ミカ・レーツ
みかれーつ
ダイカーン・ザンダバルドの支配地域内にある街へ現れた女性だが、その右腕は装甲と鋭い角を持つ異形となっている。この右腕により町の住民からは“化物”と忌み嫌われ、暴力を伴う苛烈な迫害を受けていた。
それにより心身共に傷付き孤独だったが、ある時ザンダバルドに救いの手を差し伸べられて救われる。その彼より受けたその恩義と誘いに応じ、ジャークマターの刺客として自分を迫害した町の住民達を抹殺しようとする。しかし人としての優しさがまだ残っている故、実際に他者を手に掛けようとした時には躊躇していた。
実はチキュウ人とイッカクジュウ座系人のハーフであり、右腕はイッカクジュウ座系の血筋由来である。ミカが襲撃した町も元は彼女の生まれ故郷だったが、今現在の彼女を取り巻く現実の前ではまるで意味を成さなくなっていた。
道端に咲くカモミールを目にする時は穏やかな顔を見せ、「逆境に絶える」花言葉が元で心の癒やしとなっている。
心の葛藤を残した状態で住民を抹殺すべく姿を見せた際にスティンガー・チャンプと遭遇。2人との格闘戦を掻い潜った後ザンダバルドの元へ一時帰還、そこでインダベーやツヨインダベーを貸し与えて貰った後、町の近場にある廃ビルへ腰を落ち着けたスティンガーとチャンプ(※この時ミカを倒すかどうかで揉めていた)を襲撃する。
そしてインダベー達がチャンプと戦う中、ミカはスティンガーと激しい接近戦を繰り広げるが、突如として何者かの攻撃で瓦礫が発生。スティンガーと共に巻き込まれてしまう。
だが寸出の所でスティンガーに庇われたミカは自分を慰める為に彼の歌った『サソリ座の歌』により瓦礫の中で気が付く。初遭遇時の言葉や先程の戦いで止めを躊躇った事から、ミカが孤独を抱えている事と兄に似た物を感じ取ったと言うスティンガーの過去語りに応じ、ミカも自分の過去を語り出す。
そして短い会話の後、ミカに共感したスティンガーはセイザブラスターの銃撃で瓦礫を壊し、崩れ掛けた破片を自分の体で受け止めてミカが脱出する隙間を作った。この、自分が命を狙っていた筈の男の体を張った行動に、「甘い男…」と返しながらも心動かされたミカは自分の右腕で瓦礫を吹き飛ばしスティンガーを救ったのだった。
そのまま何も言わずスティンガーの前から立ち去ったミカだが、その途中でカモミールの花を見付け、初めて自分を理解してくれる人に出会えた事を内心で喜んだ。…しかしそれは直後、自分への敵意と憎悪を燃やす住民の襲撃により目の前にあったカモミール同様踏み躙られてしまう。
そのまま住民達の元へ連れてこられ、これまでと変わらず化物扱いされてリンチを受けそうになった事で、スティンガーとの触れ合いで鎮まっていた復讐心が爆発。その場にいた住民達を大人子供・男女御構い無しに惨殺、遂に一線を越えてしまった。
※惨殺された住民達は直後、真相を知って行動を始めたスティンガーとチャンプが発見。2人の手で丁重に葬られた。
こうしてもう戻れなくなってしまったミカは、抹殺指令を下したザンダバルドの元へ赴き正式にジャークマターの一員になる事となった。そしてドン・アルマゲより力を貰った後、ザンダバルドからは直にキョダインロウを授けられてダイカーンとなり、自分達の居るモライマーズへ向かって来たスティンガーとチャンプの前へ姿を現す。
「キュウレンジャー。我が主ザンダバルド様の命により、お前達を殲滅する」
「お前の知っているミカ・レーツは死んだ。私は、遂にダイカーンになった。 …私を脅かす者は、全て殺す!」
ザンダバルドを倒そうとするスティンガーとチャンプを迎撃する為、怪人態に変貌を遂げたミカ。カモミールの花を愛でザンダバルドを敬愛する(より正確には頼らざるを得なくなった)、悲しい復讐者。
右腕の装甲が頭部と胸部も覆った様な姿の戦闘生命体と化したが、左腕と下半身は生身のまま。顔には炎の様な三本角が生えていて鬼面を思わせる。変貌前と同様に格闘戦を得意としており、右腕の角型クロー『ミカクロー』を敵へ突き立てる。
ザンダバルドより授かったキョダインロウは左腰に下げている。
だがそれでも強化は不完全な様で、相手がチェンジしたサソリオレンジとオウシブラックの反撃をアッサリ許している(※真相を鑑みて、わざと中途半端な物にした可能性がある)。そしてそのまま圧倒された後、ミカを救おうとする意志を告げたオレンジとブラックの放ったオールスターインパクトが直撃、人間態に戻った。
だが直後、強化の副作用と思われる耐え難い苦痛に見舞われたミカは、駆け寄って来たスティンガーに介錯を嘆願する。それに対し尻尾を伸ばしながらも躊躇するスティンガーだったが、直後にミカの背後より飛んで来た斬撃が彼女に致命傷を与えた。
「結局お前らはこの女を救えなかったようだな。この女を孤独から救ったのも、“夢”を与えてやったのも、苦しみから解放してやったのも全て俺だったって訳だ!」
斬撃を撃ち込んで来たのは、非道な本性を現したザンダバルドだった。実は奴こそ、自身の配下を使い支配地区付近に身を寄せていたチキュウ人達を執拗に痛め付ける事で異形の宇宙人に対する憎悪を植え付け、それが右腕が異形であるミカに向かう様仕向けていた張本人。その目的はこれにより心身に傷を負い孤独になったミカに上辺の優しさと甘言に満ちた救いの手を差し伸べる為で、彼女に『孤独から抜け出すには迫害する者達を殺してダイカーンになるしか無い』と吹き込み、チキュウ人同士で殺し合う結末へ誘導していたのである。…そして、この外道としか言えない内容の計画は、ザンダバルドがカローへ昇格する実績作りの為だけに実行され既に成功してしまった。
