していたが、所詮は質の低下速度を鈍らせているだけな為組織の衰退が起こり始めており、トジテンドと似た将来へなる可能性も高い状況にあったと見れる。
ノットレイダー:2年後のプリキュアに登場する宇宙人で構成されている敵組織。
最終目的とその顛末(ネタバレ注意)
Space.42にて、長らく謎であったプラネジューム回収の目的が判明。
惑星から奪い取ったプラネジュームは秘密裏に惑星サザンクロスの核にある『巨大爆弾』に注入されており、爆弾を使い宇宙その物を消滅させ、アルマゲの手で新しい宇宙を作り出す事が本当の目的だと暴露された。
だが爆弾を使えば当然ジャークマターも発案者のドン・アルマゲ諸共消滅するのは間違いなく、この事を聞かされたメカマーダッコは動揺を隠せなかった。しかし完全な独断という訳でもなく、アントン博士やフクショーグン達側近は承知の上の様子。
アルマゲ本人の口から聞かされた鳳ツルギも理論の破綻を指摘しているが、アルマゲは自らが新しい宇宙として生まれ変わるという方法で消滅から逃れる事が出来る。
Space.44でそれを知った宇宙全土のカロー以下構成員達も、誰も宇宙の破壊を望んではいなかったらしく衝撃を受け、アルマゲへの忠誠やキュウレンジャーと戦う事を止めてジャークマターを次々と離脱。組織としてのジャークマターはまたたく間に崩壊の一途を辿った。
ドンは「悲しみや苦しみといった矛盾に満ち溢れたこの宇宙では、滅びる事が唯一の救い」と歪み切った救済論を掲げており、少なくとも彼の主観ではジャークマターに組する者は救済するべき弱者、ジャークマターに刃向かう者は救済を拒む愚者であった。
権力層同士が協力し合わず好き勝手をする組織風土にしていたのも、宇宙を破壊する時に組織丸ごと切り捨てる存在に過ぎなかったからであり、いざその時になって構成員が団結して自身へ抵抗しない様にする予防策だったとも見れる。
……しかし、ここまでで述べたこのカルトじみた野望は、333年前アルマゲという力を得て思いあがった依り代の方が勝手に懐き始めた物で、アルマゲ自身の意志は宇宙の救済など全く考えていなかった事が発覚。
長年依り代の考えに干渉せず好き放題力を使わせていたのも、その依り代と深い関わり合いがあるツルギを誘き出す時まで飼い繋ぐ為であったのだ。
そして誘き出したツルギに憑依した上で、その不死身の肉体を介してプラネジュームを摂取し、宇宙中の命を自らの体内に吸収する事こそがアルマゲの本当の目的だった。
結局の所ジャークマターとは、ドン・アルマゲが「宇宙中の命を未来永劫苦しめ、負の感情の集合体たる自身を満たし続ける」べく、自らの「他人に憑依し融合する能力」を宇宙規模にまで成長させる為だけに発足された組織であったという、冗談めいた最低の真実を晒す事になった。
詰まる所、ジャークマターの本質はアルマゲが宇宙の命を苦しませる目的で作った“道具”でしかなかったと言う事になる。
だが、“道具”である構成員達は何らかの別の目的を与えなければ自身の思い通りへ動かず、その目的を果たす過程で他者を苦しめると言う間接的な方法でしかアルマゲは負の感情を得る事が出来なかった。いわば、トップの目的が組織内では二の次に回っていると言うジレンマが生じていたのである。
そう考えるとアルマゲの最終目的は、『自身が自身の望む物を直に手に出来る様になりたい』と言う考えの籠ったある意味切実な物だったのかもしれない。
しかしその一方、『支配者への恐怖と逆らえない諦観』からの共同幻想で成り立っていたジャークマターにおいて、アルマゲはそれへ依存・寄生している立ち位置でもある事を最後まで自覚し得なかった。奴が一人だけで全宇宙を支配する力を得る為に起こした行動は同時にジャークマターの組織システムを破壊していて、支配されていた側へ共同幻想を与え続けるのをストップさせ負の思念が急激に薄まる前段階にもなっていたのだが、飼い繋いでいた依り代と側近達に組織運営を事実上押し付けていたアルマゲにそんな事が解かる筈も無かった。
そして結局、ジャークマターの全てを食い潰した上で一人だけで全てを支配する存在になったと豪語したアルマゲだったが、逆に全宇宙の生きる者に拒絶されて一人だけの悪党に転落、そのまま完全に滅ぼされた。
同時にこれを持って、全宇宙に蔓延っていた共同幻想が払拭された結果、ジャークマターは概念的な意味でも完全に滅び去る事となった。