そして勝ち誇りを挙げながら悠々と撤退するザンダバルドから“用済み”と通告され、一切合財を失ったミカはその場へ崩れ落ちる。それを抱きかかえたスティンガーに対し、「スティンガー…私、あなたの言う通りずっと孤独だったみたい…。 もっと…早くに…あなたと…出会いたかった…」と言い残し、一筋の涙を流して力尽き死亡。だが直後に彼女の体から光(キューエナジー)が生まれてスティンガーの持っていたエンプティキュータマに憑依、イッカクジュウキュータマへと変化した。
そして残った遺体は、スティンガーとチャンプにより故郷の街が見える丘に埋葬。墓標前にはカモミールの花が植えられる事となった。一方、スティンガーは助けて貰った時にミカを引き留められなかった事を悔やみ『自分に“甘さ”があった』と自らを責め、改めて兄・スコルピオを討つ事を決意する。
しかしやはり『甘さ』を捨てられず、程無く最悪の事態を招いてしまう事をこの時の彼は知らなかった。
その後、ミカや住民達を玩び踏み躙った事でジョウギ座系のカローへ伸し上がったザンダバルドは惑星スリービーでスティンガーと再会。彼女達にまつわる真相をスティンガーに嬉々として語るが、それにより彼から激怒を買ったザンダバルドはミカの思いが籠ったイッカクジュウキュータマによって誕生したサソリオレンジイッカクジュウアームの前に敗北。因果応報の最期を迎える事になる。
ある目撃証言によると、イッカクジュウキュータマを生み出した光はミカの魂が変じた物だったと言う。
モチーフはアンモナイトと身体が突如燃え出す超常現象、人体発火現象。アンモナイトの化石には殻の渦巻きが異形な物があるが、よく見ると胸元や頭部へ貝が巻き付いた様な意匠がある。一方、人体発火現象がミステリーモチーフなのは“憎悪を燃やす⇒当人が炎に包まれている”と言う発想に、いっかくじゅう座のモチーフである聖獣・ユニコーンが“憤怒”を象徴するのに使われる事があるのを踏まえた物と思われる。
怪人態のスーツアクトレスを務める人見早苗氏は、劇中でミカを迫害する住民の一人としても出演した他、監督の坂本浩一氏が撮った仮面ライダー×仮面ライダー フォーゼ&オーズ MOVIE大戦 MEGA MAXへ出演した経験もある。これは住民達のリーダー格であるタナカを演じた島津健太郎氏も同じで、仮面ライダー×仮面ライダー ウィザード&フォーゼ MOVIE大戦アルティメイタムや獣電戦隊キョウリュウジャーに出演している。
加えて、この2人と同じ位目立つ住民を演じたキャッチャー中澤氏も仮面ライダーフォーゼへ出演していた上、本Vシネマ発売日前後に放映されたウルトラマンジードの16・17話にゲストとして出演。これにより、坂本監督が撮った日本三大特撮の出演者達が一作品の中に集合する事になった。
名前の由来は劇中で度々出てぬるカモミールの和名、カミツレのアナグラム。ハーブや薬草として古来より用いられて来た花で、“癒しの聖獣”であるユニコーン=イッカクジュウ座の住人の血を引くキャラに相応しいネーミングである。また、この花は同じく劇中で言及された『逆境に耐える』以外にも、『苦難の中の力』『あなたを癒す』と言う花言葉を持っている。
ミカとの悲しい別れの後、挫折や迷走に陥りつつも仲間のキュウレンジャーの力で持ち堪えつつ兄を乗り越えて先へ進む事の出来たスティンガーだが、彼がその状況を呼び込めたのはカモミールを好いていたミカの思いが籠るイッカクジュウキュータマをお守りとしていた為かもしれない。
演じた間宮夕貴は翌年に事務所移籍と同時に「桝田幸希」に改名。7年後の2024年には同じ坂本浩一監督作品である『王様戦隊キングオージャー IN SPACE』にて同作のヴィランであるアイハブを演じている。
宇宙戦隊キュウレンジャー Episode_of_スティンガー
スティンガー(キュウレンジャー) チャンプ(キュウレンジャー) ザンダバルド
デンビル、マナビル:同じくイッカクジュウ座出身、チキュウ担当のダイカーン達。後者はジャークマターの学園施設を預かる教師であり、カロー昇格後のザンダバルドの配下を見ると中々に皮肉な立場である。
ユニコーン・ゾディアーツ:いっかくじゅう座モチーフのライダー怪人。変身者は特定の人物に対する“憎悪”の元活動していた。
セツコ・オハラ:ミカと同じく信頼していた人物に裏切られる事を始めとして、筆舌に尽くしがたい不幸に見舞われ悲しむ境遇に叩き込まれる。しかし一方で仲間に恵まれ、最終的には周りの力を借りながら悲しみの境遇を乗り越えた。
搭乗機の武装が古代貝(オウムガイ)モチーフ、蠍座をモチーフとする憎悪に囚われた男と因縁を持つと言う共通点もある。
三日月・オーガス:『ミカ』の愛称を持つ主人公だが、物心付いた頃から孤児だった故の顧みなさにより、最終的に周りに流される形で世間より爪弾かれる立ち位置に追い込まれ、戦死する。
だが自分がやって来た事に後悔と迷いを持つ事は無く、やりたい事を全力でやって最期を迎えた彼の顔に悲しみは無かった。